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15話:レギオン結成⑧

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 二階堂胡蝶をレギオンメンバーにしたシノア一行は、翌日シノアと風間と二水でエミーリア・V・シノアリスの勧誘する為に工房科に向かった。

 幸いにもすぐに見つかり、話しかける。

「レギオン? 良いぞ」
「いいの? 工房科ならいくつか誘いがあるんじゃないかしら?」
「真昼様の戦術機は真由様がメンテしとるからのぅ。何かあった時、儂もメンテできれば便利じゃろう」
「ありがたい事ですわ。じゃあこの紙にサインを」
「うむ」

 レギオンメンバー結成の紙に指輪をかざすと、サインがされる。これで正式に8人揃ったことになる。
 早速シノアは梅に端末から連絡をした。

『梅だぞー』
「シノアです。ごきげんよう」
『おう、どうした?』
「レギオンメンバーが揃いました」
『そうか! それは良かったナ!』
「そこで梅様には真昼様の説得を手伝っていただきたくて」
『そうだなー、放課後カフェテリアに集合しよう。勿論レギオンメンバー全員でナ』
「わかりました」

 通信を切る。

「梅様はなんておっしゃってましたの?」
「放課後に全員でカフェテリアに集合だって。そこで真昼様を説得するつもりだと思う」
「真昼様は了承するでしょうか?」
「してくれないと困りますわ。これだけ頑張ったのに」
「梅様も手伝ってくれるから、それに期待するしかないとは思うわ」
「取り敢えず全員に放課後にカフェテリアに集合だと連絡しないといけませんわね」
「そうね、早めにやってしまいましょう」

 真昼は端末を操作してメッセージを一括送信する。

「後は、待つだけ、ね」

 放課後はすぐにきた。
 そこにはレギオンメンバー全員揃っている。みんなそれぞれ飲み物を飲んで、談笑しながら梅達を待っている。
 そこに大きく手を振りながら梅と梨と真昼がやってくる。

「待たせたなー」
「いいえ、それほどでも」
「じゃあ真昼。お前のレギオンに入りたいってやつが揃っている。お前はどうする? 横浜衛士訓練校の流儀に逆らって非効率な臨時補充隊員を続けるか? それともみんなで強くなって誰かを助けるカ?」
「うん、そうだね」

 真昼は大きく息を吸って、一歩前に出た。

「一ノ瀬真昼です。知っている人はいると思うけど私は今、臨時補充隊員として活動しています。ラプラスの力を使って、敗北濃厚な戦局を覆す役割を担っています」

 ラプラスはそれだけの力があった。誰もが生存を、勝利を絶望する中で光を見せる希望の光。それがラプラスのスキルだ。そして衛士達を死地へ駆り立てて、最小の犠牲で最大の戦果を叩き出す。

「その私のレギオンに入ると言うことは危険な戦場に投入されることを意味します。それでも私のレギオンに入りますか?」
「はい。入りたいです」

 シノアが。

「私と戦う以上は諦めは許されません。死ぬ最後の瞬間まで戦い続ける事を誓えますか?」
「誓えますわ」

 風間が。

「私には悪い噂があります。それを共に背負う覚悟はありますか?」
「はい! 勿論です」

 二水が。

「私は皆さんに高い水準の技量を求めます。それでもついてこれますか?」
「その点も了承しております」

 愛花が。

「ラプラスの支配で、強制的に体が動かされる事があるかも知れません。それでも共に戦いますか?」
「うん、戦うよ」

 葉風が。

「私達に敗北は許されません。その重責に耐えることができますか?」
「まぁ、それなりに」

 胡蝶が。

「みんなは、私と戦って良いと思ってますか?」
「そんなの当たり負けだ!」

 梅が。

「こんな私ですが、よろしくお願いします」
「うむ! こちらこそなのじゃ!」

 エレーミアが。
 全員が真昼と一緒のレギオンになることで被る不利益を了承した。そしてシノアはレギオンメンバーの紙を取り出して真昼に渡す。
 真昼は少しその紙に見つめた後、サインした。

