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1: 神の寵愛 ※
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「カルロ、なんだか浮かれているな」
「そりゃそうさ。聖騎士なら誰もが夢見るアメデア神官長さまの護衛になれたんだからな。念願がかなったんだ」
カルロは嬉しそうに同期の騎士と話していた。
カルロは茶色の短髪に少し幼さの残るそばかす顔をした青年ではあるが、屈指の強者で構成される神殿所属の騎士である。
そんな彼は実力が認められ、誰もが敬慕する神官長のアメデアの護衛になったのだ。
「ずっと言ってたもんな。あの人に救われた命だ、その恩に報いるんだって。言っとくが、ここでは神官長さまに助けられていない人を探す方がこんなんだぞ」
「それほどに偉大で素晴らしい人なんだ。歴代最高の神聖力を持ち人々にその慈愛をわけあたえてくださる」
同期の騎士は、また始まったとうんざりした顔で話を聞き流す。
アメデア神官長の話は誰もが知っている。
アメデアという人物は一介の羊飼いであったが、聖痕があらわれリュアオス神の神官として神殿にあがった。たぐいまれな才と美しい心を持ち、若くして神殿のトップである神官長になった。
美しさは心だけでなく外見にもあらわれていた。
優しげで穏やかな顔つきは中性的な美貌をしている。長く艶やかな青みがかった銀髪を一つに編んで背にたらしている。ミトラをかぶり白を基調とした神官服は清廉さをあらわし、誰もが一目みようとした。
カルロが念願のアメデアの護衛騎士になってそこそこに時間が経過したころ、はじめて禁断の祈祷室と呼ばれる場所での夜間護衛の任にあたった。
事前に先輩であるオルドに「何も聞くな、何も考えるな。決して中をのぞいてはいけないし、誰も通してはいけない。合図があれば速やかに入室し、猊下のお手伝いをしろ」と意味深なことを言われた。
何のことだかわからなかったが、その時になって意味を理解した。
祈祷室の中からは艶やかな声が響き、ときおり苦しそうにゆるしをこうような言葉が紡がれる。
扉を挟むように隣にいるオルドの方をみるが、彼は無表情にただ立っていた。
「あ、あの、先輩」
「何も聞くな、何も考えるな。猊下の護衛騎士でいたいならここでは無でいろ。そうでなければリュアオス神のお怒りをくらうぞ」
オルドはそういうが、カルロは中で何が行われているか気になった。
祈祷室には神像と燭台そして聖典以外は何もない。アメデアは禊をおこなうような真っ白なワンピース状の服を着て1人で入っていった。
それなのに中からは水落が聞こえる。ぐちゅぐちゅと卑猥な音が。
はじめは荒い息と苦しそうな声だった。
「ん……っ、く……ぅ。はぁ……はぁ……」
それが次第に嬌声へと変わっていく。
「ああっ……、いいです……っ!んぅッ」
ときおり主神であるリュアオス様の名前を呼びながら声をあげる。
「……っ、もぅ……。リュアオス、さま、お慈悲をッ、……はぁんっ、果ててしまいますッ」
いやらしい声と音が祈祷室の中でうまれ、扉をこえて聞こえてくる。
水落や肌と肌がぶつかる音。
中で何がおこなわれているか見えなくても音だけでも理解できる。
どのくらいの時間がたっただろうか、カルロの下半身は固くはりつめ苦しくなっていた。
聞こえてくる声は次第にかすれ、とうとう聞こえなくなった。すると鈴のような音がなる。
おかしな話だ。あの部屋には鈴などはないし、アメデアの服も音のなるような貴金属はついていなかった。
「入るぞ」
オルドがカルロにそう言って扉を開けた。
部屋には神像と倒れた燭台に床に落ちた開きかけた聖典があった。
その乱れた場所で最も乱れていたのは神官長アメデアだった。
彼は中途半端に服を脱いだ状態で床に眠っていた。体には性交のあとがあった。脚の間、厳密にいうと柔らかそうな双丘の谷間から白い液が漏れていた。
それが何なのか、男ならわかる。だがここにはアメデア以外だれもいなかったわけで、誰が彼にそれを注いだというのだろう。
呆然としているとオルドが聖騎士のマントをアメデアに被せた。
「猊下、失礼します」
オルドはそう言って抱き上げると、カルロについてこいと目配せして祈祷室をでた。
だらりと垂れた神官長の手の甲にある聖痕が濃く色を帯びていた。
これがカルロが禁断の祈祷室ではじめて護衛の日におきた出来事だ。
カルロはあの時の神聖でいて優艶な姿を忘れられずにいた。
中で何がおこなわれていたかはわからない。だが禁断の祈祷室を知っている皆はこぞって「神のご寵愛を受けた」という。
翌日にはアメデアは何事もなかったように微笑みながら政務を行い、神聖力によって民に施しを与えた。
「そりゃそうさ。聖騎士なら誰もが夢見るアメデア神官長さまの護衛になれたんだからな。念願がかなったんだ」
カルロは嬉しそうに同期の騎士と話していた。
カルロは茶色の短髪に少し幼さの残るそばかす顔をした青年ではあるが、屈指の強者で構成される神殿所属の騎士である。
そんな彼は実力が認められ、誰もが敬慕する神官長のアメデアの護衛になったのだ。
「ずっと言ってたもんな。あの人に救われた命だ、その恩に報いるんだって。言っとくが、ここでは神官長さまに助けられていない人を探す方がこんなんだぞ」
「それほどに偉大で素晴らしい人なんだ。歴代最高の神聖力を持ち人々にその慈愛をわけあたえてくださる」
同期の騎士は、また始まったとうんざりした顔で話を聞き流す。
アメデア神官長の話は誰もが知っている。
アメデアという人物は一介の羊飼いであったが、聖痕があらわれリュアオス神の神官として神殿にあがった。たぐいまれな才と美しい心を持ち、若くして神殿のトップである神官長になった。
美しさは心だけでなく外見にもあらわれていた。
優しげで穏やかな顔つきは中性的な美貌をしている。長く艶やかな青みがかった銀髪を一つに編んで背にたらしている。ミトラをかぶり白を基調とした神官服は清廉さをあらわし、誰もが一目みようとした。
カルロが念願のアメデアの護衛騎士になってそこそこに時間が経過したころ、はじめて禁断の祈祷室と呼ばれる場所での夜間護衛の任にあたった。
事前に先輩であるオルドに「何も聞くな、何も考えるな。決して中をのぞいてはいけないし、誰も通してはいけない。合図があれば速やかに入室し、猊下のお手伝いをしろ」と意味深なことを言われた。
何のことだかわからなかったが、その時になって意味を理解した。
祈祷室の中からは艶やかな声が響き、ときおり苦しそうにゆるしをこうような言葉が紡がれる。
扉を挟むように隣にいるオルドの方をみるが、彼は無表情にただ立っていた。
「あ、あの、先輩」
「何も聞くな、何も考えるな。猊下の護衛騎士でいたいならここでは無でいろ。そうでなければリュアオス神のお怒りをくらうぞ」
オルドはそういうが、カルロは中で何が行われているか気になった。
祈祷室には神像と燭台そして聖典以外は何もない。アメデアは禊をおこなうような真っ白なワンピース状の服を着て1人で入っていった。
それなのに中からは水落が聞こえる。ぐちゅぐちゅと卑猥な音が。
はじめは荒い息と苦しそうな声だった。
「ん……っ、く……ぅ。はぁ……はぁ……」
それが次第に嬌声へと変わっていく。
「ああっ……、いいです……っ!んぅッ」
ときおり主神であるリュアオス様の名前を呼びながら声をあげる。
「……っ、もぅ……。リュアオス、さま、お慈悲をッ、……はぁんっ、果ててしまいますッ」
いやらしい声と音が祈祷室の中でうまれ、扉をこえて聞こえてくる。
水落や肌と肌がぶつかる音。
中で何がおこなわれているか見えなくても音だけでも理解できる。
どのくらいの時間がたっただろうか、カルロの下半身は固くはりつめ苦しくなっていた。
聞こえてくる声は次第にかすれ、とうとう聞こえなくなった。すると鈴のような音がなる。
おかしな話だ。あの部屋には鈴などはないし、アメデアの服も音のなるような貴金属はついていなかった。
「入るぞ」
オルドがカルロにそう言って扉を開けた。
部屋には神像と倒れた燭台に床に落ちた開きかけた聖典があった。
その乱れた場所で最も乱れていたのは神官長アメデアだった。
彼は中途半端に服を脱いだ状態で床に眠っていた。体には性交のあとがあった。脚の間、厳密にいうと柔らかそうな双丘の谷間から白い液が漏れていた。
それが何なのか、男ならわかる。だがここにはアメデア以外だれもいなかったわけで、誰が彼にそれを注いだというのだろう。
呆然としているとオルドが聖騎士のマントをアメデアに被せた。
「猊下、失礼します」
オルドはそう言って抱き上げると、カルロについてこいと目配せして祈祷室をでた。
だらりと垂れた神官長の手の甲にある聖痕が濃く色を帯びていた。
これがカルロが禁断の祈祷室ではじめて護衛の日におきた出来事だ。
カルロはあの時の神聖でいて優艶な姿を忘れられずにいた。
中で何がおこなわれていたかはわからない。だが禁断の祈祷室を知っている皆はこぞって「神のご寵愛を受けた」という。
翌日にはアメデアは何事もなかったように微笑みながら政務を行い、神聖力によって民に施しを与えた。
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