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第151話:初めてのお世話

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 王都ノルンから出発し、俺たちはザベっさんの故郷『ドノヴァン・ヴィレッジ』へ向けて進路をとった。
 今回からは前回と違い、ガルド組とゼクス組のキャラバンを2台運用するためちょっとした小隊になっている。

 それぞれに分けたメンバーは、
 ガルド組は俺、ルカ、フレイ、セリーヌ、テオ。
 ゼクス組はナディアさん、ザベっさん、リック、シルヴィア。

 キャラバンの運転は休憩ごとに交代する。
 何気にクルゥ達の機嫌を伺いながら運転するのは疲れるからね。
 今手網を握っているのはセリーヌとザベっさんだ。
 ゼクス組が先頭を走行している。


「『魔導エンジン』ねぇ…。
 それでハルートは私の依頼受けてくれたのね」

「そうそう。
 だからルカには悪いけど、理の国ゼクスに帰ってからも、ちょくちょくノルンまで連れてってもらうことになるな…」

「別に構わない。
 両国間の転移テレポートで生じる大体のエネルギー消費量は把握したからな」


 そして今は、バンの中でフレイ達にハルートから依頼された例の件を伝えている。
 ちなみにテオはセリーヌの隣りに座って仲良くおしゃべりをしている。


「ちなみに武器はいつ創ってもらうんだ?」

「それが…『時間あるときもっかい店に来い』って言われたんだけど、どういうことかしら?
 ていうか私まだどんな武器が良いかも伝えてないんだけど…」

「ああ、それはだな…ムグ」

「ルカッ!シー!」


 俺は慌ててルカの口を塞いだ!
 ハルートは武器を創作オーダーメイドする際、依頼人に襲いかかる。
 そいつの戦法や身体能力に合わせた武器をチョイスするためだ。
 なぜフレイにそれを教えてやらないかって?
 黙ってた方が面白そうだからだ!(ゲス)


「ちょ、ちょっとなにしてんのよ?
 なんで教えてくれないのよ?」

「ま、まぁ…良いじゃんか!
 きっとハルートもお前と友達になりたいだけだって!」

「ふーん…? まぁ、いいけど…。
 それよりそろそろ離れなさいよ。
 あんた達くっつき過ぎなのよ!」


☆☆☆


 時刻は昼、本日1回目の休憩。
 道なりから少し逸れた所に川がある所で、お昼ご飯をとることになった。

 シルヴィアとリックとセリーヌは炊事。
 ナディアさんとザベっさんは現在地点の確認と、これからの道のりについて相談している。
 
 そしてそれ以外は二人ずつ別れて、クルゥ達の世話係を担当している。
 俺とテオはガルドのクルゥ、ルカとフレイはゼクスのクルゥだ。
 長距離移動になるため、クルゥ達の体力管理は重要なのだ。
 

「ピュイッピュイッ!」

「わっ!?お、落ち着いてくれ…」


 どうやらテオは騎乗魔物の世話をしたことがないらしく、ブラッシングをしようとした途端、羽根をばたつかせてしまった。
 ゼクス組のクルゥはともかく、ガルドで育てているクルゥは気性がすごく荒いからな…。
 初見で手こずるのは当然だ。


「あんまり目を合わせないように触れるのがコツだぜ。
 ほら、こんな感じで…」

「ピュイ♡‬」

「おおお…!す、すごいなレイト…。
 俺にはまったく懐かないのに…」

「アハハ、俺もガルド村で世話してた時は全然懐いてくれなかったよ。
 地道に世話してやれば、そのうち仲良くなってくれるよ」


 ブレイズの羽毛を整えながら偉そうにアドバイスしてみた。
 まったく、俺ってばテオの方が歳上なのに先輩風吹かせちゃって…。


「前から少し不思議に思ったんだが、レイトは仲良くなった者の心を開かせる不思議な〝力〟を持っているな」

「力? 俺は転移テレポートしか使えないけど…」

「いや、人だろうと魔物だろうと、言葉を理解できる特別な力もあるじゃないか。
 正直そっちの方がすごい能力だと思う」


 …言葉を理解できる能力…?
 宝石スフィアの契約特典のことか。
 そんな風に考えたことなかったな。
 ただ、その相手と意思の疎通コミュニケーションがとれるかとれないかの違いとしか思ってなかった。


