7 / 10
【7】フユ、シズカと暮らす
しおりを挟む
神様との1日限りの同居、4日目。
冬を司る、気弱で大人しい小動物のような癒し系、フユだ。
朝、異様な肌寒さに、シズカは目を覚ました。
神様との同居も4日目になれば、だいたい予測できる。
部屋が、ヒンヤリとした空気に包まれている。
厚めのパジャマを着て正解だった。
目を開けると、ベッドの前に座り込んで、こちらを見つめている少年の姿。
「あ、おはよう、シズカさん……」
「おはよう、フユくん。何してるの?」
この神様に対しては、ごく自然にタメ口になってしまった。
それにしても神様というものは、こうも揃って寝起きに目の前にいるものなのだろうか。
「う、うん。ナツくんは、絶対に添い寝しただろうから……」
うん。その通り。見事に当たっている。
「ボクもしようかなって、迷っちゃって」
(いやそれ、凍死しそう……)
気弱なフユは、シズカに添い寝が出来ずに、朝まで座り込んでいたのだ。
健気、とでも言うのだろうか?
彼が神様でなかったら完全に危険人物だ。
着替えてリビングに行くと、フユが意気込んで言う。
「ボクが朝食を作るね」
「え?フユくんも料理が得意なの?」
「ううん。ハルくんとアキくんは手料理を振る舞ってそうだから、ボクも頑張るね」
またも、その通り。見事な的中率。
しかし、この冬神様は、他の神様に引け目を感じているのだろうか。
健気で応援したくなるが、それも変だ。
そして趣旨が、まるで料理対決みたいになってきてしまっている。
そして出来上がった、フユの手料理。
串に刺さったおでんに、いちご。どういう組み合わせなのだろうか。
いちごはハルにも出されたので、春の果物のようだが、冬の果物でもある。
というか、おでんって、どこまでが手作り…?
でも、冬の神様というからには、冷たい食品を出されると思ったので、意外だ。
「いただきます……ん?」
おでんを口に入れると、何か変な感じがした。
「シズカさん、どうしたの?口に合わなかったのかな、ごめんね……」
「ううん、違う!美味しい、美味しいよ!」
「良かったぁ……」
そんな、純粋なキラキラした瞳を向けられては、本当の事は言えない。
味は本当に美味しい。味は……
(つ、冷たい……おでん、冷たすぎる……)
なんと、おでんが、スティックアイスのように冷たいのだ。
そうきたか……と、シズカは油断のできない神様に警戒を強めた。
登校する時間になり、玄関の前でシズカの見送りをするフユ。
突然、フユがシズカに至近距離まで顔を近付けてきた。
そのまま、時が止まったように硬直する二人。
「な、なに?私の顔に何か付いてる?」
すると、フユは少し頬を赤らめて小声で答えた。
「ハルくんなら、きっとここでキスしただろうから、ボクも……」
「そこは頑張らなくていいからぁー!!」
シズカは真っ赤になって、思わずフユの体を突き放そうと手で触れた。
パチッ!!
「きゃっ!?」
フユに触れた途端に、手に小さな電流のような衝撃が走った。
(こ、これは……静電気!!)
「シズカさん、どうしたの?」
「なんでもない、行ってきます!!」
シズカは慌てて玄関のドアを開けて外に飛び出た。
あんなに強力な静電気を纏ったフユと添い寝やキスなんて……恐ろしい。
さらに、その日の夜、シズカは何か違和感を感じた。
喉がイガイガする……春でも秋でもないから、花粉症ではないだろう。
その時、部屋の壁際に設置している温湿度計を見て気付いた。
「え!?湿度0パーセント!?」
部屋が異常に低温、そして『乾燥』している事に……。
冬を司る、気弱で大人しい小動物のような癒し系、フユだ。
朝、異様な肌寒さに、シズカは目を覚ました。
神様との同居も4日目になれば、だいたい予測できる。
部屋が、ヒンヤリとした空気に包まれている。
厚めのパジャマを着て正解だった。
目を開けると、ベッドの前に座り込んで、こちらを見つめている少年の姿。
「あ、おはよう、シズカさん……」
「おはよう、フユくん。何してるの?」
この神様に対しては、ごく自然にタメ口になってしまった。
それにしても神様というものは、こうも揃って寝起きに目の前にいるものなのだろうか。
「う、うん。ナツくんは、絶対に添い寝しただろうから……」
うん。その通り。見事に当たっている。
「ボクもしようかなって、迷っちゃって」
(いやそれ、凍死しそう……)
気弱なフユは、シズカに添い寝が出来ずに、朝まで座り込んでいたのだ。
健気、とでも言うのだろうか?
彼が神様でなかったら完全に危険人物だ。
着替えてリビングに行くと、フユが意気込んで言う。
「ボクが朝食を作るね」
「え?フユくんも料理が得意なの?」
「ううん。ハルくんとアキくんは手料理を振る舞ってそうだから、ボクも頑張るね」
またも、その通り。見事な的中率。
しかし、この冬神様は、他の神様に引け目を感じているのだろうか。
健気で応援したくなるが、それも変だ。
そして趣旨が、まるで料理対決みたいになってきてしまっている。
そして出来上がった、フユの手料理。
串に刺さったおでんに、いちご。どういう組み合わせなのだろうか。
いちごはハルにも出されたので、春の果物のようだが、冬の果物でもある。
というか、おでんって、どこまでが手作り…?
でも、冬の神様というからには、冷たい食品を出されると思ったので、意外だ。
「いただきます……ん?」
おでんを口に入れると、何か変な感じがした。
「シズカさん、どうしたの?口に合わなかったのかな、ごめんね……」
「ううん、違う!美味しい、美味しいよ!」
「良かったぁ……」
そんな、純粋なキラキラした瞳を向けられては、本当の事は言えない。
味は本当に美味しい。味は……
(つ、冷たい……おでん、冷たすぎる……)
なんと、おでんが、スティックアイスのように冷たいのだ。
そうきたか……と、シズカは油断のできない神様に警戒を強めた。
登校する時間になり、玄関の前でシズカの見送りをするフユ。
突然、フユがシズカに至近距離まで顔を近付けてきた。
そのまま、時が止まったように硬直する二人。
「な、なに?私の顔に何か付いてる?」
すると、フユは少し頬を赤らめて小声で答えた。
「ハルくんなら、きっとここでキスしただろうから、ボクも……」
「そこは頑張らなくていいからぁー!!」
シズカは真っ赤になって、思わずフユの体を突き放そうと手で触れた。
パチッ!!
「きゃっ!?」
フユに触れた途端に、手に小さな電流のような衝撃が走った。
(こ、これは……静電気!!)
「シズカさん、どうしたの?」
「なんでもない、行ってきます!!」
シズカは慌てて玄関のドアを開けて外に飛び出た。
あんなに強力な静電気を纏ったフユと添い寝やキスなんて……恐ろしい。
さらに、その日の夜、シズカは何か違和感を感じた。
喉がイガイガする……春でも秋でもないから、花粉症ではないだろう。
その時、部屋の壁際に設置している温湿度計を見て気付いた。
「え!?湿度0パーセント!?」
部屋が異常に低温、そして『乾燥』している事に……。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。
スタジオ.T
青春
幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。
そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。
ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子
ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。
Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。
【完結】俺のセフレが幼なじみなんですが?
おもち
恋愛
アプリで知り合った女の子。初対面の彼女は予想より断然可愛かった。事前に取り決めていたとおり、2人は恋愛NGの都合の良い関係(セフレ)になる。何回か関係を続け、ある日、彼女の家まで送ると……、その家は、見覚えのある家だった。
『え、ここ、幼馴染の家なんだけど……?』
※他サイトでも投稿しています。2サイト計60万PV作品です。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる