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第4話『小悪魔変身』
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朝になった。
亜矢とコランは、いつも同じベッド、同じ布団の中で眠る。
元々、この部屋にベッドは1つしかないし、コランの体は小さいので亜矢の隣の隙間に問題なく入り込む事が出来る。
それに、コランは亜矢の温もりを側で感じながら眠るのが好きだった。
亜矢は、何かいつもと違う違和感を感じて目を覚ました。
(なんだか……狭い………)
隣に眠っているのはコランだけなのに、ベッドの上がいつもより狭くて窮屈なのだ。
うっすらと目を開けた亜矢は、目の前に信じられない物を見た。
「キャアアアー!!!」
思いっきり叫びながら、亜矢は転げ落ちるようにしてベッドから離れた。
「………ん?なんだ?」
亜矢が尻餅をついた状態で驚愕している前で、ベッドの上の人物はゆっくりと起き上がった。
「ま、魔王!!あんたが、なんで隣で寝てるのよ!?」
亜矢は、ベッドの上の人物を指さしながら言う。
だが、その男は寝起きでボーっとした顔のまま、床に座る亜矢を見下ろす。
「アヤ、どうしたんだ?」
亜矢は、その声にも違和感を感じ、よーくその男の顔を見てみる。
褐色の肌、紫の髪、赤色の瞳。
一瞬、魔王と見間違えたが、魔王のような鋭い眼光も、邪悪さも感じられない。
「も、もしかして……あなた、魔王じゃないの?」
やっと冷静さを取り戻した亜矢。でも、この状況は謎だらけだ。
「アヤ、何言ってるんだ?オレはコランだ」
「えっ……コランくん!?」
亜矢は声を失い、改めてコランの全身を確認するように見る。
コランの今の姿は、年齢的には大人。亜矢よりも年上で、魔王と同じくらいだろう。
それに、声も低くなっている。
「あれ?オレ、なんか体が大きくなってる?」
コランはベッドから下りると、自分の手足を見て不思議そうにしている。
その仕草、表情、口調は全てコランのままだ。
どうやらコランは、姿だけが大人になってしまったようだ。
ご丁寧にも、コランが着ていたパジャマまで大人サイズになっている。
「どうして、こんな事に…?」
亜矢は信じられない気持ちで立ち上がると、コランの前に立つ。
コランが、亜矢と向かい合った。
(背、高いっ!!)
亜矢は驚いたが声に出さず、心で叫んだ。
コランは、亜矢を見下ろした。
まさか、コランに見下ろされる日が来るとは…と、亜矢は複雑な気持ちだ。
「アヤ、背低くなったな?」
「……あなたが大きくなったのよ」
天然なコランの発言に、亜矢はこんな状況でもいつものクセでツッコミを入れる。
コランは全身が映る大きな鏡の前に立ち、そこで初めて驚きの声を上げた。
「………これが、オレなのか!?すっげ~~!!大人になってる!!」
驚いた後、少し嬉しそうにしてコランは自分の姿を見ていた。
だが、亜矢は喜ぶどころか、不安になって深刻な顔をしていた。
「一体何が起こってこうなったのか、心配だわ。魔王に相談した方が…」
だが、コランは亜矢が言い終わる前に振り返った。
「それはダメッ!!」
亜矢は、その勢いに圧倒された。いつもより声が低いので、なおさらだ。
「で、でも……、その姿じゃ困るでしょ?」
「困らない!!」
コランは即答した。
やっと、大人になれたのだ。コランにしてみれば、元の姿に戻りたくない。
心配そうにしている亜矢に向かい合い、コランは落ち着いた口調になる。
「アヤ、これはオレの魔法の力によって変身しちゃったんだ。オレの魔法は長くは続かないから、放っておいても元に戻る」
コラン自身、その言葉に確信はない。
きっと、昨日『大人になりたい』と強く願ったせいで、知らぬうちに一時的に姿を成長させる変身魔法を自分自身にかけてしまったのだ。
それは、奇跡とも言える魔法。
「コランくん……」
亜矢は、どこか必死なコランを見て、その心に気付き始めた。
コランは、少しでも長く大人の姿でいたいのだろう、と。
「うん…、分かったわ」
亜矢がそう言うと、コランはパっと明るい笑顔になった。
姿は大人でも、根本的な所は全てコランのままなのが、面白おかしい。
「ありがとう、アヤー!!」
「きゃー!?」
コランがおもいっきり抱きついたものだから、亜矢は思わず叫ぶ。
いつものコランなら亜矢の腰あたりに抱きつく形になるのだが、今は大人なので逆にコランの体に包まれて抱擁される形になってしまう。
「じゃあ、アヤ!出かけようぜ!!」
「えっ!?今日は家で大人しくしていた方が…」
大人のコランと一緒に出かけるには、さすがに不安要素が多すぎる。
この青年がコランだと説明しても、誰にも信じてもらえないだろう。
「アヤ、今日は一緒に遊んでくれるって言ったよな?」
亜矢は、期待の眼差しを向けて楽しそうに笑うコランを見て、全ての不安など吹き飛ばしてしまうような眩しさを感じた。
これこそ、コランのペース。普段から、亜矢はそんなコランに甘い。
「うん。じゃあ、出かけようか。あっ………」
亜矢は服を着替えようとしたが、その視界に映ったコランを見て、顔を赤くした。
「えっと……着替えるから、コランくんはあっちの部屋で待っててね」
「うん?」
コランは不思議そうにして返事をすると、寝室から出て行った。
いつもなら、コランが部屋に一緒に居ても着替えは普通に出来るのだが。
今の彼の姿は、子供ではない。さすがに、目の前で着替えるには抵抗がある。