「真昼様、これで私達は同じレギオンです。そこで、なのですが」
「うん? どうしたの」
「姉妹誓約の契りを結んで貰えないでしょうか?」

 真昼は目を見開いた後、シノアを抱きしめた。

「そうだね。ここまで頑張ってくれただもん。ご褒美は必要だよね。うん、結ぼうか。姉妹誓約の契り」
「はい!」

 こうして、柊シノアは一ノ瀬真昼と姉妹誓約の契りを結ぶことに成功してレギオンメンバーとして共に活動する事になったのだ。

「じゃあレギオンとしての練習は明日からやろうか。基礎からちゃんと段階を踏んでいこう」
「それが良いな! 真昼は教導官として他の訓練校に呼ばれた事があるから教えることに至っては中々の腕前だゾ!」
「聞いたことがあります! あまりの苛烈な訓練に地獄の一ヶ月と呼ばれたとか」
「合同訓練校強化訓練の時の事だね。あの時は……まぁ、世界最強のアールヴヘイムが基準だったこともあって、他の訓練校の衛士が弱く見えたんだよね」
「それは世界最強を基準に訓練されたのではたまりませんわね」
「色々経験して衛士の平均値みたいなものを知ったけど、やっぱり辛い現実だなって思うよ」

 真昼は苦々しく言った。
 愛花が聞く。

「と、いうと?」
「弱すぎる。衛士を一年以上やってラージ級を一人で倒せないのが普通なんてあまりにも弱い」
「まぁ、そうなんですか。私や風間さんでもラージ級をデュデルで倒せと言われればできそうなものですが」

 愛花の言葉を真昼は首を振って否定した。

「ラージ級は他のレギオンだとレギオン単位で対処する相手なんだ。それに加えてスモール級やミディアム級が加われば衛士や防衛隊の損耗率が高いのも頷ける。一部のエース級はそれこそギガント級とも戦えるほど突出してるけど、平均値でいえばラージ級以下の衛士が多い」
「それは真昼様も本気になりますね」
「うん。とにかく最低限能力は得てもらわないとと思って訓練した結果が」
「地獄の一ヶ月ですか」
「みんなは基礎できているし、連携が主になると思うからそこまで辛くはないと思うよ。ああ、そうだ。訓練にやるに当たってみんなに徹底して欲しいことがあるんだ」
「なんじゃ?」
「食事は三食しっかり食べる、睡眠時間は七時間以上、自主練をしない。これを守って欲しいんだ」

 真昼は指を三つ立てて一つ一つ説明していく。

「まず食事。これは体を作る重要な要素。栄養がなければ体も脳も弱くなる。横浜衛士訓練校のランチメニューは栄養効果抜群だから、とにかく一食も抜かないで」

 二つ目。と指を折る。

「睡眠。これも疲労を取る上で重要なものだからね。脳と体を最大限活用する為にも必要となる」

 三つ目。と指を折る。

「自主練をしない。これは横浜衛士訓練校の訓練とレギオンの練習に自主練を加えるとオーバーワークになる。無駄な努力はただの徒労だよ。効率で効果的な努力こそが知能ある私達人間の武器だ。その三つをしっかりと守って欲しい」
「わかりました」
「じゃあ、明日からレギオン訓練やろうか」

 一ノ瀬隊、結成。
 レギオン名:ディサイシブ・ストライク
 翌日。
 シュミレーター室で行われた5時間耐久防衛デストロイヤー襲来訓練で、真昼と梅以外の全員が吐いた。

「な、なんて過酷な訓練ですの」
「流石、うっ、噂の真昼様です。予想の上をいきました」

 風間と愛花が地面で膝をついていた。他のメンバーも死屍累々といった様子だった。白目を剥いて気絶をしている者もいる。逆に真昼と梅はケロッとしていた。

「久しぶりだなー、アールヴヘイム式訓練」
「昔は毎日これやったよね、懐かしいなぁ」

 その会話聞く胡蝶が口元を押さえながら呟く。

「初代アールヴヘイムって何者」

 真昼は笑って言う。

「世界最強のレギオンだよ」

 五時間耐久防衛デストロイヤー来襲訓練とは、五時間襲来し続けるラージ級からスモール級までのデストロイヤーを殺し続けるという訓練だ。ギガント級はマギスフィア戦術がないと倒せないので登場しない。しかし圧倒的物量を持って襲ってくるデストロイヤー相手に五時間戦い続けるのは並の集中力では持たず、倒れる者も出てくる。

 倒れても無理矢理蘇生させられ、戦わせ続けられる訓練だ。

「みんなの大体の実力はわかったから、明日は天葉ちゃんに頼んでマギスフィア戦術を見ようか」

 返答できるのは梅だけだった
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