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第1話『開かれる扉』
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新学期、今日から高校2年生。
新しい教室に入っても、何だかいつもと変わった気がしない。
「亜矢~、また一緒のクラスで嬉しいわ!!」
亜矢の親友・美保が嬉しそうに話しかける。
だが、亜矢はどうも晴れない表情をしている。むしろ、暗い。
そんな亜矢とは反対に、美保は一人、はしゃいでいる。
「リョウくんもまた一緒のクラスだし、やっぱこれって運命かしら~!」
美保の言葉に、亜矢は低い声で力なく反応する。
「じゃあなに、また死神と同じクラスなのも運命って言うの?」
そんなはずはない。このクラス替えだって、グリアに仕組まれた事だってのは分かりきっている。
結局、高校生活2年目も変わらないメンバーとなった。
美保はキョトン、として亜矢を見る。
「亜矢はグリアくんと一緒のクラスで嬉しくないの?」
「嬉しくないわ」
亜矢は即答した。
「オレ様は嬉しいぜ?クク…」
突然、背後から聞こえてきた声に、亜矢がハっと振り返る。
いつの間にか背後に立っていたグリアに、敵意をこめた視線を送る。
今朝の恨み、忘れるものですか!とばかりに。
亜矢がグリアに向かって何かを言おうとした、その時。
ガラガラガラッ!!!
教室の、教卓側のドアが勢いよく開かれた。
それと同時に、教室内に響いた声。
「オラァ!!テメエら、席に着きなぁっ!!!」
その凄まじい迫力に、何事かと思う前に教室内の生徒はバタバタと慌てて席に座る。
どうやら教師らしいその男は整然となった教室内を見回すと、満足そうに笑った。
亜矢はその男の姿を見た瞬間、ン?と目を見張った。
紫の髪に、褐色の肌。着崩したワイシャツに、緩いネクタイ。
教師にしては、不良っぽい。
その男は堂々と歩き出し、黒板の正面までくると皆の方には向かず、背中を向けた。
すると、いきなりチョークを握るなり、
カカカカカッ☆
ものすごい勢いで黒板に何かを書きなぐった。
それは、黒板一面を埋め尽くすような大きすぎる文字で。
その黒板に書かれた巨大な文字は、『魔王』
男はクルっと正面を向くと、教卓に両手を置いて一同を見据え、ニヤリと笑う。
「オレ様が今日からこのクラスの担任、魔王サマだ!!」
ガクっ☆と亜矢は机に頭を突っ伏した。
―――――最悪だわ――――。
まさか、あの魔王がこのクラスの担任になるなんて。
以前、教育実習生として彼がこの学校に来た時はただの気まぐれだと思ったのに、一体何を考えているのか。
何とも自己主張が激しい担任教師に、クラス一同は圧倒され、静まりかえる。
だが、魔王先生の主張は続く。
「いいか、魔王『サマ』だ。『サマ』も付けろよ!!」
亜矢は頭を上げると、深く溜め息をついた。
だが、そんな魔王は持ち前の男らしさとワイルドさで、クラスの女子のハートを掴んだ。
ウットリと魔王を見つめる女子もいれば、『ステキ!』と言い合う女子もいる。
元々、教育実習生の時から絶大な人気があったのだから、過熱するのは当然だ。
だが、皆は知らないのだ。魔王の正体を。
魔王オランは魔界の王。本当の意味で『魔王』なのだ。そして、コランの兄。
亜矢に惚れ込んでいる魔王は以前、亜矢を妃にしようと強引に迫ってきた。
ああ、もうこの学校に安全な場所はないのかも…と、絶望的な思いを巡らせる亜矢。
だが、この状況を重く見ているのは亜矢だけではない。
魔王の正体を知る者、グリアとリョウだ。
(チッ…ノコノコ人間界に来てんじゃねえよ)
敵意を向けるグリア。
