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第3章 時は金なり

46話 亀梨カリナ

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オオカミエリアに到着したボク。幻の花、水月鏡花は死獣、月の銀狼・フェンリルがいるエリアにある花。

この花は水辺に咲く花。いや、正確に言うと水に映っている花であり、実体がない花。

水に映っているだけの花は実体がないから誰も採取出来ない。ボクはそんな素材を採取しに来た。

「目の前には水に映る花がある。でもどうやって採取するんだろう?」

情報屋に聞いても採取の方法はわからなかった。だから実際現場まで来て見たもののやっぱりわからなかった。

「おや、ハヤトくんじゃないか。こんなところでどうしたんだい?」

後ろの方から声を掛けてきたのはシャドータイガーのカゲトラさん。振り向くとカゲトラさんの隣には女性の姿。

「あっ、お疲れ様です。幻の花、水月鏡花を採取したくて来たんですけど、方法がわからなくて、どうしようかなって思っていたところです」

「あー、これかい?遠距離攻撃なら採取出来ると思うよ。やった事はないけど」

えっ、なんでカゲトラさんは採取方法知ってるの。

「遠距離攻撃でムーンショットアローっていう攻撃あるんだけど、ハヤトくんはわかる?」

この前ちょっと見たような気がするな。

「たしか風羽の採取が楽になるとかだったような気がします」

「そうそう、それそれ。ムーンショットアローは月にまで届く矢とも言われているんだけど、実体のない矢とも言われているんだよ」

実体のない矢ってなんだろ?

「実際にやってみた方が早いかな。カリナくん、水に映る花に向かってムーンショットアローを打ってみて」

「はい」

カゲトラさんの隣にいた女性が弓を引く。

「遠距離スキル・ムーンショットアロー」

放たれた矢は水に当たり、水に映る花は実体化。と思ったのも束の間、一瞬にして元の姿に戻った。

「ねっ、これなら採取出来る感じでしょ」

一瞬だが実体化した。これならいけそうだ。

「もう一度お願いします」

「カリナくん、お願い」

「遠距離スキル・ムーンショットアロー」

放たれた矢が水に当たった瞬間にボクは花に手を差し出す。

『水月鏡花を採取出来ました』

「やった、やりました。採取出来ました」

「おー、さすがだね。あっ、この子の紹介がまだだったね。この子は亀梨カリナ。君のところにいるマリナの妹さん」

えっ、マジで……たしかに顔は似ているが体型は全然違う。マリナさんはスレンダーでモデル体型。決して貧乳とは言ってはいけない。

妹のカリナさんは反対にグラビア体型。弓を使うためなのか胸を押さえつけてはいるが、その大きさはかなりの大きさだという事がわかる。

「亀梨カリナです。姉がいつもお世話になっております」

普通の挨拶だけど、妙に違和感を感じる。もしかしたら姉の事をあまり好きじゃないのかな?

「三上ハヤトです。マリナさんにはいつもお世話になっております」

ボクもそれなりに挨拶。

「よし、これでお互い自己紹介は済んだな。ハヤトくん、お願いがあるんだが今忙しいかな?」

「今日は水月鏡花の採取したら終わりかなって思ってたので時間の方は大丈夫です」

「それならちょうど良かった。この前言ってた火力特化の武器作りの件なんだけど、その武器を使うのはこの子なんだ」

あっ、そうなんだ。

「俺らはムーンショットアローに使う素材、月の石の採取に来ただけで用事はもう済んで暇になった。ちょうどいい機会だからこの際、この子に武器を作ってもらいたい」

「あの、私これから風羽の採取あるんですけど……」

「そっちは俺が代わりやっておくよ。今、君に必要なのはハヤトくんと一緒に行動して武器を作ってもらう事。わかった?」

「リーダーがそう言うのであれば、わかりました」

「って事でカリナくんの事をよろしく頼む。カリナくんの実力は大手クランで言ったら幹部候補生予備員。まぁウチくらいのクランだと幹部候補生って感じだな。実力はあるけど、あともう一味欲しいって感じ」

