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第75話:プロポーズ

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「「「おお~!!!」」」


突然周りから歓声が上がった!?
え、え!?なんで!?


「え?なんで皆そんなに騒いでいるのよ?
指輪を嵌めただけじゃない…?」


フレイも俺と同じで皆の反応に戸惑っている
俺、何か変なことしたかな?


「ま、まさかこんな朝っぱらから恋愛演劇のようなワンシーンを見ることになるとは…!
恐れ入ったぞレイト殿!」

「ああ!こいつァ傑作だぜ!
やるじゃねェか黒毛!」

「貴方にそんな度胸があるとは私も思いませんでしたよ!
ですが指輪を渡すシチュエーションにしては、少々色気が足りないんじゃないですか?」

「たしかこれは人族の風習…だったか?
ふむ…、我輩のような魔物には到底理解できん行動だ」

「オズおじさんも街の演劇を観に行ってみたらどうかニャ?
人間はおもしろい生き物ニャ」


???

みんな何を言ってるのか全然分かんない
特にシルヴィアの言った『色気』…?
なんでただ指輪預けるのに色気なんか…


「レイト様」

「ん?…って、どうしたザベっさん!?
顔めっちゃ赤くねぇ!?」


表情はいつも通り無表情だが、まるで長風呂したような茹だった肌色になってしまっている
こんなザベっさん見たことない…


「貴方様のお気持ちには…
ゴメンなさい、応えることはできません。
なので申し訳ありませんが…
これはお返しいたしますね」

「ええっ!?」

「「「ああ~…」」」


ザベっさんは薬指から指輪を外して、再び俺の手に握らせた
そしてなぜか、みんなの反応がとても残念がって…いや俺を哀れんでいる?

まさか返却されるとは…
まぁたしかに責任重大だし仕方ないか

…って、あれ?
そういえばまだ俺、彼女に指輪の説明してないような…?

…………………………………………………


「あああああああああ!!!!」

「…!?
い、いかがなされましたか?」


………やっちまった………

俺、ザベっさんにプロポーズしちゃった…
そして、秒でフラれた………

え、なにこれ…?

なんで俺、こんな落ち込んでんの?

ただの伝達ミスじゃないか…
別に俺がショックを受けることはない

そうだよ、ほら…彼女に改めて事情を話せば、良い笑い話として皆に消化されるだけだろ?

そう、笑い話に…

……………………………

ポタ…ポタ…

「レイト様!?
あ…その、私…どうすれば…」


あれ…?
なんでザベっさんの顔がボヤけて見えんだろ…
おかしいな…


「零人!ああまったく!
ホントに君はすぐ泣く男だな!?」

「みんな聞いてくれ!
マミヤ殿の持ってる指輪なんだが…」


☆☆☆


「ギャハハハハハ!!!
黒毛ェ!おめェマジで最高だぜ!!
こんなミラクル起こせる奴、他に居ねェよ!」

「そ、そうだったのか…
しかし、これは不幸というより単なるレイト殿のミスだな。
あまり気にしなくてもいいんじゃないか?」

「…はぁ、白けました。
せっかく貴方のこと、ちょっと見直したのに」

「なーんだ。つまんないニャー」

「ねぇ!だからなんで皆さっきからテンション上がったり下がったりしてるのよ!?
なんか私だけ疎外感あるんですけど!」


俺が号泣してる間に、ナディアさんが謁見の事情を皆に話してくれた

リックは大爆笑してくれてるが、それ以外はなんとも微妙な反応だ

しばらくザベっさんの顔が見れないかも…
つうか、『理の国ゼクス』に帰りたい
マミヤ邸の自室に引きこもりたい

モネ…俺、早速つまずいちゃったよ…
せっかく『おまじない』してくれたのにゴメンよ…

俯いて溢れる涙にハンカチを当てていると、見覚えのある黒地のスカートが目に映った


「レイト様、お顔を上げてください」

「へ…?」


ザベっさん…

あ、今度はさっきと逆だ
さっきみたいな肌色じゃなくなって、表情も微かな微笑みになってる…


「事情は分かりました。
私でよければ指輪をお預かりしましょう。
戦乙女ヴァルキュリア』の名にかけて必ず失くさないと誓います」

「あ…そ、そっか…
うん、じゃあ…お願いするね」


俺はもう一度ザベっさんに指輪を渡した

うん…これで指輪の安全は保証されたし、めでたしめでたし…
…って、思えるほど俺は単純じゃない!!