(魔王をここまで動かすなんて、亜矢ちゃんはやっぱりすごいなあ)
何故か改めて感心するリョウ。
新しい教室に入っても、何だかいつもと変わった気がしない。
「亜矢~、また一緒のクラスで嬉しいわ!!」
亜矢の親友・美保が嬉しそうに話しかける。
だが、亜矢はどうも晴れない表情をしている。むしろ、暗い。
そんな亜矢とは反対に、美保は一人、はしゃいでいる。
「リョウくんもまた一緒のクラスだし、やっぱこれって運命かしら~!」
美保の言葉に、亜矢は低い声で力なく反応する。
「じゃあなに、また死神と同じクラスなのも運命って言うの?」
そんなはずはない。このクラス替えだって、グリアに仕組まれた事だってのは分かりきっている。
結局、高校生活2年目も変わらないメンバーとなった。
美保はキョトン、として亜矢を見る。
「亜矢はグリアくんと一緒のクラスで嬉しくないの?」
「嬉しくないわ」
亜矢は即答した。
「オレ様は嬉しいぜ?クク…」
突然、背後から聞こえてきた声に、亜矢がハっと振り返る。
いつの間にか背後に立っていたグリアに、敵意をこめた視線を送る。
今朝の恨み、忘れるものですか!とばかりに。
亜矢がグリアに向かって何かを言おうとした、その時。
ガラガラガラッ!!!
教室の、教卓側のドアが勢いよく開かれた。
それと同時に、教室内に響いた声。
「オラァ!!テメエら、席に着きなぁっ!!!」
その凄まじい迫力に、何事かと思う前に教室内の生徒はバタバタと慌てて席に座る。
どうやら教師らしいその男は整然となった教室内を見回すと、満足そうに笑った。
亜矢はその男の姿を見た瞬間、ン?と目を見張った。
紫の髪に、褐色の肌。着崩したワイシャツに、緩いネクタイ。
教師にしては、不良っぽい。
その男は堂々と歩き出し、黒板の正面までくると皆の方には向かず、背中を向けた。
すると、いきなりチョークを握るなり、
カカカカカッ☆
ものすごい勢いで黒板に何かを書きなぐった。
それは、黒板一面を埋め尽くすような大きすぎる文字で。
その黒板に書かれた巨大な文字は、『魔王』
男はクルっと正面を向くと、教卓に両手を置いて一同を見据え、ニヤリと笑う。
「オレ様が今日からこのクラスの担任、魔王サマだ!!」
ガクっ☆と亜矢は机に頭を突っ伏した。
―――――最悪だわ――――。
まさか、あの魔王がこのクラスの担任になるなんて。
以前、教育実習生として彼がこの学校に来た時はただの気まぐれだと思ったのに、一体何を考えているのか。
何とも自己主張が激しい担任教師に、クラス一同は圧倒され、静まりかえる。
だが、魔王先生の主張は続く。
「いいか、魔王『サマ』だ。『サマ』も付けろよ!!」
亜矢は頭を上げると、深く溜め息をついた。
だが、そんな魔王は持ち前の男らしさとワイルドさで、クラスの女子のハートを掴んだ。
ウットリと魔王を見つめる女子もいれば、『ステキ!』と言い合う女子もいる。
元々、教育実習生の時から絶大な人気があったのだから、過熱するのは当然だ。
だが、皆は知らないのだ。魔王の正体を。
魔王オランは魔界の王。本当の意味で『魔王』なのだ。そして、コランの兄。
亜矢に惚れ込んでいる魔王は以前、亜矢を妃にしようと強引に迫ってきた。
ああ、もうこの学校に安全な場所はないのかも…と、絶望的な思いを巡らせる亜矢。
だが、この状況を重く見ているのは亜矢だけではない。
魔王の正体を知る者、グリアとリョウだ。
(チッ…ノコノコ人間界に来てんじゃねえよ)
敵意を向けるグリア。
(魔王をここまで動かすなんて、亜矢ちゃんはやっぱりすごいなあ)
何故か改めて感心するリョウ。
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