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第46話:オットー邸爆発事件

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オットー・タウンを出発して数日後、王都までいよいよ目前に来ていた
そして、最後の野宿は見張りをザベっさんにしてもらい、俺はジオンと一緒のテントで寝ていた


「ふぅ、少し長かったけどついにここまで来たな。
どうだったジオン?俺たちとの旅は?」


2人で天井を見上げながら、俺は尋ねてみた
ジオンは首をこちらに向け、目を輝かせながら答えた


「『最高』という言葉以外に見つからないな!
仲間と共に野を超え、山を越え、寝食を共にする…
僕の普段の生活では絶対に味わえない体験さ!」

「そっか。
でも、お前は王都で離脱しちゃうんだよな…
ちょっと寂しくなるぜ」


そう、ジオンの目的は王都ノルンの国王に魔族の襲来のあらましを伝えることにある
つまり、王都での行動が終わると、この男を町に送って別れないとならない
目を伏せ気味に言うと、ジオンは豪快に笑い飛ばした


「はっはっは!何を弱気になっている?
君の『不幸』は僕の『幸運』と対極にあると感じている。
磁石と同じさ。
君が助けを必要とするならば、どこに居ようと必ず飛んで行き、君にくっ付いてやるぞ~!」

ドン!

「どわっ!?てめっ、何すんだ!」


ジオンは寝袋に入ったまま、俺の方へゴロゴロと転がってぶつかって来やがった
数日間共に過ごして分かったけど、ナディアさんのような毅然とした貴族の雰囲気は感じさせず、とにかく人懐っこい

こんな領主なら確かに…領民に慕われるな


「お前が町の皆から好かれている理由が分かる気がするよ。
その性格なら、嫌いになる奴なんていないだろうよ」

「ふふ、それを言うなら君もだろう?
エリザベスがあれほど活き活きしているのは初めてだ」

「あ?ザベっさんが?」


あまりそんな風には見えないけど…
いつもスン…ってしてるし


「ああ。彼女は『戦乙女ヴァルキュリア』に配属された当初から、感情を表にはあまり出さなかったんだ。
けど、君たちがやって来てからの彼女は…実に楽しそうだ」

「そう?俺にはあまりよく分かんないけど…」

「ふふふ、罪作りな男だな、君は」


ジオンはそう言って、目を閉じた
このヤロー、ほざくだけほざいて自分は寝るつもりか
そうはさせない


「お前とモネの方はどうなんだよ?
たしか家、爆発させたんだろ?」

「その話か…聞きたいのか?」

「たりめーだ」

「フ、了解だ」


☆ジオン・オットーsides☆


「坊っちゃま、お茶が入りましたよ」

「ありがとう、エリザベス。
よし、少し一息つくとしよう」


筆を置き、グググと背伸びをする

はぁ、書類仕事は好きじゃない

すぐにでも町の視察に繰り出して子供たちと過ごしたいところだが、目の前にいる僕のお目付け役が許してくれないだろう

まったく…父上も心配性にも程がある

以前、町の近くに根城を構えた山賊が居ると報告があったので、僕は単身で蹴散らしに向かった

上に立つ者、下で暮らす者の日常は護らねばならないからな
それに『人は逆境に身を置いてこそ輝く』と、が教えてくれた

しかし、またしても運命のイタズラによって『運悪く』、僕はクエストの最中だった『冒険王プレミア』の冒険者と出会ってしまう

彼に事情を話すと、『任せろ』のひと言と共に、あっという間に山賊の隠れ家を制圧してしまった

僕が手を出す間すら与えられなかった…

この事件をきっかけに、父上は僕の傍らに常に『戦乙女ヴァルキュリア』を置くことを命令した

おかげで自由に身動きが取れない始末だ…


「なぁ、エリザベスよ。
そろそろ町へ視察に赴きたいのだが…」

「却下です。
この後も、月末領地決算の会議、隣町の領主様のご来訪のお出迎えなど予定が多数控えておりますゆえ。
何卒ご理解くださいませ」

「はぁ…分かったよ」


☆☆☆


数日後、相変わらずつまらない書類仕事を書斎で片付けていると、エリザベスが珍しく世間話をしてきた


「坊っちゃま、ご存知ですか?
最近、必ず当たると評判の占い師を」

「占い?
いや、この通り僕は屋敷に缶ずめにされているからな…
初めて聞く噂だ。どのような者なんだ?」

「なんでも普通の『占術士フォーチュナー』のように、抽象的であいまいな言葉を使用せず、丁寧に細かく助言アドバイスするそうです。
そして、その助言の通りに行動すると、占いで依頼した内容を叶えてくれるらしいのです」

「そ、そうか。
それはまた…随分と都合のいい噂だな」


常に望んだ事柄を(意図せず)叶えてきた僕にとっては、あまり興味がそそられない噂だった
もしかすると、堕落的になっている僕を心配して、エリザベスが話を作ってきたのかもしれない

ふふ、人形のような面構えをしているが、案外優しいところもあるのだな


「噂はそれだけではありません。
もし、助言を聞いたにも関わらず反抗的な行動をとったりすると、重い『不幸』が舞い降りるそうです」

「な、なに!?」


まさか…作り話ではないのか!?