どうすんだよこれ!?

フッた女とフラれた男が一緒の空間にいる状況ほど、居心地の悪さったらない!

しかも、最終的にはザベっさんの故郷が目的地だから、この人とはこれからまだまだ付き合う必要があるんだよ!?

ああ、数分だけ時間を巻き戻したい……!!


「零人、ほら、いつまでもメソメソするな。
君の小説の主人公はフラれてもすぐ立ち直ったじゃないか」

「あんな強メンタルじゃねぇよ俺は!
はぁ、もう…マジで消えたい…」

「これは余程のダメージだな…
まあ、私がマミヤ殿の立場だったら同じ気持ちになるとは思うが…」


ルカとナディアさんは背中をさすってくれた
優しくされると余計みじめだからやめて!


「レイト様。それにお二方。
昨日の我々の行動と、本日の予定をお伝えさせていただきます」


ザベっさんは何食わぬ顔でペラペラと丁寧かつ分かりやすく、説明してくれた


☆☆☆


どうやら昨日フレイ達はギルドには行かなかったようで、シルヴィア達の手伝いをしたそうだ

非合法な賭け事で利益を生んでいる『裏賭博場ブラック・カジノ』と呼ばれる場所の捜索に時間を充てて、ジオンのなじみの『テオ・マスカット』という『人狼ウェアウルフ』の亜人族の力も借りたが、見つからなかったらしい

なんでも『裏市場ブラック・マーケット』が壊滅した影響で、そちらの方にも警戒されたらしく、会場の場所が変わったんだとか

そんで今日の予定は昨日のリベンジ…とのこと


「そっか…
そうなると全員冒険業は一旦やめて、そのカジノを探すってことだな?」

「いや、我輩だけは王都の外へ行き、『サバト』に関する情報を探っている。
開催場所を突き止めなければならないからな」


おっさん1人だけで?
大丈夫なのだろうか?


「フッ…もしや不安か?
安心しろ、この間のような不覚はもうとらん。
若い貴殿らは貴殿らで行動するといい」

「…ったくよー。
ホントならオレもそっちに行きてェんだが、オズのオヤジと栗メガネが許してくれねェんだ」


リックが不満気におっさんの腕を叩いた
闘えないクエストは避けてたしな
たしかにリックなら物足りないだろう


「私からの提案なんだけどいい?」

「なに?」


フレイが手を挙げる

そういえばさっきコイツやたら騒いでて、理由を聞いたら、なんと異性に指輪を渡す行為の意味を分かってなかったことが判明した

前に恋愛に興味ないって言ってたし、それなら知らなくても当然だな


「今日は全員居るし、一度ギルドに顔を出してみましょうよ。
ほら…まだ私たちこないだのクエスト報酬貰ってないでしょ?」

「ああっ!そうだそうだ!
すっかり忘れてたぜ!」


俺としたことが…
そもそも路銀代稼ぐためにやってるのに、報酬受け取らなかったらタダ働きじゃないか


「そうですね…
もしかすると、冒険者の方が『裏賭博場ブラック・カジノ』の情報を持ってる人が居るかもしれませんね」

「あたしもそう思うニャ!
実際、『理の国ゼクス』のカジノでも冒険者のお客さんは結構いた気がするニャ」

「セリーヌ殿?
なぜ貴公がそんなことを知っている?
まさか…」

「ご、合法カジノニャ!
ちゃんと国に認められている所ニャ!」


おや、セリーヌって賭け事好きなのかな?
意外な趣味だ


「よし!
それじゃあ目的地も決まったことだし、出発するか」


今はできる限り何かに集中したい気持ちだ
少しでもさっきの『痴態』の記憶が薄れますように…







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