上 下
25 / 37

25:新たな陶工※

しおりを挟む
雪解けし、陽光を浴びて花が咲く瞬間は瞬く間に過ぎていき、今は炎暑の夏である。

アヒムの世界は小さな窓が一つある部屋と工房だけであり、春などはない。季節を感じるのは、ただ暑いか寒いかだけなのだ。

この小さな檻の中で、暑くなったり寒くなったりと季節だけが忙しなくかわり、時間の感覚が鈍くなっていく。

炎昼では火をおこしている工房は湯だるような暑さで、必然的に薄着となる。

白い肌をかすかに紅潮させ、汗をしたらせる姿は目に毒であり、警備の衛兵や時折清掃などでやってくる使用人たちが魅了されていた。

「ジーク。その怪我はどうしたんだ?」

「お前へのやっかみだよ」

工房にやってきたジークには殴られたような大きな痣や出血がみられる。とくに腕をやられたのか、右腕をおさえて痛みをこらえているような表情をしている。

「オスヴァルト卿に頼んで医者を連れてきてもらおう」

ジークを椅子に座らせるとアヒムは傷を確認して、自分では手当てすることが難しいと判断した。

「陛下にも報告して、犯人を突き止めないと」

「待て」

オスヴァルトを呼ぼうと工房の外に出ようとすると、ジークが引き留めた。

「陛下に報告するなら、俺は当分使い物にならないから、新しい助手をつけるように言ってくれ」

おそらく骨が折れているようで、土を練ることも窯で焼くこともできない。それらをアヒム一人ですることはできない。

「陛下にお願いしてはみるけれど、許してもらえるかはわからないよ」

アヒムは困ったように笑ってオスヴァルトを呼びに行った。

ジークは治療を受けると、帰宅させられた。彼に怪我を負わせた者は重い罰をうけ城を追い出された。

ジークの言う新しい助手は王に受け入れられることはなく、しばらくはアヒム一人で土をいじり、火をおこし、焼成した。

「アヒムよ。その手はどうしたのだ」

アヒムの手は作業によって、皮剥けやひび割れなどが起きており赤く荒れていた。火傷の痕もあり、水ぶくれもできている。

もともとアヒムに陶工の知識はなく、焼成の作業などはジークに任せていた。だから慣れないことをしてこれ程までに手が荒れているのだ。

「ジークがいないので、自分で焼いているのですが、慣れなくて」

王はアヒムの手をとり、複雑そうな顔をした。

「そなたの白魚のような手がこれほどまで醜くなるなど許せぬ」

「あっ」

王はアヒムの手を舐めて、人差し指を甘く噛んだ。

「このように手を傷つける作業などするな」

「んっ。ですが、それが僕の仕事で、ここにいる理由ですよ」

手の傷を抉るように王の舌が這う。アヒムはその痛みに顔を歪めながらも、誘うように甘い声を出す。

「僕のことを思うなら、陶工の助手をつけてください」

アヒムは王に体を寄せて寝所でねだるように囁いた。

「心配ならば、陛下がしっかりと人を選んでください。陛下を裏切らない人を」

自分ではない、誰かを見つけてくれと願いながらアヒムは王に懇願し、体を開いた。

孔はいつでも王の昂りを受け入れられるようになっており、厭らしくひくついている。

「そなたの体に傷ひとつつけることは許さない」

王は他の部位に傷がないか確認するようにまんべんなく触って確認していく。

手の荒れ以外は、作業で少し痩せてうっすらと筋肉がついた程度で特に何も問題ない。

最後に確認する場所は、王を誘うように蠢く中だ。王は躊躇なく孔に指を入れて広げるようにかき混ぜる。

「ああん。ふふっ、くすぐったい。へいか、はやくぅ」

王はアヒムの腹に吸い付き、舌を這わせて上に上っていく。

チリッと胸元に痛みを感じると、王はアヒムの胸から顔をあげて優越感に浸るように笑った。

「そなたの体に痕をつけていいのは余だけだ」

「あぁ!」

いきなり雄がアヒムの中に入ってきて最奥まで犯した。

仰向けになったアヒムの薄い腹は王がどこにいるかを示すように微かに膨らみ、動きにあわせてボコボコと変形する。

「ふぁ…。んんっ! ああぃ、いい、きもちっ」

アヒムは王の動きにあわせて腰を振って、淫らな声をあげながら快楽に嗤った。

真っ暗な瞳をねじ曲げて微笑んで、涎と精液にまみれながらいつもと変わらないように王の胤を腹に受け止めた。

そうして王が直接選んだ者があたらしく工房に入ってきた。

名前はヨーゼフ。アヒムと同年代くらいの美丈夫で自尊心の強い、どこか野心家のような人だ。

ヨーゼフはアヒムの色香に惑わされることは絶対にないと、王は確信していた。

ヨーゼフの対象はアヒムではなく、王だ。その関心を買おうとしていた。分不相応にも、アヒム程度が王の寵愛をうけられるなら、自分だってその寵愛を得られると思っているのだ。

