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プロローグ
趣味
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「もう毒は完全に抜けたはずだ」
「そうか……」
エルフが目覚めてから数日。エルフをじっと見つめたあと、薬売りはそう言った。
「後は好きにするといい」
薬売りはもう用はないとばかりに踵を返すと、薬草や道具をまとめ始める。
「どこへ行くんだ?」
「……目的地はない、ただ新しい素材を求めて森を歩き回るだけだ」
先程朝食に使った食器類を狼の魔物の影に押し当てると、するりと吸い込まれるように消える。それから薬売りは衣類や家具に至るまで、物という物を影に押し込んでいく。
「……もうここには帰らないのか」
「ああ。元々ここはお前の回復のために使っていただけだ」
「そうか……」
薬売りの旅支度は手馴れたもので、十分もかからず全ての痕跡を消してしまう。薬売りがいなくなった後のこの部屋から、薬売りを追うのは難しいだろう。
「ここも使いたければ好きにしろ」
最後にそれだけ言うと、薬売りと狼の魔物は静かに洞窟を出ていった。
……エルフとともに。
「…………」
薬売り達は颯爽と駆け出す。静かに、僅かな物音さえ、風に紛れさせて。木々の間を潜り抜け、枝から枝へと飛び移って。
少しでも気を抜けば、もう追うことは叶わない。そんな影の薄い背中を、エルフは夢中で追いかけた。
数十分ほど走り回ったあと、ふいに薬売り達が立ち止まる。
「……一緒に来るのか」
「ああ」
あれだけ走り回っても、両者の呼吸は全く乱れていなかった。
薬売りはエルフをじっと見る。隠密スキル、体力はほぼ互角。スピードは薬売り、パワーはエルフに分がある。そして薬売りは近接に強く、エルフは遠距離に強い。薬売りの目はそう見抜いていた。組み合わせとしてはそう悪くない。加えてエルフは寡黙で、共同生活にも特に支障はないと判断する。
チラ、と狼の魔物を見ると、どこか期待しているような、しかしそれを押し隠すような目で、じっと薬売りを伺っている。
「……わかった。ではお前のことは訳ありと呼ぶ。わたしは薬売り、こいつは狼と呼べ」
「ああ」
「狼もそれでいいか」
「ワフッ!」
狼は訳ありを見て、ご機嫌で尻尾を振っている。どうやら彼のことを気に入っているらしい。
「ではこれより、趣味と実益を兼ねて、採集に向かう」
着いてこいと、薬売りは歩きだす。先程のように駆け回るのではなく、辺りを見回しながらゆっくりと歩く。そしてふと立ち止まって、木の根元にしゃがみこむと、わずかに発光する小さなキノコをつむ。
「それはなんだ」
「精霊茸。精霊の魔力が一箇所に溜まると稀に生える。魔法薬の効力をあげるのに役立つ。主に精霊が多い森の奥深くで採集できる。生息域や希少性から最終難易度が高く、大きさによっては売ればひと財産築けるぞ。ま、高価すぎてなかなか売れないんだがな」
薬売りは、突然早口でキノコについてのウンチクをまくし立てた。今までの無口が嘘みたいに。
「……希少と言う割にサラッと見つけなかったか?」
「まあ、ここはまさに生息地だし、わたしにはこの目があるからな」
トントンと、薬売りは目の下を人差し指で軽く叩く。
「この目の前には、森も人間も丸裸さ。探そうと思えばなんだって見つけられるし、どんな隠し事も嘘も通じない」
長い前髪の隙間から、大きな金色の目が訳ありを見つめる。
「その目があれば、急所や機密文書の隠し場所なんかも容易く調べられるな。暗殺者や諜報員に向いている」
訳ありは特に悪意なく、むしろ賞賛のつもりでそう言った。訳ありにとって、暗殺に役立つものは良きものであり、それ以外はどうでもいいものであった。
だからといって、その目が欲しいとも思わなかった。
