36 / 56
第三章:堕ちた聖女と救済の悪魔
36話:クローズプラン②
しおりを挟む
ラスティは男の言葉に頷いた。
「構わない。どんな子が好きなんだ?」
「お淑やか系やね。女の子はやっぱ男の後ろをついてくるのがちょうどええ」
「随分と愉快な価値観だ」
そういえば、と男はラスティに問いかける。
「ラスティくんはどんなタイプの現実改変なの?」
「現実改変には種類があるのか?」
「己を改変する求道型、周囲を改変する覇道型、全てを改変するが出力は低い修羅型の三つやね。個人的にラスティくんは修羅と思ったけど、性能が桁違いに高いんよな。なんか良い練習方法でもあるの?」
「分からないな。強いて言えばルールを決めているくらいか」
「ルール?」
「ノブリス・オブリージュを目指す、というルールだ」
「縛りとか制約と誓約みたいな? それで力が強くなったらみんなしてる思うけどなぁ。わからんわ。でもラスティくんもミスが多いし、トントンといえるのかもしれんな」
「ミス? なんだい? それは」
「インファイターやるなら致命的なミスやね」
良く気づくんやで、と少しだけ勿体ぶる様に言葉を置く。少しだけ間を開けて、ラスティが集中する時間を作り、それからゆっくりと言葉を放つ。
「ガードのし過ぎ」
ラスティはその言葉に首を傾げる。
オーディンは、近くの地面を指で削りながら、近接戦闘における話を始める。
「いいかいラスティ君? 戦闘で取れる三つの動きはなんやと思う」
「攻撃、回避、防御」
正解だと答える。これが戦闘における三大要素だ。
攻撃、回避、防御。
すべての行動は大体この三つで分類する事が出来る。出来るのだが、素質や保有技能、スタイル等によってこの比率は大きく変動する。
ここには問題はない。問題なのはラスティが意識的にガードしすぎる、という事なのだ。
「きっとラスティ君は真面目なんやろうな。基礎に忠実で、肉体の形成もしっかりしとる。普通なら問題ない範囲やが、対現実改変能力者相手に対して防御力の回数が多すぎるんや」
「初見だったとはいえ、受けに回り過ぎたか……? しかし攻勢一辺倒だった気もするが」
「普通なら問題はないやろうね。特に魔法が有効な相手なら、強固なシールドなり肉体強化で自然と戦い方が耐えて殴る方が効率が良くなる。だけど、改変能力はアカン」
「即死するから、か」
「せやせや。さっきの骸骨マントとか良い例やけど触れたら即死する能力を防げるのは自分の改変能力だけや。そして改変能力は人それぞれピーキーな特性がある。もし防御側の改変能力より攻撃力側の改変能力のほうが高ければ即死する。綱渡りや」
「基本的に、インファイトする時は攻撃を受けない事が理想か」
「そして攻撃をどうしても避けられない時は確実に受け流しておきたい。何故か解る?」
「ダメージが発生するから?」
それは合っている。改変能力で戦っている以上、防御を選択した場合には自然と体にダメージが発生する。これは全体的な勝機を奪う行動であるが、それよりも致命的な問題が防御という選択肢には存在する。
「回転率が下がるんよ」
「回転率」
おう、と頷いて答えながら地面に、文字を描いておく。
「理想的な戦闘ってのは最初の一撃で敵を倒す、或いは殺すことや。だけどそんな風に勝負を決められる事は多くないってのが現実で、そうなってくると戦闘のサイクルが生まれてくるわけやな」
「つまりは攻防のサイクル」
「せや。ラスティ君が攻撃し、相手がそれを防ぎ、相手が攻撃し、此方がそれを防ぐってサイクル。現実改変に限った話だとこのサイクルの回転率は凄まじく早い。そしてそのスピードを維持し、戦うってのが理想やね」
解る? と言う。
「防御って行動は動きを止める必要性が出てくる。つまり何が言うと、回転率の低下が勝率の低下にイコールするって話。特に現実改変の場合」
軽く拳を振るう。
「基本的にリーチがお互い見えない。威力が高い。壊されると再構築する必要がある。一回防御に回ると一気に削られる要素が増える」
「なるほど」
「特に俺みたいな超達人級とも呼べる連中になってくるとまず狙うのは必殺やからな。初手で殺す。次に初手で殺せないなら手足を破壊する。確実に殺すための手段を取る。んで防御なんてしようものなら徹しでガードに使ったものごと心臓ぶち抜いてジ・エンド」
「深いな……おや」
ラスティとオーディンが話しているとエクシアの姿が見えた。
「エクシア……」
「話は終わりやね。いつでも通信魔法くれてもええよ。友達やしね」
「わかった。そうさせてもらう」
「ほな、また」
オーディンはジャンプして消えた。
綺麗な街並みと、十字架に磔にされた人々がいる首都の中で、ラスティとエクシアは再開する。
「大丈夫かい?」
「ええ。貴方こそ大丈夫?」
「私は平気だ。今はどこまで状況を把握している?」
「何も。さっき目覚めたばかりで、自分の傷を治して、鎖を切ったの」
「では、まずは最初から話すとしよう」
「構わない。どんな子が好きなんだ?」
「お淑やか系やね。女の子はやっぱ男の後ろをついてくるのがちょうどええ」
「随分と愉快な価値観だ」
そういえば、と男はラスティに問いかける。
「ラスティくんはどんなタイプの現実改変なの?」
「現実改変には種類があるのか?」
「己を改変する求道型、周囲を改変する覇道型、全てを改変するが出力は低い修羅型の三つやね。個人的にラスティくんは修羅と思ったけど、性能が桁違いに高いんよな。なんか良い練習方法でもあるの?」
「分からないな。強いて言えばルールを決めているくらいか」
「ルール?」
「ノブリス・オブリージュを目指す、というルールだ」
「縛りとか制約と誓約みたいな? それで力が強くなったらみんなしてる思うけどなぁ。わからんわ。でもラスティくんもミスが多いし、トントンといえるのかもしれんな」
「ミス? なんだい? それは」
「インファイターやるなら致命的なミスやね」
良く気づくんやで、と少しだけ勿体ぶる様に言葉を置く。少しだけ間を開けて、ラスティが集中する時間を作り、それからゆっくりと言葉を放つ。
「ガードのし過ぎ」
ラスティはその言葉に首を傾げる。
オーディンは、近くの地面を指で削りながら、近接戦闘における話を始める。
「いいかいラスティ君? 戦闘で取れる三つの動きはなんやと思う」
「攻撃、回避、防御」
正解だと答える。これが戦闘における三大要素だ。
攻撃、回避、防御。
すべての行動は大体この三つで分類する事が出来る。出来るのだが、素質や保有技能、スタイル等によってこの比率は大きく変動する。
ここには問題はない。問題なのはラスティが意識的にガードしすぎる、という事なのだ。
「きっとラスティ君は真面目なんやろうな。基礎に忠実で、肉体の形成もしっかりしとる。普通なら問題ない範囲やが、対現実改変能力者相手に対して防御力の回数が多すぎるんや」
「初見だったとはいえ、受けに回り過ぎたか……? しかし攻勢一辺倒だった気もするが」
「普通なら問題はないやろうね。特に魔法が有効な相手なら、強固なシールドなり肉体強化で自然と戦い方が耐えて殴る方が効率が良くなる。だけど、改変能力はアカン」
「即死するから、か」
「せやせや。さっきの骸骨マントとか良い例やけど触れたら即死する能力を防げるのは自分の改変能力だけや。そして改変能力は人それぞれピーキーな特性がある。もし防御側の改変能力より攻撃力側の改変能力のほうが高ければ即死する。綱渡りや」
「基本的に、インファイトする時は攻撃を受けない事が理想か」
「そして攻撃をどうしても避けられない時は確実に受け流しておきたい。何故か解る?」
「ダメージが発生するから?」
それは合っている。改変能力で戦っている以上、防御を選択した場合には自然と体にダメージが発生する。これは全体的な勝機を奪う行動であるが、それよりも致命的な問題が防御という選択肢には存在する。
「回転率が下がるんよ」
「回転率」
おう、と頷いて答えながら地面に、文字を描いておく。
「理想的な戦闘ってのは最初の一撃で敵を倒す、或いは殺すことや。だけどそんな風に勝負を決められる事は多くないってのが現実で、そうなってくると戦闘のサイクルが生まれてくるわけやな」
「つまりは攻防のサイクル」
「せや。ラスティ君が攻撃し、相手がそれを防ぎ、相手が攻撃し、此方がそれを防ぐってサイクル。現実改変に限った話だとこのサイクルの回転率は凄まじく早い。そしてそのスピードを維持し、戦うってのが理想やね」
解る? と言う。
「防御って行動は動きを止める必要性が出てくる。つまり何が言うと、回転率の低下が勝率の低下にイコールするって話。特に現実改変の場合」
軽く拳を振るう。
「基本的にリーチがお互い見えない。威力が高い。壊されると再構築する必要がある。一回防御に回ると一気に削られる要素が増える」
「なるほど」
「特に俺みたいな超達人級とも呼べる連中になってくるとまず狙うのは必殺やからな。初手で殺す。次に初手で殺せないなら手足を破壊する。確実に殺すための手段を取る。んで防御なんてしようものなら徹しでガードに使ったものごと心臓ぶち抜いてジ・エンド」
「深いな……おや」
ラスティとオーディンが話しているとエクシアの姿が見えた。
「エクシア……」
「話は終わりやね。いつでも通信魔法くれてもええよ。友達やしね」
「わかった。そうさせてもらう」
「ほな、また」
オーディンはジャンプして消えた。
綺麗な街並みと、十字架に磔にされた人々がいる首都の中で、ラスティとエクシアは再開する。
「大丈夫かい?」
「ええ。貴方こそ大丈夫?」
「私は平気だ。今はどこまで状況を把握している?」
「何も。さっき目覚めたばかりで、自分の傷を治して、鎖を切ったの」
「では、まずは最初から話すとしよう」
0
お気に入りに追加
47
あなたにおすすめの小説
誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!
ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく
高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。
高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。
しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。
召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。
※カクヨムでも連載しています

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
没落貴族の異世界領地経営!~生産スキルでガンガン成り上がります!
武蔵野純平
ファンタジー
異世界転生した元日本人ノエルは、父の急死によりエトワール伯爵家を継承することになった。
亡くなった父はギャンブルに熱中し莫大な借金をしていた。
さらに借金を国王に咎められ、『王国貴族の恥!』と南方の辺境へ追放されてしまう。
南方は魔物も多く、非常に住みにくい土地だった。
ある日、猫獣人の騎士現れる。ノエルが女神様から与えられた生産スキル『マルチクラフト』が覚醒し、ノエルは次々と異世界にない商品を生産し、領地経営が軌道に乗る。

八百長試合を引き受けていたが、もう必要ないと言われたので圧勝させてもらいます
海夏世もみじ
ファンタジー
月一に開催されるリーヴェ王国最強決定大会。そこに毎回登場するアッシュという少年は、金をもらう代わりに対戦相手にわざと負けるという、いわゆる「八百長試合」をしていた。
だが次の大会が目前となったある日、もうお前は必要ないと言われてしまう。八百長が必要ないなら本気を出してもいい。
彼は手加減をやめ、“本当の力”を解放する。
貴族家三男の成り上がりライフ 生まれてすぐに人外認定された少年は異世界を満喫する
美原風香
ファンタジー
「残念ながらあなたはお亡くなりになりました」
御山聖夜はトラックに轢かれそうになった少女を助け、代わりに死んでしまう。しかし、聖夜の心の内の一言を聴いた女神から気に入られ、多くの能力を貰って異世界へ転生した。
ーけれども、彼は知らなかった。数多の神から愛された彼は生まれた時点で人外の能力を持っていたことを。表では貴族として、裏では神々の使徒として、異世界のヒエラルキーを駆け上っていく!これは生まれてすぐに人外認定された少年の最強に無双していく、そんなお話。
✳︎不定期更新です。
21/12/17 1巻発売!
22/05/25 2巻発売!
コミカライズ決定!
20/11/19 HOTランキング1位
ありがとうございます!
ひっそり静かに生きていきたい 神様に同情されて異世界へ。頼みの綱はアイテムボックス
於田縫紀
ファンタジー
雨宿りで立ち寄った神社の神様に境遇を同情され、私は異世界へと転移。
場所は山の中で周囲に村等の気配はない。あるのは木と草と崖、土と空気だけ。でもこれでいい。私は他人が怖いから。
1×∞(ワンバイエイト) 経験値1でレベルアップする俺は、最速で異世界最強になりました!
マツヤマユタカ
ファンタジー
23年5月22日にアルファポリス様より、拙著が出版されました!そのため改題しました。
今後ともよろしくお願いいたします!
トラックに轢かれ、気づくと異世界の自然豊かな場所に一人いた少年、カズマ・ナカミチ。彼は事情がわからないまま、仕方なくそこでサバイバル生活を開始する。だが、未経験だった釣りや狩りは妙に上手くいった。その秘密は、レベル上げに必要な経験値にあった。実はカズマは、あらゆるスキルが経験値1でレベルアップするのだ。おかげで、何をやっても簡単にこなせて――。異世界爆速成長系ファンタジー、堂々開幕!
タイトルの『1×∞』は『ワンバイエイト』と読みます。
男性向けHOTランキング1位!ファンタジー1位を獲得しました!【22/7/22】
そして『第15回ファンタジー小説大賞』において、奨励賞を受賞いたしました!【22/10/31】
アルファポリス様より出版されました!現在第四巻まで発売中です!
コミカライズされました!公式漫画タブから見られます!【24/8/28】
*****************************
***毎日更新しています。よろしくお願いいたします。***
*****************************
マツヤマユタカ名義でTwitterやってます。
見てください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる