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第11話
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「谷村順子さんの関与はゼロではないと申し上げましたが、あの狙撃に関しては現場を離れた私達とすぐに合流出来たことからして、シロだと思いますよ」
スラスラと話す沢木は、慎平の家庭教師とは言い難く、刑事そのものだった。
「あんなところで発砲して、沢木さん、大丈夫だったんですか?」
刑事っぽく見えても、今の沢木は警察官ではないのだ。にも関わらず、堂々と発砲した挙句、不敵に笑っていた。
「服部先生の許可が出ていたとはいえ、今の私は警察官ではありません。逮捕か、最低でも事情聴取は覚悟していたのですがね」
沢木は思い出したかのように苦笑する。
「なにも、なかったんですか?」
「ええ。だからこうして慎平君と話が出来ているのですよ」
なにがどうすれば、そんなことになるのだろう。このように揉み消される事件が、他にもたくさんあるのかもしれない。
「じいちゃんは、俺のこと、なにかいってましたか?」
「私はなにも聞いていませんね。佐藤さんがやり取りしていましたから」
「そうですか……」
慎平が素直に自宅に戻る気になったのは、怪我もあるが、ユリカを狙う人物がわからなければ動きようがないからだった。
ユリカの部屋が荒らされ、狙撃までしてきたのは、犯人は勇作の残した研究を狙っているからだ。慎平の脳裏に受け取った手紙の内容が蘇る。
研究の全てはYとSの名を持つ者に寄贈する。彼らの手によってそれは実行される。
「着きましたよ」
沢木の声で我に返る。車は無駄に広い服部の屋敷内に停車した。
白を基調とした洋館。この辺りは和風建築が多いので人目を惹くが、服部が住んでいることはほとんど知られていない。横浜に別宅があり、そこを住居としているようにみせかけているのだ。
慎平は一旦思考を止めて車を降りた。服部の小言にどう対応すべきかを悩みつつ、玄関の扉を開け放った、そのときだった。
「おかえり、慎ちゃん」
語尾にハートマークがつきそうな、能天気な声が耳に飛びこんできた。頭の中に思い描いた人物とばっちり目が合って、慎平は思わず叫んだ。
「おまえ、なんで……!?」
先に帰ったはずの奏が笑顔で手を振っていたのだ。
「今日からここの住人になったの。ごめんね、荷物の片付けがあったから、先に帰ったんだ」
先に帰るとは、そういう意味だったのかと慎平は愕然とした。
「奏君、大丈夫ですか?」
背後にいた沢木が、慎平の前に出て話しかける。
「大丈夫に決まってんじゃん」
「そうですか。では、私はお先に失礼しますよ」
そういうと、沢木は振り返り、慎平に一礼してその場を後にする。慎平はまた奏とふたりきりになってしまった。
「おい、なんでおまえがここに住むんだよ!?」
「あ、まだおまえ扱いする? ご主人様呼びに戻しちゃうぞ」
「だから、なんで奏が同居するのかって聞いてんだよ!?」
「提案したのは俺じゃなくて、第一秘書だから。いつまでも突っ立っていたら傷に障るよ。早く上がって、慎ちゃんはベッド直行」
奏は慎平を部屋へと連れていこうとする。
「ひとりで行けるから。てか、おまえ、片付けあるだろ」
「ふーん、おまえねえ……」
慎平には名前で呼んでもらいたいらしく、おまえも呼ぶ度に、厳しい視線が突きつけられる。
「いや、だから、奏は片付け続けていいから!?」
「もう終わったよ。怪我人は安静にしなきゃね」
「でも、じいちゃんが」
「じいさまはさっき外出した。夕方には戻るからそれまで寝とけって」
なんだかんだと奏のペースに巻き込まれ、従っているのが解せない慎平だった。
スラスラと話す沢木は、慎平の家庭教師とは言い難く、刑事そのものだった。
「あんなところで発砲して、沢木さん、大丈夫だったんですか?」
刑事っぽく見えても、今の沢木は警察官ではないのだ。にも関わらず、堂々と発砲した挙句、不敵に笑っていた。
「服部先生の許可が出ていたとはいえ、今の私は警察官ではありません。逮捕か、最低でも事情聴取は覚悟していたのですがね」
沢木は思い出したかのように苦笑する。
「なにも、なかったんですか?」
「ええ。だからこうして慎平君と話が出来ているのですよ」
なにがどうすれば、そんなことになるのだろう。このように揉み消される事件が、他にもたくさんあるのかもしれない。
「じいちゃんは、俺のこと、なにかいってましたか?」
「私はなにも聞いていませんね。佐藤さんがやり取りしていましたから」
「そうですか……」
慎平が素直に自宅に戻る気になったのは、怪我もあるが、ユリカを狙う人物がわからなければ動きようがないからだった。
ユリカの部屋が荒らされ、狙撃までしてきたのは、犯人は勇作の残した研究を狙っているからだ。慎平の脳裏に受け取った手紙の内容が蘇る。
研究の全てはYとSの名を持つ者に寄贈する。彼らの手によってそれは実行される。
「着きましたよ」
沢木の声で我に返る。車は無駄に広い服部の屋敷内に停車した。
白を基調とした洋館。この辺りは和風建築が多いので人目を惹くが、服部が住んでいることはほとんど知られていない。横浜に別宅があり、そこを住居としているようにみせかけているのだ。
慎平は一旦思考を止めて車を降りた。服部の小言にどう対応すべきかを悩みつつ、玄関の扉を開け放った、そのときだった。
「おかえり、慎ちゃん」
語尾にハートマークがつきそうな、能天気な声が耳に飛びこんできた。頭の中に思い描いた人物とばっちり目が合って、慎平は思わず叫んだ。
「おまえ、なんで……!?」
先に帰ったはずの奏が笑顔で手を振っていたのだ。
「今日からここの住人になったの。ごめんね、荷物の片付けがあったから、先に帰ったんだ」
先に帰るとは、そういう意味だったのかと慎平は愕然とした。
「奏君、大丈夫ですか?」
背後にいた沢木が、慎平の前に出て話しかける。
「大丈夫に決まってんじゃん」
「そうですか。では、私はお先に失礼しますよ」
そういうと、沢木は振り返り、慎平に一礼してその場を後にする。慎平はまた奏とふたりきりになってしまった。
「おい、なんでおまえがここに住むんだよ!?」
「あ、まだおまえ扱いする? ご主人様呼びに戻しちゃうぞ」
「だから、なんで奏が同居するのかって聞いてんだよ!?」
「提案したのは俺じゃなくて、第一秘書だから。いつまでも突っ立っていたら傷に障るよ。早く上がって、慎ちゃんはベッド直行」
奏は慎平を部屋へと連れていこうとする。
「ひとりで行けるから。てか、おまえ、片付けあるだろ」
「ふーん、おまえねえ……」
慎平には名前で呼んでもらいたいらしく、おまえも呼ぶ度に、厳しい視線が突きつけられる。
「いや、だから、奏は片付け続けていいから!?」
「もう終わったよ。怪我人は安静にしなきゃね」
「でも、じいちゃんが」
「じいさまはさっき外出した。夕方には戻るからそれまで寝とけって」
なんだかんだと奏のペースに巻き込まれ、従っているのが解せない慎平だった。
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