カレイドスコープ

makikasuga

文字の大きさ
上 下
34 / 34

エピローグ

しおりを挟む
「なあ、おまえとシェリーさん、ガウディさんの関係って」
 さっきのやり取りで、ふたりが奏に愛情を抱いていることは慎平にもわかった。奏がそれに気づいているのか、確かめたくなった。
「シェリーもガウディも、なんでも出来て余裕たっぷりな俺様が好きなんだよ。でも本当の俺は、終わった過去を引きずる情けない奴なの」
 奏はあっさり肯定する。
「その情けなさがマシになったら、さっきの約束、考えてやってもいいぜ」
 奏の顔がパッと華やぐ。その表情に慎平はドキリとさせられた。必死だったとはいえ、よく考えれば恥ずかしいことを言いまくった気がする。
「わかった。もうどこにもいかない。慎ちゃんの側にいる」
 そういうと、奏は慎平に近づいた。慎平がよかったと安心したとき、唇が重なった。チューなんて額か頬ぐらいだろうと思っていたし、先の話だと思っていて油断した。
「だから約束、ね」
 男同士のキスなんてと思っていたが、悪くないどころか、嫌だと思わなかった。むしろ、ふわふわして気持ちいい。

 気持ちいいって、なんだ、それ!?

「慎ちゃん? おーい、慎ちゃん、意識ある?」
 唇が離れると、奏は慎平の頭をよしよしと撫で続けた。これをされると慎平は何も言えなくなる。
「ありのままの、情けない俺を受け入れてくれてありがとう。ゆっくり時間かけて、進んでいこうね」
 そういうと、奏はにっこりと笑う。
「す、進んで、いくって……!?」
 やっと発した言葉は噛みまくりだった。
「慎ちゃんは抱く方と抱かれる方、どっちがいい? 俺はどっちでもいけるよ」
「ま、待てよ、俺は、まだ……!?」
「大丈夫、急がないから。そんな嬉しそうな顔しといて、嫌いとか言わないでよ。地味に傷つくんだから。それともツンデレなのかな?」
 そういうと、奏は慎平を抱きしめた。
 抱きしめる、抱きしめられる。とても心地よくて涙が出そうになる。なんだろう、この感情は。
「俺を必要=好きってことでしょ。告白の答えとしては最高だな」
 色々あって有耶無耶になっていたが、慎平は奏から好きだと告白されていたし、考えて答えを出せといわれていた。

 そっか。俺は奏を好きなのか、この胸のときめきはそういうことなのか。

「勝手にいなくなるなよ。佐藤さんとも、ちゃんと向き合うんだぞ」
「前者はいいだけど、後者はバツね」
「おい、奏!?」
「慎ちゃんが、今ここで俺に熱烈チューしてくれたら考えてもいいかな」
 慎平が出来ないと思ってのことだろう。引き下がったら佐藤のことは今まで通り、要求を飲んだところで、奏にとってはプラスなことばかりである。
「……わかった」
「え、マジ?」
 慎平は返事をして、奏と向き合う。彼は本当に驚いていた。

 おまえが好きだって自覚したら、もっとしたいって思ったんだよ!?

 さすがにそれは言葉に出来ない。心に浮かんだ気持ちをぶつけるように、慎平は奏と唇を重ねる。それに応えるかのように、奏は慎平を強く抱きしめたのだった。

the end
しおりを挟む

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(1件)

のうべ
2023.11.24 のうべ

最初はいまいち足並みがばらついていたお二人。度重なる苦難や困難に打ち負かされることなく、たくさんの人たちと一緒に乗り越えてようやく共に歩き出せるように……まさしく二人の『始まりの物語』ですね。

これからは二人、手を取り合っていつまでも一緒に、あとめちゃくちゃ幸せになってほしいです。(欲をいえば慎平くんは適度に奏くんの言動に振り回されていてほしい)

完結ならびに毎日更新お疲れ様でした!

makikasuga
2023.11.24 makikasuga

のうべさん、拙い作品をご覧いただき、感想までありがとうございます!!
この先の物語もいつか書けたらなと思います。
皆さんが当たり前のようにやってる毎日更新がこんなにしんどいとは思いませんでした。
完結出来て本当によかったです。
最後までご覧いただけて、本当にありがとうござました!

解除

あなたにおすすめの小説

好きになれない

木原あざみ
BL
大学生×社会人。ゆっくりと進む恋の話です。 ** 好きなのに、その「好き」を認めてくれない。 それなのに、突き放してもくれない。 初めて本気で欲しいと願ったのは、年上で大人で優しくてずるい、ひどい人だった。 自堕落な大学生活を過ごしていた日和智咲は、ゼミの先輩に押し切られ、学生ボランティアとしての活動を始めることになる。 最初は面倒でしかなかった日和だったが、そこで出逢った年上の人に惹かれていく。 けれど、意を決して告げた「好き」は、受け取ってもらえなくて……。というような話です。全編攻め視点三人称です。苦手な方はご留意ください。 はじめての本気の恋に必死になるこどもと、素直に受け入れられないずるいおとなのゆっくりと進む恋の話。少しでも楽しんでいただければ嬉しいです。

イケメンモデルと新人マネージャーが結ばれるまでの話

タタミ
BL
新坂真澄…27歳。トップモデル。端正な顔立ちと抜群のスタイルでブレイク中。瀬戸のことが好きだが、隠している。 瀬戸幸人…24歳。マネージャー。最近新坂の担当になった社会人2年目。新坂に仲良くしてもらって懐いているが、好意には気付いていない。 笹川尚也…27歳。チーフマネージャー。新坂とは学生時代からの友人関係。新坂のことは大抵なんでも分かる。

魔法菓子職人ティハのアイシングクッキー屋さん

古森きり
BL
魔力は豊富。しかし、魔力を取り出す魔門眼《アイゲート》が機能していないと診断されたティハ・ウォル。 落ちこぼれの役立たずとして実家から追い出されてしまう。 辺境に移住したティハは、護衛をしてくれた冒険者ホリーにお礼として渡したクッキーに強化付加効果があると指摘される。 ホリーの提案と伝手で、辺境の都市ナフィラで魔法菓子を販売するアイシングクッキー屋をやることにした。 カクヨムに読み直しナッシング書き溜め。 小説家になろう、アルファポリス、BLove、魔法Iらんどにも掲載します。

初声を君に(休載中)

叢雲(むらくも)
BL
話そうとしても喉が詰まって言葉が出ない――そんな悩みを抱えている高校生の百瀬は、いつも一人ぼっちだった。 コニュニケーションがうまく取れず孤独な日々を過ごしていたが、クラスの人気者である御曹司に「秘密」を知られてしまい、それ以降追いかけ回されることに……。 正反対の二人だが、「秘密」を共有していくうちに、お互いの存在が強くなっていく。 そして、孤独なのは御曹司――東道も同じであった。 人気者な御曹司と内気な青年が織りなす物語です。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 ※BLと表記していますが恋愛要素は少ないです。ブロマンス寄り? ※男女CP有ります。ご注意下さい。 ※あくまでフィクションです。実在の人物や建造物とは関係ありません。 ※表紙と挿絵は自作です。 ※エブリスタにも投稿しています。←こちらの方が更新が早いです

【完結】イケメン騎士が僕に救いを求めてきたので呪いをかけてあげました

及川奈津生
BL
気づいたら十四世紀のフランスに居た。百年戦争の真っ只中、どうやら僕は密偵と疑われているらしい。そんなわけない!と誤解をとこうと思ったら、僕を尋問する騎士が現代にいるはずの恋人にそっくりだった。全3話。 ※pome村さんがXで投稿された「#イラストを投げたら文字書きさんが引用rtでssを勝手に添えてくれる」向けに書いたものです。元イラストを表紙に設定しています。投稿元はこちら→https://x.com/pomemura_/status/1792159557269303476?t=pgeU3dApwW0DEeHzsGiHRg&s=19

高嶺の花宮君

しづ未
BL
幼馴染のイケメンが昔から自分に構ってくる話。

【完結】『ルカ』

瀬川香夜子
BL
―――目が覚めた時、自分の中は空っぽだった。 倒れていたところを一人の老人に拾われ、目覚めた時には記憶を無くしていた。 クロと名付けられ、親切な老人―ソニーの家に置いて貰うことに。しかし、記憶は一向に戻る気配を見せない。 そんなある日、クロを知る青年が現れ……? 貴族の青年×記憶喪失の青年です。 ※自サイトでも掲載しています。 2021年6月28日 本編完結

この噛み痕は、無効。

ことわ子
BL
執着強めのαで高校一年生の茜トキ×αアレルギーのβで高校三年生の品野千秋 α、β、Ωの三つの性が存在する現代で、品野千秋(しなのちあき)は一番人口が多いとされる平凡なβで、これまた平凡な高校三年生として暮らしていた。 いや、正しくは"平凡に暮らしたい"高校生として、自らを『αアレルギー』と自称するほど日々αを憎みながら生活していた。 千秋がαアレルギーになったのは幼少期のトラウマが原因だった。その時から千秋はαに対し強い拒否反応を示すようになり、わざわざαのいない高校へ進学するなど、徹底してαを避け続けた。 そんなある日、千秋は体育の授業中に熱中症で倒れてしまう。保健室で目を覚ますと、そこには親友の向田翔(むこうだかける)ともう一人、初めて見る下級生の男がいた。 その男と、トラウマの原因となった人物の顔が重なり千秋は混乱するが、男は千秋の混乱をよそに急に距離を詰めてくる。 「やっと見つけた」 男は誰もが見惚れる顔でそう言った。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。