【完結】VRMMOでチュートリアルを2回やった生産職のボクは最強になりました

鳥山正人

文字の大きさ
上 下
93 / 100
第7章 4人の悪魔

93話

しおりを挟む
ブルーオウルのクランハウスに到着したボク達5人。みんながヘパイストスを倒している時に連絡していたため、マリナさん、アイナさん、チヅルさんはすでに中で待っている状況。

久しぶりに来たはいいがすごい緊張で扉の前で思わず立ち止まる。

「何グズグズしてるんですか?早く行きますよ」

メリーさんに促されるように応接室の扉を開くと真っ先に目に入ったのはマリナさんの姿。

「……久しぶりだね」
「……そうですね」
「…………」
「…………」

「久しぶりの再会で思うところもあるかもしれないけど、今そんな事してる場合じゃないんじゃないの?」

遮るようにして話し出したのはアイナさん。

「す、すみません」
「ごめん」
「まぁいいよ。で、話は本題なんだけど、マリナと付き合うためにリュウイチ様に勝負を挑んでるのに何で私達の事を集めたの?」
「そ、それはリュウイチさんに勝つためには最高の段取りが必要で、そのためにはみんなの力が必要だったからです」
「ふーん、そっかぁ。まぁ、そこまで頼りにされたんだったら、今まで私達の事を無視してた事も許してあげようじゃないか」

みんなと連絡を取らなくなって3週間。ボクに1番連絡をくれていたのはアイナさんだった。やっぱり無視されてた事に怒ってたんだな。

「あ、ありがとうございます。そ、それで、アイナさんには非常に伝えにくい事があるんですが……」
「何よ?」
「リュウイチさんに勝つための最高のパーティーなんですが……」
「何よ?えっ、もしかして私は要らないって事?何それ?!私がハヤトくんの事どれだけ心配したのかわかってるの。これじゃあ私バカみたいじゃん」

目に涙を浮かべ、応接室から飛び出そうとするアイナさん。

「最後まで聞いてください!!!」

普段出さないようや大きな声で呼び止めたボクの言葉に立ち止まるアイナさん。

「リュウイチさんに勝つための最高のパーティーにはチヅルさんの仲間の弓タンカーのスズメさんが必要です」
「だから私は必要ないって事でしょ!」
「リュウイチさんとの勝負のパーティーにはアイナさんは必要ないです。でもリュウイチさんとの勝負が終わった後の段取りを考えると、アイナさんの力がどうしても必要なんです」
「勝負が終わった後の段取りってどういう事よ?」
「ボクとリュウイチさんの勝負の結果はどうなるのかはわかりません。そして、その結果次第ではブルーオウルのクランは解体になるかもしれません」
「だからそれがどうしたのよ?」
「ボク達はどうなるかわかりませんが、チヅルさんはスズメさん達とまた一緒にパーティーを組むと思います。その時にチヅルさん達がさらなる高みを目指せるようにするためにはアイナさんの力がどうしても必要なんです。お願いします。力を貸してください」

ボクは床に激しく頭を擦り付けての土下座。

「アイナ、ハヤトくんにこうまでされたら引き受けるしかないわね」
「……ズルいよ。ズルいよ、そんなの……こうまでして勝てなかったら許さないからね」
「が、頑張ります」
「そこは勝ちますでしょ」
「は、はい。すみません。か、勝ちます」
「ったく、で、私は何をすればいいの?」
「アイナさんにはチヅルさん達と一緒に素材集めをしてきてもらいと思っています。その素材集めをしていれば自然とチヅルさんの仲間達を鍛える事が出来るはずです」
「わかったわ。で、その素材っていうのは?」
「時間の国にいるホタルのモンスター、リュシオルから取れるフローライトという素材と不思議の国にあるセフィロトの樹の枝が必要です」

「えっ?!その素材って私達が持ってるヤツですよね?」

急に声を発したのはボクの後ろの方にいたウサギさん。

「はい。ボクは事前にこのアイテムが必要だとわかっていたのでボク達は持っていますが、リュウイチさんは持っていません。リュウイチさんに勝つための段取りを考えると、リュウイチさんにこのアイテムを渡す事が必須になります」