(やっぱり、調子狂っちゃうなあ……)
亜矢とコランは、いつも同じベッド、同じ布団の中で眠る。
元々、この部屋にベッドは1つしかないし、コランの体は小さいので亜矢の隣の隙間に問題なく入り込む事が出来る。
それに、コランは亜矢の温もりを側で感じながら眠るのが好きだった。
亜矢は、何かいつもと違う違和感を感じて目を覚ました。
(なんだか……狭い………)
隣に眠っているのはコランだけなのに、ベッドの上がいつもより狭くて窮屈なのだ。
うっすらと目を開けた亜矢は、目の前に信じられない物を見た。
「キャアアアー!!!」
思いっきり叫びながら、亜矢は転げ落ちるようにしてベッドから離れた。
「………ん?なんだ?」
亜矢が尻餅をついた状態で驚愕している前で、ベッドの上の人物はゆっくりと起き上がった。
「ま、魔王!!あんたが、なんで隣で寝てるのよ!?」
亜矢は、ベッドの上の人物を指さしながら言う。
だが、その男は寝起きでボーっとした顔のまま、床に座る亜矢を見下ろす。
「アヤ、どうしたんだ?」
亜矢は、その声にも違和感を感じ、よーくその男の顔を見てみる。
褐色の肌、紫の髪、赤色の瞳。
一瞬、魔王と見間違えたが、魔王のような鋭い眼光も、邪悪さも感じられない。
「も、もしかして……あなた、魔王じゃないの?」
やっと冷静さを取り戻した亜矢。でも、この状況は謎だらけだ。
「アヤ、何言ってるんだ?オレはコランだ」
「えっ……コランくん!?」
亜矢は声を失い、改めてコランの全身を確認するように見る。
コランの今の姿は、年齢的には大人。亜矢よりも年上で、魔王と同じくらいだろう。
それに、声も低くなっている。
「あれ?オレ、なんか体が大きくなってる?」
コランはベッドから下りると、自分の手足を見て不思議そうにしている。
その仕草、表情、口調は全てコランのままだ。
どうやらコランは、姿だけが大人になってしまったようだ。
ご丁寧にも、コランが着ていたパジャマまで大人サイズになっている。
「どうして、こんな事に…?」
亜矢は信じられない気持ちで立ち上がると、コランの前に立つ。
コランが、亜矢と向かい合った。
(背、高いっ!!)
亜矢は驚いたが声に出さず、心で叫んだ。
コランは、亜矢を見下ろした。
まさか、コランに見下ろされる日が来るとは…と、亜矢は複雑な気持ちだ。
「アヤ、背低くなったな?」
「……あなたが大きくなったのよ」
天然なコランの発言に、亜矢はこんな状況でもいつものクセでツッコミを入れる。
コランは全身が映る大きな鏡の前に立ち、そこで初めて驚きの声を上げた。
「………これが、オレなのか!?すっげ~~!!大人になってる!!」
驚いた後、少し嬉しそうにしてコランは自分の姿を見ていた。
だが、亜矢は喜ぶどころか、不安になって深刻な顔をしていた。
「一体何が起こってこうなったのか、心配だわ。魔王に相談した方が…」
だが、コランは亜矢が言い終わる前に振り返った。
「それはダメッ!!」
亜矢は、その勢いに圧倒された。いつもより声が低いので、なおさらだ。
「で、でも……、その姿じゃ困るでしょ?」
「困らない!!」
コランは即答した。
やっと、大人になれたのだ。コランにしてみれば、元の姿に戻りたくない。
心配そうにしている亜矢に向かい合い、コランは落ち着いた口調になる。
「アヤ、これはオレの魔法の力によって変身しちゃったんだ。オレの魔法は長くは続かないから、放っておいても元に戻る」
コラン自身、その言葉に確信はない。
きっと、昨日『大人になりたい』と強く願ったせいで、知らぬうちに一時的に姿を成長させる変身魔法を自分自身にかけてしまったのだ。
それは、奇跡とも言える魔法。
「コランくん……」
亜矢は、どこか必死なコランを見て、その心に気付き始めた。
コランは、少しでも長く大人の姿でいたいのだろう、と。
「うん…、分かったわ」
亜矢がそう言うと、コランはパっと明るい笑顔になった。
姿は大人でも、根本的な所は全てコランのままなのが、面白おかしい。
「ありがとう、アヤー!!」
「きゃー!?」
コランがおもいっきり抱きついたものだから、亜矢は思わず叫ぶ。
いつものコランなら亜矢の腰あたりに抱きつく形になるのだが、今は大人なので逆にコランの体に包まれて抱擁される形になってしまう。
「じゃあ、アヤ!出かけようぜ!!」
「えっ!?今日は家で大人しくしていた方が…」
大人のコランと一緒に出かけるには、さすがに不安要素が多すぎる。
この青年がコランだと説明しても、誰にも信じてもらえないだろう。
「アヤ、今日は一緒に遊んでくれるって言ったよな?」
亜矢は、期待の眼差しを向けて楽しそうに笑うコランを見て、全ての不安など吹き飛ばしてしまうような眩しさを感じた。
これこそ、コランのペース。普段から、亜矢はそんなコランに甘い。
「うん。じゃあ、出かけようか。あっ………」
亜矢は服を着替えようとしたが、その視界に映ったコランを見て、顔を赤くした。
「えっと……着替えるから、コランくんはあっちの部屋で待っててね」
「うん?」
コランは不思議そうにして返事をすると、寝室から出て行った。
いつもなら、コランが部屋に一緒に居ても着替えは普通に出来るのだが。
今の彼の姿は、子供ではない。さすがに、目の前で着替えるには抵抗がある。
(やっぱり、調子狂っちゃうなあ……)
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