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第1章 アテナ復活

30話 第1章終わり

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見渡す限り真っ白な空間に飛ばされたボクを待ち受けていたのは白いヒゲをした人。絵画などでよく見る神様の姿をしている。

「おめでとう、三上ハヤトくん」

「あ、ありがとうございます」

とっさに返事をしたものの何か違和感を感じる。

なんだろ、どこかで見た事あるような気がする。でも一体どこで見たんだろう。

「君のおかげで女神アテナは甦る事が出来た」

「あ、ありがとうございます」

違和感の正体がわかった。

でもなぜここにいて神様をやっているんだろう。そもそも亡くなったはず。

でも都市伝説では生きてる説もあったはず。もしかしてこのゲームの中で生きているのか……

「どうやら私の正体に気づいたようだね。このゲームを作るように指示したのは私だよ。私は潰瘍性大腸炎という病気にかかって以来、好きな物を食べる事が出来ない身体になってしまった。何かを食べてはお腹を壊して下痢になる。食べる事が好きな私にとっては現実世界は地獄のような世界だった」

それでこのゲームはウンコネタが多いんだ。

「ゲームの中では好きな物を食べ放題。ゲームの中で暴飲暴食しても、現実世界の身体には栄養ゼリーが流し込まれて健康は維持できる。そんな仮想世界を作り、同じ病気で苦しむ人を私は救いたかっただけだった。本当にただそれだけだったんだ。だが私のその思惑は支配者層の人間に利用された」

えっ、どういう事?

「その事に気づいた私は身の危険を感じて死んだふりをして、仮想世界で神様として身を隠す事にした。現実世界と仮想世界、2つの世界を救ってくれる者が現れる事を信じて」

えっ、これはこういうストーリー展開なのかな。それとも本当に……

「第2章が始まると次は高齢者がこのゲームをやり始める事になる。高齢者の感覚のままだと大変だから、感覚の若返りと見た目の若返りも特典として付ける。そうやって全ての国民をこのゲームの中に入れるのが支配者層が考えている事」

たしかにその特典だと高齢者もこのゲームをやり始めるだろう。今思うと女性プレイヤーが増えた時もそうだった。突然ダイエットに効果あるとSNSでバズった結果、多くの女性がこのゲームをやるようになった。

ボクがこのゲームをやる時もそうだった。このゲームを楽しんでいれば働かなくてお金を稼げて一生暮らせるという謳い文句に惹かれてボクはこのゲームをやり始めた。

今考えるとこんな事は国が絡んでいないと出来ない事だ。イヤ、国よりももっと上の支配者層といわれる人達が絡んでいないと出来ない事だ。

だけど、何故支配者層の人達は全ての人を仮想世界に入れようとしているんだろうか。

「支配者層は自分達が神様になる事を望んでいる。現実世界で出来ない事でも仮想世界ならそれが可能となる。支配者層の人間は強制的に人を仮想世界に来させるのではなく、自分の意志で仮想世界に来るようにさせている。人をまるで操り人形のように扱うその姿はまさに悪魔そのもの」

こ、これはやっぱりこういうストーリー展開なんだよね。ねぇ、誰かこういうストーリー展開だって言ってよ。

「誰よりも早くアテナの骨を作れた者なら悪魔からみんなを守る事が出来るだろう。君が身につけた感覚よりさらに先にある感覚を覚醒できた時、君は2つの世界を制する事が出来る。頑張ってくれ」

「は、はい」

なんか流されるままに勝手に話が進んでいってしまう。でもボクにはどうする事も出来ないし、この話がウソかホントかわからない。信じるか信じないかは貴方次第ですって言う話にも聞こえる。

「すまないが私にはもう時間がない。あとは頼んだぞ」

突然姿を消した神様のような人。取り残されたボク。

………………

えっ?ボクはこのままここに放置なの?

[システムエラーが発生しました]

目の前に突然人が現れた。

「三上ハヤト様、大変申し訳ありません。私はこのゲームを管理しておりますゲームマスターです」

まさかのゲームマスター登場。これってストーリーをクリアした事と何か関係あるのかな?

「先程の神様のような人は本来、正式リリース時に削除されるはずのバグデータでございます。ですので今回の事はご内密にお願いします。もしこの情報が外部に漏れるような事があった場合は……私の口から申す事は出来ませんので察してもらえると助かります」

あっ、これ色々ダメなヤツだ。マジで誰にも言えないヤツじゃん。

「遅くなりましたが、第1章クリアおめでとうございます。これからハヤト様のマイハウスに移転させます。その後はムービーが流れて第2章が始まります」

「わかりました」

「引き続き、スペードのクイーンをお楽しみください」

一瞬の暗転。ボクは見慣れたマイハウスに戻ってきた。

[アテナの骨を完成させたプレイヤーが出ました。これからムービーが始まり第2章が始まります]

一瞬の暗転。ムービーが開始。

見えてきた景色。それはボクがアテナの像の前にアテナの骨を捧げる姿。

えっ、このムービーって全員共通ムービーなんだよね。って事はこの映像はみんな見てるって事なんだよね。なんか恥ずかしいな。

アテナの骨を捧げるとアテナの骨は姿を変える。海賊旗でよく見る頭蓋骨と2本の骨。

さらに姿を変えて、人の姿になった女神アテナが見えた。その瞬間、何かが目の前を一瞬だけ横切ると同時に頭蓋骨だけが姿を消した。

ここでムービーが終わり、暗転。いつものマイハウスの景色。

[アテナの頭蓋骨を何者かに盗まれました。頭蓋骨は聖杯を表し、愛を表します。愛を取り戻し、アテナを復活させてください]

第2章の愛を取り戻せってそういう事か。

っていうかボクが作ったアテナの骨はどうなったのかな?

アイテム袋を確認するとボクはアテナの骨を持っていた。

捧げられたアテナの骨、100%の神品質。生産の女神の加護+10。

あっ、これで生産の女神が100になるんだな。やっぱりあのウンコはフェイクだったんだ。

[女神アテナからメッセージがあります]

えっ、女神アテナからメッセージ?

『生産の女神の加護が100になった貴方の実力を認め、クラブの見習い級を認定いたします』

[クラブの見習い級になったため、生産スキル・アイテム変化が使えるようになりました。アイテム変化のレシピが追加されました]

あっ、ストーリーが進むとこんな感じになるんだね。

ピコン、ピコン、ピコン

スマホに通知音。

[山下アイナ様、亀梨マリナ様、吉田メリー様よりメッセージが届いています]

あっ、みんなからメッセージ来た。きっとお祝いメッセージなんだろうな。

『おめでとう。早速だけど話があるからクランハウスに招待して(ハート)』
『おめでとう。早速だけど話があるからクランハウスに招待お願いします』
『おめでとうございます。早速ですがお話したい事がございますのでクランハウスにお越しください』

あー、もう、なんだよ。みんなお祝いメッセージっていうより、早くストーリー進めたいだけじゃん。メリーさんのやつだってきっとそうだよ。

『30分後に集合でお願いします』

みんなに送信。

きっとみんなも同じ状況で何もわからないはず。ボクはこの30分の間に情報収集してくるとするか。

ボクは東の王国の酒場へと向かった。






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