王妃さまは断罪劇に異議を唱える

土岐ゆうば(金湯叶)

文字の大きさ
上 下
21 / 28

20:ブロンベルト侯の来訪

しおりを挟む
王宮が賑やかになり、そして使用人たちは慌ただしくしていた。

プロンベルト侯とその息女が来訪したからだ。

「これが高名なエルパンシェーヌ宮殿の庭園ですね」

「お気に召しましたか、クリスティーナ嬢」

クラウディアはプロンベルト侯の息女であるクリスティーナに宮殿を案内していた。

「とても。細部にまで趣向を感じられる美しい場ですね」

クリスティーナは淑やかな令嬢であり、祖国が同じでもあるからか終始穏やかな時間であった。

「そう言ってもらえると嬉しいわ。ここのガゼボは祖国の様式を模して、陛下が造ってくださったの」

今いる場所は王妃の庭園の中でもクラウディアのお気に入りのガゼボだ。この特別な場所に案内するほどにはクリスティーナのことを気に入っていた。

「ルミランダですか?」

「ええ。ご存知なのね」

「父が妃陛下のお話をなさるので」

「おかしな話じゃなければいいのだけれど。昔はお転婆だったのよ」

女同士の内緒話をするように、どこか童心に帰ったようにお喋りに花をさかせた。

そんな女の花園に無遠慮に男たちがやってきた。

「お転婆なんて可愛いものではない。あれはじゃじゃ馬というんだ」

「変なことは言わないで頂戴、フリッツ」

現れたのはプロンベルト侯と国王だった。

楽しげに並んでいることから、会談はうまく纏まったのだろう。

「事実じゃないか。君に脅されて一緒に木登りをして叔母上に叱られたことは一生忘れないさ」

「陛下の前でやめてちょうだい」

「ディアと侯は従兄妹であったな」

「はい。陛下もお気をつけください、鋼鉄製の靴を履かねば歩けなくなりますぞ」

プロンベルト侯は母方の従兄であり、幼少期から交流が深く、時代が時代であれば結婚する仲であったろう。

「忠告いたみいる。だがディアと一緒になって長くなる。心得ているとも」

アルフレッドの言葉に時間の経過を感じた。

15歳で嫁ぎ、祖国で過ごした時間よりも長い時間をこの国で過ごしている。もうすでに自分はこの国の人間なのだと改めて実感した。

「ハハハ。これは一本。妃陛下が気に入るわけです。私も陛下のことが大変好きになってしまいました」

プロンベルト侯は意味のわからないことを言って笑った。

「そう言えば、ジルベール殿下が犬を欲しがっていると聞きました。新大陸でも珍しいものが手に入りましたのでお贈りいたしましょう」

「それはありがたい。息子たちも交えてぜひ食事でも」

「それは嬉しい誘いです。フレシミアの天使と名高い王女殿下にもお会いしてみたかったのです」

「ははは。それこそ、ディアに似てお転婆な子かもしれぬぞ」

「お転婆姫さまのお相手はなれておりますゆえ」

プロンベルト侯は自分の娘をみてそう言った。

クリスティーナは恥ずかしそうに「お父さまったら!」と言った。



プロンベルト侯らを歓待している裏では、ジョレアン公爵を追い詰めるように外堀が着実に手を回していた。

そうしてチェックメイトとなった時に、プロンベルト侯らのために開かれた宮廷パーティーで、クロードが予想外の行動を取ったのだった。

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

妹がいなくなった

アズやっこ
恋愛
妹が突然家から居なくなった。 メイドが慌ててバタバタと騒いでいる。 お父様とお母様の泣き声が聞こえる。 「うるさくて寝ていられないわ」 妹は我が家の宝。 お父様とお母様は妹しか見えない。ドレスも宝石も妹にだけ買い与える。 妹を探しに出掛けたけど…。見つかるかしら?

