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第2話『新・学校生活』
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「~~~~信じられない!」
教室に入ってからも、さらに亜矢の声と表情に苦悩の色が増していく。
亜矢の席の隣に、何くわぬ顔で着席するグリア。
「あんた、あたしに取り憑く気なの?」
席まで隣だなんて、思っていなかった。
ここまで徹底しているとは思わなかった。
「なんだよ、心配してわざわざ目の届く位置に来てやってんのに。あんたはオレ様無しには生きていけねえだろうが」
「勘違いされるような台詞を言わないで欲しいわ」
亜矢は不機嫌な顔をしたままカバンを机の上に置き、席に座った。
こんなに疲れた朝は初めてだろう。一日はまだ始まったばかりだというのに。
「あんた、朝から怒ってばかりだなぁ?そんなんじゃ命の消耗が速まるぜ」
「あんたのせいでね」
席が隣なだけに、着席したまま会話が出来る。
そしてそのまま授業の時間は始まる。
授業中、亜矢はチラチラと隣のグリアの様子を見る。
どうやら、真面目に授業を受けているようだ。
こうして見ていると、ごく普通の生徒なのだが。
「ねえ、授業を聞いてて楽しいの?」
休み時間になって、亜矢はグリアに問いかけた。
「まあ、暇つぶしにはなるな」
人間世界そのものを遊び場所としている死神。
まあ、普通に学生として過ごしてくれるのであれば、大した問題はないかも…
と亜矢は思い始めてきた。
だけど、どこまでも付きまとわられたら、こっちの生活&精神が乱される。
只今、4時間めの授業中。亜矢は一人、気合いを入れた。
4時間めの終了を知らせるチャイムが鳴り、その直後。
休む暇もなく、亜矢は勢いよく席を立った。
グリアはそんな亜矢を冷静に見ていた。
4時間めが終わった後と言えば、お昼の時間。
学校生活の楽しみの一つでもあるこの時間、これ以上死神に入り込まれたくない。
席を立った亜矢は、教室のドアに向かって猛ダッシュで駆け出した。
………が。
ドアの前まで来た時だった。
ダンッ!!
いつの間にかグリアがドアの横に立ち、勢いよく片足を上げて扉の側面を蹴った。
亜矢の行く手をその足が見事に阻んだ。
「…………あんた、いつの間にっ!?」
何よりも、驚きの方が大きかった。
確かにたった今、グリアは着席したまま席も立とうとしなかったのに。
また一体、どんな力を使ったのか…しかも教室内で。
未だ低く上げた片足で亜矢の行く手を阻みながら、グリアは腕を組み、ククっといつもの笑いを見せた。
「そんなに急いで、どこ行くんだよ?」
そんなわざとらしい言い回しから、二人の言葉の駆け引きは始まる。
「購買部よ。お昼ご飯買いにいくんだから、どいて」
足をどけようとしないグリアを強行突破するべく、亜矢はグリアに向かって強気に歩み出す。
グリアは足を下ろしたが、自分の横を通り過ぎようとする亜矢に向かって言う。
「オレ様の飯も買ってこい」
「はあっ!?」
亜矢は思わず歩みを止め、グリアの方へ向き直った。
「オレ様、金持ってねえし」
「別に食べなくても生きていけるんでしょう?」
魂を食べて生きる死神なら、人間と同じ食物なんて必要ないだろう。
「なら仕方ねえ、代わりにそこらへんの人間喰うぜ?この学校には美味そうな魂が沢山転がってるしなぁ」
「ちょ、ちょっと待ってー!!」
亜矢は慌ててその言動を止める。
脅迫とはまさに、こういうのを言うのだろう。
「魂を狩るなって言ったのは誰だよ。代わりのモンを食わなきゃ、オレ様だって餓死するぜ」
それにしてもこの会話は、他の人が端から聞いたら何とも意味不明である。
「わ、分かったわ……」
「じゃあオレ様アレな、飯を三角に固めたヤツ。人間界の食い物ではアレがなかなか気に入ったぜ」
「……………普通の『おにぎり』でしょ」