「はじめまして、ヨーゼフ。これからよろしく」

アヒムはヨーゼフの本質を知りつつも、笑みを浮かべて挨拶をした。

彼が、王を引き剥がしてくれればいいのにと願いながら。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

召喚された美人サラリーマンは性欲悪魔兄弟達にイカされる

KUMA
BL
朱刃音碧(あかばねあおい)30歳。 ある有名な大人の玩具の開発部門で、働くサラリーマン。 ある日暇をモテ余す悪魔達に、逆召喚され混乱する余裕もなく悪魔達にセックスされる。 性欲悪魔(8人攻め)×人間 エロいリーマンに悪魔達は釘付け…『お前は俺達のもの。』

転生したら悪の組織の幹部だったけど、大好きなヒーローに会えて大満足だった俺の話

多崎リクト
BL
トラックに轢かれたはずの主人公は、気がつくと大好きだったニチアサの「炎の戦士フレイム」の世界にいた。 黒川甲斐(くろかわ かい)として転生した彼は、なんと、フレイムの正体である正岡焔(まさおか ほむら)の親友で、 その正体は悪の組織エタニティの幹部ブラックナイトだった!! 「え、つまり、フレイムと触れ合えるの?」 だが、彼の知るフレイムとは話が変わっていって―― 正岡焔×黒川甲斐になります。ムーンライトノベルズ様にも投稿中。 ※はR18シーンあり 表紙は宝乃あいらんど様に頂きました!

溺愛

papiko
BL
長い間、地下に名目上の幽閉、実際は監禁されていたルートベルト。今年で20年目になる檻の中での生活。――――――――ついに動き出す。 ※やってないです。 ※オメガバースではないです。 【リクエストがあれば執筆します。】

側妻になった男の僕。

selen
BL
国王と平民による禁断の主従らぶ。。を書くつもりです(⌒▽⌒)よかったらみてね☆☆

帝国皇子のお婿さんになりました

クリム
BL
 帝国の皇太子エリファス・ロータスとの婚姻を神殿で誓った瞬間、ハルシオン・アスターは自分の前世を思い出す。普通の日本人主婦だったことを。  そして『白い結婚』だったはずの婚姻後、皇太子の寝室に呼ばれることになり、ハルシオンはひた隠しにして来た事実に直面する。王族の姫が19歳まで独身を貫いたこと、その真実が暴かれると、出自の小王国は滅ぼされかねない。 「それなら皇太子殿下に一服盛りますかね、主様」 「そうだね、クーちゃん。ついでに血袋で寝台を汚してなんちゃって既成事実を」 「では、盛って服を乱して、血を……主様、これ……いや、まさかやる気ですか?」 「うん、クーちゃん」 「クーちゃんではありません、クー・チャンです。あ、主様、やめてください!」  これは隣国の帝国皇太子に嫁いだ小王国の『姫君』のお話。

【完結】『ルカ』

瀬川香夜子
BL
―――目が覚めた時、自分の中は空っぽだった。 倒れていたところを一人の老人に拾われ、目覚めた時には記憶を無くしていた。 クロと名付けられ、親切な老人―ソニーの家に置いて貰うことに。しかし、記憶は一向に戻る気配を見せない。 そんなある日、クロを知る青年が現れ……? 貴族の青年×記憶喪失の青年です。 ※自サイトでも掲載しています。 2021年6月28日 本編完結

潜入捜査でマフィアのドンの愛人になったのに、正体バレて溺愛監禁された話

あかさたな!
BL
潜入捜査官のユウジは マフィアのボスの愛人まで潜入していた。 だがある日、それがボスにバレて、 執着監禁されちゃって、 幸せになっちゃう話 少し歪んだ愛だが、ルカという歳下に メロメロに溺愛されちゃう。 そんなハッピー寄りなティーストです! ▶︎潜入捜査とかスパイとか設定がかなりゆるふわですが、 雰囲気だけ楽しんでいただけると幸いです! _____ ▶︎タイトルそのうち変えます 2022/05/16変更! 拘束(仮題名)→ 潜入捜査でマフィアのドンの愛人になったのに、正体バレて溺愛監禁された話 ▶︎毎日18時更新頑張ります!一万字前後のお話に収める予定です 2022/05/24の更新は1日お休みします。すみません。   ▶︎▶︎r18表現が含まれます※ ◀︎◀︎ _____

楓の散る前に。

星未めう
BL
病弱な僕と働き者の弟。でも、血は繋がってない。 甘やかしたい、甘やかされてはいけない。 1人にしたくない、1人にならなくちゃいけない。 愛したい、愛されてはいけない。 はじめまして、星見めうと申します。普段は二次創作で活動しておりますが、このたび一次創作を始めるにあたってこちらのサイトを使用させていただくことになりました。話の中に体調不良表現が多く含まれます。嘔吐等も出てくると思うので苦手な方はプラウザバックよろしくお願いします。 ゆっくりゆるゆる更新になるかと思われます。ちょくちょくネタ等呟くかもしれないTwitterを貼っておきます。 星見めう https://twitter.com/hoshimimeu_00 普段は二次垢におりますのでもしご興味がありましたらその垢にリンクあります。 お気に入り、しおり、感想等ありがとうございます!ゆっくり更新ですが、これからもよろしくお願いします(*´˘`*)♡

処理中です...