白亜城の麗しき錬金術師

土岐ゆうば(金湯叶)

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17:リタという女※

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リタは王とともにあらわれたアヒムに驚いた様子だった。

アヒムと城から逃げる約束をしていたのに、彼女は薄いネグリジェを着て王を待っていたのだ。

その姿はあきらかにアヒムとともに逃亡する者ではなく、王の渡りをまつ女そのものである。

しかもアヒムが部屋を出て工房で王と話していた時間はそれほど長くない。それなのに彼女がこうしているということは計画性があったとしか感じられない。

「……」

言葉すらでなかった。

愛していた女の裏切りの衝撃にアヒムはたたらを踏む。だが更なる衝撃がアヒムを襲う。

「まぐわえ」

王の言葉はあきらかにアヒムとリタをさして言っていた。

王の目の前で想い人とそういったことをしろというのだ。狂っている。

「なっ! 他人に男女のいとなみを見せるなんて辱しめを受けるなんて死んだほうがましだ!」

アヒムは興奮して相手が王であることも忘れて啖呵を切る。だが王はそんなことは気にした素振りも見せない。

「そう思っているのはそなただけだ。リタとやら、アヒムの筆下ろしをしろ。もし、こやつの子を身籠ったら余の子と認知し爵位をやろう。こやつに似た子であったらさらに継承権もやろう」

王の言葉は信じられないものであった。

自分の胤ではない、別の胤を王族として認め遇すると言っているのだ。こんな天変地異はあり得ない。

「わかりました」

リタはあっさりと王の命令を受け入れてアヒムにすりよった。

胸焼けしそうな甘い匂いを漂わせて、アヒムの頬に手を添えて深く口付けをする。

「んっ!? リ、リタ。やめるんだ!」

リタを無理やり引き離すが、彼女は臆することなくアヒムをベッドに押し倒した。

「こんなこと間違っている。君を愛しているんだ……」

切願すると、リタはアヒムを見下ろしながら今まで見たこともないような表情で笑った。

「あら、残念ね。私は愛していないわ。でも、その綺麗な顔だけは大好きよ」

リタの言葉に衝撃をうけて動けなくなった。

彼女はアヒムの体をまさぐりながら服を脱がせていく。

「アヒムよ。余はそなたに前を埋める快楽を教えてやることはできない。だから一度だけ女を抱く機会を与えよう。そしていかに余が与えるものがよいものかを知れ」

王はイスに座ってサーカスでもみるかのようにアヒムの行為を見ていた。

彼が座ってるイスは、世話役のために新しく用意された簡易なものである。それを玉座のように座っている。

「っ!」

リタがアヒムの露出した下半身を昂らせようと愛撫する。

それはとうとう彼女の口によって慰められようとしていた。

「ここに毛がないからやりやすいわ」

リタの言葉に羞恥を覚えた。

アヒムの下生えは王に剃られてから定期的に処理していた。それは王の訪れがなくなってからも、チクチクとして不快だったため継続されていた。

「やめっ!」

リタを振り払おうとした。アヒムは男でリタよりも力がある。そんなことは容易にできるだろう。

「拒めば命はないと思え」

王の一言でピタリと動きを止める。

王がアヒムを殺すことはない。証拠はないが確信はあった。彼が言う命とはリタのことだろう。

裏切られても、今までが嘘であっても、アヒムはやはりリタが好きだった。だから抵抗せずに言うことを聞くしかなかった。

「んっ!」

「ふふふ、勃ってきたわ」

リタの生暖かい口腔につつまれて芯をもちはじめる。

口で慰められたことなどないアヒムはその刺激にあっさりと陥落した。 

「……っ」

リタはアヒムを口に含みながら、自らの陰部に触れていた。

彼女のしていることがまったくわからないアヒムはただされるがままベッドで寝ていた。

そうしてあっという間にアヒムは女に呑み込まれていた。

「ああん」

リタの甲高くわざとらしく甘い声が耳にこびりつく。

アヒムを包む温かく蠢く得体の知れない感覚に乱される。知らない快楽は後ろを弄られるものとは全く違う本能を擽る。

初めてなのに体はどう動けばいいのか知っているかのように勝手に動く。

「あんっ。うふっ、可愛い。夢中で腰を振っちゃって」

アヒムは自分の上に股がっているリタの腰をつかんで本能のままに行動した。王がそこで見ているということも忘れて、まるで幻術で惑わされているかのように。

人間がもつ生殖本能だ。ただ腰を振り女の中に精を放ち孕ます。その本能と快楽に従ってアヒムは一度その中に全てを吐き出した。

「ーーッ!」

女の甘い声と柔らかな肌、知らない感覚に脳は混乱した。一度だけの吐精だけで脱力して息を乱す。疲労感から何も考えられず、寝転がって瞼をおろした。

このまま目を閉じていれば眠ってしまいそうだ。だが王はそれを許さなかった。

アヒムが再び目を開けば視界は真っ赤に染まっていた。

「……えっ?」

赤いのは血の色であり、その源流はリタであった。


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