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第1話『死神と少女』
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グリアは思わず、一歩引いた。
「……触るんじゃねえ!この鎌は、魂を狩るんだぜ……!!」
今からこの少女の魂を狩ろうとしている者が言う台詞ではない。
だが、少しも恐れる事なく、亜矢は鎌の刃を素手で握りしめる。
血こそ出ないが、その刃は亜矢の手の中を切り刻む。
「あたしには、夢があるのよ」
「………ああ、知ってるぜ。ずっと見てたからな」
グリアは押されながらも、相槌をうつ。
「叶えたい夢があるの」
「実現するとは限らないぜ?」
グリアが鎌を自分の方に引くと、亜矢の手からその刃が引き抜かれる。
「そんな事は分かってる。でも……私は先に進みたい。ここで終わりたくないの、止まりたくないのよ」
命乞いとも違う、亜矢の強い意志が込められたその言葉に、死神の心が動き始めた。いや、死神に心があるのかは分からないが。
「変よね、何であたしは夢の中の人に真剣に話してるんだろう…」
少し舌を出して笑った。
怒ったり、沈んだり、かと思えば無理して笑ったり。
先程からこの少女は、いくつもの表情をグリアに見せた。
もっと、この少女の近くで観察してみるのも面白いかもしれない―。
それが、死神の出した答えだった。
「死神は、人の魂を喰う事で自分の命の源としている。使命で人の魂を狩っている訳じゃねえ。全て自分の勝手だ。人を選び、その魂を狩るのも、それを喰うも生かすも―」
「何が言いたいの?」
亜矢は不思議そうにグリアの顔を見上げた。
「あんたを生かしてやる」
意外な言葉に、亜矢は驚いた。
何がこの死神の心を動かしたのか、亜矢自身は気付かない。
「本当!?そんな事が……」
と、言いかけた亜矢の唇に、グリアはそっと人さし指を当てた。
思わず一瞬、言葉だけでなく呼吸も止めてしまう亜矢。
「出来るぜ。だが、あんたが死んだのは事実だ。これだけはオレ様でもどうも出来ねえ。だから…」
その人さし指で、亜矢の胸元を指した。
「オレ様が『仮』の心臓を与えてやる」
亜矢は自分の胸元に両手を添えた。
「どうして、死神のあなたがそこまでしてくれるの?」
そんな亜矢の疑問に答える事なく。
その答えは、グリア自身にも分からないから。
「まあ、あんたの命をこれからも保つには他にも色々必要だけどな」
「だから、何で…!!」
するとグリアは、亜矢の目の前に顔を近付けた。
驚き、亜矢の動きが止まる。
「あんたの事は、前々から興味があってな。少し楽しませてもらうぜ?その為に多少の下準備は済ませてあるしな」
下準備、という言葉を聞いて亜矢には思い当たる節がある。
グリアが、亜矢の隣の部屋に引越して来た事。
亜矢と同じ高校の生徒として亜矢の日常生活に、そして周りの人達の記憶の中にいつの間にか溶け込んでいた事。
全ては、グリアが仕組んだものだった。
気まぐれで勝手な死神に亜矢は怒りを覚えるが、それでも自分の事を生かしてくれるらしいグリアに、少しだけ有り難さも感じる。
そう、今までの話が本当の事であれば。
「それにしても、これって長い夢だわ」
突然の亜矢のとぼけた発言に、グリアはガクっとなった。
夢だと思い込んでいる相手に向かって動揺し、真剣になっていた死神。
グリアは一回息をつくと、再び鎌を大きく振りかざした。
「もう夢の時間は終わりだぜ?目ぇ覚ましな、亜矢。あと、少しだけ時間を戻しておいてやる。親切なオレ様に感謝しな!!」
「ちょっと、呼び捨てにしないでよ!!」
感謝する所か、別の所に反応し怒りを込めて叫ぶ亜矢。
構わずグリアは自分と亜矢の間の空間を切り裂くようにして一気に鎌を振り落とした。
