上 下
28 / 354

第24話:占術士モネ

しおりを挟む
 ☆ルカsides☆


 零人とモービルが買い出しに出掛けてから数刻、僅かにいた客も帰っていき、店内はスタッフだけになった。
 ゴードンは今日の売り上げの精算をして、ランボルトは後ろ席で遅めの賄いをガツガツと食べている。

 …ルドガーが帰ってきたあと『巨大鳥ロックバード』とやらの料理も出てくるのではなかったか?
 彼はそれも食べられるのだろうか?

 カウンターを片付けていると、シュバルツァーが肩を叩いてきた。


「ねぇ、ルカ。ちょっと話せる?」

「…? ああ、構わんが」


 彼女はクイッと顎で店の入口を指した。
 外で話したいという事だろう。
 私たちはゴードンに断りを入れて、店の外へ移動した。


 ☆☆☆


 外は暑くもなく寒くもなく、人肌には快適な温度だ。
 今の身体でなければこんな些細な事象も、感じ取ることはできなかったな。
 シュバルツァーの金色の頭髪が夜風になびいている。
 頬に当たる髪の毛をすくい上げ、口を開いた。


「今日はいつもと違って慣れない仕事だったけど、いろいろ勉強になったわ」

「そうだな。
 特に最近の我々は戦闘をメインにしたクエストが多かったからな。
 今回は良い気分転換にもなっただろう」

「ええ、そうね」


 シュバルツァーは私と会話しているが、その目線はどこか遠くを見ているようだった。
 朝の時は様子が少しおかしかったが、今の彼女は落ち着いていてどことなく大人の表情だ。


「それで?
 話したい事とは何だシュバルツァー?」


 話の本題に入ろうと私が切り出すと、何故か彼女はクスッと笑った。


「フフ、ルカってばなんかレイトみたいね」

「そうか? 別に真似をした覚えは無いが…」

「言い回しよ、言い回し。
 朝、あいつもこんな感じに聞いてくれたわ」

「……」


 そういえば零人は最初シュバルツァーをどこに連れて行ったのだろう?
 戻ってきた時になぜかあいつはヘコんでいたようだが…。
 その疑問を投げようとする前に、彼女は真剣な眼差しで私を捉えた


「ルカ、あなたはレイトのこと…好き?」


 …前にも同じ質問を受けたな。
 だが、今回の雰囲気はただの興味本位という訳ではなさそうだ。
 誤魔化しは許さない…といった表情だ。


「以前と答えは同じだ。なぜ二度も問う?」

「コソコソ隠し事するのは苦手だから正直に言うわ」

「…なんだ?」


 シュバルツァーは少し息を溜め込み、決意の籠った声音でハッキリと喋った。


「私はレイトに惚れてるわ。
 どうしようもないくらい、好きなの」


「…そうか。
 君は自らの気持ちを自覚できたのだな」


 正直、私はこの自覚を予想していた。
 戻ってきてから、明らかにシュバルツァーが零人を見る目がこれまでとは違っていたからな。


「ええ。それでしつこいようだけど、あんたはどうなの?」

「…だから答えは前と同じだ」

「ウソね」


 キッパリと彼女は言い切った。
 なぜそこまで断言する?


「あんた、後ろめたいことがあると必ず視線を右寄りに下げているわ。
 宝石スフィアの頃から変わってないわよ」

「なっ!?」


 まさか…。
 自分でも気づかなかったが、たしかに私は言われた方向に視線を逸らしていた。


「ゴメンね、これ『心理学』って言うらしいわ。
 レイトから教わったの」

「零人め…こんな特技を隠し持っていたのか」

「ふふ、前に私も同じことやられたわ」


 シュバルツァーは私の横にすっと近づいた。
 息がくすぐる、絶妙な距離で問う。


「ルカが零人にキスしたの…あれは『融解メルトロ』だけが理由じゃないでしょ?」

「……なぜそう思う?」

「私がルカの立場なら同じことしたからよ」

「フッ…そうか」


 最早このエルフにごまかしや嘘の類いは通用しないようだ。
 ならば、私の正直な感情をありのままに伝えるのが賢明だろう。


「君や皆は私の事を気難しい性格と思っているだろうが、実のところかなり単純なのだ。
 なにせ零人のことを意識しだしたのは出会った初日からだからな」

「ええ!? さ、さすがに早くないかしら?」


 シュバルツァーは驚いて目を見開いた。
 当然の反応だろう。


「『黒竜ブラック・ドラゴン』と闘い、撃退した功績を彼は決して自分の力ではないと言い張った。
 転移テレポートの力を過信したり、利用するという概念が零人にはなかったのだ。
 零人は私たち『二人の力』で撃退したと…。
 宝石スフィアにとってこれほど嬉しい言葉はない。
 まったく…我ながらチョロ過ぎて反吐が出る」

「ルカ…そんなことないわ。
 温かい言葉が掛けられたら、誰だって嬉しいもの」


 シュバルツァーが私の背中を優しくさすってきた。
 …いつの間にかそんな気遣いができるようになったのだな。
 私は彼女の手を取り、言葉を続けた。


「イザベラと対峙した時、瀕死の零人が命懸けで私たちを逃がそうと私を転移テレポートさせた時は、頭がどうにかなってしまいそうだった。
 零人を失いたくない。
 ただそれだけを願った瞬間、私はこの身体と僅かな記憶を得た」

「ええ、あの時は本当にビックリしたわよ。
 ルカがまさか人間になるなんてね」

「ああ。…だが、血みどろになった零人をこの腕で抱き締めた時、私は心の中に安堵と『』を感じたのだ」

「欲?」

「そうだ。
 零人の髪をすいてみたい、零人の顔を撫でてみたい、零人に…口づけをしてみたい…。
 あのような非常時に不謹慎ではあったが、私の『欲』は大きくなり始めた」


 おそらく、人間の身体を得たからこその『欲』だろう。
 それまでは零人と話をしたり、じゃれたり、共に寝るだけで…それだけで充分だった。
 人間とは…いや、私は…欲深い生き物だ。


「そして、私は零人にキスをした。
融解メルトロ』という口実を作ってな」


 改めて己の行動を口にしてみると、なんとはしたない…。
 ウォルトの事を言えないな。
 シュバルツァーは腕を組んで口を尖らせた。


「ふぅん、やっぱりそうなのね」

「怒っているか?」

「当たり前じゃない。私の初恋なのよ」

「…すまない」


 シュバルツァーの気持ちに気づいていながら、私は何故目の前であんな事をしてしまったのか。
 いくら謝ったところで彼女はもう許してはくれまい…。


「けど、あんたの正直な気持ちを聞けてスッキリしたわ。
 ねぇルカ、最後にもう一回だけ訊くわ。
 レイトのこと、好き?」


 シュバルツァーは私の両肩に手を置いて本日何回目かの質問をした。

 意地悪な女だ…。

 ここまで私の内情を開けっぴろげにされたなら、言うことは決まっているじゃないか。


「ああ、好きだ。
 宝石スフィアとしても一人の女としても。
 零人が居ない生き方はありえない」


 今度は私がシュバルツァーの目を見据えて告白すると、彼女は待ってましたと言わんばかりに手を叩いた。


「ふふ、決まりね! よーし、ルカ!
 今度レイトを襲うわよ! 二人で!」

「は!? な、何を言っている…?」

「そんなの『既成事実』に決まってるじゃない。
 私はどちらかが引くとか譲るとか、そういうまどろっこしいのは嫌いなのよ。
 あいつに私達を抱かせれば、両方と付き合わざるを得ないでしょ?」

「き…君ってやつは…!
 ここまで奔放な性格だったのか?」

「じゃあ私がレイトを貰ってもいいの?」

「それはダメだ!! …あ…」


 …思わず全力で叫んでしまった。
 慌てて口をつぐむも、シュバルツァーは悪どくニヤっと口角を上げた。


「ふふふ、でしょ?
 だけど、私もレイトを諦めるのは絶対に嫌。
 そうなるとあいつには甲斐性を見せてもらわないとね」

「君の言わんとすることは分かったが、本当にそんな大それたこと決行するのか?
 もし、私達二人とも彼に拒否されたらどうするのだ?」

「へっ!? だ、大丈夫よ多分…。
 今日だってナディアが邪魔しなければ一線越えられそうだったし…」

「おい待て。それは朝の話か?
 君たちはいったい何をしていたのだ!?」


 シュバルツァーの肩を掴み、ガクガクと揺らす。

 まったく…まさかシュバルツァーにここまで掻き回されるとは思わなかった。
 だが、不思議と心の中は晴れやかだった。
 私も自分の気持ちに気づき、それを認めることができたからだろう。

 それに零人のやつはまだ気づいていないが、私がこの身体に変身できることには大切な理由がある。
 私は既にその記憶も取り戻していた。

 …早く帰ってこい零人。
 私たちには、君が必要だ。


 ☆間宮 零人sides☆


「モネ・ラミレス…。
 あんたが例の『占術士フォーチュナー』か」

「うん。そうだよ、よろしくねマミヤ君」


 フードを取り、緑色のパーマヘアの彼女は、ボーイッシュな雰囲気を醸し出している。

 しかし、なぜ俺の名前を知っている?
 しかも俺のいる場所まで把握していたみたいだし…。
 アルタイル大学には冒険者ギルドへの取り次ぎしか頼んでないはずだ。


「ニャア…不思議な魔力マナニャ…。
 レイト君の蒼の魔力マナとはまた違う感じニャ」


 俺の脇に抱えられたままのセリーヌが彼女を見て息を吐く。
 前にフレイが言っていたな
占術士フォーチュナー』は後天的になれる職業ジョブではないと。
 ナディアさんのように生まれた時から特殊な力を供えているのだそうだ。


「あー、それで…。
 えと、ラミレスさんはなぜここに?」

「『モネ』で構わないよ。
 キミ達の事情はある程度分かっている。
 ボクは『星の導き』でここへ来たのさ」


 彼女は片手を胸に当てて微笑む。
 ふむ、星の導きとな?
 彼女は占星術でもするのかな?
 まぁ、それならそれで話が早そうだな。
 セリーヌを隣に置き、話を進める。


「そうか。えと、モネ。
 早速だけど会って欲しい奴が…」

「それには及ばないよ」


 あ、あれ?
 ルカにエネルギーを見てもらおうと思ったんだけど…。


「マミヤ君はボクを転移テレポートで連れて、蒼の宝石くんにボクの魔力マナが紅の宝石くんと契約を結ぶのに適合するか判断してもらうつもりなんでしょ?」

「「ええ!?」」


 俺とセリーヌは同時に叫んだ!
 そこまで事情を知っているなんて…。
占術士フォーチュナー』パねぇな…。


「…そして残念だけど、ボクは紅の宝石くんとは契約を結べない。
 せっかく待っててもらったのに申し訳ないね」

「え!? ま、待ってくれ!
 せめてルカに一目見てもらってから…」

「キミがそれで納得するなら別に構わないけど、結果は変わらないよ?」


 ピシャリと彼女は言い切った。むう…。


「だけど落胆することはないよ。
 ボクは契約者にはなれないけど、契約者になれる人物を占うことはできる。
 ボクはそのためにキミに逢いに来たんだ」

「ほ、本当か!?」

「うん。ただ、ボクも仕事でね。
 料金は頂くけど構わないかい?」

「いくらニャ?」


 セリーヌが訊くとモネは片手をパーにして示した。
 5?


「ざっと50,000,000Gジル
 小切手カード分割払いローンは受け付けない。
 現金キャッシュのみだよ」

「ご、ご、ごごせんニャん!? …はぅ…」

「あ! おいセリーヌ!?」


 クラっと倒れそうになったセリーヌを慌てて支える。
 ど、どうしたんだ?


「しっかりしろ! おい、大丈夫か!?」

「レ、レイトくん…5000万Gジルってどんな金額か分かっているのニャ?」

「ま、まぁエラい金額ってのはなんとなく分かるけど…」

「エラいなんてもんじゃないニャ…。
 その金額は下手したら、国の国家予算に匹敵する額ニャ!」

「なんだと!?」


 国家予算!?
 国を動かせるほどの金ってこと?

 あんぐりとしながらモネの方を見ると、彼女は懐からコインを取り出しピン!と上に弾いた。


「(パシッ)この星の運命は金次第…ってね。
 あいにくボクの占いは安くない。
 どうだい? キミに払えるかい?」

「いや…。
 俺たち最近働き口を見つけたばかりだし…。
 そんな大金持ってねぇよ」


 こいつ…俺たちの事情を知ってるなら、候補者を見つけることが世界の命運に繋がっていることを知らないはずがない。
 金を巻き上げてる場合なのか?


「いくらなんでも高過ぎニャ!
 そんなの、人間の一生を掛けても稼げるか分からない金額ニャ!」


 セリーヌも俺と同様の感想のようで、彼女に向かって糾弾した。
 そうだそうだ!
 俺もそれに乗っかり追撃する。


「あんた状況を分かってるのか?
 紅の魔王を倒さないとこの国が滅ぼされちまうんだぞ!」

「ボクには関係のないことだ。
 ボクにとって重要なのは、星と金だけさ」


 こ、コイツ…!
 思わずモネに詰め寄ると、ビッと人差し指を立てた。


「話は最後まで聞くものだよ?マミヤ君。
 ボクだってそれが法外な金額なことは重々承知してるさ。
 そこで代わりの条件として、キミにはボクの『仕事』を手伝ってほしいんだ」

「は…? 仕事って…。
 俺占いなんて手相占いくらいしか分からないぞ」

「のんのん。
 キミにはボクの付き人として同行してもらいたい」


 付き人? ボディーガードってことか?
 それなら俺じゃなくても良いような気がするけど…。


「どうしてレイト君じゃないとダメなのニャ?
 別にレイト君みたいなヒョロヒョロじゃなくても、あたし達のパーティーにはもっと強いメンバーがいるニャ」


 概ね同意だが、さりげなく雑魚扱いしやがったなこのロリ猫ババア。


「簡単な話さ。
 マミヤ君、君は今この国…いや、この大陸で最もホットな男なんだ」

「ほ、ホット? なんだそりゃ?」

「有名人ってことだよ。
 まぁ、その知名度が知れ渡っている界隈は限定してるけどね」

「「………」」


 俺とセリーヌは顔を見合わせた。
 有名になった覚えはないけど、最近騒がれたこともあったし、一つ心当たりはある。
 もしかすると…?


「レイト君が盗賊団ベンターを壊滅させた功績で有名になったのニャ?」

「たしかにその功績も素晴らしいが、それ以上の偉業を成し遂げたじゃないか」


 んん?
 王様から直々に屋敷まで報酬貰ったのに…それ以上の功績ってなんかあったっけ?


「『黒竜ブラック・ドラゴン』。
 この名前に聞き覚えはないかい?」

「ひっ!?」

「ニャッ!?」


 モネは両手を顔の横に掲げてガオーと、威嚇するようなポーズをとった。
 いきなりその名前を出すんじゃないよ…。
 思わずセリーヌさんにしがみついちゃったじゃねぇか。
 情けない…。


「レイト君大丈夫ニャ。よしよし…。
 モネちゃん、どうして黒竜ブラック・ドラゴンがレイト君に関係あるのニャ?」

「おや、そこの彼から聞いていないのかい?
 マミヤ君はあの黒竜ブラック・ドラゴンを単独で討伐したんだよ」

「ニャアア!? 本当ニャの、レイト君!?」


 震える身体を抑えて、俺は答える。


「…2つ訂正がある。
 討伐じゃなくて退だ。
 あいつはまだ生きていて俺に復讐する気満々だよ。
 …あと単独じゃない。
 俺とルカ、『2人の力』だ。
 俺だけだったら殺されてたぜ」

「そ、そうだとしてもとんでもないニャ…。
 レイト君、なんであたしたちに教えなかったのニャ?」


 ふう、教える時が来たか。
 小声でモネには聞こえないよう、セリーヌに耳打ちをした。


「言うほどの事じゃない…なんてカッコいい事言ってみたいけどね。
 情けないことにあいつは俺のドラゴン恐怖症病気の元凶なんだ。
 だから今までドラゴンの話題を避けてただけだよ…」

「レイト君…」


 毎度の事ながらドラゴンが関わると勝手に腰が引けてしまう。
 竜の血を引くリックと話してるうちに治ってきたと思っていたけど全然だな。
 セリーヌが再び俺の頭をなでなですると、モネはわざとらしく咳払いをした。


「西のガルドから噂は流れたよ。
『異世界より転移した黒き髪の男が、悪名高き黒竜ブラック・ドラゴンを討伐した』と。
『撃退』じゃなくて『討伐』ってなったのは、どこかで尾ひれが付いちゃったんだろうねぇ」


 モネは顎をさすり、初対面ながら馴れ馴れしくほくそ笑む。
 ちくしょう誰だよ! 変な噂流したの!
 もしドラゴン討伐の依頼とかきたらどうすんだ!
 俺はため息をついて話を進めることにした。


「とりあえず俺が有名になったことは分かったけど、どうしてそれがあんたの仕事を手伝う理由になるんだ?」

「さっき付き人って言ったけど、要はボクの助手だね。
 自分で言うのもなんだけど、ボクってかなりできる『占術士フォーチュナー』だからさ。
 助手君にもそれなりの知名度が必要なんだ。
 じゃないとカッコつかないでしょ?」