どうやらこの死神は、なかなか人間世界をエンジョイしているらしい。
教室に入ってからも、さらに亜矢の声と表情に苦悩の色が増していく。
亜矢の席の隣に、何くわぬ顔で着席するグリア。
「あんた、あたしに取り憑く気なの?」
席まで隣だなんて、思っていなかった。
ここまで徹底しているとは思わなかった。
「なんだよ、心配してわざわざ目の届く位置に来てやってんのに。あんたはオレ様無しには生きていけねえだろうが」
「勘違いされるような台詞を言わないで欲しいわ」
亜矢は不機嫌な顔をしたままカバンを机の上に置き、席に座った。
こんなに疲れた朝は初めてだろう。一日はまだ始まったばかりだというのに。
「あんた、朝から怒ってばかりだなぁ?そんなんじゃ命の消耗が速まるぜ」
「あんたのせいでね」
席が隣なだけに、着席したまま会話が出来る。
そしてそのまま授業の時間は始まる。
授業中、亜矢はチラチラと隣のグリアの様子を見る。
どうやら、真面目に授業を受けているようだ。
こうして見ていると、ごく普通の生徒なのだが。
「ねえ、授業を聞いてて楽しいの?」
休み時間になって、亜矢はグリアに問いかけた。
「まあ、暇つぶしにはなるな」
人間世界そのものを遊び場所としている死神。
まあ、普通に学生として過ごしてくれるのであれば、大した問題はないかも…
と亜矢は思い始めてきた。
だけど、どこまでも付きまとわられたら、こっちの生活&精神が乱される。
只今、4時間めの授業中。亜矢は一人、気合いを入れた。
4時間めの終了を知らせるチャイムが鳴り、その直後。
休む暇もなく、亜矢は勢いよく席を立った。
グリアはそんな亜矢を冷静に見ていた。
4時間めが終わった後と言えば、お昼の時間。
学校生活の楽しみの一つでもあるこの時間、これ以上死神に入り込まれたくない。
席を立った亜矢は、教室のドアに向かって猛ダッシュで駆け出した。
………が。
ドアの前まで来た時だった。
ダンッ!!
いつの間にかグリアがドアの横に立ち、勢いよく片足を上げて扉の側面を蹴った。
亜矢の行く手をその足が見事に阻んだ。
「…………あんた、いつの間にっ!?」
何よりも、驚きの方が大きかった。
確かにたった今、グリアは着席したまま席も立とうとしなかったのに。
また一体、どんな力を使ったのか…しかも教室内で。
未だ低く上げた片足で亜矢の行く手を阻みながら、グリアは腕を組み、ククっといつもの笑いを見せた。
「そんなに急いで、どこ行くんだよ?」
そんなわざとらしい言い回しから、二人の言葉の駆け引きは始まる。
「購買部よ。お昼ご飯買いにいくんだから、どいて」
足をどけようとしないグリアを強行突破するべく、亜矢はグリアに向かって強気に歩み出す。
グリアは足を下ろしたが、自分の横を通り過ぎようとする亜矢に向かって言う。
「オレ様の飯も買ってこい」
「はあっ!?」
亜矢は思わず歩みを止め、グリアの方へ向き直った。
「オレ様、金持ってねえし」
「別に食べなくても生きていけるんでしょう?」
魂を食べて生きる死神なら、人間と同じ食物なんて必要ないだろう。
「なら仕方ねえ、代わりにそこらへんの人間喰うぜ?この学校には美味そうな魂が沢山転がってるしなぁ」
「ちょ、ちょっと待ってー!!」
亜矢は慌ててその言動を止める。
脅迫とはまさに、こういうのを言うのだろう。
「魂を狩るなって言ったのは誰だよ。代わりのモンを食わなきゃ、オレ様だって餓死するぜ」
それにしてもこの会話は、他の人が端から聞いたら何とも意味不明である。
「わ、分かったわ……」
「じゃあオレ様アレな、飯を三角に固めたヤツ。人間界の食い物ではアレがなかなか気に入ったぜ」
「……………普通の『おにぎり』でしょ」
どうやらこの死神は、なかなか人間世界をエンジョイしているらしい。
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