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プロローグ
Shiny Boys
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──Shiny Boys
毎日のように各メディアで姿を見かけるから、名前ぐらいは聞いたことがある人も多いと思う。それぐらいに注目度が高いアイドルグループだ。
その中でも一際人気が高いのは、絶対的なセンター・碧。
すらりとした長身に、ふんわりとした金髪。まるで童話の王子様が飛び出してきたみたいな見た目をした碧は、ファンからは「リアル王子様」と呼ばれている。
そんな碧が、なぜこんなところにいるのだろう。
もしかして、これは夢? そうに違いない。試しに自分の頬をつねってみる。……かなり、痛い。
「ふふっ、雪都くんは可愛いね」
花が咲く様に碧さんが笑った。
プライベートのはずなのに、ファンサービスがすぎる!
「こんなに可愛い雪都が弟になるだなんて、俺は幸せ者だね」
「弟……?」
「俺の父さんと六花さんが結婚するんだから、俺の弟になるんだろう? 俺の方が一つ年上だし」
あまりにも突然のことで状況が読み込めない。
父さん──つまりは、貴志さんのことだろう。六花さん──これは、母さんの名前だ。
「ええっ、そんなの聞いてない!」
「ええ、だって言ってないもの」
「なんでこんな大事なこと言ってくれなかったの!」
紹介したい人がいる、って言われたら、父さんができるものだと思うじゃないか。まさか、義理の兄弟ができるなんて思わない。
今だけは天然な母さんのことを恨めしく思う。
「まあ、落ち着いて。もうまもなく料理が来るわよ」
母さんは僕のことを宥めると、席に座らせた。いいソファーを使っているのかふっかふかだ。
滅多に座ることのない高級ソファーに座って怒りが和らいだ僕に向かって、母さんが「自己紹介しましょうか」と提案してきた。
一度呼吸を整えてから、
「改めまして、柚木雪都です。よ、よろしくお願いします!」
時々詰まりながらも、なんとか自己紹介をする。なんだかみんなから微笑ましげな表情を向けられている気がするけど、気にしないでおこう。
自己紹介が終わると、前の席に座っている碧さんが僕に向かって微笑んだ。
「改めて、自己紹介するね。俺は、高嶺碧。よろしく」
「よっ、よろしくお願いします……!」
碧さんから握手を求められて、手を重ねた。当たり前だけれども、男性特有の骨ばった手のひらに、どきどきしてしまう。
「そして、俺が碧の父・高嶺貴志だ。よろしくな、雪都くん!」
またもやにかっと貴志さんが笑った。碧さんの父親だけあって笑った顔がそっくりだ。
ひとしきり自己紹介をし合ったあと、急に貴志さんが緊張を滲ませた表情になる。
「料理が来る前に一つ、雪都くんに言いたいことがあるんだ。君のお母さんと結婚してもいいかな?」
突然、貴志さんが深々と頭を下げた。
「いいもなにも、母さんが幸せなら僕は賛成だよ」
思い出したのは、ここに来た時に見た母さんの嬉しそうな顔。あんな顔をみたら、駄目だなんて言えるわけない。
「っ……! 雪都、いい子に育ったわね……!」
「君の努力の賜物だよ! こんなにいい子の雪都くんが義理の息子になるだなんて、俺、幸せ者だ!」
何故か感激している大人たち。
そんな彼らの姿を見てちょっぴり引いていると、高級そうな料理がやってきた。
普段目にすることもないだろう料理に舌鼓を打ちながら談笑していると、あっという間に解散する時間になった。
「ねえ、雪都。もしよかったらなんだけど、貴志さんたちと一緒に住んでみない?」
解散する間際に、母さんがそんな提案をしてきた。
聞くと、貴志さんたちの実家は来月から通う予定の高校の近くらしい。
今の住んでいるアパートよりも高校に近くなるし、なにより幸せそうに微笑む二人を一緒にしてあげようと思い、快諾する。
大人組が引っ越しする日程を決めている間、ぼんやりと外の眺めを見ていたら、碧さんがゆっくり僕に近づいてきた。
「雪都くん、一昨日誕生日だったんだってね」
「あ、はい!」
緊張しながらも、なんとか言葉を返す。
確かに、一昨日──三月十三日は僕の誕生日だ。
「遅れちゃったけど、俺からの誕生日プレゼント。もしよかったら受け取って」
手渡された箱を開けると、高そうな腕時計が視界に入ってきた。
「え、こんな高そうなもの貰っちゃ悪いです!」
「いいの、いいの。これまで十五年分の誕生日プレゼントだと思って貰ってよ」
「だって、今日が初対面だし……」
「俺があげたかっただけだから。ね?」
そう言うと、碧さんはウィンクをした。
さすがは人気絶頂中のアイドル。かなりキマっている。
「それに、雪都には俺のあげたモノを身につけていて欲しいし」
「え、今なんて言いました……?」
「いや、なんでもない。ほら、六花さんが待っているよ。行こう」
絶対に聞き逃したらいけないような気がしたけど……まあ、碧さんがそう言うんだったら大丈夫だろう。
今さっき微かに黒いオーラを感じた気がしたけど、気にしないことにする。碧さんに手を引かれて、母さんたちの元へ駆け寄るのだった。
毎日のように各メディアで姿を見かけるから、名前ぐらいは聞いたことがある人も多いと思う。それぐらいに注目度が高いアイドルグループだ。
その中でも一際人気が高いのは、絶対的なセンター・碧。
すらりとした長身に、ふんわりとした金髪。まるで童話の王子様が飛び出してきたみたいな見た目をした碧は、ファンからは「リアル王子様」と呼ばれている。
そんな碧が、なぜこんなところにいるのだろう。
もしかして、これは夢? そうに違いない。試しに自分の頬をつねってみる。……かなり、痛い。
「ふふっ、雪都くんは可愛いね」
花が咲く様に碧さんが笑った。
プライベートのはずなのに、ファンサービスがすぎる!
「こんなに可愛い雪都が弟になるだなんて、俺は幸せ者だね」
「弟……?」
「俺の父さんと六花さんが結婚するんだから、俺の弟になるんだろう? 俺の方が一つ年上だし」
あまりにも突然のことで状況が読み込めない。
父さん──つまりは、貴志さんのことだろう。六花さん──これは、母さんの名前だ。
「ええっ、そんなの聞いてない!」
「ええ、だって言ってないもの」
「なんでこんな大事なこと言ってくれなかったの!」
紹介したい人がいる、って言われたら、父さんができるものだと思うじゃないか。まさか、義理の兄弟ができるなんて思わない。
今だけは天然な母さんのことを恨めしく思う。
「まあ、落ち着いて。もうまもなく料理が来るわよ」
母さんは僕のことを宥めると、席に座らせた。いいソファーを使っているのかふっかふかだ。
滅多に座ることのない高級ソファーに座って怒りが和らいだ僕に向かって、母さんが「自己紹介しましょうか」と提案してきた。
一度呼吸を整えてから、
「改めまして、柚木雪都です。よ、よろしくお願いします!」
時々詰まりながらも、なんとか自己紹介をする。なんだかみんなから微笑ましげな表情を向けられている気がするけど、気にしないでおこう。
自己紹介が終わると、前の席に座っている碧さんが僕に向かって微笑んだ。
「改めて、自己紹介するね。俺は、高嶺碧。よろしく」
「よっ、よろしくお願いします……!」
碧さんから握手を求められて、手を重ねた。当たり前だけれども、男性特有の骨ばった手のひらに、どきどきしてしまう。
「そして、俺が碧の父・高嶺貴志だ。よろしくな、雪都くん!」
またもやにかっと貴志さんが笑った。碧さんの父親だけあって笑った顔がそっくりだ。
ひとしきり自己紹介をし合ったあと、急に貴志さんが緊張を滲ませた表情になる。
「料理が来る前に一つ、雪都くんに言いたいことがあるんだ。君のお母さんと結婚してもいいかな?」
突然、貴志さんが深々と頭を下げた。
「いいもなにも、母さんが幸せなら僕は賛成だよ」
思い出したのは、ここに来た時に見た母さんの嬉しそうな顔。あんな顔をみたら、駄目だなんて言えるわけない。
「っ……! 雪都、いい子に育ったわね……!」
「君の努力の賜物だよ! こんなにいい子の雪都くんが義理の息子になるだなんて、俺、幸せ者だ!」
何故か感激している大人たち。
そんな彼らの姿を見てちょっぴり引いていると、高級そうな料理がやってきた。
普段目にすることもないだろう料理に舌鼓を打ちながら談笑していると、あっという間に解散する時間になった。
「ねえ、雪都。もしよかったらなんだけど、貴志さんたちと一緒に住んでみない?」
解散する間際に、母さんがそんな提案をしてきた。
聞くと、貴志さんたちの実家は来月から通う予定の高校の近くらしい。
今の住んでいるアパートよりも高校に近くなるし、なにより幸せそうに微笑む二人を一緒にしてあげようと思い、快諾する。
大人組が引っ越しする日程を決めている間、ぼんやりと外の眺めを見ていたら、碧さんがゆっくり僕に近づいてきた。
「雪都くん、一昨日誕生日だったんだってね」
「あ、はい!」
緊張しながらも、なんとか言葉を返す。
確かに、一昨日──三月十三日は僕の誕生日だ。
「遅れちゃったけど、俺からの誕生日プレゼント。もしよかったら受け取って」
手渡された箱を開けると、高そうな腕時計が視界に入ってきた。
「え、こんな高そうなもの貰っちゃ悪いです!」
「いいの、いいの。これまで十五年分の誕生日プレゼントだと思って貰ってよ」
「だって、今日が初対面だし……」
「俺があげたかっただけだから。ね?」
そう言うと、碧さんはウィンクをした。
さすがは人気絶頂中のアイドル。かなりキマっている。
「それに、雪都には俺のあげたモノを身につけていて欲しいし」
「え、今なんて言いました……?」
「いや、なんでもない。ほら、六花さんが待っているよ。行こう」
絶対に聞き逃したらいけないような気がしたけど……まあ、碧さんがそう言うんだったら大丈夫だろう。
今さっき微かに黒いオーラを感じた気がしたけど、気にしないことにする。碧さんに手を引かれて、母さんたちの元へ駆け寄るのだった。
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