「…質問の答えになっていないぞ。
 できる占い師なら助手なんて必要無いはずだ。
 俺が知りたいのは、俺を助手にしたいその動機だ」

「あれれー?
 もしかしてマミヤ君は5000万Gジルお支払いの方が良かったのかなー?」


 ぐっ…! このパーマ女! のらりくらりと…!
 肝心な部分は教えない気か!
 俺は再び小声でセリーヌに相談した。


「セリーヌ、コイツとの取引…受けるべきだと思うか?」

「怪しさ満点ニャ…。
 けど、このままじゃ無駄に時間を過ごすのも確かなのニャ。
 ここは一度喫茶店に戻って、皆に相談するのはどうかニャ?
 それに多分、ゼクスの王様も力になってくれそうニャ」

「ああ、俺も同じ考えだ」


 よし、取り敢えずプランは決まった。
 モネに帰る旨みを伝えようとすると、彼女に先手を打たれた。


「ああ、因みにこの取引はこの場限りだよ。
 ここで返答をもらえないなら、現金キャッシュね~」

「はあ!?」


 それじゃあ帰っても、もし金策を練るの失敗したらどん詰まりじゃねぇか!
 もうこれ最初から一択じゃん…。


「わ、分かった…。
 あんたの助手になるよモネ…」

「そうこなくっちゃ! 毎度ありっ!」

「レイト君!?」


 はぁ…こんなの取引でもなんでもないじゃん…。
 コイツ…ほんと俺に何をさせる気なんだろう?

 まぁいい、俺もタダで受けるつもりは無い。
 俺は蒼のエネルギーを集中させ、蒼く光った右手をモネに見せつけた。


「だけど、条件がある。
 助手には俺の他に蒼の宝石…ルカも参加させてくれ。
 何をさせる気かは知らんけど、この力をアテにしてるならルカがいないと始まらない。
 それでいいな?」

「ふーん? うん、良いよ。取引成立だね」


 モネは右手を出して握手を求めた。
 俺もエネルギーを引っ込めそれに応える。
 ルカには悪いことしちゃったけど、これなら少し安心だ。
 彼女と一緒なら、大抵のことには対処できるはずだ。

 んじゃ、そろそろ帰っ…あれ?
 手を離そうと引くが握ったままだ。


「…? おい?」

「それじゃあルカ君に会いに行こうか。
 レッツゴ~」


 握ってない方の手をグーにして号令をとる。
 いや離せよ。


「あの、なんで手握りっぱなの?」

「こうするとおもしろい結果になるって星の導きがあったから」

「はあ? …まぁいいや。
 セリーヌ、転移テレポートするぞ。
 動くなよ」

「ガッテンニャ。
 はぁ…このあともう一回買い出しに行かないといけないニャ」


 あ、そうだった買い物途中だったんだ。

 だけど、コイツ連れたままだしな…。
 仕方ない、あとでまたセリーヌに付き合うか。

 ブン!

 こうして俺は冒険者兼、『占術士フォーチュナー』モネの助手という二足わらじになってしまった。
 この時の俺には知る由もない…『占術士フォーチュナー』という職業ジョブの過酷さを。









しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

30年待たされた異世界転移

明之 想
ファンタジー
 気づけば異世界にいた10歳のぼく。 「こちらの手違いかぁ。申し訳ないけど、さっさと帰ってもらわないといけないね」  こうして、ぼくの最初の異世界転移はあっけなく終わってしまった。  右も左も分からず、何かを成し遂げるわけでもなく……。  でも、2度目があると確信していたぼくは、日本でひたすら努力を続けた。  あの日見た夢の続きを信じて。  ただ、ただ、異世界での冒険を夢見て!!  くじけそうになっても努力を続け。  そうして、30年が経過。  ついに2度目の異世界冒険の機会がやってきた。  しかも、20歳も若返った姿で。  異世界と日本の2つの世界で、  20年前に戻った俺の新たな冒険が始まる。

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

家ごと異世界ライフ

ねむたん
ファンタジー
突然、自宅ごと異世界の森へと転移してしまった高校生・紬。電気や水道が使える不思議な家を拠点に、自給自足の生活を始める彼女は、個性豊かな住人たちや妖精たちと出会い、少しずつ村を発展させていく。温泉の発見や宿屋の建築、そして寡黙なドワーフとのほのかな絆――未知の世界で織りなす、笑いと癒しのスローライフファンタジー!

祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活

空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。 最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。 ――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に…… どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。 顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。 魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。 こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す―― ※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

処理中です...