「ははは!確かにな。諜報の仕事なら、一度はやってみてもいいかもな」
薬売りは機嫌よく笑った。フードがズレると灰色の髪が日の光に照らされる。洞窟は薄暗くて分かりづらかったが、薬売りの髪は少しだけ青みがかっていて、その隙間から金色の瞳が覗くと、まるで夕日が差す曇り空のようだ。
「でもその目は目立つな。派手だ」
「それを言うなら、お前の見てくれの方がよっぽど派手だ。その身長にその顔立ち。プラチナブロンドに真っ青な目。どう考えても暗殺者には向いてないぞ」
訳ありは短く切りそろえた髪の毛をひと束摘んでチラリと見た。それは昔からよく言われていたことだった。目を隠すように前髪だけ伸ばして、不自然にならない程度に常に短く切りそろえ、普段は帽子やフードで髪を隠した。
「まあ、もうお前は暗殺者じゃないしな。髪、伸ばすのか?」
見透かされたように言われて、薬売りに視線を戻す。
「心を読んだのか?」
「読まなくても分かるさ。今日までに知り得たお前の性格や生き方を考えれば、誰でもわかる」
事も無げに薬売りは言うが、今日まで、それほど彼自身を見た人間はいなかった。
髪を隠し、顔を隠し、姿を隠し、気配を隠し、本心を隠し……。主人の、社会の影に隠れて生きてきた彼を、彼個人として見ようとするものはいなかった。
「……いや、前髪も切ってもう少し短くする。洗ったり乾かしたり、その方が楽なんだ」
「ふーん、そうか」
「……お前は、長い方が好きか?」
なぜそんなことを聞いたのか、訳あり自身にも分からない。けれどつい、口をついてそれは出た。
キノコを取り終えた薬売りは立ち上がって、再び歩き出す。
「いや、短い方がいい。楽に越したことはない」
「……お前ももう少し短くするか?」
「いいや、私はこの長さでいい。この長さは手入れも楽だし、暑い時や邪魔な時は縛っておける。今までの人生で私が導き出したベストアンサーなんだ」
薬売りはキッパリと断った。彼女はとにかくこだわりが強く、気に入った料理は何日でも食べ続けるし、服も目立たなさ、動きやすさ、洗いやすさを重視して似たようなデザインのものを数着、着潰す。道具や家具も本当に気に入ったものしか買わないし、修理できるなら絶対に買い換えない。
そして、興味のないことに時間を割くのも嫌う。例えばオシャレな服のコーディネートとか、流行の化粧とか、ヘアセットとか。とにかく、着飾るということに全くと言っていいほど興味が無い。
つまり、それらのことを面倒くさがって、服は勧められたセットを着回し、髪型はもう何年も同じで、化粧については試そうとしたこともなかった。
世のほとんどの女性からすれば、何が楽しくて女をやっているのかと思われるだろう。
しかし、彼女は毎日楽しく愉快に生きていた。彼女にはそんなことより、もっとずっと興味を惹かれるものがある。
「お。この色は初めて見るな……どれ」
薬売り達がたどり着いた場所は、少し開けていて、ところ狭しと花が咲いていた。赤い花畑の端に、数本だけまとまって黒い花が咲いている。
そう、彼女の興味関心はもっぱら希少素材の蒐集に偏っている。しかも金を使って買ったり取り寄せたりするのではなく、自らの足で歩き回り採集していく、行動派である。薬売りは言わば、集めた素材の実験に伴う副次的産物から始まったものである。
まさに、趣味と実益を兼ねているのだ。
薬売りは黒い花を一本根っこから採取して、じっと見つめると、狼の影にしまう。その後、前髪をずらして金の目を見開くと、花が生えている地面を観察した。否、地面を透過して地中に埋まっているものを観ていた。
「なるほどな」
納得したように頷くと、狼の影から小瓶をひとつ取り出し、中の液体を黒い花と地面に振りかけた。
「何をしてるんだ?」
そう聞いた瞬間、透明な液体が自ら燃え、数秒で天にも届きそうな白い火柱が上がった。