もしそれが本当だとしたら…
僕の『幸運』体質を治してもらえる!?

……よし、ダメ元でこの話を父上にもしてみるか
表向きは…そうだな、父の健やかな健康と更なる領地繁栄とでも言っておくか

もちろん、不幸云々の所は省いてだがな!


☆1週間後☆


「こんにちはー!『占術士フォーチュナー』モネ・ラミレスでーす!」

「君が息子が話した…
随分と若いが、本当に大丈夫なのかね?」

「父上!そのような事を言っては失礼です!
さぁ、ラミレス殿、どうぞこちらに」

「はーい、お邪魔しまーす」


ラミレス殿を客間へ案内し、エリザベスにお茶を振舞うよう命令を出す

この娘が噂の…

確かに父上が疑念を持つのは仕方ない

僕も最初は、占い師と聞いて初老の婦人を予想していたが、屋敷に来たのは僕とそう歳が変わらないような女子だった

いや、人を見た目で判断するのは愚か者のすること
誰であろうと紳士に対応しなければ


「オホン…まずはここまで御足労感謝する。
人族の君がこの国へ入国するのは大変だっただろう?」

「えへへ、まぁね。
でもこの町の人達はみんな優しいんだね?」

「ああ。
僕たちは過去に起きた『大量誘拐事件』については、既に決着を付けているつもりだ。
いつまでも過去にこだわっていては、人は争いを永遠に繰り返すからな」

「ふーん…ま、良いけどさ。
それで、今回の依頼人は君で良いのかな?
何を占いたいんだい?」

「2つ、占ってもらいたい。
領地の繁栄と隣の我が父の健やかな健康だ」

「おお…ジオンよ。
なんと…なんと、素晴らしい息子に育ってくれたのだ。
私は今すぐにでもおまえに領主の座を譲りたいぞ」


父上は僕の肩を抱いておんおんと泣き始めた

……さ、さすがに罪悪感がすごいな
エリザベスが無表情ながら、若干軽蔑の眼差しを僕に送っている
そ、そんな目で見るなよ…
元はと言えば君がこの話を持ってきたのだろう…?


「ハ、ハハ…そ、それは後で話しましょう。
今回は占いの為に彼女をお呼び立てしたのですから」

「おっけー。
…依頼料は先払いだけど構わないかな?」


ラミレス殿の目がキラッと光った
ふふ、彼女も抜け目ないな
提示された金額をエリザベスに用意させた

全て僕のお小遣いポケットマネー


「うん、たしかに。まいどあり!
それじゃあ始めるね!」


お金を数え終えると、彼女は懐から水晶玉を複数取り出した


☆ジオンの父sides☆


先日、我が息子が良く当たると評判の占い師へ依頼の提案をした時は、ついに仕事疲れが頂点に達してしまったのかと心配してしまったが、それは杞憂だった

我が領地の繁栄と、私の健康を想っての提案だった

なんと健気に…そして逞しく育ってくれたのか…!

私は息子を男手ひとつで育て上げ、数々の奇跡によって領地を持つまでに至ったが、ジオンはどこか納得していないようだった


まさか、占い師を呼ぶほどに思い悩んでいたとはな…
私も父としてまだまだだな

今回は息子の言うことに従おうと決めた


「ふむふむ…なるほど。
分かった、ありがとね!」


占術士フォーチュナーの娘が水晶玉を回収すると、指を立てて語り始めた


「最初に領地の繁栄からね。
…って言っても、既にこの町は充分に繁栄してるし、大したことは言えないけど…」

「構わない。教えてくれ」

「おっけー。
それじゃあ、まずは30万Gジルほど持って町の郵便局へ向かおう。
そしてそれを元手に…」

「了解だ!さぁ、向かおう!」

「あっ!?ちょっと、まだ話は…」


ジオンはマキナに開発してもらった、金庫型バックに指定された以上の金額を詰め込み、屋敷を飛び出してしまった
まったく、さっきは立派になったと思っていたが、やはりまだまだ若いな
人の話は最後までしっかり聞くものだぞ?


