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第10話『今日から悪魔を目指します!』
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それからの魔界の学校生活は楽しい日々だった。
秋の遠足、冬には校庭で雪合戦……
コランもアイリも真菜も、少しずつ魔力のコントロールが上達してきた。
……そして季節は巡り、春。
真菜が魔界の学校に通い始めてから、1年が経った。
「本日をもって、全課程を終了する」
教卓の前に立つ魔王が、いつもの調子で生徒たちに向かって宣言する。
……魔王は、それを『卒業』とは言わない。
卒業式がある訳でもなく、いつも通りの終礼で一日が終わった。
真菜は席を立つと、真っ先に魔王の所へと行く。
「魔王先生。一年間、ありがとうございました」
真菜は涙ぐみながら、魔王に一礼した。
顏を上げると、目の前には魔王の優しい赤い瞳があった。
「あぁ、真菜。一年間、よく頑張ったな」
そう言って、真菜の頭の上にポンっと手を置いた。
真菜は何か言いたそうにしているが、言葉が出ない。
それを見通して、魔王が先に声をかける。
「この先、何を選ぶかは真菜の自由だ。自分で選べ」
「はい。もう決まってます」
真菜は、なんとか涙をこらえながら、笑顔で答えた。
この学校に通う事は、真菜の母親によって決められた事。
だからこの先は、真菜自身の意志で決める。
「だが、忘れるな。これからもずっと、お前はオレ様の僕だ」
「……はい!」
魔王の言う『僕』とは『生徒』という意味なのだろう。
その後、学校の校門前。
真菜はいつもの『仲良しメンバー』、コラン、アイリ、レイトと共に、そこに立つ。
突然、アイリが真菜に抱きついてきた。
「真菜ちゃん、一年間、ありがとう。楽しかったよ……うぅ……」
「泣かないで、アイリちゃん」
「そうだぞ、アイリ!会えなくなる訳じゃないん……だ!」
そう言いながらも、コランも、もらい泣きしそうな勢いだ。
秋の遠足、冬には校庭で雪合戦……
コランもアイリも真菜も、少しずつ魔力のコントロールが上達してきた。
……そして季節は巡り、春。
真菜が魔界の学校に通い始めてから、1年が経った。
「本日をもって、全課程を終了する」
教卓の前に立つ魔王が、いつもの調子で生徒たちに向かって宣言する。
……魔王は、それを『卒業』とは言わない。
卒業式がある訳でもなく、いつも通りの終礼で一日が終わった。
真菜は席を立つと、真っ先に魔王の所へと行く。
「魔王先生。一年間、ありがとうございました」
真菜は涙ぐみながら、魔王に一礼した。
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「あぁ、真菜。一年間、よく頑張ったな」
そう言って、真菜の頭の上にポンっと手を置いた。
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それを見通して、魔王が先に声をかける。
「この先、何を選ぶかは真菜の自由だ。自分で選べ」
「はい。もう決まってます」
真菜は、なんとか涙をこらえながら、笑顔で答えた。
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突然、アイリが真菜に抱きついてきた。
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