29 / 50
余命2年
29.企て
しおりを挟む
エレノアが目覚めてから一週間の時が過ぎようとしていた。
日差しはあたたかだが吹き抜ける風はひんやりと冷たい。
そんな爽やかな陽気の中、エレノアは鏡の前へ。ハウスメイドの協力のもと身支度を整えていた。
(皆、変わりないかしら?)
今日これから彼女は旅立つのだ。遠く離れた地――王都に向かって。
彼女が静養していたのは『古代樹の森』に程近いフォーサイス領・ウインドルという名の城塞都市。
王都に戻るのには馬車で10日、颯や風魔法を駆使しても5日はかかる辺境の地だった。
(極力皆に迷惑をかけないようにしなくては……)
「うわぁ~! とっても綺麗です!!!」
不意にミラが現れた。今日の彼女もまた濃緑色の軍服姿だ。
「そう? ふふっ、ありがとう」
今日のエレノアは着慣れた白のカソックではなく、ブルーグレーのドレスに身を包んでいた。
裾はパニエによってふんわりと。ウエストはコルセットによって絞られて女性らしいボディーラインを見せている。
首にはリボンのチョーカーを。ミルキーブロンドの髪はまとめ上げてつばの小さい帽子をかぶっている。
いずれのアクセサリーもドレスと同系色でまとめており、華美さと上品さの塩梅が絶妙な仕上がりとなっていた。
「ええ、本当に。身に余る光栄ですわ」
話しかけてきたのはミラの夫・ルイスの母であるマチルダ辺境伯夫人だ。
瞳の色は黒。髪は紺青色。スレンダーな体型につり目、そして高く通った鼻筋と全体的にシャープで隙がない。エレノアとは対照的な印象の女性だ。
そんな彼女が身に着けているのは濃紺のフロアドレスだ。デコルテの黒いレースの装飾が目を惹く。
(七児の母にして未だ現役。剣聖として日々防衛任務にあたっていらっしゃるなんて。ああ……本当に素敵ね。叶うことならわたくしもこんな女性でありたかったわ)
とうに見切りをつけた夢だ。けれど、やはりどうにも憧れてしまう。エレノアは微苦笑を一つに頭を切り替える。
「マチルダ様。ご多用中のところお手数をおかけしました」
「とんでもございません。僭越ながら私自身も大変愉しませていただきました」
「まぁ! ふふふっ」
このドレスは夫人から譲り受けたもの。所謂『お古』だ。目的はサプライズ。ターゲットは言うまでもなくユーリだ。
驚かせることを主目的としつつ、あわよくば喜んで貰いたい。そんな思いから秘密裏に計画を進めてきたというわけだ。
「お義母サマ! アタシもお義母サマのお古が欲しいです!」
ミラのその物言いはとても無邪気だった。ミラと夫人の関係が良好なものであると期待するが。
「貴方ではドレスに着られるのがオチです」
夫人はぴしゃりと言い放った。
(……どちらかしら?)
