剣と銃がついたデカイ武器を振り回す女の子は好きですか!?

ウィリアム・ブロック

文字の大きさ
上 下
52 / 114

52話:技術研究①

しおりを挟む
 真昼は横浜基地で、真昼専用の最新技術が使われた義手と脚部補助のパワーアシストアタッチメントの運用テストをしていた。
 次々に現れるデストロイヤーを切り刻み、弾丸で風穴を開けていく。攻撃を回避して建物を飛び移ってデストロイヤーを叩き切る。背後からの攻撃を魔力リフレクターで防御して射撃して破壊、そのまま加速してデストロイヤーを粉砕していく。

『目標数超過、リミットオーバー。テスト終了。お疲れ様でした』

 シュミレート空間が消えてただの部屋に戻る。真昼はUC型マニュピレーターと名付けられた純白の義手を見る。それは真昼の思い通りに動いて、反応速度も強度も問題ない。
 脚部のパワーアシストアタッチメントも歩行の補助に加えて、魔力の噴射によるブースターとして機能するので戦闘能力が向上している。

 問題なし。

 それを研究員に伝えて、真昼は休憩室で休む。すると端末に連絡が届く。横浜基地にシノアと愛花が到着したようだ。真昼は深呼吸を一度して、外へ出た。

 ヘリから降りて、真昼達を待っていたシノアと愛花は、約一ヶ月ぶりに姿を見る真昼に驚いたようだった。腕には純白の義手、脚部にはパワーアシストアタッチメントがあるのだ。

「久しぶりだね、二人とも」
「真昼お姉様、お久しぶりです」
「真昼様、お久しぶりです」
「悪いね、ここまで来てもらって。横浜衛士訓練校は反GE.HE.NA.だからこの基地を快く思ってないでしょう?」

 その言葉にシノアと愛花は苦笑いする。

「気をつけて、と忠告は受けました」
「だよね。じゃあ中に入ろうか」

 真昼は二人を白い部屋に案内する。部屋にはお茶菓子と飲み物があった。三人は一息ついて、緊張がほぐれたのを見計らって真昼は口を開いた。

「二人をここに呼んだ理由を話そうかな。シノアちゃんは私を慕ってくれて頑張ってくれたから、私も信頼して話しで良いと判断したから。愛花ちゃんは正義感と利害の一致かな」
「利害の一致、とは?」
「これから発動する大規模作戦の利害一致。この作戦はとても過酷だけど、衛士の為にやらなければいけない作戦なの」
「具体的な作戦内容どんな内容なんですか?」
「GE.HE.NA.内部の過激派の粛清、および第五計画有力者の殺害」

 それにシノアと愛花の顔色が変わる。

「真昼様、正気ですか?」
「GE.HE.NA.は色々と黒い噂の絶えない組織ですが、それでも人です。その殺害というのは」
「うん。私はクレスト社から支援を受けてるんだけど、そこからGE.HE.NA.の内情を知らされて依頼があったの。自分の研究の為に衛士や一般市民を犠牲にする人達が沢山いる。その人達を一掃してクリーンな組織にしたいから手伝って欲しいと」

 真昼は嘘と真実を混ぜながら口にする。

「手伝ってほしい。二人には私と一緒に手を汚して、衛士を救って欲しい」
「……わかりました。私は真昼様に従います! 苦しんでる人を放置しておけません」
「愛花さんはどう?」

 愛花は正義感が強い人間だ。GE.HE.NA.の非道さに怒りを覚えるが、かといって殺害して処分してしまうのはやり過ぎだと感じている。それに真昼の言っていた言葉が気になる。

「私の利害の一致ってなんですか?」
「台北の奪還と、家族を殺した仇のデストロイヤーの破壊。それが二年以内に叶う可能性が高くなる。正確には台北への大規模遠征が二年以内に行える」
「この粛清をすると、そこまで話が進むと?」
「GE.HE.NA.は世界中にある巨大多国籍企業だ。その企業が全てのしがらみや個人利益を無視して人類のための研究に力を注げばそれくらいできると予測している。それに現時点で、ネストの一つならば破壊できる戦力が既に揃っている」

 その言葉に愛花の目が細められる。

「そこまで力があるのですか? 本当に」
「うん。間違いないよ。この横浜基地にいる戦力があるだけでネストが攻略可能だ。けどできない。何故なら」
「一部の過激派が、足を引っ張っているから、と?」
「そう。これは正義の行いだ。被験体になっている衛士を救って、その技術を人類を救う為に運用する。自分の欲求を満たす為に他者を食い物にする人達を打倒する。その手段が暴力によるものだとしても」
「それをすれば、故郷奪還に近づく」
「確実に」

 愛花は瞳を閉じた。
 考えているのだろう。故郷奪還、そして人類の守護、衛士の保護。その為に過激派を殺害することが許されることなのかどうか。衛士による人命の殺害は許されない行為だ。しかしそれは無抵抗で実験台なる為に使われる言葉ではない。

 衛士の人権を無視しているのは過激派の方だ。ならばそれは正当防衛であり、正義の行いではないのか? しかし人命の簒奪はどんな理由があっても許されない。

「私達衛士は過激派が開発した変異デストロイヤーを倒すことで、直接手を汚すのは防衛軍の特殊部隊がやってくれる。特殊部隊の防衛が主な任務だから、自分が殺す必要はないよ」
「……でも人殺しには違いありません」
「愛花ちゃん。貴方が正義感のある道徳のある人間だというのは知っている。けど、今回はそれを曲げてでも手伝って欲しい。貴方が必要なんだ」

 そう真昼が言うと愛花は不可解げに眉を顰めた。

「何故、私なんですか? 普通に考えれば、その作戦を止めるかもしれない性格をしているのに」
「故郷奪還を諦めていないからだよ。貴方が横浜衛士訓練校の幼稚舎に入って約10年。その間、復讐心と故郷奪還の夢を叶える為に努力し続けてきたのは並の精神力じゃない。強さや努力だけなら貴方に匹敵する人はいくらでもいる。でも10年という月日が経っても志を変えない意志の強さは愛花ちゃんだけの特別だ。だから私は貴方に提案するの。一緒に戦わないかって」

 愛花は黙ってそれを聞いていた。

「強いだけでもない。努力だけでもない。自分の夢と怒りを忘れず原動力にしてきた愛花ちゃんと、私は共に戦いたい。一緒に台北市を解放するんだ」

 愛花は悩んだ末に、梨璃の手を取った。

「私はこの作戦に反対の意見です。どんな理由があろうと、人を殺して良い理由にはならない。だけど、でも、罰を受けるとしても、私は故郷を奪還したい。せめて生きている間に、兄さん達のお墓を故郷に建ててあげたい」
「当たり前だよ。家族を殺した相手を許さない。奪われた故郷を取り戻すんだ。貴方の罪は私が背負う。シノアちゃんも私がやれと言ったからやったに過ぎない。全ての罪は私にある。だから、想いを全部デストロイヤーにぶつけて」

 そこでシノアが立ち上がって梨璃の手を掴んだ。

「真昼様が背負うなら、私も背負います。真昼様は特別で凄い人ですが、けど特別なことをする必要はないんです。罪は自分で背負います。そして私は私の意思で真昼様についていきます」

 愛花も二人の手を重ねる。

「これは私達が自分で背負う罪です。真昼様は自分分だけ背負って生きてください。ただでさえその背中には重い荷物が乗っているじゃないですか。だから自分で背負えるものは自分で背負います」
「ありがとう、二人とも」

 真昼は端末を操作して二人に情報を送る。

「今送ったのが作戦決行日時と場所。三人とも同じ場所で特殊部隊の護衛をする事になる」
「これで、衛士の待遇は良くなるんでしょうか?」
「コピ女って知ってる?」
「コピリコ女学院ですか? 今は崩壊して独立レギオン・アイアンメイデンと外征レギオンでデストロイヤーを討伐している」
「そう。そのコピリコ。そこが崩壊した理由は過激派の暴走によるものなんだ。過激派は己の利益のためにデストロイヤーに直接的な被害をもたらし、市民の安全を脅かしている」
「そうなんですね」
「これは誰かがやらなきゃ行けないことなんだ。たとえ泥を被るとしても、それを覚悟して特殊部隊の人達や部隊防衛に参加する衛士はやる。全ては人類と衛士の為に」

 知っている人だけでも理不尽に怯えなくて良い世界を作るために、戦うのだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活

XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

1×∞(ワンバイエイト) 経験値1でレベルアップする俺は、最速で異世界最強になりました!

マツヤマユタカ
ファンタジー
23年5月22日にアルファポリス様より、拙著が出版されました!そのため改題しました。 今後ともよろしくお願いいたします! トラックに轢かれ、気づくと異世界の自然豊かな場所に一人いた少年、カズマ・ナカミチ。彼は事情がわからないまま、仕方なくそこでサバイバル生活を開始する。だが、未経験だった釣りや狩りは妙に上手くいった。その秘密は、レベル上げに必要な経験値にあった。実はカズマは、あらゆるスキルが経験値1でレベルアップするのだ。おかげで、何をやっても簡単にこなせて――。異世界爆速成長系ファンタジー、堂々開幕! タイトルの『1×∞』は『ワンバイエイト』と読みます。 男性向けHOTランキング1位!ファンタジー1位を獲得しました!【22/7/22】 そして『第15回ファンタジー小説大賞』において、奨励賞を受賞いたしました!【22/10/31】 アルファポリス様より出版されました!現在第四巻まで発売中です! コミカライズされました!公式漫画タブから見られます!【24/8/28】 ***************************** ***毎日更新しています。よろしくお願いいたします。*** ***************************** マツヤマユタカ名義でTwitterやってます。 見てください。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

実はスライムって最強なんだよ?初期ステータスが低すぎてレベルアップが出来ないだけ…

小桃
ファンタジー
 商業高校へ通う女子高校生一条 遥は通学時に仔犬が車に轢かれそうになった所を助けようとして車に轢かれ死亡する。この行動に獣の神は心を打たれ、彼女を転生させようとする。遥は獣の神より転生を打診され5つの希望を叶えると言われたので、希望を伝える。 1.最強になれる種族 2.無限収納 3.変幻自在 4.並列思考 5.スキルコピー  5つの希望を叶えられ遥は新たな世界へ転生する、その姿はスライムだった…最強になる種族で転生したはずなのにスライムに…遥はスライムとしてどう生きていくのか?スライムに転生した少女の物語が始まるのであった。

処理中です...