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10:過去ー婚外子
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クラウディアが目覚めたのと入れ替わるように国王が病床に伏した。
そのためアルフレッドは一際忙しくなり、さらに気まずく疎遠になった。
そんな時に報せがとんできた。
カトリーヌ、いいやオートゥイユ夫人の懐妊であった。
クラウディアが三年かけてなしたことを彼女はものの数週間でなしえたのだ。
「最近のオートゥイユ夫人の行動は目に余りますわ!」
リゼットが憤慨してそういった。
オートゥイユ夫人は愛妾となり、侍女の任から開放されて、宮殿に部屋を賜った。それだけで付け上がるようであった。
しかし、懐妊がわかると我が世の春とでもいいたげに我が物顔で宮殿を闊歩した。
「何か祝いの品でも贈らないといけないわね」
「妃殿下は優しすぎます。もっと怒ってもいいのですよ! あの聞くに堪えない噂もあるのですし」
聞くに堪えない噂とは、王太子と王太子妃が不仲であるという話だ。
そのようなことは政略結婚なのだからよくあることであり、ゴシップに衝撃性はないものの面白おかしく広まっていた。
「妃殿下、王太子殿下がお越しです」
侍女の言葉にクラウディアは一言「お通しになって」と言った。
リゼットは未だに王太子の心は妃殿下にあると確信していた。そうでなければ毎日のように妃殿下の私室に訪問しないだろう。
「王太子殿下、お祝い申し上げます」
しかし、妃殿下にその気持ちは伝わっていない。いや、もしかしたら伝わっていてあえて知らないふりをしているのかもしれない。
「ディア……」
「どうなさったのですか? 慶事ではありませんか」
「そうではない。君が言うからオートゥイユ夫人を宮殿にむかえたのだ。関係をもったのも一度だけだ」
クラウディアはどこか落胆した。
自分の知っているアルフレッドはこれほど無責任な人物であっただろうか。情けなくてみっともなく感じた。
「どうか、そのまま関係を続けてください。未だに私の身体は回復しておらず、殿下の夜のお相手には不十分です。必要なら他の愛妾をお迎えになるのでもかまいません」
アルフレッドとの性行為に対する興味が全くといっていいほどわかず、嫌悪すら感じそうだった。
「そのようなことを言うでない。愛妾をむかえるつもりはない」
「さようですか」
アルフレッドの言葉を信じている様子をみせることもなく、淡々とした返事であった。
「最近食が細くなっていると聞いている。無理にとは言わないが、もう少し食事をしてくれ。これ以上軽くなっては飛ばされてしまいそうだ」
食べても吐いてしまうのだから仕方ないではないかと心の内で吐露する。
「寝てばかりいないで、少し庭に出て散策してみるのもいいのではないか」
好きで寝てばかりいるのではない。慢性的な疲労感と眠気によってあまり活動的になれないのだ。
「わかりました。殿下のおっしゃるとおり、少し庭を散策するのもいいでしょう。帽子と傘を」
「今から行くのか?」
「ええ。行動ははやい方がいいでしょう。それでは失礼しますわ」
クラウディアは侍女から受け取った帽子をかぶり、優雅な挨拶をした。
アルフレッドがついてくることはなかった。彼にそんな暇はないとわかっていてそうしたのだから当然の帰結だ。
そのためアルフレッドは一際忙しくなり、さらに気まずく疎遠になった。
そんな時に報せがとんできた。
カトリーヌ、いいやオートゥイユ夫人の懐妊であった。
クラウディアが三年かけてなしたことを彼女はものの数週間でなしえたのだ。
「最近のオートゥイユ夫人の行動は目に余りますわ!」
リゼットが憤慨してそういった。
オートゥイユ夫人は愛妾となり、侍女の任から開放されて、宮殿に部屋を賜った。それだけで付け上がるようであった。
しかし、懐妊がわかると我が世の春とでもいいたげに我が物顔で宮殿を闊歩した。
「何か祝いの品でも贈らないといけないわね」
「妃殿下は優しすぎます。もっと怒ってもいいのですよ! あの聞くに堪えない噂もあるのですし」
聞くに堪えない噂とは、王太子と王太子妃が不仲であるという話だ。
そのようなことは政略結婚なのだからよくあることであり、ゴシップに衝撃性はないものの面白おかしく広まっていた。
「妃殿下、王太子殿下がお越しです」
侍女の言葉にクラウディアは一言「お通しになって」と言った。
リゼットは未だに王太子の心は妃殿下にあると確信していた。そうでなければ毎日のように妃殿下の私室に訪問しないだろう。
「王太子殿下、お祝い申し上げます」
しかし、妃殿下にその気持ちは伝わっていない。いや、もしかしたら伝わっていてあえて知らないふりをしているのかもしれない。
「ディア……」
「どうなさったのですか? 慶事ではありませんか」
「そうではない。君が言うからオートゥイユ夫人を宮殿にむかえたのだ。関係をもったのも一度だけだ」
クラウディアはどこか落胆した。
自分の知っているアルフレッドはこれほど無責任な人物であっただろうか。情けなくてみっともなく感じた。
「どうか、そのまま関係を続けてください。未だに私の身体は回復しておらず、殿下の夜のお相手には不十分です。必要なら他の愛妾をお迎えになるのでもかまいません」
アルフレッドとの性行為に対する興味が全くといっていいほどわかず、嫌悪すら感じそうだった。
「そのようなことを言うでない。愛妾をむかえるつもりはない」
「さようですか」
アルフレッドの言葉を信じている様子をみせることもなく、淡々とした返事であった。
「最近食が細くなっていると聞いている。無理にとは言わないが、もう少し食事をしてくれ。これ以上軽くなっては飛ばされてしまいそうだ」
食べても吐いてしまうのだから仕方ないではないかと心の内で吐露する。
「寝てばかりいないで、少し庭に出て散策してみるのもいいのではないか」
好きで寝てばかりいるのではない。慢性的な疲労感と眠気によってあまり活動的になれないのだ。
「わかりました。殿下のおっしゃるとおり、少し庭を散策するのもいいでしょう。帽子と傘を」
「今から行くのか?」
「ええ。行動ははやい方がいいでしょう。それでは失礼しますわ」
クラウディアは侍女から受け取った帽子をかぶり、優雅な挨拶をした。
アルフレッドがついてくることはなかった。彼にそんな暇はないとわかっていてそうしたのだから当然の帰結だ。
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