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第53話:3人の発表
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「コホン、それじゃあ改めて…
私はフレデリカ・シュバルツァーよ」
「あたしは言ったけど、もう1回自己紹介ニャ!
セリーヌ・モービルですニャ!」
「リック・ランボルト。
よろしくな『霊森人』の姉ちゃん」
泣きじゃくりながら俺を絞め殺そうとしたフレイを宥めたあと、酒場のテーブルに座ってザベっさんの紹介をした
といっても、セリーヌがある程度こちらのことを話してくれたみたいだけどね
「エリザベス・センチュリーと申します。
既にモービル様よりお聞きになられてるかとは思いますが、この度、ドノヴァン・ヴィレッジまでの案内を不肖このエリザベスが務めさせて頂きます。
皆さま、よろしくお願い致します」
ペコリ
いつもの優雅なお辞儀をすると席についた
うーん…やっぱりこの所作、つい見入ってしまうな
「わぁ…すごく綺麗。
まるでお人形みたいね…」
「…フレイちゃん。
それ失礼じゃないかニャ?」
「あ!ご、ゴメンなさい!
私そんなつもりじゃ…」
「いえ、お気になさらず。よく言われますので」
ザベっさんは相変わらず無表情のまま淡々と答えた
多分、フレイは皮肉的な意味で言ったんじゃないけど、たしかに捉え方によっては失礼かもな
「そんじゃ、早速魔王について情報交換すっか。
えーと、セリーヌは冒険者でフレイが傭兵団、リックが盗賊団のとこからそれぞれ張ってたんだよな?」
「ニャ!まずはあたしから発表するニャ!」
発表て
自由研究じゃないんだから
「あたしは臨時パーティーに参加して色々クエストをこなしてきたニャ。
でも最近、魔物の討伐クエストがやたら多いニャ」
「たしかに周りの冒険者どもも、返り血浴びてるヤツが結構いるなァ」
リックがキョロキョロと、その辺を歩いている冒険者を見て言った
たしかに、討伐クエストのあとは身体汚れるしな
「何回か王都の外のエリアに行って、魔物と闘ったんだけど…
アイツら、妙に統率のとれた動きをしてた気がするニャ」
「『統率』?
誰かが指揮をとっているということか?」
「ニャ。ルカちゃんなら分かると思うけど、まるで『吸血鬼』のアンデッドみたいな戦法だったニャ」
「「「!!」」」
俺を含めた、あん時のパーティーメンバーに戦慄が走った
あんな波状攻撃みたいな戦法だったの!?
「イザベラ…!あの女が近くに居るのか?」
「んーん。
でも、『小鬼』とか普段言葉をあまり使わない魔物もめっちゃ喋ってたニャ。
…何言ってるか全然分からなかったけど」
「そういや、オットー町でもイザベラがどうのこうの言ってた魔族がいたよな」
「ああ。ヤツがどこに潜んでるかは知らんが、見つけたら今度こそ確実に殺してやる」
ルカの語調が少し荒々しくなった
相当あいつを恨んでるようだ
ルカが人間に変身するきっかけになった奴だ
俺も食べられそうになったし、あんま良い感情はない
「うん、こんなところかニャ。
はい、あたしの発表終わり!
ご清聴、ありがとうございましたニャ!」
先ほどのシリアスムードを吹き飛ばすかのように、セリーヌはぺこりとお辞儀をした
…もしかしてザベっさんのモノマネかな?
思わず顔が綻んでしまった
「んじゃ次はオレの番だなァ。
つっても、お前らほど有益な情報は得られなかったけどよ。
まず、こいつを見てくれや」
ポリポリと頭を掻きながら、リックはテーブルに皮の小袋を置いた
中を覗くと、紫色の粉が入っていた
「何コレ?」
「こいつはなァ『シード』つって、最近盗賊団の間でよく取引されてるヤクだ。
摂取した人間は快楽と引き換えに、たちまち魔力が無くなって、最後には廃人になるらしいぜ」
「なんつーもん持ってきてんだ!」
思わず袋から後ずさってしまった
ヤク!?
こんな物騒なもの出回ってるの!?
「オレは最初チンピラを装って、王都で幅を利かせてる盗賊団『トリモ団』に入団を希望したんだ。
最初は門前払いされちまったが、アジトの近くに居座り続けたらすぐ折れてなァ。
ヘッ、チョロいもんだったぜ」
こ、こいつわざわざ入団までしたのか!?
ちょっとやり過ぎじゃあ…
ガシッ!
