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第139話:ヘルベルク・キャッスル
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ブン!
「『融解』を解除する。
さあ、急ぐぞ!」
「ああ!…って、やば!?
検問所混んできてるよ!
これ割り込みして怒られないか?」
「大丈夫でしょう。
謁見は坊っちゃまの組…ジオン・オットー一行として登録されていますので、特に問題ありません」
なんとか『理の指輪』を外すことに成功した俺たちは、再び『亜人の国』へと戻った。
しかし、30分ほど時間を掛けてしまったせいで、検問所の前には行列が形成されていた。
ここにいる全員が城に用があるわけではなく、王族が暮らすエリアには大貴族も住んでいるため、そちらに来訪する目的の人達がほとんどだろう。
俺らは小走りで人だかりをかき分けていく。
ルカは再び宝石形態となり、俺の頭の上に乗っかっている。
「うわっ!?な、なんだ君は!?」
「いたっ!?何あなた、割り込まないでよ!」
「スンマセン!通してください!!」
ぶつかる人達に謝罪をしながら先頭を目指すと、ジオン達が検問所の前で衛兵と話している…ちょうど順番回ってきてたのか!
危ねーなんとか間に合った!!
「ジオン!シルヴィア!待たせた!」
「レイトさん!
良かった…間に合ってくれましたね」
「レイト殿!やっと来てくれたか!
衛兵殿、彼らが僕の連れ人なのです!」
「おお、そうなのか。とにかく急いで向かおう。
まもなく、貴殿らの謁見の時間が近づいてい…」
ジオンは俺を紹介するべく前へ押し出した。
すると、衛兵さんは俺を見るとなぜか固まってしまった。
…まさか、人族はダメとか言わないよね?
「黒い頭髪に蒼い宝石…?
もしや貴殿が…噂の『蒼の英雄』なのか?」
「うえっ!?え、えっと…」
まさか国の兵隊にも俺の噂が流れてたのか!?
インターネットも無いのになんでこんな情報早いんだよ!
答えあぐねいていると、代わりにザベっさんが回答した。
「こちらの青年こそ、昨今、王都の地下で蔓延っている『裏賭博場』の壊滅を成し遂げた、マミヤ・レイトでございます」
おいいいい!?
なに物騒な紹介してくれてんだ!
警戒されたらどうすんだ馬鹿!
「あ、あのっ!衛兵さん!これは…」
「カジノ…やはりそうか!!
私の友を助けてくれたのは貴殿なのだな!
簡潔で恐縮ではあるが礼を言わせてくれ!」
「ええっ!?」
衛兵さんは俺の手を握って頭を下げてきた!
なんと、またしてもあの闘技場の被害者に縁がある人だったようだ!
これは…あの闘いは結果として俺の評判が悪くなくなったと捉えて良いのだろうか?
でも、昨日酔っ払いと喧嘩することもあったし、この反応をしてくれるのはノルンに住む全員が全員ではないと釘を刺しとくべきだ。
「さあ、国王様が待っておられる。
是非ともその話を我が王にも伝えてもらえまいか」
「あ、あはは…まあ、善処します…」
☆☆☆
ヘルベルク・キャッスル。
『亜人の国』の王都ノルンの中心にそびえ立つ、国家機関を象徴する建物だ。
ゼクス・キャッスルとはまた違うデザインのお城で、古くからの名残なのか石材で造られた城壁が高く厚く築かれている。
そして城壁以上に目立つ存在を放っているのが本館…つまりこれから俺たちが入場する場所だ。
この建物に、『亜人の国』の王様がいる。
「オットー卿。
これより城へ入るに当たって、貴殿らの身体検査を実施する。
武具の類や暗器など、殺傷力がある全ての持ち物はここで預けてもらうが、構わないかな?」
「もちろんだ。
我々は闘いに来たわけではないからな」
城門の傍にまた検問所が設置されてある。
どうやら城に用事のある人物は、2回も身分証明と来訪目的の提示をしなければならないようだ。
ずいぶん警戒してるねぇ。
持ち物検査に限っては過去ににナディアさんからスマホを押収されそうになったので、宿屋に置いてきた。