「俺…本当は人族が嫌いだったんだ」

「え!? そうなの!?」


 なんか突然カミングアウトされてしまった!
 でも、俺やシルヴィアに対しては普通に接しているよな?


「シルヴィアから聞いていないか?
 ジオン達が俺の屋敷に来た時、俺は彼女を押し倒してナイフを突きつけたんだ」

「は…えええ!?」


 俺らがグロック村に行ってる時そんなとんでもない状況になってたの!?
 でも、シルヴィアは全然気にしてないどころかテオを(やらしい意味で)気に入ってるみたいだし…。


「けど、彼女の『聖教士クレリック』としての真摯な誇りを目の当たりにして、俺は考えを少し改めたんだ。
 人族にも善い奴、悪い奴がいると…」

「そ、そうなんだ…。
 あの…、もしかしてテオが人族が嫌いな理由ってもしかして親父さんが…?」


 以前、テオが4つの頃に親父さんが亡くなったと聞いた。
 テオの年齢は24歳。
 つまり、亡くなったのは20年前だ。
 その当時は亜人の国ヘルベルクの人達にとって最悪な事件が起きた頃のはず。
 死因までは詳しく言ってなかったけど、人族が嫌いと言うならまさか…?
 テオは苦笑いで頷いた。


「さすがにこの国へ入国したのなら、聞いていないはずはないか。
 そうだ、盗賊団ベンターに親父は殺された。
 無様にも連中に人質にされてしまった俺を助けるために…」

「テ、テオ…」


 そう語るテオの表情はもちろん暗い。
 病気とかじゃなくて他殺だったのか…!
 ど、どう声を掛けたら良いんだろう…。


「けど、レイトはベンターどもを倒してくれたんだろう?
 それだけじゃない…見ず知らずの俺の領民まで助けてくれた」

「あ、あー…、その、どっちも成り行きというか…」


 特にベンターにいたっては、あれは自滅に近いと思うんだけど…。
 どうも後ろめたくなり視線を逸らす。
 するとテオは、ブラシを持っていない方の俺の手を掴んで、上目遣いで綺麗な茶色の瞳を輝かせた。


「成り行きでも構わないさ。
 そして俺はレイトと喋るうちに、いつの間にか話している相手が人族だと忘れるほど心も許していたんだ。
 こんな『不良貴族』でもお前は仲良くしてくれた…。
 俺はそんな男の傍に居たいと思ったから、旅の決意をしたんだ」

「テオ…」


 手を握る体温が少し高く感じた。
 …テオの頬にも若干赤みがあるように見えるのはなぜなんだろう?


「お二人とも、手まで繋いじゃってずいぶん仲が良いですね?」

「「!?」」


 めっさ低い声が後ろから聞こえてきた!
 同時にバッと振り向くと、シルヴィアが調理用のナイフを片手に笑顔で立っていた。
 えっ……怖いんだけど。


「仕事が終わったのなら、さっさとこっちの方を手伝ってくれませんか?
 人数が多い分、準備する物が多いんです。
 いつまでもダラダラしてるようでしたら、レイトさんに栄養満点な『野竜ドレイク』を狩ってきてもらいますよ?」

「ドラゴンはムリつってんだろ!?
 つーかなんで俺だけだ!!」


 その後、俺とテオは急いでクルゥの手入れを終わらせてシルヴィア達に合流した。
 シルヴィアの奴、テオがこっちのキャラバンに来たことまだ根に持ってるのかな…?








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