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25:新たな陶工※
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雪解けし、陽光を浴びて花が咲く瞬間は瞬く間に過ぎていき、今は炎暑の夏である。
アヒムの世界は小さな窓が一つある部屋と工房だけであり、春などはない。季節を感じるのは、ただ暑いか寒いかだけなのだ。
この小さな檻の中で、暑くなったり寒くなったりと季節だけが忙しなくかわり、時間の感覚が鈍くなっていく。
炎昼では火をおこしている工房は湯だるような暑さで、必然的に薄着となる。
白い肌をかすかに紅潮させ、汗をしたらせる姿は目に毒であり、警備の衛兵や時折清掃などでやってくる使用人たちが魅了されていた。
「ジーク。その怪我はどうしたんだ?」
「お前へのやっかみだよ」
工房にやってきたジークには殴られたような大きな痣や出血がみられる。とくに腕をやられたのか、右腕をおさえて痛みをこらえているような表情をしている。
「オスヴァルト卿に頼んで医者を連れてきてもらおう」
ジークを椅子に座らせるとアヒムは傷を確認して、自分では手当てすることが難しいと判断した。
「陛下にも報告して、犯人を突き止めないと」
「待て」
オスヴァルトを呼ぼうと工房の外に出ようとすると、ジークが引き留めた。
「陛下に報告するなら、俺は当分使い物にならないから、新しい助手をつけるように言ってくれ」
おそらく骨が折れているようで、土を練ることも窯で焼くこともできない。それらをアヒム一人ですることはできない。
「陛下にお願いしてはみるけれど、許してもらえるかはわからないよ」
アヒムは困ったように笑ってオスヴァルトを呼びに行った。
ジークは治療を受けると、帰宅させられた。彼に怪我を負わせた者は重い罰をうけ城を追い出された。
ジークの言う新しい助手は王に受け入れられることはなく、しばらくはアヒム一人で土をいじり、火をおこし、焼成した。
「アヒムよ。その手はどうしたのだ」
アヒムの手は作業によって、皮剥けやひび割れなどが起きており赤く荒れていた。火傷の痕もあり、水ぶくれもできている。
もともとアヒムに陶工の知識はなく、焼成の作業などはジークに任せていた。だから慣れないことをしてこれ程までに手が荒れているのだ。
「ジークがいないので、自分で焼いているのですが、慣れなくて」
王はアヒムの手をとり、複雑そうな顔をした。
「そなたの白魚のような手がこれほどまで醜くなるなど許せぬ」
「あっ」
王はアヒムの手を舐めて、人差し指を甘く噛んだ。
「このように手を傷つける作業などするな」
「んっ。ですが、それが僕の仕事で、ここにいる理由ですよ」
手の傷を抉るように王の舌が這う。アヒムはその痛みに顔を歪めながらも、誘うように甘い声を出す。
「僕のことを思うなら、陶工の助手をつけてください」
アヒムは王に体を寄せて寝所でねだるように囁いた。
「心配ならば、陛下がしっかりと人を選んでください。陛下を裏切らない人を」
自分ではない、誰かを見つけてくれと願いながらアヒムは王に懇願し、体を開いた。
孔はいつでも王の昂りを受け入れられるようになっており、厭らしくひくついている。
「そなたの体に傷ひとつつけることは許さない」
王は他の部位に傷がないか確認するようにまんべんなく触って確認していく。
手の荒れ以外は、作業で少し痩せてうっすらと筋肉がついた程度で特に何も問題ない。
最後に確認する場所は、王を誘うように蠢く中だ。王は躊躇なく孔に指を入れて広げるようにかき混ぜる。
「ああん。ふふっ、くすぐったい。へいか、はやくぅ」
王はアヒムの腹に吸い付き、舌を這わせて上に上っていく。
チリッと胸元に痛みを感じると、王はアヒムの胸から顔をあげて優越感に浸るように笑った。
「そなたの体に痕をつけていいのは余だけだ」
「あぁ!」
いきなり雄がアヒムの中に入ってきて最奥まで犯した。
仰向けになったアヒムの薄い腹は王がどこにいるかを示すように微かに膨らみ、動きにあわせてボコボコと変形する。
「ふぁ…。んんっ! ああぃ、いい、きもちっ」
アヒムは王の動きにあわせて腰を振って、淫らな声をあげながら快楽に嗤った。
真っ暗な瞳をねじ曲げて微笑んで、涎と精液にまみれながらいつもと変わらないように王の胤を腹に受け止めた。
そうして王が直接選んだ者があたらしく工房に入ってきた。
名前はヨーゼフ。アヒムと同年代くらいの美丈夫で自尊心の強い、どこか野心家のような人だ。
ヨーゼフはアヒムの色香に惑わされることは絶対にないと、王は確信していた。
ヨーゼフの対象はアヒムではなく、王だ。その関心を買おうとしていた。分不相応にも、アヒム程度が王の寵愛をうけられるなら、自分だってその寵愛を得られると思っているのだ。
「はじめまして、ヨーゼフ。これからよろしく」