悪意あってのことだろうか。それとも親しい間柄故だろうか。エレノアは忙しなく目を走らせる。
「きぃ~~!!! あー、はいはい!! どーせアタシには品も、ついでに背も、胸もないですよぉ~~だぁ!!」
「無いものではなく、在るものに目を向けなさい。貴方には貴方の伸ばすべき長所があるのですから――」
「っ!? それってつまり……ドレス選びに付き合ってくれるってことですか!?」
「…………………何を言っているの?」
「きゃー!!!! もう!! そういうことならそうとキッチリはっきり言ってくださいよ~♡♡♡」
「なっ!?」
ミラが夫人の腕に抱き着いた。かと思えばそのままぴょんぴょんと跳ね出す。嬉しくて堪らない。そんなところだろうか。
「っ!? お止めなさい! この! ……~~っ、あぁ……もう……」
言動とは裏腹に夫人の表情は緩む一方だ。
(杞憂だったようね)
ミラはこの家に――三大勇者一族の中でも最も厳格とされるフォーサイスに馴染んでいるようだ。
彼女の『王国一の治癒術師』という肩書がプラスに働いたのは言うまでもないだろう。
ただ、彼女もまたλ。次世代にその才を継承させることは出来ない。
長い目で見れば、彼女の妻としての価値はそれほど高いとは言えないだろう。
(決め手はおそらく人柄と熱意ね)
交流や話し合いの末に、ルイスにはミラが必要であると、彼の妻に成り得るのはミラ意外にはないと思い至らせたのだろう。
(感心してばかりもいられないわね。わたくしも励まなければ)
父・ガブリエルにユーリとの結婚を認めて貰えるように。
エレノアは深く頷きつつ、出入口である白い扉に目を向けた。
「参りましょうか」
温度差の激しい嫁姑の会話を背に受けつつ廊下に出る。
大階段の下にはユーリとビルの姿が。共に軍服姿だった。
(あら? 何だかとっても楽しそう)
内容までは聞き取れなかったが、ユーリがビルを笑わせているらしいことは分かった。
(そう。これもまた貴方のお陰なのね)
魔王アイザックは言った。ビルは『修羅』を制した、と。
修羅とは所謂『狂戦士』のことだ。理性を喪失することで潜在域に至るまで力を発揮することが出来る。
アイザックの話ではその資質を持ち得るのは人族だけ。
それも数百年に一人の割り合いでしか確認されていない非常に稀有な存在であるそうだ。
ビルの一つ前、王国で修羅が確認されたのは1000年ほど前のこと。
その人物はいくつもの偉業を打ち立てながらも狂人ぶりから畏怖され、最終的に同胞の手により処刑。歴史の闇に葬り去られてしまった――とのことだった。
『修羅の資質を持つ者は総じて不幸に見舞われやすい。彼の者も然り。母、弟妹、親友、従者。力を持ちながらいずれも守れなんだ。……もしかすると、あの勇者とて例外ではないのやもしれぬ』
(……と、彼は言っていたけれど)
エレノアは改めて階下にいる二人に目を向けた。
変わらず楽し気だ。溢れんばかりの信頼と親しみが伝わってくる。
(一方通行なんかじゃない。互いが互いを守り合っている。守り守られる関係にあるのね)
だからこその『信頼』、だからこその『親しみ』なのだろう。
(貴方で良かった)
この出会いに改めて感謝する。何度も。何度も。
「なっ……!」
ユーリと目が合う。彼の表情は驚きから照れへ。色白な頬が見る見るうちに赤く染まっていく。
「ふふっ」
エレノアは礼をした。膨らんだ鼻孔を隠すように。
「成功ですね! エレノア様ッ!」
エレノアは頭を下げたままミラにウインクを送った。
(……さて)
ゆっくりと頭を上げる。ユーリは変わらず階下にいた。ビルから助言を受けているようだ。ユーリの表情が時を経るごとに硬くなっていく。
(意識してくれていると……そう思っていいのかしら?)