これでお仕舞い~婚約者に捨てられたので、最後のお片付けは自分でしていきます~

ゆきみ山椒
恋愛
婚約者である王子からなされた、一方的な婚約破棄宣言。 それを聞いた侯爵令嬢は、すべてを受け入れる。 戸惑う王子を置いて部屋を辞した彼女は、その足で、王宮に与えられた自室へ向かう。 たくさんの思い出が詰まったものたちを自分の手で「仕舞う」ために――。 ※この作品は、「小説家になろう」にも掲載しています。

【完結】「私は善意に殺された」

まほりろ
恋愛
筆頭公爵家の娘である私が、母親は身分が低い王太子殿下の後ろ盾になるため、彼の婚約者になるのは自然な流れだった。 誰もが私が王太子妃になると信じて疑わなかった。 私も殿下と婚約してから一度も、彼との結婚を疑ったことはない。 だが殿下が病に倒れ、その治療のため異世界から聖女が召喚され二人が愛し合ったことで……全ての運命が狂い出す。 どなたにも悪意はなかった……私が不運な星の下に生まれた……ただそれだけ。 ※無断転載を禁止します。 ※朗読動画の無断配信も禁止します。 ※他サイトにも投稿中。 ※表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。 「Copyright(C)2022-九頭竜坂まほろん」 ※小説家になろうにて2022年11月19日昼、日間異世界恋愛ランキング38位、総合59位まで上がった作品です!

【完結】「婚約者は妹のことが好きなようです。妹に婚約者を譲ったら元婚約者と妹の様子がおかしいのですが」

まほりろ
恋愛
※小説家になろうにて日間総合ランキング6位まで上がった作品です!2022/07/10 私の婚約者のエドワード様は私のことを「アリーシア」と呼び、私の妹のクラウディアのことを「ディア」と愛称で呼ぶ。 エドワード様は当家を訪ねて来るたびに私には黄色い薔薇を十五本、妹のクラウディアにはピンクの薔薇を七本渡す。 エドワード様は薔薇の花言葉が色と本数によって違うことをご存知ないのかしら? それにピンクはエドワード様の髪と瞳の色。自分の髪や瞳の色の花を異性に贈る意味をエドワード様が知らないはずがないわ。 エドワード様はクラウディアを愛しているのね。二人が愛し合っているなら私は身を引くわ。 そう思って私はエドワード様との婚約を解消した。 なのに婚約を解消したはずのエドワード様が先触れもなく当家を訪れ、私のことを「シア」と呼び迫ってきて……。 「Copyright(C)2022-九頭竜坂まほろん」 ※無断転載を禁止します。 ※朗読動画の無断配信も禁止します。 ※小説家になろう、カクヨム、エブリスタにも投稿しています。 ※表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。

王太子に婚約破棄されてから一年、今更何の用ですか?

克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しいます。 ゴードン公爵家の長女ノヴァは、辺境の冒険者街で薬屋を開業していた。ちょうど一年前、婚約者だった王太子が平民娘相手に恋の熱病にかかり、婚約を破棄されてしまっていた。王太子の恋愛問題が王位継承問題に発展するくらいの大問題となり、平民娘に負けて社交界に残れないほどの大恥をかかされ、理不尽にも公爵家を追放されてしまったのだ。ようやく傷心が癒えたノヴァのところに、やつれた王太子が現れた。

【完結】お前とは結婚しない!そう言ったあなた。私はいいのですよ。むしろ感謝いたしますわ。

まりぃべる
恋愛
「お前とは結婚しない!オレにはお前みたいな奴は相応しくないからな!」 そう私の婚約者であった、この国の第一王子が言った。

婚約破棄をされるのですね、そのお相手は誰ですの?

恋愛
フリュー王国で公爵の地位を授かるノースン家の次女であるハルメノア・ノースン公爵令嬢が開いていた茶会に乗り込み突如婚約破棄を申し出たフリュー王国第二王子エザーノ・フリューに戸惑うハルメノア公爵令嬢 この婚約破棄はどうなる? ザッ思いつき作品 恋愛要素は薄めです、ごめんなさい。

そんなに妹が好きなら死んであげます。

克全
恋愛
「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」に同時投稿しています。 『思い詰めて毒を飲んだら周りが動き出しました』 フィアル公爵家の長女オードリーは、父や母、弟や妹に苛め抜かれていた。 それどころか婚約者であるはずのジェイムズ第一王子や国王王妃にも邪魔者扱いにされていた。 そもそもオードリーはフィアル公爵家の娘ではない。 イルフランド王国を救った大恩人、大賢者ルーパスの娘だ。 異世界に逃げた大魔王を追って勇者と共にこの世界を去った大賢者ルーパス。 何の音沙汰もない勇者達が死んだと思った王達は……

処理中です...