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第21話
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「勇作の遺言が公になって、これまで以上に慎ちゃんも危なくなってきたから、俺達はある作戦を立てた。今となっては幻の作戦だけどね。Sについての情報を抑えるべく、身代わりを立てる。その身代わりは俺だった。ほら、幸い名前もSだし」
「奏とユリカに繋がりがないから、別人だってすぐバレるんじゃないの?」
自分がいない間にそんな作戦が立てられていたとは思わず、慎平は目を丸くした。
「バレてもいいの、あくまで時間稼ぎだから。ハーバードに通ってた俺と勇作に繋がりがあっても、おかしくないっしょ」
そういうと、奏は不敵な笑みを浮かべた。
「狙撃現場に残された拳銃からして、高岡犯人説は有力だった。けど秀ちゃんがさ、父親が娘の命を狙うようなことをするだろうかっていってね」
それは慎平も感じていたことだった。
「なので、改めて検証してみたわけ。あのホテルに身を隠すことにしたのは、第一秘書の機転による偶然。狙撃のタイミングからして、尾行されてたとしか思えないけど、あいつが気づかないってことはないと思うんだ」
奏は冷静に佐藤の仕事を評価した。
「となると、尾行されてたのは俺達の方だったんじゃないかなって思った。あのときは全く警戒してなかったからね。だとすれば、ユリカの部屋を荒らした犯人と狙撃犯は別人じゃないかって思ったの。ユリカがあそこに現れたのが偶然なら、狙撃犯の標的は最初からSじゃなかったのかって」
慎平の病室に、奏が必死の形相でやってきたのは、犯人の狙いがS、つまり慎平という結論に達したからだったのだ。
「入院するのはラッキーって思ったけど、狙いが慎ちゃんだって気づいたら、狙われやすくなって最悪になった。顔をみるまで、生きた心地がしなかったよ」
奏の到着が遅れていたら、慎平は男にさらわれていただろう。そうなっていたら、佐藤が傷を負うこともなかったかもしれない。
「あのとき、さらわれておけばよかったとか思ってないよね?」
慎平の考えを察した奏が睨みを利かせる。
「そんなことになったら、もっと大変なことになってたからね」
いや、今でも十分大変だと思うのだが。
「俺をさらおうとした犯人、さっき捕まった奴じゃなく、それを命令した大元は誰なんだ?」
改めて慎平は聞いた。
「YとSの関わりを知っていて、怪しさ満載といえば谷村順子でしょ。彼女ならユリカが引っ越しする日時も場所も知ってたはずだし、部屋を荒らすことも簡単に出来た。部屋を荒らしたのは、彼女と第一秘書に引き離すためだろうな。引越しの手続きをしたのはあいつだし、なにかと側にいて邪魔だったはずだから。ユリカの虹彩で研究室は開けられる。そう思ったはずがもうひとり必要になった。Sと聞いてぴんときたのだろう」
淡々と話していた奏の顔つきが厳しくなる。
「ホテルの狙撃犯は高岡康志とみて間違いないと思う。YとSのことは、慎ちゃん同様、勇作から直接聞いた可能性がある。娘が関わってるなら、事前に知らせておいても不思議じゃないからな。ただ、高岡は研究室を開けたいわけじゃなく、開けさせたくない、ふたりの手で実行されることを拒んでいる気がするんだよね」
「谷村順子は俺と彼女の虹彩を使って研究室を開けたい。でも、高岡康志は開けさせたくないってこと?」
ふたつの思惑が混ざり合い、それに振り回されたということだろうか。
「秀ちゃんに調べてもらったんだけど、高岡は半年程から右手が動かなくなったようだね。診断結果は神経経路の異常。一年前に頭に銃弾を食らった影響かといわれてるけど、原因は不明。薬を服用しても症状は変わらずで、あちこちの病院で診てもらっていたらしいよ。ところがある日を境に劇的に回復してる」
「治ったってことじゃないの?」
「医者にさじを投げられた病気が突然よくなると思う? 病院にもいかずに」
奏の顔つきは厳しくなるばかりだ。助手席に座っているガウディが振り向き、ニヤリと笑った。
「奏とユリカに繋がりがないから、別人だってすぐバレるんじゃないの?」
自分がいない間にそんな作戦が立てられていたとは思わず、慎平は目を丸くした。
「バレてもいいの、あくまで時間稼ぎだから。ハーバードに通ってた俺と勇作に繋がりがあっても、おかしくないっしょ」
そういうと、奏は不敵な笑みを浮かべた。
「狙撃現場に残された拳銃からして、高岡犯人説は有力だった。けど秀ちゃんがさ、父親が娘の命を狙うようなことをするだろうかっていってね」
それは慎平も感じていたことだった。
「なので、改めて検証してみたわけ。あのホテルに身を隠すことにしたのは、第一秘書の機転による偶然。狙撃のタイミングからして、尾行されてたとしか思えないけど、あいつが気づかないってことはないと思うんだ」
奏は冷静に佐藤の仕事を評価した。
「となると、尾行されてたのは俺達の方だったんじゃないかなって思った。あのときは全く警戒してなかったからね。だとすれば、ユリカの部屋を荒らした犯人と狙撃犯は別人じゃないかって思ったの。ユリカがあそこに現れたのが偶然なら、狙撃犯の標的は最初からSじゃなかったのかって」
慎平の病室に、奏が必死の形相でやってきたのは、犯人の狙いがS、つまり慎平という結論に達したからだったのだ。
「入院するのはラッキーって思ったけど、狙いが慎ちゃんだって気づいたら、狙われやすくなって最悪になった。顔をみるまで、生きた心地がしなかったよ」
奏の到着が遅れていたら、慎平は男にさらわれていただろう。そうなっていたら、佐藤が傷を負うこともなかったかもしれない。
「あのとき、さらわれておけばよかったとか思ってないよね?」
慎平の考えを察した奏が睨みを利かせる。
「そんなことになったら、もっと大変なことになってたからね」
いや、今でも十分大変だと思うのだが。
「俺をさらおうとした犯人、さっき捕まった奴じゃなく、それを命令した大元は誰なんだ?」
改めて慎平は聞いた。
「YとSの関わりを知っていて、怪しさ満載といえば谷村順子でしょ。彼女ならユリカが引っ越しする日時も場所も知ってたはずだし、部屋を荒らすことも簡単に出来た。部屋を荒らしたのは、彼女と第一秘書に引き離すためだろうな。引越しの手続きをしたのはあいつだし、なにかと側にいて邪魔だったはずだから。ユリカの虹彩で研究室は開けられる。そう思ったはずがもうひとり必要になった。Sと聞いてぴんときたのだろう」
淡々と話していた奏の顔つきが厳しくなる。
「ホテルの狙撃犯は高岡康志とみて間違いないと思う。YとSのことは、慎ちゃん同様、勇作から直接聞いた可能性がある。娘が関わってるなら、事前に知らせておいても不思議じゃないからな。ただ、高岡は研究室を開けたいわけじゃなく、開けさせたくない、ふたりの手で実行されることを拒んでいる気がするんだよね」
「谷村順子は俺と彼女の虹彩を使って研究室を開けたい。でも、高岡康志は開けさせたくないってこと?」
ふたつの思惑が混ざり合い、それに振り回されたということだろうか。
「秀ちゃんに調べてもらったんだけど、高岡は半年程から右手が動かなくなったようだね。診断結果は神経経路の異常。一年前に頭に銃弾を食らった影響かといわれてるけど、原因は不明。薬を服用しても症状は変わらずで、あちこちの病院で診てもらっていたらしいよ。ところがある日を境に劇的に回復してる」
「治ったってことじゃないの?」
「医者にさじを投げられた病気が突然よくなると思う? 病院にもいかずに」
奏の顔つきは厳しくなるばかりだ。助手席に座っているガウディが振り向き、ニヤリと笑った。
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