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49話

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高級な宿屋はすごかった。フカフカのベッドは寝心地が良く、ちょっと仮眠のつもりでゆっくりしていたら寝坊した。

ヤバイ、やってしまった。

バタバタと慌てながらボクは急いで龍理人タキアさんの元へ向かった。

ふっー、ギリギリ大丈夫かな・・・

予定時間になんとか間に合ったが、アラタさんは先に着いていた。

「遅くなりました」

「大丈夫ですよ。本日はごゆっくりお過ごしください」

女将さんに案内されて席に座って、アラタさんと少し話をしていると一品目の料理が出てきた。一品目の料理はいつものように超フワフワの卵焼き。

お店にバタバタして来た事もあって落ち着こうと思いながら卵焼きに箸を伸ばす。

一口食べると口の中で溶けるように滑らかな食感。

何度食べても何回も食べたいと思うほど丁寧な仕事ぶりがこの一品だけでわかる。

そんな料理が次々と出てくる。

「お二人は明日ドラゴン討伐に行くということなので、今日は特別な料理をご用意しました」

きたーーーーー

「これからドラゴンの肉を目の前で仕上げいたしますね」

普通ドラゴンの肉は固くて食べにくいため、細切れにしてハンバーグにして食べる。

そんなドラゴンの肉を目の前で仕上げするって何をするんだろう・・・

ドンっという音とともにタキアさんはドラゴンの生肉をまな板に乗せる。

えっ、生肉・・・

そして取り出した魔王の柳葉包丁。

ここで使うのか・・・

ちらりとアラタさんを見ると「えっ」と小さく呟いて驚いている。

サプライズ成功だな。そしてそのおかげでなんかすごい料理を食べれそうだな。

タキアさんは魔王の柳葉包丁を使い、ドラゴンの生肉に丁寧に何度も何度も隠し包丁を入れながら、薄切りにしていく。

「お待たせいたしました。ドラゴン肉の刺し身になります」

ドラゴン肉は固すぎて噛み切れないため、叩き潰してミンチにしてハンバーグにする料理以外は聞いた事がなかった。

初めての料理を食べれる。なんて幸せな事なんだろうか・・・

ドラゴン肉の刺し身を1枚すくい上げて口に運ぶ。

隠し包丁を入れているおかげで固い肉は適度なコリコリとした食感となり、噛むたびにドラゴン肉の旨みが出てくる。

「美味い」

「ありがとうございます。この料理を出来たのはホクトさんのおかげです。おかげで新たなドラゴン肉の調理法を見つける事が出来ました」

「こちらこそ新しい料理を食べれて幸せです」

「そんな事を言ってもらえるのは料理人として幸せな事です。魔王の柳葉包丁ありがとうございました」

タキアさんはボクに魔王の柳葉包丁を渡してきた。

「そしてホクトさんにはお願いがあるのですが少しお話し聞いていただけますか」

タキアさんがボクにお願い・・・

「まだ少し先の話ですが、最高の龍理人を決める大会があります。今まで私はこの大会には参加しなかったのですが今回の大会はホクトさんのお力があれば、龍理人のトップ5しか名乗れない五龍になれるかもしれないと思っています」

料理人の最高峰、龍理人。
その龍理人の中で最高を表す称号、五龍。

トップオブトップ、黄龍。

固いドラゴン肉を豆腐のように切り刻む最高の剣術龍理人、白龍。

叩く事によって固いドラゴン肉をふんわりとした肉に変える最高の打撃龍理人、黒龍。

圧倒的な超高火力でドラゴン肉の旨みを一気に閉じ込める最高の魔術龍理人、赤龍。

医食同源、ドラゴン肉で欠損した肉体を再生出来る最高の回復龍理人、青龍。


タキアさんが五龍を目指す。それにボクの力が必要。必要とされるのであればボクはいく。

「ボクで良かったら力をお貸しします」

「ありがとうございます。それでは本日はありがとうございました」

タキアさんの料理を食べて明日への活力をもらえた。

いよいよ明日は烈火ドラゴンとの勝負だ。
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