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第4話『小悪魔変身』
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亜矢と一緒の部屋に住んでいる、小悪魔・コラン。
亜矢が学校へ行っている間、コランは部屋で一人。
時々、ディアがお世話に来てはくれるが、魔王に仕える彼は忙しい為、毎日という訳にはいかない。
お昼の時間、コランは亜矢が朝に作ってくれたお弁当を食べながら、テレビをじーっと見ていた。
食べ終わると、テーブルの上いっぱいにトランプのカードをばらまき、何をする訳でもなく掻き回して眺めていた。
そうしていると、玄関のドアが開く音がした。
コランはパっと明るい笑顔になって、トランプをまとめると手に持ち、玄関へと駆け出した。
「アヤ、お帰り~~!!」
いつものように、玄関先で元気よく亜矢の腰に抱きつく。
可愛い小悪魔のお出迎えに、亜矢も笑顔で抱き返す。
「ただいま、コランくん」
コランは、そのままで亜矢の顔を見上げる。
「アヤ、オレとトランプしようぜ!!今日は負けないぜ!」
だが、亜矢は微笑みながらも、どこか疲れている様子だ。
「うん。でも、明日は小テストがあるから、また今度ね」
「え~~~~!」
コランは聞き分けの悪い子ではないのでワガママは言わないが、それでも残念そうな声を上げた。
「待っててね、今から夕飯作るから」
「………うん」
コランは小さく返事を返した。
学業と家事の両立が大変な事だっていうのは、コランにだって分かる。
だが、亜矢と一緒に暮らしているのに、一緒にいられる時間が少ない気がする。
誰よりも、亜矢の近くにいるはずなのに。
亜矢と同じ学校に通う事が出来ないコランの心は、いつしか寂しさを募らせた。
そして数日後。
今日は土曜日。学校は休みで、亜矢は登校しない日だという事をコランはすでに覚えている。
「アヤ、今日はオレとトランプしようぜ!」
だが、亜矢は何やら出かける準備をしているようだ。
「どこかへ行くのか?」
「あ、うん。リョウくんの部屋に。お料理を教えてもらいに行くのよ」
「……………」
コランは口を閉ざした。大きく開いた赤色の瞳が、揺れている。
いつもらしくないコランに、亜矢はコランと同じ視線の高さになるまで膝を曲げた。
「コランくんも一緒に行く?」
優しい口調で問いかけるが、見返す事なくコランは少し目を伏せた。
「………いい。行かない」
力のない、小さく素っ気ない口調。
フイっと顔を横に向けると、コランは背中を向けて亜矢の部屋へと戻って行く。
亜矢は、ポカンとしてコランの背中を目で追っていた。
いつものコランなら、喜んで亜矢と一緒について行くのに。
(どうしちゃったのかしら、コランくん……)
亜矢が学校へ行っている間、コランは部屋で一人。
時々、ディアがお世話に来てはくれるが、魔王に仕える彼は忙しい為、毎日という訳にはいかない。
お昼の時間、コランは亜矢が朝に作ってくれたお弁当を食べながら、テレビをじーっと見ていた。
食べ終わると、テーブルの上いっぱいにトランプのカードをばらまき、何をする訳でもなく掻き回して眺めていた。
そうしていると、玄関のドアが開く音がした。
コランはパっと明るい笑顔になって、トランプをまとめると手に持ち、玄関へと駆け出した。
「アヤ、お帰り~~!!」
いつものように、玄関先で元気よく亜矢の腰に抱きつく。
可愛い小悪魔のお出迎えに、亜矢も笑顔で抱き返す。
「ただいま、コランくん」
コランは、そのままで亜矢の顔を見上げる。
「アヤ、オレとトランプしようぜ!!今日は負けないぜ!」
だが、亜矢は微笑みながらも、どこか疲れている様子だ。
「うん。でも、明日は小テストがあるから、また今度ね」
「え~~~~!」
コランは聞き分けの悪い子ではないのでワガママは言わないが、それでも残念そうな声を上げた。
「待っててね、今から夕飯作るから」
「………うん」
コランは小さく返事を返した。
学業と家事の両立が大変な事だっていうのは、コランにだって分かる。
だが、亜矢と一緒に暮らしているのに、一緒にいられる時間が少ない気がする。
誰よりも、亜矢の近くにいるはずなのに。
亜矢と同じ学校に通う事が出来ないコランの心は、いつしか寂しさを募らせた。
そして数日後。
今日は土曜日。学校は休みで、亜矢は登校しない日だという事をコランはすでに覚えている。
「アヤ、今日はオレとトランプしようぜ!」
だが、亜矢は何やら出かける準備をしているようだ。
「どこかへ行くのか?」
「あ、うん。リョウくんの部屋に。お料理を教えてもらいに行くのよ」
「……………」
コランは口を閉ざした。大きく開いた赤色の瞳が、揺れている。
いつもらしくないコランに、亜矢はコランと同じ視線の高さになるまで膝を曲げた。
「コランくんも一緒に行く?」
優しい口調で問いかけるが、見返す事なくコランは少し目を伏せた。
「………いい。行かない」
力のない、小さく素っ気ない口調。
フイっと顔を横に向けると、コランは背中を向けて亜矢の部屋へと戻って行く。
亜矢は、ポカンとしてコランの背中を目で追っていた。
いつものコランなら、喜んで亜矢と一緒について行くのに。
(どうしちゃったのかしら、コランくん……)
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