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第130話:テオの憧れ
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みんなでテーブルを囲み、お昼ご飯を客間でご馳走になった。
俺だけ既にカジノで少し食べていたので、あまりお腹は空いていなかったけど、貴重なザベっさんの手料理を逃すわけにはいかない。
意地でも腹に詰め込んでやる。
そんな様子をザベっさんが隣からじー、と見つめている(席を指定された)。
貴方は食べんの?
「モグモグ…。
あの、なんでそんなガン見してくるの?」
「おかまいなく」
「いやおかまうよ…。
そんなに見られてると食べづらいんですけど」
彼女は武闘会から帰ってきてからどうも様子がおかしい。
一緒の空間に居てもいなくても常に視線を浴びている気がする。
「レイト様はいつも美味しそうにお食べになるのですね」
「え?」
もしかして俺の食べ方が何かまずかったのか?
ナイフとフォークの使い方は間違ってないと思うけど…。
まさか貴族流の食べ方をしてないから怒ってた感じ!?
「…ご、ゴメン。
もう少し上品に食べないとだよね…」
「…?レイト様はいつも綺麗に召し上がってくださっていますが…」
あれ、違うのか?
ザベっさんはサラダを取り寄せると、何故か俺の方へ寄越してきた。
そろそろ腹きついんですが。
「その…、私のお料理をたくさん召し上がっている貴方様が……」
「ザベっさん?」
珍しく彼女が言い淀んでいる。
すると、同じく俺の隣の席にいるナディアさんがドン!と、目の前にこんがり焼いたフライドチキンを差し出してきた。
「マッ、マミヤ殿!
これは私が調理した物なんだが…。
良かったら食べてくれないか…?」
えええ!?
うぷ…。美味そうではあるけど…。
さすがにもう入らないぞ。
「え、えっと…俺そろそろお腹いっぱいなんですけど…」
「今日は自信作なんだ!
テオ殿がぜひ使用してくれと、『鷲獅子』の素材を提供してくれたんだ」
グリフォン!?
え、これ昨日の鷲獅子のフライドチキンなのか!
どんな味がするんだろう…。
「い、いただきます…え、うまぁっ!?」
「そうだろう!?
貴公に食べさせたかったんだっ!」
サクッとした衣の食感と、荒々しく歯応えのある鶏肉とのエネルギッシュなハーモニー…。
グリフォンってめっちゃ美味いんだな!!
再び湧きだした食欲に身を委ねてバクバク食べていると、ザベっさんから少し低い声音で呼ばれた。
「……レイト様」
「うん?」
「あーん」
「モゴッ!!?」
「あっ!?何をするエリザベス殿!」
口にいきなりサラダを突っ込まれた!!
しかも大量に!く、苦し……。
「……マミヤ殿、あ、あーん…」
「ンン!?」
ナディアさんもあーんしてきた!?
あれ…、前に同じ体験をしたような…?
記憶を辿る前に視界が蒼く歪んだ。
ブン!
「…まったく、油断ならない女どもめ。
大丈夫か零人?」
「ゴクン…。ぷはぁ…あ、ありがと」
反対側の席に居たルカが、彼女とフレイの席の間に転移させてくれたようだ。
た、助かった…。
「…あーん」
助かってなかった。
「レ、レイト!
ホラ、こっちも美味しいわよ?あ、あーん…」
しかも増えた。
どうして食事ひとつするだけでこんな苦しい目に合わなきゃいけないんだ…。
別の席に居るジオンが苦しむ俺を見て愉快に笑い出した。
あのノッポ野郎め…。
「ハハハハ!いつぞやか見た光景だ!
なぁ、テオ。レイト殿はこのように女難を…」
「……う…うぐっ……うう……」
「テオ!?」
「「「!?」」」
テオが泣いてる!?
え、どうした!?
「テオさん!?まさか喉に詰まりましたか!?」
「ニャッ!?た、大変ニャ!!
シ、シトロンちゃん!」
「落ち着け!
今吐き出させてやる」
「…い、いや違う!
みんな…すまない、食事中に…」
テオはゴシゴシと涙を袖で拭って、ふーっと、息を大きく吐いた。
よ、良かった…、マジで焦ったぜ。
「ならなんで今ビービー泣いてたんだァ?
理由を聞かせてくれや」
「リック!貴方は黙ってなさい!」
「ああいや、良いんだ。
別に大したことじゃない…」
彼が落ち着くまで自然と皆の箸が止まった。
するとテオは少し恥ずかしそうに理由を教えてくれた。
「じ、実は、昔から賑やかな食卓に憧れて…。
こんな大人数でする食事…初めてなんだ。
だから…つい、感極まってしまって…」
「テオ…」
「テオさん…」
テオの切ないその言葉に、しんみりしたムードが客間を包み込んだ。
…そういえば、テオは幼くして親を亡くしたと言ってたから、ずっとひとりぼっちで食事を…
………………………………………………………
ブン!
「レイ…うおっ!?」
「レイト殿!?」
「レイトさん!?なにを…」
「……う、うう…っ…!!」
食事中に行儀が悪いのは百も承知だが、俺はテオの元に転移した。
そして…力いっぱい彼を抱き締めた。
「グスッ…!
俺ぇ…ときどきここに遊び来っからさ…。
そん時一緒にメシ行こうな…!
なんだったら俺の屋敷にも来てくれ!
歓迎…するから…っ!う、うああああん!!」
「……お、おい!?」
ダメでした……。
テオの涙、もらっちゃった…。
みんな居る場なのにおもっくそ大泣きしてしまった。
「はあ…、マスカット。
悪いがそのままにしておいてくれ。
数分経てば元に戻るはずだ」
「わ、分かった…。
泣いていたのは俺なのに、変なヤツだな…」
「ニャハハ、レイト君はたまにこうなるニャ」
「ふむ…。
我輩があとで感情のコントロールの術を彼に教えてやるとしようか」
テオは抱きついた俺の背中をさすってくれた。
…途中シルヴィアと目が合った時、ものすごく怖い目をしていたような気がするけど、きっと俺の思い違いだ。
俺だけ既にカジノで少し食べていたので、あまりお腹は空いていなかったけど、貴重なザベっさんの手料理を逃すわけにはいかない。
意地でも腹に詰め込んでやる。
そんな様子をザベっさんが隣からじー、と見つめている(席を指定された)。
貴方は食べんの?
「モグモグ…。
あの、なんでそんなガン見してくるの?」
「おかまいなく」
「いやおかまうよ…。
そんなに見られてると食べづらいんですけど」
彼女は武闘会から帰ってきてからどうも様子がおかしい。
一緒の空間に居てもいなくても常に視線を浴びている気がする。
「レイト様はいつも美味しそうにお食べになるのですね」
「え?」
もしかして俺の食べ方が何かまずかったのか?
ナイフとフォークの使い方は間違ってないと思うけど…。
まさか貴族流の食べ方をしてないから怒ってた感じ!?
「…ご、ゴメン。
もう少し上品に食べないとだよね…」
「…?レイト様はいつも綺麗に召し上がってくださっていますが…」
あれ、違うのか?
ザベっさんはサラダを取り寄せると、何故か俺の方へ寄越してきた。
そろそろ腹きついんですが。
「その…、私のお料理をたくさん召し上がっている貴方様が……」
「ザベっさん?」
珍しく彼女が言い淀んでいる。
すると、同じく俺の隣の席にいるナディアさんがドン!と、目の前にこんがり焼いたフライドチキンを差し出してきた。
「マッ、マミヤ殿!
これは私が調理した物なんだが…。
良かったら食べてくれないか…?」
えええ!?
うぷ…。美味そうではあるけど…。
さすがにもう入らないぞ。
「え、えっと…俺そろそろお腹いっぱいなんですけど…」
「今日は自信作なんだ!
テオ殿がぜひ使用してくれと、『鷲獅子』の素材を提供してくれたんだ」
グリフォン!?
え、これ昨日の鷲獅子のフライドチキンなのか!
