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真相~Fの言霊~
③
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レイの指定通り、シラサカは車は飛ばし、五分で目的地に到着した。
「なんだ、あの運転は、無茶苦茶過ぎるだろうが!?」
真っ先に車を降りると、藤堂は不満をぶちまけた。
「そうかな。これでもかなり抑えたつもりだけど」
続いて運転手のシラサカが降り立つ。
「サーキット場じゃないんだぞ。派手な運転して、誰かが通報したらどうするつもりだ!」
「捜一の刑事なんだから、犯人追ってたとか言えばいいだけじゃん」
藤堂の言葉を遮って、シラサカは笑った。
「俺に片棒担げっていうのかよ!?」
「俺達についてきた時点で、刑事さんも同罪だろ」
「おまえら静かにしろ。別の意味で通報されるぞ」
車を降りたレイが間に入った。言い争う藤堂とシラサカの声の方が近所迷惑だったから。
「あれ、ハニーは?」
カナリアは助手席に留まっていた。一心不乱にパソコンを操作している。
「駐車違反にならない為だ。その間の仕事も与えてある」
カナリアには春休み中に運転免許を取得させた。初心者ではあるが、万が一のときに車を動かせるのは有り難い。
「もしかして、草薙はバラされたのか?」
レイの言葉でシラサカは何かを悟ったようである。
「そうじゃない。行けばわかる。玄関を開けろ」
ここはシラサカの自宅でもあるからして、彼を先に行かせた。セキュリティを解除した後、レイ、藤堂の順に中へと足を踏み入れる。
「なんで簡単に入れるんだよ」
後ろからレイに問いかける藤堂。
「あの部屋は俺の持ち物だ。スペアキーは持ってる」
「そうじゃなくて、なんであの殺し屋が正面玄関を開けられるかってことだよ」
直人の部屋の階上に、シラサカとカナリアが住んでいるとはさすがに言えない。
「深く考えるな、寿命が縮むぞ」
直人の部屋へ向かいながら、レイは考えていた。ここまでの道中、レイは藤井がやったであろう通信妨害をすぐ取り払った。モニターが復活し、室内を確認すれば、そこにはなぜか血まみれの人の姿があった。シラサカに言ったように、それは草薙ではない。彼の姿はどこにもなかったから。
レイが藤堂と警視庁にいたとき、草薙はまだ部屋にいたように思う。マンションのセキュリティからして、カナリアが言っていた何度もインターホンを鳴らしていた連中が強引に侵入したとは思えない。何より、平日の日中で人目もある。だとすれば、連中を招き入れたのは草薙自身ということになる。
そこまでは理解出来るが、なぜ今草薙は部屋にいないんだ?
直人の部屋に仕掛けたカメラには、録画機能をつけていなかった。四六時中見張るためではなく、何かあった際にひとりで突っ走らせないためだったから。
草薙はどこに行った? 誰かに連れて行かれたのか?
部屋の前に辿り着き、レイは持っていたスペアキーで鍵を開けた。すぐに入ろうとすれば、シラサカに制された。
「嫌な感じがするからさ、俺が先に入っていい?」
何も話していないというのに、始末屋の勘が働いたのだろうか。レイは肩をすくめて言った。
「おまえがそう思うのなら、従うぜ」
「要するに、遠慮なくやっていいってことね」
「ここに刑事さんがいるってことを、忘れなければな」
レイとシラサカを交互を見やる藤堂。わからないなりにも危険を察知したのか、割って入ることはしなかった。
シラサカは愛用の拳銃ベレッタM92を右手に持ち、左手で少しずつドアを開けていく。
「オーケー、オーケー。ハニーは留守番で正解だぜ。嗅ぎ慣れた臭いがするからな」
そう言い放ってすぐ、シラサカはドアを開け、室内に侵入した。レイも後に続こうとしたが、その場で立ち止まってしまう。
「おい、なんで止まって──」
レイの背中で前が見えない藤堂は、横から覗き込むようにして、中の様子を確認する。シラサカの前には、全身を真っ赤に染めた男がいた。震える手でこちらに銃口を向けている。
「あまり動かない方がいい。只でさえ少ない命が削られるだけだぜ」
そう言うと、シラサカは拳銃を仕舞い込んだ。こちらから攻撃するまでもない。放っておいても命は尽きる。救命処置すら間に合わないだろう。
「そこを、どけ……」
気力だけで立っているように見えた。返り血も混ざっているが、腹部からの出血は止まらず、床に溢れ出ている。
「俺は、まだ、終わってねえんだよ……!?」
それは草薙を刺した犯人である藤井慶だった。
「なんだ、あの運転は、無茶苦茶過ぎるだろうが!?」
真っ先に車を降りると、藤堂は不満をぶちまけた。
「そうかな。これでもかなり抑えたつもりだけど」
続いて運転手のシラサカが降り立つ。
「サーキット場じゃないんだぞ。派手な運転して、誰かが通報したらどうするつもりだ!」
「捜一の刑事なんだから、犯人追ってたとか言えばいいだけじゃん」
藤堂の言葉を遮って、シラサカは笑った。
「俺に片棒担げっていうのかよ!?」
「俺達についてきた時点で、刑事さんも同罪だろ」
「おまえら静かにしろ。別の意味で通報されるぞ」
車を降りたレイが間に入った。言い争う藤堂とシラサカの声の方が近所迷惑だったから。
「あれ、ハニーは?」
カナリアは助手席に留まっていた。一心不乱にパソコンを操作している。
「駐車違反にならない為だ。その間の仕事も与えてある」
カナリアには春休み中に運転免許を取得させた。初心者ではあるが、万が一のときに車を動かせるのは有り難い。
「もしかして、草薙はバラされたのか?」
レイの言葉でシラサカは何かを悟ったようである。
「そうじゃない。行けばわかる。玄関を開けろ」
ここはシラサカの自宅でもあるからして、彼を先に行かせた。セキュリティを解除した後、レイ、藤堂の順に中へと足を踏み入れる。
「なんで簡単に入れるんだよ」
後ろからレイに問いかける藤堂。
「あの部屋は俺の持ち物だ。スペアキーは持ってる」
「そうじゃなくて、なんであの殺し屋が正面玄関を開けられるかってことだよ」
直人の部屋の階上に、シラサカとカナリアが住んでいるとはさすがに言えない。
「深く考えるな、寿命が縮むぞ」
直人の部屋へ向かいながら、レイは考えていた。ここまでの道中、レイは藤井がやったであろう通信妨害をすぐ取り払った。モニターが復活し、室内を確認すれば、そこにはなぜか血まみれの人の姿があった。シラサカに言ったように、それは草薙ではない。彼の姿はどこにもなかったから。
レイが藤堂と警視庁にいたとき、草薙はまだ部屋にいたように思う。マンションのセキュリティからして、カナリアが言っていた何度もインターホンを鳴らしていた連中が強引に侵入したとは思えない。何より、平日の日中で人目もある。だとすれば、連中を招き入れたのは草薙自身ということになる。
そこまでは理解出来るが、なぜ今草薙は部屋にいないんだ?
直人の部屋に仕掛けたカメラには、録画機能をつけていなかった。四六時中見張るためではなく、何かあった際にひとりで突っ走らせないためだったから。
草薙はどこに行った? 誰かに連れて行かれたのか?
部屋の前に辿り着き、レイは持っていたスペアキーで鍵を開けた。すぐに入ろうとすれば、シラサカに制された。
「嫌な感じがするからさ、俺が先に入っていい?」
何も話していないというのに、始末屋の勘が働いたのだろうか。レイは肩をすくめて言った。
「おまえがそう思うのなら、従うぜ」
「要するに、遠慮なくやっていいってことね」
「ここに刑事さんがいるってことを、忘れなければな」
レイとシラサカを交互を見やる藤堂。わからないなりにも危険を察知したのか、割って入ることはしなかった。
シラサカは愛用の拳銃ベレッタM92を右手に持ち、左手で少しずつドアを開けていく。
「オーケー、オーケー。ハニーは留守番で正解だぜ。嗅ぎ慣れた臭いがするからな」
そう言い放ってすぐ、シラサカはドアを開け、室内に侵入した。レイも後に続こうとしたが、その場で立ち止まってしまう。
「おい、なんで止まって──」
レイの背中で前が見えない藤堂は、横から覗き込むようにして、中の様子を確認する。シラサカの前には、全身を真っ赤に染めた男がいた。震える手でこちらに銃口を向けている。
「あまり動かない方がいい。只でさえ少ない命が削られるだけだぜ」
そう言うと、シラサカは拳銃を仕舞い込んだ。こちらから攻撃するまでもない。放っておいても命は尽きる。救命処置すら間に合わないだろう。
「そこを、どけ……」
気力だけで立っているように見えた。返り血も混ざっているが、腹部からの出血は止まらず、床に溢れ出ている。
「俺は、まだ、終わってねえんだよ……!?」
それは草薙を刺した犯人である藤井慶だった。
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