「この花畑を焼き払うのか?」
その行為の善悪を問うものではなく、薬売りの真意が知りたくて訳ありはそう問うた。
「いや、赤い花は焼かない。黒いのと、その下の土だけだ」
薬売りの言葉通り、白い炎は赤い花には燃え移ることなく、黒い花だけを焼いていく。
「あれは聖火の油という薬だ。怨念や呪いなど、悪しきものだけを燃やす。……まあ、聖水の強化版とでも思ってくれ」
そういうと、薬売りは火柱の中におもむろに手を突っ込んだ。
「ほら、熱くないしやけどもしない。基本的には生きているものには効かない」
ぎょっとした訳ありに、なんの火傷もない綺麗な手をひらひらと振ってみせる。
がしっと手首を掴むと、食い入るように手を見つめる。本当にどこにも傷がないのを確認すると、僅かにため息を漏らした。
「暗殺者だったのに、怪我人を見るのが苦手なのか?」
薬売りの問にハッとする。今までどんな凄惨な拷問も虐殺も、特に心を動かすことなくこなして来た。だと言うのに、今更火傷くらいで何を慌てていたというのか。
「暗殺者という人生を歩まなかったら、お前は案外虫も殺せないような奴だったのかもな」
からかうようにニッと歯をみせる薬売りに、ぐるぐると回りかけた思考が霧散する。
「……いや、さすがにそれはないだろう」
訳ありは答えが出なかったことに少しホッとして、軽く肩を竦めて見せた。
黒い花を焼く炎は徐々に弱まっていき、完全に火が消えると、白い花が残っていた。
「おお。これは予想外の結果だ」
白い花を見た薬売りは、飛びつくように地面にしゃがむと、ウキウキと花を採取し始めた。
「何がどうなったんだ?」
「興味があるのか?」
「あ、ああ……」
訳ありの質問がよほど嬉しかったのだろう。被せるように食いついた薬売りの、今までで一番大きな声に訳ありは思わず身を引いた。
ならば教えてやろうと、薬売りは饒舌に語り出す。
「まず、ここに生えている花が何か知ってるか?」
「いや、知らない」
「この赤い花は紅血花と言って、たくさんの血が流れた場所に咲く花だ」
この地では昔魔物同士の乱戦があり、多くの魔物がこの場所で死に、血が流れた。積み上がった骸が全て土に還ると、代わりに真っ赤な花が地面を覆い尽くした。この場所には紅血花以外の植物は芽吹くことが出来ず、森の住民にはこの花がここで死んだ魔物たちを弔っているといわれている。
「この地は魔物たちの血で穢れてしまっている。そういう場所には紅血花しか自生できない」
紅血花は土地に染み付いた穢れを糧にして成長する。そのため、この花が穢れを吸い、長い時間をかけて徐々に土地を清めてくれる。
「で、さっきの黒い花だが、あれは黒呪花というらしい。元は紅血花と同じ花だが、糧にするものが違う。さっきまでそこの地面に埋まってたものが原因だ」
薬売りは白い花が咲いている地面を指す。訳ありは地面をじっと見つめて、推測を口にした。
「人間の死体か」
「そう。恐く生き埋め死体だ。黒呪花はその怨念を糧にして成長した。寧ろ黒呪花が怨念を少し吸い取ってくれたから、この死体はアンデット化せずに済んだんだろう」
強い怨念は死体や魂を不死系の魔物に変える。特に人間は死に方によってそうなりやすく、今回は埋められたのがここでなければ確実にアンデット化していただろう。
「黒呪花は初めて見たと言っていたが、今までこの森で咲いたことは無かったのか」
「ああ。そもそも、魔物や獣の戦いは対話でもあるし、殺す時は自分が生きるために必要な時だ。それを本能で分かっているから、この森で死んだ魔物に怨念は残らない」
「では人間は?」
この森の人間達は皆訳ありばかりだ。ろくでもない奴ばかりだと、外の人間は噂している。
「この森に来るものは訳あって外の世界では住めなくなったものだ。お互いの境遇に共通点が多いからこそ、助け合って生きている。この森でひとりで生きていくのは難しいからな」
森の中には、魔女に守られた人間の集落があり、人間達はルールを決めて共同生活を送っている。魔女の庇護を得る代わりに定められたルールを守る義務があり、破ったものは追放され、二度と集落には戻れない。
「だからこの森に住む人間同士で殺し合うことはほとんどないし、意外と森の中は秩序が守られている。神性を帯びた聖属性の古き魔物も結構いるし、滅多にアンデット系の魔物は出ない。そして、最近は誰も追放された人間がいないから、多分この生き埋め死体は外の人間の仕業だろう」
ここは森の中でもやや外よりの場所。腕に自信のある人間なら、秘密裏に殺しをするのには最適な場所だ。
「そんなわけで、黒呪花を見たのはこれが初めてだ。訳ありは見たことがあったのか?」
「ああ。古戦場に咲いていることがある。寧ろ紅血花のほうが初めて見た」
「まあ、穢れた土地に必ず芽吹くわけでもないし、人間同士の争いはどうしても怨念が溜まりやすいからな…。外の世界では、紅血花のほうが珍しいんだな」
薬売りは考え込むように、紅血花を見つめる。
「それで、その白い花はなんだ」
「ん?ああ、あれは聖域のような非常に清らかな場所にしか生息しない、白献花という花だ」
神へ献上する花として、神聖視されている花で、聖水や聖火の油の材料にもなる。この森では、唯一、魔女の住処である、聖泉のほとりにのみ咲いている。
他の場所では、その聖域を管理するものだけが、聖水を作ることができるため、宗教に利用されることが多く、管理者を神聖視する傾向がある。
「聖火の油で黒呪花を浄化すれば、紅血花に戻るんじゃないかと思ったんだが、効力が強すぎて血の穢れまで浄化されたみたいだ。そして白献花になった。いやぁ、形とか成長過程とか似てるなとは思ってたけど、まさか同じ花だったとは」
紅血花、黒呪花、白献花。元は同じ花であり、生息地の性質で色や効能などが変わる。
紅血花は増血剤として有用だが、そのままでは副作用が強く処理や容量を間違えると自我を失う危険性がある。しかし、上手く利用出来れば、失血死寸前からの回復も見込める。
黒呪花は猛毒であり、ほんの一滴でも服用すれば、直ちに死に至り、アンデット化する。また、闇の魔力を込めてインクに加工すれば、魂の形である真名を書くことによって、遠方から呪殺することも可能になる。
白献花は、浄化の作用があり、聖水や聖火の油など、魔を祓うための薬の材料になる。また、病の治療薬と一種に飲めば、副作用を抑え、効力を高めてくれるが、希少性故に高価で、王族でもなければそんな使い方はしない。
「まあ、土地全体の穢れはそのままだから、数日したらその白献花も紅血花に戻るだろうけどな。いやぁ、面白い発見だ」
ご機嫌で再び歩き出す薬売りに、訳ありは思わず問いかけた。
「ここで人を生き埋めにした犯人は探さなくていいのか」
訳ありはむしろ余計なことに首を突っ込みたくはなかったが、薬売りはなんだかんだで善良な人間に見えるので、放っておけないのではないかと思った。
自分を追手から助けてくれたように。
「うーん、それはあんまり興味ないな。埋めた後に新しく花が咲いてるってことは、最近とは言っても大分前だろうし、もうとっくにこの森にはいないだろう。それにこの森の秩序を乱すのなら、魔女が許さない。……ま、わたしの出番は無いって事だ」
薬売りは心底どうでも良さそうにボヤいた。薬売りが誰かを助けるのは、目の前、手が届く範囲でことが起こり、見捨てれば後悔しそうな心根の者だけだ。自分のテリトリーの外まで、わざわざ自ら厄介事を抱えに行くような真似はしない。そんな暇があれば、採集する。お人好しではあるが、自分の人生まで犠牲にする気は無いのだ。
思ったより、あっさりした引き際に、訳ありが落胆することはなく、むしろ親近感を覚えた。そして、善良さで自分を飾り立てることなく、ただひたすらに我が道をゆく姿に安堵し、憧れた。
「さあ、散策を再開しよう」
「そうか……」
エルフが目覚めてから数日。エルフをじっと見つめたあと、薬売りはそう言った。
「後は好きにするといい」
薬売りはもう用はないとばかりに踵を返すと、薬草や道具をまとめ始める。
「どこへ行くんだ?」
「……目的地はない、ただ新しい素材を求めて森を歩き回るだけだ」
先程朝食に使った食器類を狼の魔物の影に押し当てると、するりと吸い込まれるように消える。それから薬売りは衣類や家具に至るまで、物という物を影に押し込んでいく。
「……もうここには帰らないのか」
「ああ。元々ここはお前の回復のために使っていただけだ」
「そうか……」
薬売りの旅支度は手馴れたもので、十分もかからず全ての痕跡を消してしまう。薬売りがいなくなった後のこの部屋から、薬売りを追うのは難しいだろう。
「ここも使いたければ好きにしろ」
最後にそれだけ言うと、薬売りと狼の魔物は静かに洞窟を出ていった。
……エルフとともに。
「…………」
薬売り達は颯爽と駆け出す。静かに、僅かな物音さえ、風に紛れさせて。木々の間を潜り抜け、枝から枝へと飛び移って。
少しでも気を抜けば、もう追うことは叶わない。そんな影の薄い背中を、エルフは夢中で追いかけた。
数十分ほど走り回ったあと、ふいに薬売り達が立ち止まる。
「……一緒に来るのか」
「ああ」
あれだけ走り回っても、両者の呼吸は全く乱れていなかった。
薬売りはエルフをじっと見る。隠密スキル、体力はほぼ互角。スピードは薬売り、パワーはエルフに分がある。そして薬売りは近接に強く、エルフは遠距離に強い。薬売りの目はそう見抜いていた。組み合わせとしてはそう悪くない。加えてエルフは寡黙で、共同生活にも特に支障はないと判断する。
チラ、と狼の魔物を見ると、どこか期待しているような、しかしそれを押し隠すような目で、じっと薬売りを伺っている。
「……わかった。ではお前のことは訳ありと呼ぶ。わたしは薬売り、こいつは狼と呼べ」
「ああ」
「狼もそれでいいか」
「ワフッ!」
狼は訳ありを見て、ご機嫌で尻尾を振っている。どうやら彼のことを気に入っているらしい。
「ではこれより、趣味と実益を兼ねて、採集に向かう」
着いてこいと、薬売りは歩きだす。先程のように駆け回るのではなく、辺りを見回しながらゆっくりと歩く。そしてふと立ち止まって、木の根元にしゃがみこむと、わずかに発光する小さなキノコをつむ。
「それはなんだ」
「精霊茸。精霊の魔力が一箇所に溜まると稀に生える。魔法薬の効力をあげるのに役立つ。主に精霊が多い森の奥深くで採集できる。生息域や希少性から最終難易度が高く、大きさによっては売ればひと財産築けるぞ。ま、高価すぎてなかなか売れないんだがな」
薬売りは、突然早口でキノコについてのウンチクをまくし立てた。今までの無口が嘘みたいに。
「……希少と言う割にサラッと見つけなかったか?」
「まあ、ここはまさに生息地だし、わたしにはこの目があるからな」
トントンと、薬売りは目の下を人差し指で軽く叩く。
「この目の前には、森も人間も丸裸さ。探そうと思えばなんだって見つけられるし、どんな隠し事も嘘も通じない」
長い前髪の隙間から、大きな金色の目が訳ありを見つめる。
「その目があれば、急所や機密文書の隠し場所なんかも容易く調べられるな。暗殺者や諜報員に向いている」
訳ありは特に悪意なく、むしろ賞賛のつもりでそう言った。訳ありにとって、暗殺に役立つものは良きものであり、それ以外はどうでもいいものであった。
だからといって、その目が欲しいとも思わなかった。
「ははは!確かにな。諜報の仕事なら、一度はやってみてもいいかもな」
薬売りは機嫌よく笑った。フードがズレると灰色の髪が日の光に照らされる。洞窟は薄暗くて分かりづらかったが、薬売りの髪は少しだけ青みがかっていて、その隙間から金色の瞳が覗くと、まるで夕日が差す曇り空のようだ。
