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61話:東京防衛戦④

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 一ノ瀬真昼はポイント0854地点にて押し寄せてくるデストロイヤー達を撃退していた。ラプラスを発動させて全域の衛士の力を上昇させている。アクティブイーグル・UC型に加えて、オプションアタッチメントのシールドファンネルにガトリングを搭載させた攻撃的なモードで一人で四人分の働きをする。

 それに食いつくのはお台場衛士訓練校の船田姉妹こと船田香純と船田初春だ。彼らもスキルを発動させてデストロイヤー達を片っ端から食い破る。ラプラスのおかげでスキルの負担が大幅に軽減されて、動きやすくなっていた。

 愛花とシノアは二人で連携を組んで別の場所でデストロイヤーを倒す事になっていた。船田姉妹は無理を言って梨璃と一緒に戦えるように司令部に頼んだのだ。

「香純、少し前へ出過ぎよ」
「はい、姉様。しかし」
「真昼さんを見ているとじっとしてられない?」
「正直に言えば」
「凄いものね、XM3強化手術……これほどとはね」
「悔しいですが、真昼は強いですわ。あの強さを私も手に入れることができるなら」
「強化手術を受け入れる?」
「強さは何よりも優先される。それがリスクのない力なら尚更。だけどそんな美味しい話があるわけありませんわ」
「そうね。デストロイヤー細胞を使う以上、何かしらの副作用はあると見て良い」
「難しい選択ですわね。けど、あの力は、力が手に入るなら」

 周囲の敵を掃討してきた真昼が戻ってくる。
 真昼はシールドファンネルを滞空させたまま、近くの自販機から飲み物を買って飲む。

「何かいる? 二人とも」
「いいえ、いりませんわ」
「お気遣い感謝します」
「というか、よくそんな呑気に構えていられますわね。一応、ここはセーフティエリアの外でしてよ」
「大丈夫だよ、デストロイヤーサーチャーには反応ないし、休める時に休んでおかないと気がもたないよ。それよりもどうだった、私の動きは」

 真昼は自分を目当てに船田姉妹がここにいる事を知っていた。そして強化手術を受けるか悩んでいることも。

「まぁ、流石歴戦の猛者、幸運のラプラスと呼ばれるだけあると言っで差し上げますわ」
「翻訳すると、とても凄かった、って事です」
「ちょっと姉様!?」

 それに真昼は笑う。

「ははは、そっか。そっか。もっと見せてあげたいけどそれにはまだ早いんだよね」

 その時だった。
 通信が入る。

『こちら司令部より各衛士へ。想定以上のデストロイヤーの出現に地上からの突撃は不可能と判断された。現時点でポイントに集結している衛士および戦力にてГゲー標的を破壊せよ。その後、人造衛士を使った航空爆撃によって砦を築く三体の特型デストロイヤーを破壊する。繰り返す』

 その指令に憤りを見せるのは船田香純だ。

「なんてアバウトな作戦!? 司令部は正気ですの!? 戦力の逐次投入は愚策でしてよ!」

 真昼は同意する。

「そうだね。少し纏め役が必要かな。香純ちゃん、初春ちゃん、見せてあげるよ。これがXM3強化手術によって魔力貯蔵量が跳ね上がったからできるスキルの乱用と、破壊の神だよ」

 アクティブイーグルUC型が変形する。赤い粒子が噴き出し、シールドファンネルが空高く飛び立つ。そして赤い光がポイントに集結する衛士達に降り注ぐ。

「魔力交信開始、感応現象強制発動、ラプラス完全覚醒」

 瞬間、空気が変わった。
 強烈な魔力の波動にによって、東京内にいた三体の砦を築く以外デストロイヤーが全て真昼を目指して進撃を開始した。
 デストロイヤーサーチャーのマップには赤いマーカーが波のように押し寄せてくるのがわかる。
 その異常な様子に純が叫ぶ。

「何をしていますの!?」
「デストロイヤーを呼び寄せた。このポイントに集結予定の衛士全てを呼び寄せるのも含めて効率的にヒュージを撃破する為の方法だよ。そして、Гゲー標的もやってくる」

 遠くで山のようなГゲー標的が動き出した。目玉から極太マギレーザーが発射される。真昼はそれをマギリフレクターを受け流す。船田姉妹に余波がいかないように魔力がリフレクターを大きく展開している。
 真昼は通信をする。

「ポイントを目指す全衛士へ。全てのデストロイヤーはここへ集まります。皆さんはデストロイヤーの排除を優先してください。私達はГゲー標的を破壊します」

 通信を終えると、ギュィィンと音をたてて装甲車が到着した。中から黒服の人たちが現れる。

「ここは危ないですよ」
「真昼さん。戦術機に改造を施したい。できれば今すぐ」
「何故ですか?」
「試作段階だったものが遂に完成した。これがあれば貴方は大きな力を手に入れるだろう。是非とも使って欲しい」
「わかりました。何分で行えますか?」
「30秒で」
「お願いします」

 真昼は戦術機を黒服に差し出すと、装甲車の中から黒いケースを持ち出してきた。ケースを開けると様々な部品が入っている。それを凄い勢いで装着していく。
 真昼にもパワーアシストアタッチメントの装着を要求される。パワーアシストアタッチメントは高い機動性と防御力を発揮するが魔力の消費が激しい為長時間の使用は不可能だ。しかし梨璃は強化手術によって魔力を大量に保有しているので問題とならない。

「真昼さん、このアクティブイーグル・フルアーマーユニコーンは大幅に火力を増強しています。XM3強化手術を前提とした超火力です。しかしその分、細かい動作がしにくくなっています。こちらの距離に入ったら一気に全ての武装で敵を撃破してください」
「完成しました」
「わかった。持てば武装は理解できます。Гゲー標的を倒してください」

 その言葉に真昼は胸に手を当てて答える。

「了解」

 戦術機を手に取る。すると一際赤く発光する。

「香純ちゃん!!」
「なんですの?」
「これが、私が提示できる最高到達点。XM3を前提とした戦力の構築。それを遂げる為に助けて欲しい。だから私は貴方が見惚れる程の強さを見せてる。だから私を見逃さないで」

 まるで告白のような言葉に香純は顔が赤くなる。しかし真昼の真剣な瞳を受けて、いつまのように頷いた。

「ええ! ではわたくしが値踏みして差し上げますわ」
「うん、お願い」

 真昼はビルを足場に大きく跳躍する。そして迫り来るデストロイヤーに群れに対して、アクティブイーグル・フルアーマーユニコーンを向ける。全身に搭載された戦術機の火器が起動して破壊の神が降臨する。

 地表にいたデストロイヤーは圧倒的な火力を前に殲滅される。残弾がゼロになったウェポンをパージして、ビルの上からГゲー目標と対峙する。Гゲーの触手がビルを薙ぎ倒しながら振るわれる。
 だが、その時、Гゲー目標の触手が切断された。そしてГゲー目標の背中で大きな爆発が起こる。

「お待たせしました、真昼様」
「流星を傷つけた罪、その命で償わせてあげる」

 真昼の横に着地したのはXM3強化手術を受けた衛士の二人。
 イェーガー衛士訓練校の序列二位の松村優珂。
 神凪芸術衛士訓練校トップレギオンの一人、宮川高城。

「二人とも来てくれたんだ」
「勿論です。この命は貴方の最善の為に」
「流星が死にかけた。デストロイヤーがいなければこんなことにならなかったのに。絶対に許さない。全て壊滅させる」

 幸運のクローバー。
 扇動者。
 あらゆる不利な戦場を勝ち抜いてきた勝利の女神。
 横浜衛士訓練校二年、一ノ瀬真昼
 世界最強の衛士が三人揃った。
 デストロイモードが連鎖して反応して、三人の魔力が高まっていく。

「新型特殊弾装填!」
「援護します!」
「貴方は魔力を込めるのに集中して! シールドファンネルの操作をこちらに回して!」
「了解」

 ビルを足場に高速で跳び回りながら魔力を充電する。触手が放たれるがそれを全て残りの二人が切り落とす。レーザーが来れば魔力リフレクターで防御する。
 更にそこに砲撃が加わった。

『こちら黒十字部隊! 援護します! 倒すのは無理でも気を逸らすくらいなら私達にもできますので!』

 彼女達だけではない。全ての衛士が砲撃によって魔力の充填をする衛士から気を逸らそうとしている。全ての戦力が結集している。
 真昼はビルの上で狙いを定める。そしてチャージがマックスになったのと同時に引き金を引いた。
 桃色の光がГゲー目標を完全消滅させる。
 星光の破壊スターライトブレイカー
 それはまさに破壊の化身であった。

《全衛士へ通達、対爆風姿勢!! 衛士爆弾投下!!》

 東京に建造されつつ三つの砦に、空から人造衛士と新型弾頭が組み合わされた爆弾が投下された。
 光が瞬く。

《一つ! 破壊を確認! 二つ! 破壊確認! 三つ! 破壊確認!! センサーに感あり……敵性反応あり。個体名称エヴォルヴ出現!!》

 災禍のデストロイヤーが誕生の唸りを上げた。
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