アヒムはヨーゼフの本質を知りつつも、笑みを浮かべて挨拶をした。
彼が、王を引き剥がしてくれればいいのにと願いながら。
アヒムの世界は小さな窓が一つある部屋と工房だけであり、春などはない。季節を感じるのは、ただ暑いか寒いかだけなのだ。
この小さな檻の中で、暑くなったり寒くなったりと季節だけが忙しなくかわり、時間の感覚が鈍くなっていく。
炎昼では火をおこしている工房は湯だるような暑さで、必然的に薄着となる。
白い肌をかすかに紅潮させ、汗をしたらせる姿は目に毒であり、警備の衛兵や時折清掃などでやってくる使用人たちが魅了されていた。
「ジーク。その怪我はどうしたんだ?」
「お前へのやっかみだよ」
工房にやってきたジークには殴られたような大きな痣や出血がみられる。とくに腕をやられたのか、右腕をおさえて痛みをこらえているような表情をしている。
「オスヴァルト卿に頼んで医者を連れてきてもらおう」
ジークを椅子に座らせるとアヒムは傷を確認して、自分では手当てすることが難しいと判断した。
「陛下にも報告して、犯人を突き止めないと」
「待て」
オスヴァルトを呼ぼうと工房の外に出ようとすると、ジークが引き留めた。
「陛下に報告するなら、俺は当分使い物にならないから、新しい助手をつけるように言ってくれ」
おそらく骨が折れているようで、土を練ることも窯で焼くこともできない。それらをアヒム一人ですることはできない。
「陛下にお願いしてはみるけれど、許してもらえるかはわからないよ」
アヒムは困ったように笑ってオスヴァルトを呼びに行った。
ジークは治療を受けると、帰宅させられた。彼に怪我を負わせた者は重い罰をうけ城を追い出された。
ジークの言う新しい助手は王に受け入れられることはなく、しばらくはアヒム一人で土をいじり、火をおこし、焼成した。
「アヒムよ。その手はどうしたのだ」
アヒムの手は作業によって、皮剥けやひび割れなどが起きており赤く荒れていた。火傷の痕もあり、水ぶくれもできている。
もともとアヒムに陶工の知識はなく、焼成の作業などはジークに任せていた。だから慣れないことをしてこれ程までに手が荒れているのだ。
「ジークがいないので、自分で焼いているのですが、慣れなくて」
王はアヒムの手をとり、複雑そうな顔をした。
「そなたの白魚のような手がこれほどまで醜くなるなど許せぬ」
「あっ」
王はアヒムの手を舐めて、人差し指を甘く噛んだ。
「このように手を傷つける作業などするな」
「んっ。ですが、それが僕の仕事で、ここにいる理由ですよ」
手の傷を抉るように王の舌が這う。アヒムはその痛みに顔を歪めながらも、誘うように甘い声を出す。
「僕のことを思うなら、陶工の助手をつけてください」
アヒムは王に体を寄せて寝所でねだるように囁いた。
「心配ならば、陛下がしっかりと人を選んでください。陛下を裏切らない人を」
自分ではない、誰かを見つけてくれと願いながらアヒムは王に懇願し、体を開いた。
孔はいつでも王の昂りを受け入れられるようになっており、厭らしくひくついている。
「そなたの体に傷ひとつつけることは許さない」
王は他の部位に傷がないか確認するようにまんべんなく触って確認していく。
手の荒れ以外は、作業で少し痩せてうっすらと筋肉がついた程度で特に何も問題ない。
最後に確認する場所は、王を誘うように蠢く中だ。王は躊躇なく孔に指を入れて広げるようにかき混ぜる。
「ああん。ふふっ、くすぐったい。へいか、はやくぅ」
王はアヒムの腹に吸い付き、舌を這わせて上に上っていく。
チリッと胸元に痛みを感じると、王はアヒムの胸から顔をあげて優越感に浸るように笑った。
「そなたの体に痕をつけていいのは余だけだ」
「あぁ!」
いきなり雄がアヒムの中に入ってきて最奥まで犯した。
仰向けになったアヒムの薄い腹は王がどこにいるかを示すように微かに膨らみ、動きにあわせてボコボコと変形する。
「ふぁ…。んんっ! ああぃ、いい、きもちっ」
アヒムは王の動きにあわせて腰を振って、淫らな声をあげながら快楽に嗤った。
真っ暗な瞳をねじ曲げて微笑んで、涎と精液にまみれながらいつもと変わらないように王の胤を腹に受け止めた。
そうして王が直接選んだ者があたらしく工房に入ってきた。
名前はヨーゼフ。アヒムと同年代くらいの美丈夫で自尊心の強い、どこか野心家のような人だ。
ヨーゼフはアヒムの色香に惑わされることは絶対にないと、王は確信していた。
ヨーゼフの対象はアヒムではなく、王だ。その関心を買おうとしていた。分不相応にも、アヒム程度が王の寵愛をうけられるなら、自分だってその寵愛を得られると思っているのだ。
「はじめまして、ヨーゼフ。これからよろしく」
アヒムはヨーゼフの本質を知りつつも、笑みを浮かべて挨拶をした。
彼が、王を引き剥がしてくれればいいのにと願いながら。
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