エレノアの口元が緩んでいく。咳払いを一つ。誤魔化すようにして笑みを零した。
「ビルさんってば、ま~だ独身貫いてるんですよ」
ミラが唐突に切り出した。彼女はビルに失恋をしている。お道化た調子で返すのは気が引けて無難に返すことにした。
「道を極めるためね」
「違うと思います」
「えっ?」
「痩せ我慢をしているような気がするんです。本当は欲しいのに、欲しくて堪らないのに要らないって言ってるみたいな……そんな気がして」
「……そう」
「単なる負け惜しみかもしれませんけど」
エレノアは小さく首を左右に振りつつ、改めてビルの方に目を向けた。
ビルは修羅の特性を理解していた。
(6年程前――アイザックがここウインドルに攻め込んできたのよね)
ビルの親友アーサー・フォーサイスと、レイの師匠エルヴェ・ロベールの遺体を操り、ビルとレイの心を揺さぶりにかかった。
レイは毅然とした態度で対処したようだが、ビルは怒りを抑えきれずオーラを真っ赤に染めてしまった。
(そうしてアイザックは修羅について語った。ただその宿命については……苦難の星の下に生まれているという点については触れなかった)
エレノアも結局言い出すことが出来なかった。だが、ビル自身既に勘づいているのかもしれない。
(故に遠ざけているのだとしたら……これほど哀しいことはないわ)
力になりたいと思う。せめてその一歩を踏み出せるように。
「お待たせしました」
気付けばユーリが横に。足を前に出して身を低くしていた。王国における男性の礼法だ。
エレノアは微笑みを湛えつつカーテシーで応える。
日差しはあたたかだが吹き抜ける風はひんやりと冷たい。
そんな爽やかな陽気の中、エレノアは鏡の前へ。ハウスメイドの協力のもと身支度を整えていた。
(皆、変わりないかしら?)
今日これから彼女は旅立つのだ。遠く離れた地――王都に向かって。
彼女が静養していたのは『古代樹の森』に程近いフォーサイス領・ウインドルという名の城塞都市。
王都に戻るのには馬車で10日、颯や風魔法を駆使しても5日はかかる辺境の地だった。
(極力皆に迷惑をかけないようにしなくては……)
「うわぁ~! とっても綺麗です!!!」
不意にミラが現れた。今日の彼女もまた濃緑色の軍服姿だ。
「そう? ふふっ、ありがとう」
今日のエレノアは着慣れた白のカソックではなく、ブルーグレーのドレスに身を包んでいた。
裾はパニエによってふんわりと。ウエストはコルセットによって絞られて女性らしいボディーラインを見せている。
首にはリボンのチョーカーを。ミルキーブロンドの髪はまとめ上げてつばの小さい帽子をかぶっている。
いずれのアクセサリーもドレスと同系色でまとめており、華美さと上品さの塩梅が絶妙な仕上がりとなっていた。
「ええ、本当に。身に余る光栄ですわ」
話しかけてきたのはミラの夫・ルイスの母であるマチルダ辺境伯夫人だ。
瞳の色は黒。髪は紺青色。スレンダーな体型につり目、そして高く通った鼻筋と全体的にシャープで隙がない。エレノアとは対照的な印象の女性だ。
そんな彼女が身に着けているのは濃紺のフロアドレスだ。デコルテの黒いレースの装飾が目を惹く。
(七児の母にして未だ現役。剣聖として日々防衛任務にあたっていらっしゃるなんて。ああ……本当に素敵ね。叶うことならわたくしもこんな女性でありたかったわ)
とうに見切りをつけた夢だ。けれど、やはりどうにも憧れてしまう。エレノアは微苦笑を一つに頭を切り替える。
「マチルダ様。ご多用中のところお手数をおかけしました」
「とんでもございません。僭越ながら私自身も大変愉しませていただきました」
「まぁ! ふふふっ」
このドレスは夫人から譲り受けたもの。所謂『お古』だ。目的はサプライズ。ターゲットは言うまでもなくユーリだ。
驚かせることを主目的としつつ、あわよくば喜んで貰いたい。そんな思いから秘密裏に計画を進めてきたというわけだ。
「お義母サマ! アタシもお義母サマのお古が欲しいです!」
ミラのその物言いはとても無邪気だった。ミラと夫人の関係が良好なものであると期待するが。
「貴方ではドレスに着られるのがオチです」
夫人はぴしゃりと言い放った。
(……どちらかしら?)
悪意あってのことだろうか。それとも親しい間柄故だろうか。エレノアは忙しなく目を走らせる。
「きぃ~~!!! あー、はいはい!! どーせアタシには品も、ついでに背も、胸もないですよぉ~~だぁ!!」
「無いものではなく、在るものに目を向けなさい。貴方には貴方の伸ばすべき長所があるのですから――」
「っ!? それってつまり……ドレス選びに付き合ってくれるってことですか!?」
「…………………何を言っているの?」
「きゃー!!!! もう!! そういうことならそうとキッチリはっきり言ってくださいよ~♡♡♡」
「なっ!?」
ミラが夫人の腕に抱き着いた。かと思えばそのままぴょんぴょんと跳ね出す。嬉しくて堪らない。そんなところだろうか。
「っ!? お止めなさい! この! ……~~っ、あぁ……もう……」
言動とは裏腹に夫人の表情は緩む一方だ。
(杞憂だったようね)
ミラはこの家に――三大勇者一族の中でも最も厳格とされるフォーサイスに馴染んでいるようだ。
彼女の『王国一の治癒術師』という肩書がプラスに働いたのは言うまでもないだろう。
ただ、彼女もまたλ。次世代にその才を継承させることは出来ない。
長い目で見れば、彼女の妻としての価値はそれほど高いとは言えないだろう。
(決め手はおそらく人柄と熱意ね)
交流や話し合いの末に、ルイスにはミラが必要であると、彼の妻に成り得るのはミラ意外にはないと思い至らせたのだろう。
(感心してばかりもいられないわね。わたくしも励まなければ)
父・ガブリエルにユーリとの結婚を認めて貰えるように。
エレノアは深く頷きつつ、出入口である白い扉に目を向けた。
「参りましょうか」
温度差の激しい嫁姑の会話を背に受けつつ廊下に出る。
大階段の下にはユーリとビルの姿が。共に軍服姿だった。
(あら? 何だかとっても楽しそう)
内容までは聞き取れなかったが、ユーリがビルを笑わせているらしいことは分かった。
(そう。これもまた貴方のお陰なのね)
魔王アイザックは言った。ビルは『修羅』を制した、と。
修羅とは所謂『狂戦士』のことだ。理性を喪失することで潜在域に至るまで力を発揮することが出来る。
アイザックの話ではその資質を持ち得るのは人族だけ。
それも数百年に一人の割り合いでしか確認されていない非常に稀有な存在であるそうだ。
ビルの一つ前、王国で修羅が確認されたのは1000年ほど前のこと。
その人物はいくつもの偉業を打ち立てながらも狂人ぶりから畏怖され、最終的に同胞の手により処刑。歴史の闇に葬り去られてしまった――とのことだった。
『修羅の資質を持つ者は総じて不幸に見舞われやすい。彼の者も然り。母、弟妹、親友、従者。力を持ちながらいずれも守れなんだ。……もしかすると、あの勇者とて例外ではないのやもしれぬ』
(……と、彼は言っていたけれど)
エレノアは改めて階下にいる二人に目を向けた。
変わらず楽し気だ。溢れんばかりの信頼と親しみが伝わってくる。
(一方通行なんかじゃない。互いが互いを守り合っている。守り守られる関係にあるのね)
だからこその『信頼』、だからこその『親しみ』なのだろう。
(貴方で良かった)
この出会いに改めて感謝する。何度も。何度も。
「なっ……!」
ユーリと目が合う。彼の表情は驚きから照れへ。色白な頬が見る見るうちに赤く染まっていく。
「ふふっ」
エレノアは礼をした。膨らんだ鼻孔を隠すように。
「成功ですね! エレノア様ッ!」
エレノアは頭を下げたままミラにウインクを送った。
(……さて)
ゆっくりと頭を上げる。ユーリは変わらず階下にいた。ビルから助言を受けているようだ。ユーリの表情が時を経るごとに硬くなっていく。
(意識してくれていると……そう思っていいのかしら?)
エレノアの口元が緩んでいく。咳払いを一つ。誤魔化すようにして笑みを零した。
「ビルさんってば、ま~だ独身貫いてるんですよ」
ミラが唐突に切り出した。彼女はビルに失恋をしている。お道化た調子で返すのは気が引けて無難に返すことにした。
「道を極めるためね」
「違うと思います」
「えっ?」
「痩せ我慢をしているような気がするんです。本当は欲しいのに、欲しくて堪らないのに要らないって言ってるみたいな……そんな気がして」
「……そう」
「単なる負け惜しみかもしれませんけど」
エレノアは小さく首を左右に振りつつ、改めてビルの方に目を向けた。
ビルは修羅の特性を理解していた。
(6年程前――アイザックがここウインドルに攻め込んできたのよね)
ビルの親友アーサー・フォーサイスと、レイの師匠エルヴェ・ロベールの遺体を操り、ビルとレイの心を揺さぶりにかかった。
レイは毅然とした態度で対処したようだが、ビルは怒りを抑えきれずオーラを真っ赤に染めてしまった。
(そうしてアイザックは修羅について語った。ただその宿命については……苦難の星の下に生まれているという点については触れなかった)
エレノアも結局言い出すことが出来なかった。だが、ビル自身既に勘づいているのかもしれない。
(故に遠ざけているのだとしたら……これほど哀しいことはないわ)
力になりたいと思う。せめてその一歩を踏み出せるように。
「お待たせしました」
気付けばユーリが横に。足を前に出して身を低くしていた。王国における男性の礼法だ。
エレノアは微笑みを湛えつつカーテシーで応える。
0
お気に入りに追加
28
あなたにおすすめの小説
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
やめてよ、お姉ちゃん!
日和崎よしな
キャラ文芸
―あらすじ―
姉・染紅華絵は才色兼備で誰からも憧憬の的の女子高生。
だが実は、弟にだけはとんでもない傍若無人を働く怪物的存在だった。
彼女がキレる頭脳を駆使して弟に非道の限りを尽くす!?
そんな日常を描いた物語。
―作品について―
全32話、約12万字。
隠れドS上司をうっかり襲ったら、独占愛で縛られました
加地アヤメ
恋愛
商品企画部で働く三十歳の春陽は、周囲の怒涛の結婚ラッシュに財布と心を痛める日々。結婚相手どころか何年も恋人すらいない自分は、このまま一生独り身かも――と盛大に凹んでいたある日、酔った勢いでクールな上司・千木良を押し倒してしまった!? 幸か不幸か何も覚えていない春陽に、全てなかったことにしてくれた千木良。だけど、不意打ちのように甘やかしてくる彼の思わせぶりな言動に、どうしようもなく心と体が疼いてしまい……。「どうやら私は、かなり独占欲が強い、嫉妬深い男のようだよ」クールな隠れドS上司をうっかりその気にさせてしまったアラサー女子の、甘すぎる受難!
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。


甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。
海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。
ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。
「案外、本当に君以外いないかも」
「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」
「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」
そのドクターの甘さは手加減を知らない。
【登場人物】
末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。
恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる?
田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い?
【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】

家出したとある辺境夫人の話
あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
『突然ではございますが、私はあなたと離縁し、このお屋敷を去ることにいたしました』
これは、一通の置き手紙からはじまった一組の心通わぬ夫婦のお語。
※ちゃんとハッピーエンドです。ただし、主人公にとっては。
※他サイトでも掲載します。

【完結】新皇帝の後宮に献上された姫は、皇帝の寵愛を望まない
ユユ
恋愛
周辺諸国19国を統べるエテルネル帝国の皇帝が崩御し、若い皇子が即位した2年前から従属国が次々と姫や公女、もしくは美女を献上している。
既に帝国の令嬢数人と従属国から18人が後宮で住んでいる。
未だ献上していなかったプロプル王国では、王女である私が仕方なく献上されることになった。
後宮の余った人気のない部屋に押し込まれ、選択を迫られた。
欲の無い王女と、女達の醜い争いに辟易した新皇帝の噛み合わない新生活が始まった。
* 作り話です
* そんなに長くしない予定です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる