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第一章:幼年期の終わり

三話:仲間

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 切っ掛け一つさえあれば隠された真実に辿り着くのは容易いものだった。

 助けたエルフの瞳に宿る不思議な模様。これを調べるうちにこの異世界に隠された真実であり、暗躍している存在を知った。

 まず、エルフの少女……の瞳についてだが、あれはダイモス細胞と呼ばれるものだった。

 これは元は遥か昔に実在した侵食型寄生モンスター『歩く地獄:ダイモス』の細胞を埋め込まれた人物特有のものだ。つまり彼女は、侵食型寄生モンスター『歩く地獄:ダイモス』と戦った人物、もしくはそれを利用しようとする組織の人体実験の被験者か、それらの親族ということだ。

 侵食型寄生モンスター『歩く地獄:ダイモス』の細胞が体に入ると、一定期間の潜伏期間の後、拒絶反応を起こして、周囲に破壊を撒き散らして爆散する。

 ダイモス細胞は魔力によって制御できるので本人が十分な魔力制御能力、あるいは外部の者が魔力制御をしてやれば暴走を阻止する事は可能であるようだ。

 『歩く地獄:ダイモス』を倒したとされる3英雄のエルフ、獣人、人間の女性たちも又、このダイモス細胞を有していて、それが子孫の代までつまりは現代の女性たちにまで受け継がれた可能性もある

 世代交代によって細胞は薄まっていくので世代交代を多く行った人間は暴走して自滅に至るまでの細胞が無かったり、世代交代の回数が少ない、つまりは寿命が長いエルフや獣人はこのダイモス細胞の暴走が多く起こってしまう。

 そして、こんな厄介な事態を積極的に引き起こしたのは『ロイヤルダークソサエティ』の仕業だ。

 細胞の暴走を起こした者たちを、『ダークレイス』や『忌み子』と呼んで、この世に害をなす存在として始末する活動をしているが、これは自分たちがやったことを隠すためであり、中には確保した者を更なる実験材料などにし、『ロイヤルダークソサエティ』それぞれの幹部や派閥などで分かれて、各々の野望の成就を狙っている様子だ。

 元からして、ダイモスを討伐するために各地の孤児を集めて実験する機関であったので、なるべくしてなっていったのだろう。

 まだ推測段階のものも混じっているがともかく、こうした真実、蠢く野望を知った以上は放置など無理だ。


 貴族としての『ノブレス・オブリージュ』、そして転生前の大好きな漫画のセリフ『強いものは弱いものを守り、弱いものは強くなるために努力する』ということを実現するために、ラスティは戦うことを決めた。

「つまり、この世界には、『ロイヤルダークソサエテイ』という自らダイモス細胞を植え付けて、暴走したら回収して、公的に実験体にする組織がある。私はそれの被害者、ということでしょうか?」
「ああ。そうなる。気分が悪くなる話だ。私は、これと戦おうと思う」
「戦う……ですか? しかし相手は、権力者や国家システムに介入できるほど大きな組織です。磨り潰されて終わりかと」

 メイド服を纏ったエルフの少女が言う。

「やめましょう、そんな危ないことは。やるとなれば私も手伝います。しかし私は、貴方が普通に過ごして平和な日常を送ってくれる方が嬉しいです」
「その意見は素直に嬉しい。しかしやらなければならないのさ」
「何故?」
「ノブリス・オブリージュ。私は恵まれて育った。そしてその裏では悲しむ人が多くいて、だから人を守りたいし助けたいと思った……っていうのは本心だけど、一言は憧れ、だ」

 静かにエルフの少女は言葉を待つ。

「憧れ。信念を貫く格好良い主人公ではなくても良い。カリスマのある悪役じゃなくても良い。何か信念や、大切なものじゃなくても良い。泥臭くて、人からバカにされるとしても、私は何か真剣に何かを一生懸命頑張れる人を尊敬しているし、憧れている」

 目的があるからやるんじゃない。
 立派になりたいからやるんじゃない。
 やってみたいから、今やるのだ。

「だから、私は人生目標てしてダイモス細胞の完全制御方法の確立と、『ロイヤルダークソサエティ』の解体を掲げる。みんなが笑顔になれる世界を、自分の精一杯目指してみたい」

 ダイモスと『ロイヤルダークソサエティ』に関する世界の謎を探る手伝いをしてくれたエルフの少女は、ゆっくりを口を開いた。

「私を助けたのは特に意味はない?」
「ないだろう。きっと君じゃなくてもあそこにいたなら助けた」
「人を救いたいとか、大切な人を守りたいとか、そういうのもない?」
「妹のメーテルリンクや、君を守りたいし笑顔にさせてあげたいとは思うが、世界中の人々の幸福は重すぎる」
「貴方は、自分のことをなんだと思う?」
「偽善者」
「この世界の真実を知って、自分のやることが命の危険があることを理解している?」
「理解してるさ。だからやるんだ。人生をかけたプランなんて上手くいかない事がほとんどだ。だけど、やりたい事をやって途中で死ぬのなら、後悔はない。やるなら、今からやらないと、私は言い訳を続けて何もしないだろう」

 エルフの少女は黙ったまま、ラスティを見つめる。

「わかりました。私も微力ながらお手伝いしましょう。貴方のその憧れた先にある景色を見てみたいわ」

 ラスティは、エルフの少女で世界の闇で蠢く『ロイヤルダークソサエティ』を正道で解体する『慈善活動組織アーキバス』を結成。

 そうしてラスティはその『慈善活動組織アーキバス』のリーダーとして活動を始めるのだった。

 ラスティにはヴェスパー家の貴族としての生活もあるので、(エルフの少女は記憶が無く、名前も忘れてたからラスティが名付けた)が主な組織運営や活動を行っている。

 ラスティも最大限、リーダーとして組織運営をしているが貴族として政治をやるのと、慈善事業を両立するというのは実際にやるようになると大変とかいう物ではなかった。

 エクシアには本当に助けられて、彼女が文武両道を超えた超絶的なスペックを持っていてくれたおかげで着々と戦力増強や資金確保、情報収集も進んできている。

 無論、そんな彼女に見限られない事と頼り切りにならないための戒めとして武力と知力を数十倍、数百倍以上、更にそれ以上を目指して努力をしているが、年少期から『慈善活動組織アーキバス』を本格運用するのは難しかったと言わざる得ないだろう。

 そうして、組織を結成して2年にもなるとラスティとエクシアの2人を除いて3人の仲間が出来た。
 慈善活動組織アーキバスは合計5人となった。

 元はダイモス細胞の暴走したダークレイスとして殺害処理や迫害などされていたのを助けて、細胞暴走を治療する魔力制御ワクチンを打ち込み、引き取ったのだ。
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