今の話を聞くとマリナさんの妹さんも実力は相当高いみたいだな。でも何か足りないモノがある。ボクにそれを見つけて欲しいって事かぁ。

「わかりました」

「じゃあ俺はこれで失礼するよ」

「お疲れ様でした」

カゲトラさんは帰っていった。

わかりましたって言ったはいいもののどうしたらいいのだろうか。とりあえず実際に実力を見なければ始まらないよね。

でもってオオカミエリアだと人が多すぎるから、場所は変えた方がいいかな。明日の視察がてら隣のエリアのウサギの丘に行くとするか。

「オオカミエリアは人も多いので、ウサギの丘に行きたいと思います」

「わかりました」

ボクとカリナさんはオオカミエリアからウサギの丘へ。

このウサギの丘にはアルミラージという一角ウサギがいる。この角はアルミニウムで出来ている。

「カリナさんは火力特化と聞きましたのでアルミラージでいいかなって思ったんですけど、どうですかね?」

「大丈夫です」

「アルミの角は採取したいので出来れば傷つけないようにお願いします」

「わかりました」

アルミラージのいるエリアに到着。早速カリナさんは戦闘態勢に入る。

「パワーショット設定・10本」

「それではいきます」

弓の射程距離は30メートル。じわりじわりと距離を詰めていき、射程圏内に入る。

「パワーショット」

カリナさんは弓を引き、放たれた矢はアルミラージの身体に突き刺さる。

「パワーショット」

再び弓を引き、矢を放つ。逃げ出そうとするアルミラージの身体に矢は刺さり、アルミラージは動かなくなった。

「お見事です」

「このくらいは楽勝よ」

「ですよね。あっ、角の採取はさせてもらいますね」

ボクはアルミラージの角を素早く採取。

「じゃあ次はアルミミディアムでお願いします」

アルミミディアムはアルミラージより小型の一角ウサギ。

カリナさんはアルミミディアムも難なく倒す。

「じゃあ次はアルミスモールでお願いします」

アルミスモールはアルミミディアムよりも小型の一角ウサギ。ミディアムよりも動きは素早く硬い。このくらいになると倒すのに苦労する人も出てくる。

だけどカリナさんは難なく倒してしまった。

「あの、ちょっと聞きたい事があるんですけど、カリナさんは何故火力特化なんでしょうか?」

遠距離攻撃で火力特化にする人は素早く動くモンスターを苦手とする人も多い。反対に属性特化の人は火力不足で巨体で体力のあるモンスターを苦手とする人が多かったりする。

「何故って言われると属性特化にするとマリナとキャラが被るからかな。マリナは魔法使いで属性の魔術師って言われるくらい属性の使い分けが上手いでしょ。だからイヤなのよ」

そうか、それで火力特化にしているんだな。でもこれだとカリナさんのいい部分が殺されてしまっている。この事にカゲトラさんも気づいているんだろう。だからボクにカリナさんの事を託した。

ならボクはその期待に応えるしかない。

「ボクの見立てではカリナさんはマリナさんより素晴らしい才能を持っていると思っています。属性特化にするつもりはありませんか?」

「んー、ない!!」

きっぱりと断られてしまったな。そう簡単には変わらないか。じゃあちょっと変化をつけてみるか。

「それではこのまま火力特化って事でよろしいですか?」

「うん」

「それではですね、今使ってる武器をボーガンタイプに変更してみませんか?」

カリナさんが使っている武器は弓タイプ。弓タイプは自動追尾性能が高い分、火力が少し低め。

ボーガンタイプは自動追尾性能が低い分、火力が高め。

カリナさんの機動力の高さならボーガンタイプを使いこなす事は可能。

「んー、私はこのまま弓タイプでいきたいかな」

ダメだった。でも何かこだわりがあって弓タイプでいきたい感じにも思える。もしかして、実は姉のマリナさんのように属性特化にしたいのかな?

それならどうする?うーん、どうしよう……カリナさんは頭の中でどんな未来を描いているんだろう?

「カリナさん、ちょっといいですか?」

「何?」

「ストーリー第3章が終わると、ダイヤのマークは見習い級になり、特性をアップさせるようになる事が予想されます」

「何それ?初めて聞いたけど」

「魔法使い、ハートの見習い級はロングレンジアップとミドルレンジアップとショートレンジアップの特性の使い分けが出来るようになりました」

魔法使いはモンスターとの距離で威力が変わる。

20~30メートルの距離だと威力半減。ロングレンジアップの特性にすれば威力は等倍。その代わりに至近距離でも等倍になる。

ミドルレンジアップの特性にすれば、単純に威力が1.5倍。

ショートレンジアップにすれば至近距離の威力は2倍になり、遠距離の威力は半減。

「その事を考えるとダイヤのマークでも同じような事になると思います」

火力特化はさらに火力アップ。属性特化は属性値がさらにアップ。状態異常特化は状態異常値がさらにアップ。

「この先の事を考えると今の内に特化を極めていく必要があります。火力特化でいくのならボーガンタイプの武器にして火力特化。属性特化を極めていくなら弓タイプ。どうしますか?」

「んー、急に言われてもわかんないし、決められないよ」

「そうですか。私の見立てではカリナさんはボーガンタイプの武器で属性特化でやる事も出来ると思っています」

「そんな事本当に出来るの?」

よし、食らいついてきた。

「カリナさんなら出来ますよ。試しにボーガンタイプの武器を作りますので、明日お時間の方取れますか?」

「時間は大丈夫」

「それなら明日もお昼くらいにウサギの丘で待ち合わせしましょうか」

「うん、いいよ」

カリナさんがスマホを取り出した。

「行き違いあると面倒くさいからフレンド登録」

「あっ、はい」

ボクもスマホを取り出し、カリナさんとフレンド登録。

「じゃあまた明日。バイバイ」

カリナさんは帰っていった。

「よし、これからカリナさんの武器作りだ」

時刻は夕方。明日の事も考えるとバタバタとなるが仕方ない。

「よし、頑張るぞ」

ボクはウサギの丘を抜けて、マイハウスへ戻った。












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