☆モネ・ラミレスsides☆


依頼人のジオン君が明らかに多額のお金を持って出ていってしまった

マズイ…
まだボクの占いについて詳しく説明してない
星の導きに反する行動をとってしまうと、その人に『災い』や『不幸』が起きてしまう

早く彼を止めにいかないと!


「お父さん、ゴメンね!
ちょっと彼にまだ言うことあるから、一旦ここ出るね!」

「ああ、構わないぞ。
せっかちな息子ですまないな」


ジオンのお父さんは、事情が分からないためか呑気にお酒を飲み始めた

ヤバいヤバい!
彼の身に何かあれば、ボクの信用問題に関わってきちゃう!

ボクは彼のあとを追った


☆☆☆


「ジオン君!待ってー!」

「ラミレス殿!
案ずるな、ちゃんと金は持ってきている。
これを郵便局に届ければ良いのだろう?」

「うん、そうなんだけど、ちゃんと金額を…
あっ、ちょっと!?」


郵便局の前にいたジオン君にようやく追いつたけど、ボクの占いの特性を説明する前に入って行ってしまった
なんでこの人こんなに焦ってるんだろう?

続けて僕も入店すると、案の定というかやはりというか、とんでもない状況になっていた


「テメェら動くんじゃねぇ!
こいつの首を掻っ切るぞ!」

「ひいいいい!!」


郵便局の職員が物騒な格好の男2人に羽交い締めにされて、首にナイフを押し当てられていた
まさか、強盗!?

ああもう!やっぱりこうなった!


「君たちは、以前闘った山賊の…
その人を離せ!
僕が代わりに人質になってやる!」


ジオン君は勇敢にも人質の交換を買ってでた
あれ?言葉とは裏腹に少し嬉しそうな…


「ジ、ジオン様!?
いけません、どうかお逃げください!」

「『ジオン』…?
そうか、テメェが俺たちを壊滅させた…!
おいキャンベル!こいつを拘束しろ!」

「おう!任せろ!」


強盗の片割れがジオン君に近付いてきた
…仕方ない、人の命が関わってるならを使うしか!


「ああ、そうだそれでいい。
先にその人の解放を…おおっ!?」


ジオン君が足元にあった小さな段差につまづいた!

転んだ拍子に手に持っていた現金入りの重そうなバックが上に投げ出される


「ん?なあっ!?」

「ひいっ!?」

ガン!!

バックは弧を描くように人質をとっていた強盗の頭に直撃した!
え、ええ!?そんなのアリ!?


「て、テメェ!よくもオルガを!!」


ジオン君に近付いた男は激昂し、ナイフを振りかぶった


「『仮面遊戯ペルソナ』!『水球ウォーター・ボール』!」

ドン!

「うっ!?グハァ!!」


間一髪、魔法が間に合った!
…お金が無くなっちゃったけど、仕方ない
今回はボクの落ち度だしね

仮面を外して、地面に転がっているジオン君に手を差し伸べた


「大丈夫?ジオン君?」

「あ、ああ。すまない、助けてもらって…
よっと…ありがとう」

「んーん。
こうなったのはボクの説明不足もあったし…
気にしないで」


なぜかその言葉にジオン君はバツの悪そうな顔になった
どうしたんだろう?
というか、星の導きに反した行動をとったのにあんなミラクルが起きるなんて…


☆☆☆


先ほど起きた事件は瞬く間に町で大騒ぎになった
そして、ジオン君のお父さんも現地に大慌てで飛んできた
事情を職員とボクが説明をしてあげた


「な、なんだと!?山賊の残党が我が町に…」

「…あ、安心してください、父上。
既にその者らは兵士に引き渡しております」

「そうか…しかし、職員から聞いたぞ。
彼を守るために自ら闘ったそうだな?」

「い、いえ、僕は何も…」

「ハッハッハ!謙遜するな息子よ!
それこそオットー家が理想とする男子というものだ!」


バンバンとジオン君の肩を叩いてめちゃくちゃ褒めてる…
あれ?暗い表情になってる…
嬉しくないのかな?


「オホン!気を取り直して…
ラミレス殿、もう1つの依頼について教えてくれないか?」

「あ、うん。君のお父さんについてだね。
一応、それ言う前に警告しておくけど、ちゃんとボクの助言アドバイスには従ってね?
じゃないと、こういう風になっちゃうからさ」

「ああ、了解だ!」


どうもこの人に導きを伝えるのが不安だけど、依頼料はもう受け取っちゃったし、仕方ないか


「えっとね、まずお父さんの腰を優しく抱いて…」

「なるほど!こうか!?」

ギュウウウ!!

「ぐああああ!!ジオン!何をする!?」

「人の話聞いて!?」


またもや、ジオン君は星の導きに反してしまった!

マズイ…また『不幸』がやってきちゃう!!


「ほら!しっかり歩け!」

「ちっ!うるせぇな、クソ兵士が…
ん?テメェは…!」


ボクたちの横を縄で拘束された強盗犯の1人が、兵士たちに連れられていた
ジオン君を睨みつけると、ニヤリと表情を歪めた


「どうせ、俺らはこのまま王都で終身か死刑の身…
それなら……!!」

「…!?おい、貴様!何をした!?」

キィィン!!

突然、強盗の男の胸元が光り出した!
何か懐に持っている…?


「熱っ!?貴様、なんだコレは!?」


兵士が胸元から光っているボール状の物体を取り出すと、男は狂ったように嗤いだした


「ヒャハハハハ!!
そいつは裏市場ブラック・マーケットで手に入れた、小型の魔石マナ・ストーンよ!
元々はカラの魔石だったが、野郎どもと長い時間を掛けて火属性の魔力マナをとにかく詰め込んだんだ!
ここら一帯ぶっ飛ばせるくらいの『爆弾』にしてやったんだよ!
テメェらまとめて皆殺しだぜ!」

「「ひっ!?」」


兵士は爆弾を地面に落とした

魔石って魔道具アーティファクトの原材料だ!
本来、国に認定されたお店しか入荷を許されていないのに、こんな連中の手に渡っているなんて…!


「いだだだだだ!ジオン!
いつまで私の腰にしがみついている!?
いい加減に離せぇ!」

「まだです!ラミレス殿!
ここからは何をすればいい!?」

「いやこの状況分かんないの!?
テロにあってるんだよ!ボクら!」


オットー親子は自分のことで精一杯らしく、爆弾に気づいていない!
どれだけマイペースなの!?


「まずは父の健康だ!
はやく教えてくれ!」

「ああっもうっ!
優しくさすって、そのあと…」

「よし『スイング』だな!任せろ!」

「ねぇ!ホントキミどんな耳してるの!?」

「ジ、ジオン…?う、うおおおお!?」

ブォンブォンブォン!

ジオン君はお父さんの腰を持ち上げ、グルグルと回転を始めた!
何やってんのこの人!


「ジ、ジオン様が…
ご乱心になられたぁぁ!!」

「お、終わりだァ!!死にたくないぃぃ!」


近くにいた兵士たちが、そんなジオン君と爆弾に怯えて逃げ出してしまった…
ど、どうしよう…!


「ぬああああ!!ジオォォン!!」

「父上ぇぇぇ!」


回転の勢いがものすごいスピードで増していってる
なんでボク、こんなクレイジーな人の依頼を受けちゃったんだろう…


「総員、第2種緊急配備です。
民の避難を優先しなさい」


おろおろしていると、後ろからぞろぞろとメイドの集団が駆け付けてきた
この人達は…


「な、なんだテメェらは…グハッ!」

「お困りのようですね。ラミレス様」

「あっ!キミはえっと…」


尖った耳と赤い瞳が特徴の『霊森人ハイエルフ』のメイドのお姉さんが、爆弾を起動させた男を殴って気絶させた
おお…カッコいい


「エリザベスと申します、お見知り置きを」

「おっけー、ザベ姉!
そこの魔石の爆弾、何とかしてくれない!?」

「ザベ……?
かしこまりました。お下がりください」


ザベ姉は手袋を身に付け、爆弾へ近づいた
もしかして、あれを『解体』できるのかな?


「ラミレス殿!次は何をすれば良いんだ!?」


未だに回転スイングを続けているジオン君は、ボクにさらに助言を求めてきた
お父さんの方は…ヤバッ!?


「とりあえず、お父さんを離してあげなよ!?
その人白目剥いちゃってるじゃん!」

「了解だ!(パッ)」

「どんなタイミングで離してるのぉ!?」


まるで『打撃士ストライカー』の技のように、華麗にお父さんを投げ飛ばしてしまった

そしてその吹っ飛んだ先は、ザベ姉のいる爆弾の方だった


「…!?旦那さ…あ」

ドン!

「ああっ!?」


作業をしていたザベ姉の爆弾に直撃し、ものすごい勢いで爆弾が転がって行ってしまった!

追いかけないと!


☆☆☆


爆弾はちょうど町の真ん中あたりまで来てしまっていた
衝撃を与えたのが原因なのか、先ほどよりも強く輝き出していた
こうなったら…!


「これは…
いけません、もう爆発してしまいます!
ラミレス様、地面に伏せ…」

「『仮面遊戯ペルソナ』!『再始動リブート』!」


仮面の魔物を『鳥獣ガルーダ』に変更させ、右手にありったけの魔力マナを集中させる


「お願い…!『嵐回転撃エリアル・トルネード』!」

ブォッ!!

「あっ…!やっば…」


風魔法で爆弾をとにかく遠くへ吹っ飛ばす算段で撃った
しかし、思い通りの方向には行かずにジオン君たちの屋敷の方へと飛んで行ってしまった…
や、やっちゃった…!


「ラミレス殿!
父上が気絶してしまったのだが…
エリザベス…?2人ともどうしたのだ?」

ボオォォォン!!!

「なあああ!!?」


ジオン君ん家…爆発しちゃった…


「…………」


ジオン君は呆然と我が家の炎上している様子を見ている


「ジ、ジオン君…
その、なんて言ったらいいか…」


よりによって町の領主様の屋敷を破壊してしまうなんて…
ああ、どうしよう…
今回『仮面遊戯ペルソナ』も使っちゃったから、修繕する費用も…

とにかく謝ろうと頭を下げようとした瞬間、ジオン君は突然ボクの肩を掴んできた!


「ラミレス殿…いや!ラミレス嬢!
良くやってくれた!
これだ…これが僕の求めていた『不幸』だ!
ようやく…ようやく僕も『苦労』を学べる!!」

「え、ええと…?」


☆ジオン・オットーsides☆


戦乙女ヴァルキュリア』による迅速な避難誘導によって、爆弾による被害は僕が暮らす屋敷1棟で済んだ

屋敷内も全員が出払っていたため、人的被害はナシだ!

そしてラミレス嬢に今回の僕の本当の狙いを伝えた


「だからあんなにボクの言うこと聞いてくれなかったの!?
星の導きの『不幸』が目的で依頼する人なんて初めてだよ…」

「ハッハッハ!すまないな!
僕はどうしても、『苦労』を知っておきたかったのだ。
おかげで、これから更に貴族として一皮剥けそうだ!」

「ラミレス様。元々は、坊っちゃまのお戯れに私が貴方様の話をしてしまったのが原因です。
貴方様の責任ではありませんので、お気になさらないでくださいませ」


ラミレス嬢は心底ホッとしたようで、胸を撫で下ろしていた

僕にとって、彼女との邂逅は運命と言わざるを得ない
もし彼女と共に過ごせれば、僕はさらなる『不幸』を…!


「ラミレス嬢。
今回の迷惑料として特別手当ボーナスも支給しよう。
その代わりとは言うわけではないが…その…」

「え!それはすごい助かるかも!
なになに、何でも言って!」


僕は地面に片膝を着き、ラミレス嬢の手をとった


「僕と…結婚前提で付き合ってくれないか?」


ラミレス嬢はパチパチと瞬きを繰り返した
そしてニッコリと笑い、その小さな口はすぐに開かれた


「やだよ♡」


☆間宮零人sides☆


「ぶははははは!!!
思いっきり振られてんじゃねぇか!」

「いやな…
考えれば考えるほど分からないのだ。
自分で言うのもなんだが、僕は『幸運』なだけではなく、顔も良い、スタイルも良いし金もある…完璧な布陣のはずだ。
そんなスーパーエルフを目の前にして、なぜ彼女は振り向いてくれないのだろうと」

「あははははは!!!
やめろお前、腹筋壊れる…!!」


ジオンの昔話は思った以上に強烈だった
んだよ、モネの奴こんなおもしろい話を隠してたなんて!

これこそ合コンの時にでも話したら盛り上がったろうに!

ジオンは腹を抱えて爆笑する俺を微笑ましく見てきた


「だが、君と過ごしてみて分かったこともある。
もし僕が女として産まれていたら、きっと君に惚れる気がするよ」

「は、はぁ!?なに気色悪りぃことを…」

ザッザッザッ!

誰か来た!
髪の長い女の人のシルエットがテント越しに映し出された


「真夜中だぞ!静かにしろ!」

「「はい…」」


ずっと喋ってたのがまずかったらしい
ナディアさんに怒られちゃった

しかしジオンはあまり気に止めていないようだった


「仲間に『叱られる』か…フフ、このような体験をさせてくれた君たちには感謝だな。
さぁ、もう寝ようか。
明日は君の別の仲間に会うのだろう?
早く元気な姿を見せてやろうではないか」

「はっ、だな。
あっちにもエルフの仲間がいるから仲良くしてくれよ?
おやすみ、ジオン」

「ああ、おやすみ。レイト殿」



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