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第62話:モネのヤキモキ

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ルカの推理は的を射ている
しかしまだ疑問は残っているな


「そいつらが魔族たちにとってキーマンなのは分かったけど、なんであんな必死に探してるんだろ?」

「それに関してはまだ分からんが…
ガイアが『復活の邪魔』という言葉を口にした以上、魔王と無関係ではないだろう」

「我輩も同意する。
そもそも『はぐれ』ではない魔族が外国に入国している時点で異常と見るべきだ」

「そうね。
たまにガルドに魔族の討伐の依頼が入ってきたりするけど、私が今まで相手したのは『はぐれ』だけだったわ」


うーんと、俺らの空間は重苦しい沈黙に支配される
思った以上にこの国はヤバい状況らしい

どうしようか…を帰国させるべきかな

それとエネルギーの消費を覚悟して一旦『理の国ゼクス』に戻って王様に報告しようかとも考えていると、ドン!と背中に誰かもたれかかってきた


「まみやどの~!
なぜそんな辛気臭い顔をしているのだー!」

「は!?ナディアさん!?
うわ、酒くっせぇ…」


絡んできたのはベロンベロンに酔っ払ったナディアさんだった
彼女の赤髪と同じくらい顔が真っ赤だ


「ちょっと、ナディア大丈夫!?
あんたがそこまでなるなんて…」


心配したフレイがナディアさんの肩を支えた
まさかさっきの飲み比べで…


「ニャア…
まさかあんな張り合うと思わなくて…
ゴメンなのニャ」


セリーヌが申し訳なさそうにこちらに合流してきた
そっか、勝者はセリーヌだったか
後ろを見ると他にも酔いつぶれた男どもが居る
こんな小さな子に負けられない!とでも思ったんだろうな


「よぉ~し、まみやどの!
元気が出るよーに、私がまたキスをしてやろう!」

「あっ!?ちょっ!」

ピシィ!!

その言葉に場の空気が一瞬で凍った
ナディアさんを支えてるフレイの目が一変する
ギギギとフレイの首がこちらへ向いた

ひっ!?


「…どういうことレイト?
キスって…何のこと?」

「い、いやあれは事故っていうか、偶然というか…」

「何を言っている?
2回目は明らかに故意だっただろう」

「ルカさん!?
なんで余計なこと言うの!?」


なんでルカっていつもこういう時、俺の味方してくれないの!?
俺がなんかした!?


「へぇ~…
2回もしたんたんだ…
私とルカはまだ1回なのに…
ねぇ、ルカ?」


やべ、フレイの目から光が失われてる…
逃げないと殺されるやつだ!
よし、座標を…


「えっ…?
あ、ああ…そうだな…」

「は!?何で歯切れ悪いのよ!
まさかアンタ…!」

「い、いや!
あれは…つい、その…」

「信じらんない!
やっぱりアンタ抜けがけしてたんじゃない!
ふざけんじゃないわよ!!」

ドサッ!

担いでいたナディアさんを投げ捨て、ルカに掴み掛かった!
ああっ!ケンカだ!

びろーん!

「ふがが…!!
ふはるはー(シュバルツァー)、ひはは(貴様)…!」

「はがっ!?
ほうほうお(上等よ)!!」

「はははー!いいぞいいぞー!
もっとやれー!」

「負けんな蒼の姉ちゃん!」


フレイとルカは互いに顔を引っ張り合い、変顔選手権を繰り広げていた
いつぞやか見た光景だ…


「あらら…
止めなくていいのマミヤ君?」


さすがにこの大乱闘では占いを行えなくなったのか、モネがこちらに戻ってきた
止める?そんなことはしない


「……このまま帰るぞ」

「ええっ!?」

ブン!

俺は戸惑うモネの手を握り、転移テレポートした


☆モネ・ラミレスsides☆


いきなりマミヤ君に手を握られたと思ったら転移テレポートまでされた!
ビックリさせないでよ!


「ちょっとマミヤく…
あれ、ここって『マルロの宿』…
えっ!?王都まで戻ってきたの!?」

「ああ。
ちょっとお前に話したいことあってね」


マミヤ君に連れられた所はなんとボクたちが宿泊していたホテルだった!
この部屋は…こないだルカくんとお喋りした…マミヤ君の部屋だ


「ちょっと待ってくれ。
いま電気…じゃない、明かり点けるから」


マミヤ君はベッドに設置されている『点灯アルム』の魔道具アーティファクトをゴソゴソしている
どうやら暗くてよく見えないみたい


「いいよ…マミヤ君、そのままで。
それで話って?」

「あー…そのなんて言ったらいいかな…」


マミヤ君はしどろもどろになりながら言葉を探している
ボクはじっと、彼の紡ぐ言葉を待った

灯りのない薄暗い部屋に男女が2人…
窓に目をやると外は既に日が落ちており、白い月の光だけがボクたちを幻想的に照らしている

あ、あれ?
何気にすごい状況になってないコレ?


「モネ…
いきなりでビックリするかもだけどさ…」

「へっ!?う、うん…」


マミヤ君は静寂を破り距離を詰めて…
両肩に手を置いてきた!?

えっ…え…コレ、もしかして告白…?

ボクより少し背が大きいマミヤ君は首を若干下げているのに対し、ボクはちょっとだけ見上げている

いつになく彼の黒い瞳が輝いて見える
吸い込まれそうなその瞳が、ボクの心臓に杭を打った

ヤバいヤバい!ボクいま変な顔してるかも…


「あのな」

「あっ…ダメっ!待って!」

ドン!

「えっ!?」


耐え切れずにマミヤ君を突き飛ばしてしまった
マミヤ君はベッドに尻もちをついた
ああ、何しちゃってるんだろう…ボク…


「「…………」」


お互いに気まずくなり口を閉じてしまう
あ、謝らないと…!


「ご、ごめんマミヤ君!
その…まだ心の準備が…」

「は?心の…?
よく分かんないけど…
ヨイショ…今日は出直すことにするよ」

「えっ…!?あの…マミヤ君?」


マミヤ君は立ち上がると、右手に蒼の魔力マナを集め始めた

えっまさか…


「どうせなら一緒にいる時の方が良いしな…
それじゃモネ、今日はお疲れさん。
おやすみ」

「あっ!?ちょ…」

ブン!

マミヤ君はこれ以上問答はせずにどこかへ行ってしまった

や、やっちゃった…
彼を傷つけてしまったかもしれない…

部屋に設置された化粧台ドレッサーの大きな鏡には、なんとも情けない顔をしている女がポツンと突っ立っていた





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