「でもその目は目立つな。派手だ」
「それを言うなら、お前の見てくれの方がよっぽど派手だ。その身長にその顔立ち。プラチナブロンドに真っ青な目。どう考えても暗殺者には向いてないぞ」
訳ありは短く切りそろえた髪の毛をひと束摘んでチラリと見た。それは昔からよく言われていたことだった。目を隠すように前髪だけ伸ばして、不自然にならない程度に常に短く切りそろえ、普段は帽子やフードで髪を隠した。
「まあ、もうお前は暗殺者じゃないしな。髪、伸ばすのか?」
見透かされたように言われて、薬売りに視線を戻す。
「心を読んだのか?」
「読まなくても分かるさ。今日までに知り得たお前の性格や生き方を考えれば、誰でもわかる」
事も無げに薬売りは言うが、今日まで、それほど彼自身を見た人間はいなかった。
髪を隠し、顔を隠し、姿を隠し、気配を隠し、本心を隠し……。主人の、社会の影に隠れて生きてきた彼を、彼個人として見ようとするものはいなかった。
「……いや、前髪も切ってもう少し短くする。洗ったり乾かしたり、その方が楽なんだ」
「ふーん、そうか」
「……お前は、長い方が好きか?」
なぜそんなことを聞いたのか、訳あり自身にも分からない。けれどつい、口をついてそれは出た。
キノコを取り終えた薬売りは立ち上がって、再び歩き出す。
「いや、短い方がいい。楽に越したことはない」
「……お前ももう少し短くするか?」
「いいや、私はこの長さでいい。この長さは手入れも楽だし、暑い時や邪魔な時は縛っておける。今までの人生で私が導き出したベストアンサーなんだ」
薬売りはキッパリと断った。彼女はとにかくこだわりが強く、気に入った料理は何日でも食べ続けるし、服も目立たなさ、動きやすさ、洗いやすさを重視して似たようなデザインのものを数着、着潰す。道具や家具も本当に気に入ったものしか買わないし、修理できるなら絶対に買い換えない。
そして、興味のないことに時間を割くのも嫌う。例えばオシャレな服のコーディネートとか、流行の化粧とか、ヘアセットとか。とにかく、着飾るということに全くと言っていいほど興味が無い。
つまり、それらのことを面倒くさがって、服は勧められたセットを着回し、髪型はもう何年も同じで、化粧については試そうとしたこともなかった。
世のほとんどの女性からすれば、何が楽しくて女をやっているのかと思われるだろう。
しかし、彼女は毎日楽しく愉快に生きていた。彼女にはそんなことより、もっとずっと興味を惹かれるものがある。
「お。この色は初めて見るな……どれ」
薬売り達がたどり着いた場所は、少し開けていて、ところ狭しと花が咲いていた。赤い花畑の端に、数本だけまとまって黒い花が咲いている。
そう、彼女の興味関心はもっぱら希少素材の蒐集に偏っている。しかも金を使って買ったり取り寄せたりするのではなく、自らの足で歩き回り採集していく、行動派である。薬売りは言わば、集めた素材の実験に伴う副次的産物から始まったものである。
まさに、趣味と実益を兼ねているのだ。
薬売りは黒い花を一本根っこから採取して、じっと見つめると、狼の影にしまう。その後、前髪をずらして金の目を見開くと、花が生えている地面を観察した。否、地面を透過して地中に埋まっているものを観ていた。
「なるほどな」
納得したように頷くと、狼の影から小瓶をひとつ取り出し、中の液体を黒い花と地面に振りかけた。
「何をしてるんだ?」
そう聞いた瞬間、透明な液体が自ら燃え、数秒で天にも届きそうな白い火柱が上がった。
「この花畑を焼き払うのか?」
その行為の善悪を問うものではなく、薬売りの真意が知りたくて訳ありはそう問うた。
「いや、赤い花は焼かない。黒いのと、その下の土だけだ」
薬売りの言葉通り、白い炎は赤い花には燃え移ることなく、黒い花だけを焼いていく。
「あれは聖火の油という薬だ。怨念や呪いなど、悪しきものだけを燃やす。……まあ、聖水の強化版とでも思ってくれ」
そういうと、薬売りは火柱の中におもむろに手を突っ込んだ。
「ほら、熱くないしやけどもしない。基本的には生きているものには効かない」
ぎょっとした訳ありに、なんの火傷もない綺麗な手をひらひらと振ってみせる。
がしっと手首を掴むと、食い入るように手を見つめる。本当にどこにも傷がないのを確認すると、僅かにため息を漏らした。
「暗殺者だったのに、怪我人を見るのが苦手なのか?」
薬売りの問にハッとする。今までどんな凄惨な拷問も虐殺も、特に心を動かすことなくこなして来た。だと言うのに、今更火傷くらいで何を慌てていたというのか。
「暗殺者という人生を歩まなかったら、お前は案外虫も殺せないような奴だったのかもな」
からかうようにニッと歯をみせる薬売りに、ぐるぐると回りかけた思考が霧散する。
「……いや、さすがにそれはないだろう」
訳ありは答えが出なかったことに少しホッとして、軽く肩を竦めて見せた。
黒い花を焼く炎は徐々に弱まっていき、完全に火が消えると、白い花が残っていた。
「おお。これは予想外の結果だ」
白い花を見た薬売りは、飛びつくように地面にしゃがむと、ウキウキと花を採取し始めた。
「何がどうなったんだ?」
「興味があるのか?」
「あ、ああ……」
訳ありの質問がよほど嬉しかったのだろう。被せるように食いついた薬売りの、今までで一番大きな声に訳ありは思わず身を引いた。
ならば教えてやろうと、薬売りは饒舌に語り出す。
「まず、ここに生えている花が何か知ってるか?」
「いや、知らない」
「この赤い花は紅血花と言って、たくさんの血が流れた場所に咲く花だ」
この地では昔魔物同士の乱戦があり、多くの魔物がこの場所で死に、血が流れた。積み上がった骸が全て土に還ると、代わりに真っ赤な花が地面を覆い尽くした。この場所には紅血花以外の植物は芽吹くことが出来ず、森の住民にはこの花がここで死んだ魔物たちを弔っているといわれている。
「この地は魔物たちの血で穢れてしまっている。そういう場所には紅血花しか自生できない」
紅血花は土地に染み付いた穢れを糧にして成長する。そのため、この花が穢れを吸い、長い時間をかけて徐々に土地を清めてくれる。
「で、さっきの黒い花だが、あれは黒呪花というらしい。元は紅血花と同じ花だが、糧にするものが違う。さっきまでそこの地面に埋まってたものが原因だ」
薬売りは白い花が咲いている地面を指す。訳ありは地面をじっと見つめて、推測を口にした。
「人間の死体か」
「そう。恐く生き埋め死体だ。黒呪花はその怨念を糧にして成長した。寧ろ黒呪花が怨念を少し吸い取ってくれたから、この死体はアンデット化せずに済んだんだろう」
強い怨念は死体や魂を不死系の魔物に変える。特に人間は死に方によってそうなりやすく、今回は埋められたのがここでなければ確実にアンデット化していただろう。
「黒呪花は初めて見たと言っていたが、今までこの森で咲いたことは無かったのか」
「ああ。そもそも、魔物や獣の戦いは対話でもあるし、殺す時は自分が生きるために必要な時だ。それを本能で分かっているから、この森で死んだ魔物に怨念は残らない」
「では人間は?」
この森の人間達は皆訳ありばかりだ。ろくでもない奴ばかりだと、外の人間は噂している。
「この森に来るものは訳あって外の世界では住めなくなったものだ。お互いの境遇に共通点が多いからこそ、助け合って生きている。この森でひとりで生きていくのは難しいからな」
森の中には、魔女に守られた人間の集落があり、人間達はルールを決めて共同生活を送っている。魔女の庇護を得る代わりに定められたルールを守る義務があり、破ったものは追放され、二度と集落には戻れない。
「だからこの森に住む人間同士で殺し合うことはほとんどないし、意外と森の中は秩序が守られている。神性を帯びた聖属性の古き魔物も結構いるし、滅多にアンデット系の魔物は出ない。そして、最近は誰も追放された人間がいないから、多分この生き埋め死体は外の人間の仕業だろう」
ここは森の中でもやや外よりの場所。腕に自信のある人間なら、秘密裏に殺しをするのには最適な場所だ。
「そんなわけで、黒呪花を見たのはこれが初めてだ。訳ありは見たことがあったのか?」
「ああ。古戦場に咲いていることがある。寧ろ紅血花のほうが初めて見た」
「まあ、穢れた土地に必ず芽吹くわけでもないし、人間同士の争いはどうしても怨念が溜まりやすいからな…。外の世界では、紅血花のほうが珍しいんだな」
薬売りは考え込むように、紅血花を見つめる。
「それで、その白い花はなんだ」
「ん?ああ、あれは聖域のような非常に清らかな場所にしか生息しない、白献花という花だ」
神へ献上する花として、神聖視されている花で、聖水や聖火の油の材料にもなる。この森では、唯一、魔女の住処である、聖泉のほとりにのみ咲いている。
他の場所では、その聖域を管理するものだけが、聖水を作ることができるため、宗教に利用されることが多く、管理者を神聖視する傾向がある。
「聖火の油で黒呪花を浄化すれば、紅血花に戻るんじゃないかと思ったんだが、効力が強すぎて血の穢れまで浄化されたみたいだ。そして白献花になった。いやぁ、形とか成長過程とか似てるなとは思ってたけど、まさか同じ花だったとは」
紅血花、黒呪花、白献花。元は同じ花であり、生息地の性質で色や効能などが変わる。
紅血花は増血剤として有用だが、そのままでは副作用が強く処理や容量を間違えると自我を失う危険性がある。しかし、上手く利用出来れば、失血死寸前からの回復も見込める。
黒呪花は猛毒であり、ほんの一滴でも服用すれば、直ちに死に至り、アンデット化する。また、闇の魔力を込めてインクに加工すれば、魂の形である真名を書くことによって、遠方から呪殺することも可能になる。
白献花は、浄化の作用があり、聖水や聖火の油など、魔を祓うための薬の材料になる。また、病の治療薬と一種に飲めば、副作用を抑え、効力を高めてくれるが、希少性故に高価で、王族でもなければそんな使い方はしない。
「まあ、土地全体の穢れはそのままだから、数日したらその白献花も紅血花に戻るだろうけどな。いやぁ、面白い発見だ」
ご機嫌で再び歩き出す薬売りに、訳ありは思わず問いかけた。
「ここで人を生き埋めにした犯人は探さなくていいのか」
訳ありはむしろ余計なことに首を突っ込みたくはなかったが、薬売りはなんだかんだで善良な人間に見えるので、放っておけないのではないかと思った。
自分を追手から助けてくれたように。
「うーん、それはあんまり興味ないな。埋めた後に新しく花が咲いてるってことは、最近とは言っても大分前だろうし、もうとっくにこの森にはいないだろう。それにこの森の秩序を乱すのなら、魔女が許さない。……ま、わたしの出番は無いって事だ」
薬売りは心底どうでも良さそうにボヤいた。薬売りが誰かを助けるのは、目の前、手が届く範囲でことが起こり、見捨てれば後悔しそうな心根の者だけだ。自分のテリトリーの外まで、わざわざ自ら厄介事を抱えに行くような真似はしない。そんな暇があれば、採集する。お人好しではあるが、自分の人生まで犠牲にする気は無いのだ。
思ったより、あっさりした引き際に、訳ありが落胆することはなく、むしろ親近感を覚えた。そして、善良さで自分を飾り立てることなく、ただひたすらに我が道をゆく姿に安堵し、憧れた。
「さあ、散策を再開しよう」
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