得意げに話すリックの肩をナディアさんが掴んだ
…何故か笑顔で
「違法薬物の持参だけでは飽き足らず、反社会勢力への加入を警備隊の私の前で堂々と報告するとは…
リック、そんなに牢獄で暮らしたいのか?」
ゴゴゴゴ…!
おお…リックの奴、これ以上ないくらい『やっちまった』って表情だな
「ま、待ってくれ!!
違うんだ炎獣の姐さん!
あくまで入ったフリだ!
それにこのヤクも魔王と無関係じゃねェから、奴らからくすねてきただけなんだ!
頼む、信じてくれェ!」
「『くすねた』だと!?窃盗罪も追加だ!!」
「アッハハハハ!!
リック君が墓穴掘ってる!」
必死に懇願するリックを見て、モネはツボったようだ
あ、フレイとセリーヌもニヤけてる
俺はナディアさんの顔がおっかなくてとてもじゃないけど笑えない…
話進まなさそうだし、助け舟出すか
「ま、まあまあナディアさん…
ここは亜人の国ですし、これくらい勘弁してあげましょうよ…」
「むぅ…仕方ないな。今回だけだぞ」
「ほっ…助かったぜ黒毛…
で、話の続きなんだけどよ。
この『シード』は主に裏市場で回されていてなァ。
元々の出どころを調べたんだが、どうもキナ臭い所から流れてきたみてェなんだ」
「キナ臭い?どこ?」
「こっから南にある国、『聖の国』方面から流れてきたモンだとよ」
「「「!」」」
『聖の国』!?
それってシルヴィアの故郷の…
「しかもそれだけじゃねェ。
どうやらそれを流した野郎は魔族らしいぜ」
「な、なんだと!?本当なのかリック!」
「ああ。
表向きは『はぐれ』だが、わざわざ高額の金を用意して大量のヤクをばらまいたらしいぜ」
な、なんてこった…
この街でこんなアンダーグラウンドな事件も起こってるなんて
「なるほど…
ただの『はぐれ』にそこまでの行動を起こせるとは思えません。
何者かの後ろ盾がなければ、到底成し得ないと推測します」
「ええ。『はぐれ』の魔族って何考えてるか分からないけど、計画的に動いてるとしたら、なおさら怪しいわね」
エルフ女子二人は納得したかのように頷いた
…ったく、何が有益な情報じゃないだよ
おもっきし重要な情報じゃねぇか
「ま、オレが調べたのはこんなとこだ。
じゃあトリは任せたぜ、デカキン」
「ええ、分かったわ」
みんなの視線がフレイに注いだ
オホンと咳払いをしたあと、彼女の『発表』が始まった
「私もリックじゃないけど、この王都で活動している傭兵団に『ガルドの牙』の応援として参加して、転々としていたわ。
王都から離れるわけにはいかなかったから、近場の任務限定だけどね」
「フッ、君らしいな。
どんなミッションをこなしたのだ?」
「セリーヌと同じよ。
ほとんど魔物の討伐が任務だったわ。
でも、戦法に関してはそこまでではなかったわね」
統率のとれていない魔物か
それなら楽勝だ
「ただ、討伐対象が厄介でね。
主にドラゴンが多かったわ」
訂正。全然楽勝じゃないわ
「ふむ、それもまた奇妙だな。
ドラゴン族は馴れ合って暮らすことを嫌う魔物ゆえに、同じエリアに連続して出現することは、限りなく少ないはずだが…」
ナディアさんが手を顎に当てて思案をしている
俺は耳に手を当てて聞かないようにしていたが、ザベっさんに無言で手を下ろされてしまった
「それである時、一体のドラゴンがたまたま言葉を喋れるヤツだったから、そのあたりの事情を聞いてみたのよ。
そしたら、近々この国の何処かで『宴』が起こるって教えてくれたわ」
「「「なに!?」」」
俺以外は驚愕の表情を浮かべていた
へ?さばと??
「すまないシュバルツァー。
その『宴』とやらを教えてくれないか?
私と…おそらく零人も初耳だ」
さすが相棒
よく俺のこと分かってらっしゃる
「『宴』っていうのは、簡単に言うと『魔物同士の武闘会』ね。
異なる種族の魔物が一堂に会して力比べをする…
大体はドラゴンが勝っちゃうんだけどね。
たまに1年のうち何回かはどこかで起こってるのよ」
「なんだその台風みたいなイベント!?
んな物騒なことこれから起こるの!?」
「ええ。だから、魔王を追ってるこのタイミングで起きるってのがどうも怪しいのよね」
え、てことはなに…?
