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16:ソドミー
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息をついていると、足音が聞こえた。
その音は着実に近づいて、クラウディアがいる部屋の前で止まった。
誰かが控え室を使うのならば出ていくべきだろうか。だが、さっきの男であった場合、鉢合わせしてしまう。
そう考えていると扉が開いた。
「おや、先客が」
あらわれたのは別の男二人組であった。それに少し安心した。
「いえ、私はこれで失礼するので」
二人の間を抜けて部屋からでようとすると、男たちがクラウディアの腕を掴んで引き留めた。
「ムッシュ、そんな必要はない。二人で楽しもうと思っていたが、ムッシュとなら三人でも楽しめそうだ」
「……楽しむというと?」
「この部屋でやることなど一つしかないでしょう」
男たちの視線はベッドを指した。
クラウディアはやっと控え室にベッドがある理由がわかった。ここは密通や淫行などを目的とした場所なのだ。
しかもこの男たちはソドミーの罪を犯そうとしている。しかも禁忌とされる男同士で行おうとしていたのだから恐ろしい。いや、さらにクラウディアを巻き込んで三人で行うつもりなのだ。
「いや、結構だ。生憎と所用があるので」
「そう連れないことをいわないでくれ。ムッシュだって、何の考えもなくこの部屋にいたわけではないだろう?」
男二人はクラウディアの退路を塞ぎ、前後で挟むように立った。
「同性同士の行為など罰せられる」
「ここはそういう場所だ。みなバレないように関係をもっている」
「そうです。ここでの事は他言無用が暗黙のルール。不倫、密通、淫行、すべての享楽的なことがここでは許されるのです」
一人がクラウディアの腕を掴みおさえて、もう一人は後ろから厭らしく腰や臀部をまさぐる。
「残念だが、私は男ではない。貴方たちの趣向とはことなる」
「なんと。だが、女にもアヌスはあるものだ。問題ないだろう」
「そうだな。挿れるものはないが、入る穴ならある」
「なっ! 私にソドミーを行えというのですか! はなしなさい」
クラウディアは抵抗したが、大の男二人に対しては効果はなかった。
「なんと初心なマドモアゼルなんだ。このパーティーはそういう集いなのですよ」
「咎めるものは誰もいないのだから、共に楽しみましょう」
「抵抗しても無駄ですよ。紳士服の構造は我々男のほうが知っている」
男の手は手慣れたようにボタンの隙間からズボンの中に入ってこようとした。
「やめっ!」
クラウディアが声をあげようとした時、目の前の男が倒れた。
「何だっ!?」
後ろの男も状況を理解する前に気絶させられた。
「陛下、ご無事ですか!」
クラウディアを助けたのはあのアンバー色の男だった。
「アル…じゃないわね。テオドール、貴方だったのね」
しゃがみこんだクラウディアを助け起こしたのは男の仮面をはずすと見知った顔だった。
「ご無事でなによりです。このような危険な真似はお止めください」
彼の諫言が響いた。
仮面舞踏会がどのような場所か噂程度には知っていたのに軽率に行動した。その愚かさを感じた。
「助かったわ。もう二度とこのような場には来たくもないわ」
侍女たちが息抜きにといっていたが、ある者にとっては確かに性の開放による気晴らしになるだろう。だが、クラウディアにとっては恐怖でしかなかった。
「お送りします」
テオドールはクラウディアに自身のコートを被せて、会場を出て王宮に戻るまで付き添った。
彼には聞きたいことは山程あったが、それよりもこの嫌な場所から立ち去りたかった。
忘れたかった。
貞操を犯されそうになったときに一番に思い浮かんだ顔がアルフレッドであったなんて。
その音は着実に近づいて、クラウディアがいる部屋の前で止まった。
誰かが控え室を使うのならば出ていくべきだろうか。だが、さっきの男であった場合、鉢合わせしてしまう。
そう考えていると扉が開いた。
「おや、先客が」
あらわれたのは別の男二人組であった。それに少し安心した。
「いえ、私はこれで失礼するので」
二人の間を抜けて部屋からでようとすると、男たちがクラウディアの腕を掴んで引き留めた。
「ムッシュ、そんな必要はない。二人で楽しもうと思っていたが、ムッシュとなら三人でも楽しめそうだ」
「……楽しむというと?」
「この部屋でやることなど一つしかないでしょう」
男たちの視線はベッドを指した。
クラウディアはやっと控え室にベッドがある理由がわかった。ここは密通や淫行などを目的とした場所なのだ。
しかもこの男たちはソドミーの罪を犯そうとしている。しかも禁忌とされる男同士で行おうとしていたのだから恐ろしい。いや、さらにクラウディアを巻き込んで三人で行うつもりなのだ。
「いや、結構だ。生憎と所用があるので」
「そう連れないことをいわないでくれ。ムッシュだって、何の考えもなくこの部屋にいたわけではないだろう?」
男二人はクラウディアの退路を塞ぎ、前後で挟むように立った。
「同性同士の行為など罰せられる」
「ここはそういう場所だ。みなバレないように関係をもっている」
「そうです。ここでの事は他言無用が暗黙のルール。不倫、密通、淫行、すべての享楽的なことがここでは許されるのです」
一人がクラウディアの腕を掴みおさえて、もう一人は後ろから厭らしく腰や臀部をまさぐる。
「残念だが、私は男ではない。貴方たちの趣向とはことなる」
「なんと。だが、女にもアヌスはあるものだ。問題ないだろう」
「そうだな。挿れるものはないが、入る穴ならある」
「なっ! 私にソドミーを行えというのですか! はなしなさい」
クラウディアは抵抗したが、大の男二人に対しては効果はなかった。
「なんと初心なマドモアゼルなんだ。このパーティーはそういう集いなのですよ」
「咎めるものは誰もいないのだから、共に楽しみましょう」
「抵抗しても無駄ですよ。紳士服の構造は我々男のほうが知っている」
男の手は手慣れたようにボタンの隙間からズボンの中に入ってこようとした。
「やめっ!」
クラウディアが声をあげようとした時、目の前の男が倒れた。
「何だっ!?」
後ろの男も状況を理解する前に気絶させられた。
「陛下、ご無事ですか!」
クラウディアを助けたのはあのアンバー色の男だった。
「アル…じゃないわね。テオドール、貴方だったのね」
しゃがみこんだクラウディアを助け起こしたのは男の仮面をはずすと見知った顔だった。
「ご無事でなによりです。このような危険な真似はお止めください」
彼の諫言が響いた。
仮面舞踏会がどのような場所か噂程度には知っていたのに軽率に行動した。その愚かさを感じた。
「助かったわ。もう二度とこのような場には来たくもないわ」
侍女たちが息抜きにといっていたが、ある者にとっては確かに性の開放による気晴らしになるだろう。だが、クラウディアにとっては恐怖でしかなかった。
「お送りします」
テオドールはクラウディアに自身のコートを被せて、会場を出て王宮に戻るまで付き添った。
彼には聞きたいことは山程あったが、それよりもこの嫌な場所から立ち去りたかった。
忘れたかった。
貞操を犯されそうになったときに一番に思い浮かんだ顔がアルフレッドであったなんて。
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