どんな味がするんだろう…。
「い、いただきます…え、うまぁっ!?」
「そうだろう!?
貴公に食べさせたかったんだっ!」
サクッとした衣の食感と、荒々しく歯応えのある鶏肉とのエネルギッシュなハーモニー…。
グリフォンってめっちゃ美味いんだな!!
再び湧きだした食欲に身を委ねてバクバク食べていると、ザベっさんから少し低い声音で呼ばれた。
「……レイト様」
「うん?」
「あーん」
「モゴッ!!?」
「あっ!?何をするエリザベス殿!」
口にいきなりサラダを突っ込まれた!!
しかも大量に!く、苦し……。
「……マミヤ殿、あ、あーん…」
「ンン!?」
ナディアさんもあーんしてきた!?
あれ…、前に同じ体験をしたような…?
記憶を辿る前に視界が蒼く歪んだ。
ブン!
「…まったく、油断ならない女どもめ。
大丈夫か零人?」
「ゴクン…。ぷはぁ…あ、ありがと」
反対側の席に居たルカが、彼女とフレイの席の間に転移させてくれたようだ。
た、助かった…。
「…あーん」
助かってなかった。
「レ、レイト!
ホラ、こっちも美味しいわよ?あ、あーん…」
しかも増えた。
どうして食事ひとつするだけでこんな苦しい目に合わなきゃいけないんだ…。
別の席に居るジオンが苦しむ俺を見て愉快に笑い出した。
あのノッポ野郎め…。
「ハハハハ!いつぞやか見た光景だ!
なぁ、テオ。レイト殿はこのように女難を…」
「……う…うぐっ……うう……」
「テオ!?」
「「「!?」」」
テオが泣いてる!?
え、どうした!?
「テオさん!?まさか喉に詰まりましたか!?」
「ニャッ!?た、大変ニャ!!
シ、シトロンちゃん!」
「落ち着け!
今吐き出させてやる」
「…い、いや違う!
みんな…すまない、食事中に…」
テオはゴシゴシと涙を袖で拭って、ふーっと、息を大きく吐いた。
よ、良かった…、マジで焦ったぜ。
「ならなんで今ビービー泣いてたんだァ?
理由を聞かせてくれや」
「リック!貴方は黙ってなさい!」
「ああいや、良いんだ。
別に大したことじゃない…」
彼が落ち着くまで自然と皆の箸が止まった。
するとテオは少し恥ずかしそうに理由を教えてくれた。
「じ、実は、昔から賑やかな食卓に憧れて…。
こんな大人数でする食事…初めてなんだ。
だから…つい、感極まってしまって…」
「テオ…」
「テオさん…」
テオの切ないその言葉に、しんみりしたムードが客間を包み込んだ。
…そういえば、テオは幼くして親を亡くしたと言ってたから、ずっとひとりぼっちで食事を…
………………………………………………………
ブン!
「レイ…うおっ!?」
「レイト殿!?」
「レイトさん!?なにを…」
「……う、うう…っ…!!」
食事中に行儀が悪いのは百も承知だが、俺はテオの元に転移した。
そして…力いっぱい彼を抱き締めた。
「グスッ…!
俺ぇ…ときどきここに遊び来っからさ…。
そん時一緒にメシ行こうな…!
なんだったら俺の屋敷にも来てくれ!
歓迎…するから…っ!う、うああああん!!」
「……お、おい!?」
ダメでした……。
テオの涙、もらっちゃった…。
みんな居る場なのにおもっくそ大泣きしてしまった。
「はあ…、マスカット。
悪いがそのままにしておいてくれ。
数分経てば元に戻るはずだ」
「わ、分かった…。
泣いていたのは俺なのに、変なヤツだな…」
「ニャハハ、レイト君はたまにこうなるニャ」
「ふむ…。
我輩があとで感情のコントロールの術を彼に教えてやるとしようか」
テオは抱きついた俺の背中をさすってくれた。
…途中シルヴィアと目が合った時、ものすごく怖い目をしていたような気がするけど、きっと俺の思い違いだ。
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