まさか、ドラゴンがわんさかこの国にやって来る!?
最悪だ!!!
「ニャニャニャ!レイト君しっかりして!
ものすごい青い顔になってるニャ!」
「そういえば、以前『飛竜』と接敵したことがございましたね。
あの時飛んで行った方向はちょうど王都方面でした。
もしかすると、おそらくこの近くに…」
「いやぁぁぁ!!!
なんでそんな事言うのザベっさん!?
アンタの事嫌いになるよ!?」
「フフ…申し訳ございません、レイト様。
私、何故か貴方様の困り顔を気に入ってしまいました」
「ドSが!そういうのは流行んねんだよ!」
手を口に当てて楽しそうなザベっさん
うん、たった今俺の好感度めちゃくちゃ下がったから
「あちゃあ…ザベ姉も気づいちゃったかー。
あんまりボクもウカウカしてられないかな…」
「ねぇ、ルカ。なんで『増えて』るのよ?
どういうことよ」
「落ち着け…
まだそうと決めるには決定打に欠ける。
しばらく様子をみよう」
ボソボソと小さい声で3人が何か俺のこと言ってる
なんだよ、話すことあるなら聞こえる声で言えよな
パンパンとナディアさんが手を叩いた
「みんな、今夜はこのくらいにしておこう。
我々は今朝着いたばかりなのでな。
そろそろ解散して身体を休めよう」
「えー?もう終わり?
せっかく皆揃ったんだし、ご飯でも食べましょうよ」
『皆』って…こいつ誰かを忘れてないか?
「それはシルヴィアとおっさんとジオンが戻ってきてからだな。
とにかく、俺も今日は武器屋の姉ちゃんからぶん殴られたりで疲れたから休ませてもらうぜ」
「『姉ちゃん』…?
ちょっと、アンタまさかエリザベスだけじゃなくて他の女とも…」
『不幸アラーム』起動!
早急に立ち去るべきと推測!
「じゃな!ルカ!あとは頼んだぜ!」
「あ!待ちな…」
ブン!
フレイに殴られる予感がしたので、俺は先に宿場へ『転移』した
私はフレデリカ・シュバルツァーよ」
「あたしは言ったけど、もう1回自己紹介ニャ!
セリーヌ・モービルですニャ!」
「リック・ランボルト。
よろしくな『霊森人』の姉ちゃん」
泣きじゃくりながら俺を絞め殺そうとしたフレイを宥めたあと、酒場のテーブルに座ってザベっさんの紹介をした
といっても、セリーヌがある程度こちらのことを話してくれたみたいだけどね
「エリザベス・センチュリーと申します。
既にモービル様よりお聞きになられてるかとは思いますが、この度、ドノヴァン・ヴィレッジまでの案内を不肖このエリザベスが務めさせて頂きます。
皆さま、よろしくお願い致します」
ペコリ
いつもの優雅なお辞儀をすると席についた
うーん…やっぱりこの所作、つい見入ってしまうな
「わぁ…すごく綺麗。
まるでお人形みたいね…」
「…フレイちゃん。
それ失礼じゃないかニャ?」
「あ!ご、ゴメンなさい!
私そんなつもりじゃ…」
「いえ、お気になさらず。よく言われますので」
ザベっさんは相変わらず無表情のまま淡々と答えた
多分、フレイは皮肉的な意味で言ったんじゃないけど、たしかに捉え方によっては失礼かもな
「そんじゃ、早速魔王について情報交換すっか。
えーと、セリーヌは冒険者でフレイが傭兵団、リックが盗賊団のとこからそれぞれ張ってたんだよな?」
「ニャ!まずはあたしから発表するニャ!」
発表て
自由研究じゃないんだから
「あたしは臨時パーティーに参加して色々クエストをこなしてきたニャ。
でも最近、魔物の討伐クエストがやたら多いニャ」
「たしかに周りの冒険者どもも、返り血浴びてるヤツが結構いるなァ」
リックがキョロキョロと、その辺を歩いている冒険者を見て言った
たしかに、討伐クエストのあとは身体汚れるしな
「何回か王都の外のエリアに行って、魔物と闘ったんだけど…
アイツら、妙に統率のとれた動きをしてた気がするニャ」
「『統率』?
誰かが指揮をとっているということか?」
「ニャ。ルカちゃんなら分かると思うけど、まるで『吸血鬼』のアンデッドみたいな戦法だったニャ」
「「「!!」」」
俺を含めた、あん時のパーティーメンバーに戦慄が走った
あんな波状攻撃みたいな戦法だったの!?
「イザベラ…!あの女が近くに居るのか?」
「んーん。
でも、『小鬼』とか普段言葉をあまり使わない魔物もめっちゃ喋ってたニャ。
…何言ってるか全然分からなかったけど」
「そういや、オットー町でもイザベラがどうのこうの言ってた魔族がいたよな」
「ああ。ヤツがどこに潜んでるかは知らんが、見つけたら今度こそ確実に殺してやる」
ルカの語調が少し荒々しくなった
相当あいつを恨んでるようだ
ルカが人間に変身するきっかけになった奴だ
俺も食べられそうになったし、あんま良い感情はない
「うん、こんなところかニャ。
はい、あたしの発表終わり!
ご清聴、ありがとうございましたニャ!」
先ほどのシリアスムードを吹き飛ばすかのように、セリーヌはぺこりとお辞儀をした
…もしかしてザベっさんのモノマネかな?
思わず顔が綻んでしまった
「んじゃ次はオレの番だなァ。
つっても、お前らほど有益な情報は得られなかったけどよ。
まず、こいつを見てくれや」
ポリポリと頭を掻きながら、リックはテーブルに皮の小袋を置いた
中を覗くと、紫色の粉が入っていた
「何コレ?」
「こいつはなァ『シード』つって、最近盗賊団の間でよく取引されてるヤクだ。
摂取した人間は快楽と引き換えに、たちまち魔力が無くなって、最後には廃人になるらしいぜ」
「なんつーもん持ってきてんだ!」
思わず袋から後ずさってしまった
ヤク!?
こんな物騒なもの出回ってるの!?
「オレは最初チンピラを装って、王都で幅を利かせてる盗賊団『トリモ団』に入団を希望したんだ。
最初は門前払いされちまったが、アジトの近くに居座り続けたらすぐ折れてなァ。
ヘッ、チョロいもんだったぜ」
こ、こいつわざわざ入団までしたのか!?
ちょっとやり過ぎじゃあ…
ガシッ!
得意げに話すリックの肩をナディアさんが掴んだ
…何故か笑顔で
「違法薬物の持参だけでは飽き足らず、反社会勢力への加入を警備隊の私の前で堂々と報告するとは…
リック、そんなに牢獄で暮らしたいのか?」
ゴゴゴゴ…!
おお…リックの奴、これ以上ないくらい『やっちまった』って表情だな
「ま、待ってくれ!!
違うんだ炎獣の姐さん!
あくまで入ったフリだ!
それにこのヤクも魔王と無関係じゃねェから、奴らからくすねてきただけなんだ!
頼む、信じてくれェ!」
「『くすねた』だと!?窃盗罪も追加だ!!」
「アッハハハハ!!
リック君が墓穴掘ってる!」
必死に懇願するリックを見て、モネはツボったようだ
あ、フレイとセリーヌもニヤけてる
俺はナディアさんの顔がおっかなくてとてもじゃないけど笑えない…
話進まなさそうだし、助け舟出すか
「ま、まあまあナディアさん…
ここは亜人の国ですし、これくらい勘弁してあげましょうよ…」
「むぅ…仕方ないな。今回だけだぞ」
「ほっ…助かったぜ黒毛…
で、話の続きなんだけどよ。
この『シード』は主に裏市場で回されていてなァ。
元々の出どころを調べたんだが、どうもキナ臭い所から流れてきたみてェなんだ」
「キナ臭い?どこ?」
「こっから南にある国、『聖の国』方面から流れてきたモンだとよ」
「「「!」」」
『聖の国』!?
それってシルヴィアの故郷の…
「しかもそれだけじゃねェ。
どうやらそれを流した野郎は魔族らしいぜ」
「な、なんだと!?本当なのかリック!」
「ああ。
表向きは『はぐれ』だが、わざわざ高額の金を用意して大量のヤクをばらまいたらしいぜ」
な、なんてこった…
この街でこんなアンダーグラウンドな事件も起こってるなんて
「なるほど…
ただの『はぐれ』にそこまでの行動を起こせるとは思えません。
何者かの後ろ盾がなければ、到底成し得ないと推測します」
「ええ。『はぐれ』の魔族って何考えてるか分からないけど、計画的に動いてるとしたら、なおさら怪しいわね」
エルフ女子二人は納得したかのように頷いた
…ったく、何が有益な情報じゃないだよ
おもっきし重要な情報じゃねぇか
「ま、オレが調べたのはこんなとこだ。
じゃあトリは任せたぜ、デカキン」
「ええ、分かったわ」
みんなの視線がフレイに注いだ
オホンと咳払いをしたあと、彼女の『発表』が始まった
「私もリックじゃないけど、この王都で活動している傭兵団に『ガルドの牙』の応援として参加して、転々としていたわ。
王都から離れるわけにはいかなかったから、近場の任務限定だけどね」
「フッ、君らしいな。
どんなミッションをこなしたのだ?」
「セリーヌと同じよ。
ほとんど魔物の討伐が任務だったわ。
でも、戦法に関してはそこまでではなかったわね」
統率のとれていない魔物か
それなら楽勝だ
「ただ、討伐対象が厄介でね。
主にドラゴンが多かったわ」
訂正。全然楽勝じゃないわ
「ふむ、それもまた奇妙だな。
ドラゴン族は馴れ合って暮らすことを嫌う魔物ゆえに、同じエリアに連続して出現することは、限りなく少ないはずだが…」
ナディアさんが手を顎に当てて思案をしている
俺は耳に手を当てて聞かないようにしていたが、ザベっさんに無言で手を下ろされてしまった
「それである時、一体のドラゴンがたまたま言葉を喋れるヤツだったから、そのあたりの事情を聞いてみたのよ。
そしたら、近々この国の何処かで『宴』が起こるって教えてくれたわ」
「「「なに!?」」」
俺以外は驚愕の表情を浮かべていた
へ?さばと??
「すまないシュバルツァー。
その『宴』とやらを教えてくれないか?
私と…おそらく零人も初耳だ」
さすが相棒
よく俺のこと分かってらっしゃる
「『宴』っていうのは、簡単に言うと『魔物同士の武闘会』ね。
異なる種族の魔物が一堂に会して力比べをする…
大体はドラゴンが勝っちゃうんだけどね。
たまに1年のうち何回かはどこかで起こってるのよ」
「なんだその台風みたいなイベント!?
んな物騒なことこれから起こるの!?」
「ええ。だから、魔王を追ってるこのタイミングで起きるってのがどうも怪しいのよね」
え、てことはなに…?
まさか、ドラゴンがわんさかこの国にやって来る!?
最悪だ!!!
「ニャニャニャ!レイト君しっかりして!
ものすごい青い顔になってるニャ!」
「そういえば、以前『飛竜』と接敵したことがございましたね。
あの時飛んで行った方向はちょうど王都方面でした。
もしかすると、おそらくこの近くに…」
「いやぁぁぁ!!!
なんでそんな事言うのザベっさん!?
アンタの事嫌いになるよ!?」
「フフ…申し訳ございません、レイト様。
私、何故か貴方様の困り顔を気に入ってしまいました」
「ドSが!そういうのは流行んねんだよ!」
手を口に当てて楽しそうなザベっさん
うん、たった今俺の好感度めちゃくちゃ下がったから
「あちゃあ…ザベ姉も気づいちゃったかー。
あんまりボクもウカウカしてられないかな…」
「ねぇ、ルカ。なんで『増えて』るのよ?
どういうことよ」
「落ち着け…
まだそうと決めるには決定打に欠ける。
しばらく様子をみよう」
ボソボソと小さい声で3人が何か俺のこと言ってる
なんだよ、話すことあるなら聞こえる声で言えよな
パンパンとナディアさんが手を叩いた
「みんな、今夜はこのくらいにしておこう。
我々は今朝着いたばかりなのでな。
そろそろ解散して身体を休めよう」
「えー?もう終わり?
せっかく皆揃ったんだし、ご飯でも食べましょうよ」
『皆』って…こいつ誰かを忘れてないか?
「それはシルヴィアとおっさんとジオンが戻ってきてからだな。
とにかく、俺も今日は武器屋の姉ちゃんからぶん殴られたりで疲れたから休ませてもらうぜ」
「『姉ちゃん』…?
ちょっと、アンタまさかエリザベスだけじゃなくて他の女とも…」
『不幸アラーム』起動!
早急に立ち去るべきと推測!
「じゃな!ルカ!あとは頼んだぜ!」
「あ!待ちな…」
ブン!
フレイに殴られる予感がしたので、俺は先に宿場へ『転移』した
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※作者が適当にでっち上げた、完全ご都合主義的世界です。細かいツッコミはご遠慮頂ければ幸いです。もし、目に余るような誤字脱字を発見された際には、コメント欄などで優しく教えてやって下さい。
※検討の結果、「ざまぁ要素あり」タグを追加しました。
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