それは、この空間全てを切り裂き、消滅させるような光を放って――。
「……触るんじゃねえ!この鎌は、魂を狩るんだぜ……!!」
今からこの少女の魂を狩ろうとしている者が言う台詞ではない。
だが、少しも恐れる事なく、亜矢は鎌の刃を素手で握りしめる。
血こそ出ないが、その刃は亜矢の手の中を切り刻む。
「あたしには、夢があるのよ」
「………ああ、知ってるぜ。ずっと見てたからな」
グリアは押されながらも、相槌をうつ。
「叶えたい夢があるの」
「実現するとは限らないぜ?」
グリアが鎌を自分の方に引くと、亜矢の手からその刃が引き抜かれる。
「そんな事は分かってる。でも……私は先に進みたい。ここで終わりたくないの、止まりたくないのよ」
命乞いとも違う、亜矢の強い意志が込められたその言葉に、死神の心が動き始めた。いや、死神に心があるのかは分からないが。
「変よね、何であたしは夢の中の人に真剣に話してるんだろう…」
少し舌を出して笑った。
怒ったり、沈んだり、かと思えば無理して笑ったり。
先程からこの少女は、いくつもの表情をグリアに見せた。
もっと、この少女の近くで観察してみるのも面白いかもしれない―。
それが、死神の出した答えだった。
「死神は、人の魂を喰う事で自分の命の源としている。使命で人の魂を狩っている訳じゃねえ。全て自分の勝手だ。人を選び、その魂を狩るのも、それを喰うも生かすも―」
「何が言いたいの?」
亜矢は不思議そうにグリアの顔を見上げた。
「あんたを生かしてやる」
意外な言葉に、亜矢は驚いた。
何がこの死神の心を動かしたのか、亜矢自身は気付かない。
「本当!?そんな事が……」
と、言いかけた亜矢の唇に、グリアはそっと人さし指を当てた。
思わず一瞬、言葉だけでなく呼吸も止めてしまう亜矢。
「出来るぜ。だが、あんたが死んだのは事実だ。これだけはオレ様でもどうも出来ねえ。だから…」
その人さし指で、亜矢の胸元を指した。
「オレ様が『仮』の心臓を与えてやる」
亜矢は自分の胸元に両手を添えた。
「どうして、死神のあなたがそこまでしてくれるの?」
そんな亜矢の疑問に答える事なく。
その答えは、グリア自身にも分からないから。
「まあ、あんたの命をこれからも保つには他にも色々必要だけどな」
「だから、何で…!!」
するとグリアは、亜矢の目の前に顔を近付けた。
驚き、亜矢の動きが止まる。
「あんたの事は、前々から興味があってな。少し楽しませてもらうぜ?その為に多少の下準備は済ませてあるしな」
下準備、という言葉を聞いて亜矢には思い当たる節がある。
グリアが、亜矢の隣の部屋に引越して来た事。
亜矢と同じ高校の生徒として亜矢の日常生活に、そして周りの人達の記憶の中にいつの間にか溶け込んでいた事。
全ては、グリアが仕組んだものだった。
気まぐれで勝手な死神に亜矢は怒りを覚えるが、それでも自分の事を生かしてくれるらしいグリアに、少しだけ有り難さも感じる。
そう、今までの話が本当の事であれば。
「それにしても、これって長い夢だわ」
突然の亜矢のとぼけた発言に、グリアはガクっとなった。
夢だと思い込んでいる相手に向かって動揺し、真剣になっていた死神。
グリアは一回息をつくと、再び鎌を大きく振りかざした。
「もう夢の時間は終わりだぜ?目ぇ覚ましな、亜矢。あと、少しだけ時間を戻しておいてやる。親切なオレ様に感謝しな!!」
「ちょっと、呼び捨てにしないでよ!!」
感謝する所か、別の所に反応し怒りを込めて叫ぶ亜矢。
構わずグリアは自分と亜矢の間の空間を切り裂くようにして一気に鎌を振り落とした。
それは、この空間全てを切り裂き、消滅させるような光を放って――。
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