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72話:指名依頼②
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『――――CPより金色一葉ッ! 真昼大隊は後退命令を受諾しました! 砲撃を許可するとのこと!』
『っ、よし! 金色一葉、了解です!』
駄目かと思っていた所に、砲撃許可の連絡。一葉はガッツポーズをすると共に、急ぎ巨大なアタッチメントがついたジェスタDという名の電磁投射砲の発射シークエンスをスタートさせた。
『超電導モーター起動………カートリッジロード、マウントアーム固定!』
その声と共に、電磁投射砲が地面に固定された。
前方に居る衛士部隊は、既に退避していた。
銃口から、青い光が迸り始める。
「いけえええええええええ!!」
金色一葉は大声で吠えた。
狙いを定める。可能な限り多くのデストロイヤーを撃破できるように敵の配置を頭に叩き込んだ。そうして一葉が発射する直前に思ったのは、敵の姿だった。
初陣であろうが、嫌味が得意な子供衛士だろうが、理屈の通じない上官ではない、それらを虫けらのように殺そうとするデストロイヤーの異形だった。
そして今の自分の役割は。果たすべき任務は。最適の解は。それらの問答が一葉の中で混ざりスパークした。
『くたばれ、バケモノ共ぉぉぉぉぉぉッッッ!』
声と共に、電磁の光跡が虹のような色を描いた。
円状に広がったその中心から極まった速度で弾丸が飛び出していく。
『―――お、ああああああああっっ!』
放たれるのは超高速の砲弾。ローレンツ力により従来のそれとは比較にならないほどに高められた速度で飛ぶそれは、真正面から最硬を誇る突撃級の装甲を突き破ってあまりある程で。
科学の結晶とも言える暴力の塊が、一葉の雄叫びに呼応するように大気を蹂躙した。
そのまま一葉は一点だけではなく、広範囲に散らばっているデストロイヤーをなぎ払うように銃口を移動させた。
毎分800発で放たれる極光の矢は、何体ものデストロイヤーを抉り壊した後に、大気との摩擦によってようやく消滅していく。
雷のように途方も無い砲撃、続いたのは1分に満たなかった。
だがそのたった60秒で十二分だと言わんばかりに、赤の光点はその数を激減させていた。
衛士はおろか観測していたCPまでも絶句する、それは圧倒的すぎる砲撃だった。
数秒し、デストロイヤーだった粉末――――血煙を見た衛士達が、口々に感嘆の言葉を吐いた。
『……す………す、っげぇ…………っ!!』
『な、なんなんだよアレはよ!?』
『これは………何が、一体何が起きたんですか!?』
『いやー、やらかしてくれるわ日本人は!』
『さすがに変態大国だなあ、おい』
『正に理想的な砲撃だったな………撃ってみたい』
羨望の声と、歓声さえも上がっている。
その中で1人、いつもの調子を崩していない男は功労者に声をかけた。
『お疲れ様、一葉ちゃん』
『真昼様』
『文句なしの任せた通りにやってくれたよ。ジェスタDが配備されれば死亡する衛士の数も多く減る』
真昼はそこで黙り込んだ。代わりにと、通信から声が響く。
『さぁ! みんな! 気を抜くな、まだ戦いは終わっていないぞ!』
『りょ、了解!』
『残飯は少数だが脅威には違いない、油断せずに平らげろ!』
ここで死んでは意味が無い。比呂美はそうした意図を含めての命令を出して、そして内心で呟いた。
真昼は内心で思う。
(新兵器、言うだけの事はあったか。それに………あれだけの兵器を扱うというのに、全く迷いがなかった)
初めての試射ということは、それだけ躊躇いがあるのが当然である。発射態勢を整える所から砲撃を終えるまで、ケチを付ける所がほぼ皆無である方が珍しいのだ。
(それに、フォーミュラフロントのメンバーも歌を歌いきっていた。この脅威を前にして大した胆力だよ、本当に)
真昼は呟き、口元を緩めた。それはこの戦闘が始まってより初めての、本当の笑みの表情だった。
『っ、よし! 金色一葉、了解です!』
駄目かと思っていた所に、砲撃許可の連絡。一葉はガッツポーズをすると共に、急ぎ巨大なアタッチメントがついたジェスタDという名の電磁投射砲の発射シークエンスをスタートさせた。
『超電導モーター起動………カートリッジロード、マウントアーム固定!』
その声と共に、電磁投射砲が地面に固定された。
前方に居る衛士部隊は、既に退避していた。
銃口から、青い光が迸り始める。
「いけえええええええええ!!」
金色一葉は大声で吠えた。
狙いを定める。可能な限り多くのデストロイヤーを撃破できるように敵の配置を頭に叩き込んだ。そうして一葉が発射する直前に思ったのは、敵の姿だった。
初陣であろうが、嫌味が得意な子供衛士だろうが、理屈の通じない上官ではない、それらを虫けらのように殺そうとするデストロイヤーの異形だった。
そして今の自分の役割は。果たすべき任務は。最適の解は。それらの問答が一葉の中で混ざりスパークした。
『くたばれ、バケモノ共ぉぉぉぉぉぉッッッ!』
声と共に、電磁の光跡が虹のような色を描いた。
円状に広がったその中心から極まった速度で弾丸が飛び出していく。
『―――お、ああああああああっっ!』
放たれるのは超高速の砲弾。ローレンツ力により従来のそれとは比較にならないほどに高められた速度で飛ぶそれは、真正面から最硬を誇る突撃級の装甲を突き破ってあまりある程で。
科学の結晶とも言える暴力の塊が、一葉の雄叫びに呼応するように大気を蹂躙した。
そのまま一葉は一点だけではなく、広範囲に散らばっているデストロイヤーをなぎ払うように銃口を移動させた。
毎分800発で放たれる極光の矢は、何体ものデストロイヤーを抉り壊した後に、大気との摩擦によってようやく消滅していく。
雷のように途方も無い砲撃、続いたのは1分に満たなかった。
だがそのたった60秒で十二分だと言わんばかりに、赤の光点はその数を激減させていた。
衛士はおろか観測していたCPまでも絶句する、それは圧倒的すぎる砲撃だった。
数秒し、デストロイヤーだった粉末――――血煙を見た衛士達が、口々に感嘆の言葉を吐いた。
『……す………す、っげぇ…………っ!!』
『な、なんなんだよアレはよ!?』
『これは………何が、一体何が起きたんですか!?』
『いやー、やらかしてくれるわ日本人は!』
『さすがに変態大国だなあ、おい』
『正に理想的な砲撃だったな………撃ってみたい』
羨望の声と、歓声さえも上がっている。
その中で1人、いつもの調子を崩していない男は功労者に声をかけた。
『お疲れ様、一葉ちゃん』
『真昼様』
『文句なしの任せた通りにやってくれたよ。ジェスタDが配備されれば死亡する衛士の数も多く減る』
真昼はそこで黙り込んだ。代わりにと、通信から声が響く。
『さぁ! みんな! 気を抜くな、まだ戦いは終わっていないぞ!』
『りょ、了解!』
『残飯は少数だが脅威には違いない、油断せずに平らげろ!』
ここで死んでは意味が無い。比呂美はそうした意図を含めての命令を出して、そして内心で呟いた。
真昼は内心で思う。
(新兵器、言うだけの事はあったか。それに………あれだけの兵器を扱うというのに、全く迷いがなかった)
初めての試射ということは、それだけ躊躇いがあるのが当然である。発射態勢を整える所から砲撃を終えるまで、ケチを付ける所がほぼ皆無である方が珍しいのだ。
(それに、フォーミュラフロントのメンバーも歌を歌いきっていた。この脅威を前にして大した胆力だよ、本当に)
真昼は呟き、口元を緩めた。それはこの戦闘が始まってより初めての、本当の笑みの表情だった。
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