時間の国で取れるフローライトと不思議の国で取れるセフィロトの樹の枝は悪魔を倒すために必要なアイテム。

フローライトとセフィロトの樹の枝をアイテム核融合し、今際の国で授けられる必殺付与と鏡の国で授けられる反転付与をする事で浄化の光というアイテムが作れる。

普通に悪魔を倒そうとしても死ぬ事はない。だけど浄化の光というアイテムを持っていれば悪魔に取り憑いてる鬼の魂は浄化され、となる。

「リュウイチ様に勝つためにリュウイチ様に必要なアイテムを渡す。普通の人だったら勝負事で誰かに勝とうと思ったら邪魔して段取りを悪くしようとするのに、ハヤトさんってすごいですね」

今まで静かにしていたチヅルさんが口を開いた。

「リュウイチさんは邪魔をバネにして段取りを考えてたりもします。だから、そんな事を考えずにとにかく最短距離で最高の段取りを考えるのが、リュウイチさんに唯一勝つ方法だとボクは思っています」
「それがリュウイチ様に勝つ方法ですか……」
「はい。チヅルさんも最高の段取りを考えられるようになれば、いつかきっとリュウイチさんに勝てる日が来ますよ。だってチヅルさんにはこんなに素敵な仲間がいるんですから」

チヅルさんがスズメさん達の方を振り向き、みんなの顔をじっくり見始め、目に涙を浮かべ始めた。

「スズメ、ウサギ、ツバメ。私もっともっと頑張るからまた仲間にしてくれる?」
「チヅルがいないと私達はオンリーワンにはなれないんだよ。私達はいつも4人で1つだっただろ。だから私達にはチヅルが必要なの。4人揃わないとオンリーワンじゃない。ハヤトさん、そういう事だろ?」
「スズメ、それってどういう事?」
「スズメさんはすでに気付いてたんですね。ボクとパーティーを組んだ事でボクとチヅルさんとでは段取りの組み方が違う事。メリーさんと組んだ事でウサギさんとの立ち回り方の違い。ボクやメリーさんは個人としての実力はチヅルさん達より上かもしれません。でもチヅルさんやウサギさん達と一緒ならば、ボク達に勝てるかもしれない。スズメさんはそんな風に思えるようになってきてますよね」
「あぁ、そうだ。だからここで私にマリナさんとパーティーを組ませたかったんだろ。そうすればツバメの立ち回り方との違いが見えてくる」
「えぇ、そうです。そしてそれはウサギさんやツバメさんにも同じ事が言えます。アイナさんと一緒にパーティーを組む事によってスズメさんとの違いが見えてくる。違いが見えてくる事によって自分の置かれている状況が見えてくる。はるか彼方にあると思っていた頂上は意外と手の届くところにあるもんですよ」

チヅルさん達4人はお互いに顔を見合わせながらニッコリとした笑顔を浮かべ始めた。

「これでチヅルさん達はさらなる高みを目指す事が出来ますね。そろそろ本題に戻りましょう。アイナさん達は素材集め。ボク達は最後の秘宝の聖杯を取りに行きます」
「情報掲示板のリークには聖杯は入手する事が出来ないってあったけど、ハヤトくんは取れると思ってるって事なんだよね?」
「はい。ですが今日はもう遅いので行動するのは明日からです」
「わかったわ」
「みんな明日はよろしくお願いします」
「「「よろしくね」」」

明日の打ち合わせはこれで終了。みんながクランハウスをいなくなるのを見届けてからボクはマイハウスに移動。

久しぶりにみんなの顔を見る事が出来て、ホッとしたもののボクはグッと気を引き締める。

聖杯の在処はある程度は目星をつけているが、ハズレる可能性がある。そうなるとその後の段取りが一気に変わってくる。

「それでもボクはやるしかないんだ。マリナさんとの未来のために………」

ボクはベッドに移動し、ぐっすりと眠りについた。










しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

大賢者の弟子ステファニー

楠ノ木雫
ファンタジー
 この世界に存在する〝錬金術〟を使いこなすことの出来る〝錬金術師〟の少女ステファニー。 その技を極めた者に与えられる[大賢者]の名を持つ者の弟子であり、それに最も近しい存在である[賢者]である。……彼女は気が付いていないが。  そんな彼女が、今まであまり接してこなかった[人]と関わり、成長していく、そんな話である。  ※他の投稿サイトにも掲載しています。

【幸せスキル】は蜜の味 ハイハイしてたらレベルアップ

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕の名前はアーリー 不慮な事故で死んでしまった僕は転生することになりました 今度は幸せになってほしいという事でチートな能力を神様から授った まさかの転生という事でチートを駆使して暮らしていきたいと思います ーーーー 間違い召喚3巻発売記念として投稿いたします アーリーは間違い召喚と同じ時期に生まれた作品です 読んでいただけると嬉しいです 23話で一時終了となります

積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!

ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。 悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。

誰も要らないなら僕が貰いますが、よろしいでしょうか?

伊東 丘多
ファンタジー
ジャストキルでしか、手に入らないレアな石を取るために冒険します 小さな少年が、独自の方法でスキルアップをして強くなっていく。 そして、田舎の町から王都へ向かいます 登場人物の名前と色 グラン デディーリエ(義母の名字) 8才 若草色の髪 ブルーグリーンの目 アルフ 実父 アダマス 母 エンジュ ミライト 13才 グランの義理姉 桃色の髪 ブルーの瞳 ユーディア ミライト 17才 グランの義理姉 濃い赤紫の髪 ブルーの瞳 コンティ ミライト 7才 グランの義理の弟 フォンシル コンドーラル ベージュ 11才皇太子 ピーター サイマルト 近衛兵 皇太子付き アダマゼイン 魔王 目が透明 ガーゼル 魔王の側近 女の子 ジャスパー フロー  食堂宿の人 宝石の名前関係をもじってます。 色とかもあわせて。

王太子様に婚約破棄されましたので、辺境の地でモフモフな動物達と幸せなスローライフをいたします。

なつめ猫
ファンタジー
公爵令嬢のエリーゼは、婚約者であるレオン王太子に婚約破棄を言い渡されてしまう。 二人は、一年後に、国を挙げての結婚を控えていたが、それが全て無駄に終わってしまう。 失意の内にエリーゼは、公爵家が管理している辺境の地へ引き篭もるようにして王都を去ってしまうのであった。 ――そう、引き篭もるようにして……。 表向きは失意の内に辺境の地へ篭ったエリーゼは、多くの貴族から同情されていたが……。 じつは公爵令嬢のエリーゼは、本当は、貴族には向かない性格だった。 ギスギスしている貴族の社交の場が苦手だったエリーゼは、辺境の地で、モフモフな動物とスローライフを楽しむことにしたのだった。 ただ一つ、エリーゼには稀有な才能があり、それは王国で随一の回復魔法の使い手であり、唯一精霊に愛される存在であった。

【完結】妖精を十年間放置していた為SSSランクになっていて、何でもあり状態で助かります

すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
 《ファンタジー小説大賞エントリー作品》五歳の時に両親を失い施設に預けられたスラゼは、十五歳の時に王国騎士団の魔導士によって、見えていた妖精の声が聞こえる様になった。  なんと十年間放置していたせいでSSSランクになった名をラスと言う妖精だった!  冒険者になったスラゼは、施設で一緒だった仲間レンカとサツナと共に冒険者協会で借りたミニリアカーを引いて旅立つ。  ラスは、リアカーやスラゼのナイフにも加護を与え、軽くしたりのこぎりとして使えるようにしてくれた。そこでスラゼは、得意なDIYでリアカーの改造、テーブルやイス、入れ物などを作って冒険を快適に変えていく。  そして何故か三人は、可愛いモモンガ風モンスターの加護まで貰うのだった。

底辺動画主、配信を切り忘れてスライムを育成していたらバズった

椎名 富比路
ファンタジー
ダンジョンが世界じゅうに存在する世界。ダンジョン配信業が世間でさかんに行われている。 底辺冒険者であり配信者のツヨシは、あるとき弱っていたスライムを持ち帰る。 ワラビと名付けられたスライムは、元気に成長した。 だがツヨシは、うっかり配信を切り忘れて眠りについてしまう。 翌朝目覚めると、めっちゃバズっていた。

追放された回復術師は、なんでも『回復』できて万能でした

新緑あらた
ファンタジー
死闘の末、強敵の討伐クエストを達成した回復術師ヨシュアを待っていたのは、称賛の言葉ではなく、解雇通告だった。 「ヨシュア……てめえはクビだ」 ポーションを湯水のように使える最高位冒険者になった彼らは、今まで散々ポーションの代用品としてヨシュアを利用してきたのに、回復術師は不要だと考えて切り捨てることにしたのだ。 「ポーションの下位互換」とまで罵られて気落ちしていたヨシュアだったが、ブラックな労働をしいるあのパーティーから解放されて喜んでいる自分に気づく。 危機から救った辺境の地方領主の娘との出会いをきっかけに、彼の世界はどんどん広がっていく……。 一方、Sランク冒険者パーティーはクエストの未達成でどんどんランクを落としていく。 彼らは知らなかったのだ、ヨシュアが彼らの傷だけでなく、状態異常や武器の破損など、なんでも『回復』していたことを……。

処理中です...