武器は言わずもがな、きっと大丈夫だろ。
ジオンが検問所の検査員から、身体チェックを受けているのをボケっと眺めてると、シルヴィアがおもむろに肩を叩いてきた。
「あの…レイトさん。
王様ってどんな感じなんですか?」
「え?いや、知らないよ。
つーか、これから会うんだろ?」
「いえ、そうではなくてですね…。
私、王族と…というか、国王様とお話することなんて今までなかったので…。
けど、レイトさんとルカさんは理の国で経験済みなんですよね?」
ああ、そういうことか。
要は緊張してるって言いたいんだな。
前にフレイもこんな反応してたかも。
「気負う必要はないぞゴードン。
王とはいえ、相手は君と同じ人間なのだから。
リラックスして臨むんだ」
「ルカさん…」
自分の名前が出てきたからか、ルカも会話に参加してきた。
彼女は自分に注目されると恥ずかしがり屋さんになるけど、偉い人と話すことに関しては特に気にならない性格だ。
「次は侍女殿だ。
もし武器があれば先に申告してくれ」
ジオンはすぐ終わったようだ。
続けてザベっさんが検査員の人の前へ立つ。
「かしこまりました。ではこちらを…」
彼女は懐からさっき指を落とそうとしたポケットナイフと、彼女の愛用武器である変形する武器を差し出した。
今の形はスタッフ形状だ。
「これは…まさか『可変武器』!?
すごい武器を持っているな…」
「恐れ入ります」
検査員さんはどうやらハルートの事を知っているみたいだ。
まあ、あんな濃い車屋を覚えんなって方が難しいけど…。
俺も早く武器受け取りたいなー。
「問題なし。よし、次は…」
☆☆☆
「開門!」
全員の検査が終わり、やっと城門を通れる許可がもらえた。
ズズズ…と、頑丈そうな二対の門が開かれていく。
人が押してないってことは、これも魔道具なのだろうか?
すごい技術だよなぁ。
「それではこの先は私に代わって、王国騎士団である彼が貴殿らを案内する。
謁見の際はくれぐれも失礼のないようにな」
「ああ、色々とありがとう。衛兵殿」
気のいい衛兵さんに挨拶をすると、門が閉まるまで笑顔で手を振って見送ってくれた。
最後まで爽やかな兵士さんだな。
そして、ここから代わりに案内を担当するという人物が甲冑を着込んでいる亜人さん…。
左腕には大盾が装備されてあり、その盾には巨人が剣を掲げている紋章が刻まれている。
ちなみにちょっと怖い顔つきの男の人だ。
「……謁見の間へ案内する。ついてこい」
短く言うと、くるりと反転して歩き出した。
まあ!なんて無愛想なオッサンなのかしら!
…そんな余計なことは言わずに黙ってついて行くけど。
道すがらは美しい花と緑で彩られた中庭になっており、自然の香りが鼻を癒してくれた。
頭に乗っかりぱなしのルカがその場で横回転を始めた。
あ、ちょ…痛いって。
「クンクン…良い香りだな零人。
あの花壇に植えられている花は、君がいつも付けている香水の材料じゃないか?」
「『ルミル花』だね。
あ、そういえば俺の虫除けそろそろ無くなりかけてたんだった…。
なあ、シルヴィアあれ摘んできてもいいかな?」
「ダメに決まっているでしょう!?
馬鹿なこと言わないでください!」
バシッとシルヴィアからはたかれてしまった。
まだ緊張してるみたいだから軽いジョーク言っただけなのになぁ。
すると、ジオンと一緒に前を歩いていたザベっさんが歩行スピードを落として俺の隣へ来た。
「レイト様のお身体の匂いはルミル花が原因…。
なるほど、覚えておきましょう」
「んなもん覚えてどうすんだよ…。
…ってコラ!
どさくさに紛れて匂い嗅いでんじゃねぇ!」
ザベっさんが俺の首元に顔を近づけてスンスンしてきた!
やめなさいよ子供じゃないんだから!
「……静かにしろ、人族の小僧」
「うっ、スミマセン…」
ほらー怒られたじゃん!
ザベっさんを睨みつけるとプイッと再び前へ移動して行った。
…何がしたかったんだあのエルフは?
「うふっ、ふふふふ…!」
さっきのやり取りを見ていたシルヴィアが口元を抑えている。
緊張が解けてなによりですねー。
俺は若干不貞腐れながら、中庭の先にある本館を目指して歩き続けた。
「『融解』を解除する。
さあ、急ぐぞ!」
「ああ!…って、やば!?
検問所混んできてるよ!
これ割り込みして怒られないか?」
「大丈夫でしょう。
謁見は坊っちゃまの組…ジオン・オットー一行として登録されていますので、特に問題ありません」
なんとか『理の指輪』を外すことに成功した俺たちは、再び『亜人の国』へと戻った。
しかし、30分ほど時間を掛けてしまったせいで、検問所の前には行列が形成されていた。
ここにいる全員が城に用があるわけではなく、王族が暮らすエリアには大貴族も住んでいるため、そちらに来訪する目的の人達がほとんどだろう。
俺らは小走りで人だかりをかき分けていく。
ルカは再び宝石形態となり、俺の頭の上に乗っかっている。
「うわっ!?な、なんだ君は!?」
「いたっ!?何あなた、割り込まないでよ!」
「スンマセン!通してください!!」
ぶつかる人達に謝罪をしながら先頭を目指すと、ジオン達が検問所の前で衛兵と話している…ちょうど順番回ってきてたのか!
危ねーなんとか間に合った!!
「ジオン!シルヴィア!待たせた!」
「レイトさん!
良かった…間に合ってくれましたね」
「レイト殿!やっと来てくれたか!
衛兵殿、彼らが僕の連れ人なのです!」
「おお、そうなのか。とにかく急いで向かおう。
まもなく、貴殿らの謁見の時間が近づいてい…」
ジオンは俺を紹介するべく前へ押し出した。
すると、衛兵さんは俺を見るとなぜか固まってしまった。
…まさか、人族はダメとか言わないよね?
「黒い頭髪に蒼い宝石…?
もしや貴殿が…噂の『蒼の英雄』なのか?」
「うえっ!?え、えっと…」
まさか国の兵隊にも俺の噂が流れてたのか!?
インターネットも無いのになんでこんな情報早いんだよ!
答えあぐねいていると、代わりにザベっさんが回答した。
「こちらの青年こそ、昨今、王都の地下で蔓延っている『裏賭博場』の壊滅を成し遂げた、マミヤ・レイトでございます」
おいいいい!?
なに物騒な紹介してくれてんだ!
警戒されたらどうすんだ馬鹿!
「あ、あのっ!衛兵さん!これは…」
「カジノ…やはりそうか!!
私の友を助けてくれたのは貴殿なのだな!
簡潔で恐縮ではあるが礼を言わせてくれ!」
「ええっ!?」
衛兵さんは俺の手を握って頭を下げてきた!
なんと、またしてもあの闘技場の被害者に縁がある人だったようだ!
これは…あの闘いは結果として俺の評判が悪くなくなったと捉えて良いのだろうか?
でも、昨日酔っ払いと喧嘩することもあったし、この反応をしてくれるのはノルンに住む全員が全員ではないと釘を刺しとくべきだ。
「さあ、国王様が待っておられる。
是非ともその話を我が王にも伝えてもらえまいか」
「あ、あはは…まあ、善処します…」
☆☆☆
ヘルベルク・キャッスル。
『亜人の国』の王都ノルンの中心にそびえ立つ、国家機関を象徴する建物だ。
ゼクス・キャッスルとはまた違うデザインのお城で、古くからの名残なのか石材で造られた城壁が高く厚く築かれている。
そして城壁以上に目立つ存在を放っているのが本館…つまりこれから俺たちが入場する場所だ。
この建物に、『亜人の国』の王様がいる。
「オットー卿。
これより城へ入るに当たって、貴殿らの身体検査を実施する。
武具の類や暗器など、殺傷力がある全ての持ち物はここで預けてもらうが、構わないかな?」
「もちろんだ。
我々は闘いに来たわけではないからな」
城門の傍にまた検問所が設置されてある。
どうやら城に用事のある人物は、2回も身分証明と来訪目的の提示をしなければならないようだ。
ずいぶん警戒してるねぇ。
持ち物検査に限っては過去ににナディアさんからスマホを押収されそうになったので、宿屋に置いてきた。
武器は言わずもがな、きっと大丈夫だろ。
ジオンが検問所の検査員から、身体チェックを受けているのをボケっと眺めてると、シルヴィアがおもむろに肩を叩いてきた。
「あの…レイトさん。
王様ってどんな感じなんですか?」
「え?いや、知らないよ。
つーか、これから会うんだろ?」
「いえ、そうではなくてですね…。
私、王族と…というか、国王様とお話することなんて今までなかったので…。
けど、レイトさんとルカさんは理の国で経験済みなんですよね?」
ああ、そういうことか。
要は緊張してるって言いたいんだな。
前にフレイもこんな反応してたかも。
「気負う必要はないぞゴードン。
王とはいえ、相手は君と同じ人間なのだから。
リラックスして臨むんだ」
「ルカさん…」
自分の名前が出てきたからか、ルカも会話に参加してきた。
彼女は自分に注目されると恥ずかしがり屋さんになるけど、偉い人と話すことに関しては特に気にならない性格だ。
「次は侍女殿だ。
もし武器があれば先に申告してくれ」
ジオンはすぐ終わったようだ。
続けてザベっさんが検査員の人の前へ立つ。
「かしこまりました。ではこちらを…」
彼女は懐からさっき指を落とそうとしたポケットナイフと、彼女の愛用武器である変形する武器を差し出した。
今の形はスタッフ形状だ。
「これは…まさか『可変武器』!?
すごい武器を持っているな…」
「恐れ入ります」
検査員さんはどうやらハルートの事を知っているみたいだ。
まあ、あんな濃い車屋を覚えんなって方が難しいけど…。
俺も早く武器受け取りたいなー。
「問題なし。よし、次は…」
☆☆☆
「開門!」
全員の検査が終わり、やっと城門を通れる許可がもらえた。
ズズズ…と、頑丈そうな二対の門が開かれていく。
人が押してないってことは、これも魔道具なのだろうか?
すごい技術だよなぁ。
「それではこの先は私に代わって、王国騎士団である彼が貴殿らを案内する。
謁見の際はくれぐれも失礼のないようにな」
「ああ、色々とありがとう。衛兵殿」
気のいい衛兵さんに挨拶をすると、門が閉まるまで笑顔で手を振って見送ってくれた。
最後まで爽やかな兵士さんだな。
そして、ここから代わりに案内を担当するという人物が甲冑を着込んでいる亜人さん…。
左腕には大盾が装備されてあり、その盾には巨人が剣を掲げている紋章が刻まれている。
ちなみにちょっと怖い顔つきの男の人だ。
「……謁見の間へ案内する。ついてこい」
短く言うと、くるりと反転して歩き出した。
まあ!なんて無愛想なオッサンなのかしら!
…そんな余計なことは言わずに黙ってついて行くけど。
道すがらは美しい花と緑で彩られた中庭になっており、自然の香りが鼻を癒してくれた。
頭に乗っかりぱなしのルカがその場で横回転を始めた。
あ、ちょ…痛いって。
「クンクン…良い香りだな零人。
あの花壇に植えられている花は、君がいつも付けている香水の材料じゃないか?」
「『ルミル花』だね。
あ、そういえば俺の虫除けそろそろ無くなりかけてたんだった…。
なあ、シルヴィアあれ摘んできてもいいかな?」
「ダメに決まっているでしょう!?
馬鹿なこと言わないでください!」
バシッとシルヴィアからはたかれてしまった。
まだ緊張してるみたいだから軽いジョーク言っただけなのになぁ。
すると、ジオンと一緒に前を歩いていたザベっさんが歩行スピードを落として俺の隣へ来た。
「レイト様のお身体の匂いはルミル花が原因…。
なるほど、覚えておきましょう」
「んなもん覚えてどうすんだよ…。
…ってコラ!
どさくさに紛れて匂い嗅いでんじゃねぇ!」
ザベっさんが俺の首元に顔を近づけてスンスンしてきた!
やめなさいよ子供じゃないんだから!
「……静かにしろ、人族の小僧」
「うっ、スミマセン…」
ほらー怒られたじゃん!
ザベっさんを睨みつけるとプイッと再び前へ移動して行った。
…何がしたかったんだあのエルフは?
「うふっ、ふふふふ…!」
さっきのやり取りを見ていたシルヴィアが口元を抑えている。
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