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ー午後3時 タイムリミットはあと6時間ー
力也の場合・2
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力也は頭を抱えていた。
今、自分の目の前にある道具を眺め。更にまた、頭を抱え込む。
(こんなもので…、どうにか出来るわけがねぇ。)
ホームセンターは人がいなかった。従業員が全く。ただ一人、若い男がいたが。その男は何の違和感も躊躇いもなく、平然と商品を持って去って行った。
力也も仕方なしに必要そうな物を探して持ち帰った。
何となく、ヒーローとは真逆の行動をしている自分に嫌悪感を持ちつつも、どうにか気持ちの切り替えをした。
余計にこの滅亡を何とか防がなくては。と、意気込んでみたものの。
いざ準備をしていると、不可能という言葉しか浮かんでこない。
現実が何度も何度も頭を過ぎる。
(要になるのは、これなんだ。)
視線の先に映るのは一つのバランスボール。
以前、ネットで購入したものだ。
このバランスボールは力也のお気に入りのトレーニング器具である。
何せ性能が素晴らしい。
弾力はしっかりあるのに、体全体を沈み込ませる吸収性。
一体どこの金持ちがいくらで購入したものなのか。
今までこんな新感覚のバランスボールを体験した事など無かった。
それがなぜか。フリマでたったの千円。
とんでもない幸運だった。
このバランスボールこそ、力也の閃きのきっかけとなっていた。
ただし、それは名案であるとはとても言えたものではないのだが…。
力也はその方法にかけるしかないと思っている。
どっちみち避けられないのだ。
ならば、自分なりのやれる事をやる。
それしかない。
力也の考えは至って単純だった。
きっと専門家達が聞けば全員が鼻で笑うだろう。
そんな稚拙な夢物語。
自分でもわかっているほどに。
それでも。
誰かが起こした些細な行動が、大きな何かをを動かすかもしれない。
隕石の落下地点は不幸中の幸いなのか、自宅の近くだった。
一瞬で消滅できるほどの距離。
(父ちゃんと母ちゃんには悪いけど。俺はヒーローになりたいんだ。)
テレビを見るとカウントダウンの表示が秒刻みで動く。中継で繋げているのであろう。隕石が落ちると予測されている場所。
きっと世界中にこの場所が映し出されているだろう。
これを撮影している人。これをテレビで流している人。最後まで報道しようとする気持ち。
それは、その人達にしか出来ない。彼らのやるべきことなんだ。
力也は先程までのマイナス思考を振り払う。
(良く知ってる場所だ。父ちゃんとキャッチボールした河川敷。ここで映画の感想をアイス食いながら話したんだ。俺のヒーローになりたいって話。父ちゃんだけが笑わずに聞いてくれてた)
だから、やるんだ。
ただの自己満足かもしれない。それでも。
力也は決意を改めると、シミュレーションを再確認する。
まず、今回の隕石の特徴。最大の問題点は、含まれている成分。
これは専門家達が成分分析をするのに時間が足りないところから、細かい危険因子までが解明されていない。つまりは未知数。
現在わかっているのは、高濃度の放射線の数値のみ。
サイズこそ大きくはないが、この高エネルギー物体がとんでもないミサイル弾となって宇宙から降ってくるのだ。それはそれは物凄いスピードをつけて…。
そして疑問となるのが、何かに触れた途端に爆発するという情報。その定義はどこまでのものなのか。例えば水に落ちた場合なら?
更にもしも、凄まじいスピードを殺すことができたなら?
スピードが生きた状態で水に落ちれば、爆発は免れたとしても津波は免れないだろう。
そして水底の何かに触れれば、やはり爆発も避けられない。
そもそも落下地点は水面の予想ではないのだが。
要するに、この二つの課題を見事クリアできることが必須の上での話。
だからこそ、のバカげた方法。
このバランスボールを使って、隕石の軌道を地面から水面へと変える。
あわよくば、スピードを殺す事も目的としている。
問題は、このバランスボールも『物質』であるということ。
隕石が触れた瞬間に爆発する可能性があるのだ。
というより、その可能性しか現状では考えられない。
そうなれば結局はそこで終わりだ。
自分の考えている方法は、あくまで賭けでしかない。そして、自分が出来る最大限の案。
ただ、もしも。
このバランスボールが隕石のスピードを吸収してくれたら?
軌道を変え、落下地点を変える事が出来たら?
状況は何かしら変わる。
何と浅はかで幼い。
だが、必ず実現させる。それだけを考えた。
(ダメ元、上等だ。)
力也はテレビの中継先を見据える。
その視線にもう迷いはない。
今、自分の目の前にある道具を眺め。更にまた、頭を抱え込む。
(こんなもので…、どうにか出来るわけがねぇ。)
ホームセンターは人がいなかった。従業員が全く。ただ一人、若い男がいたが。その男は何の違和感も躊躇いもなく、平然と商品を持って去って行った。
力也も仕方なしに必要そうな物を探して持ち帰った。
何となく、ヒーローとは真逆の行動をしている自分に嫌悪感を持ちつつも、どうにか気持ちの切り替えをした。
余計にこの滅亡を何とか防がなくては。と、意気込んでみたものの。
いざ準備をしていると、不可能という言葉しか浮かんでこない。
現実が何度も何度も頭を過ぎる。
(要になるのは、これなんだ。)
視線の先に映るのは一つのバランスボール。
以前、ネットで購入したものだ。
このバランスボールは力也のお気に入りのトレーニング器具である。
何せ性能が素晴らしい。
弾力はしっかりあるのに、体全体を沈み込ませる吸収性。
一体どこの金持ちがいくらで購入したものなのか。
今までこんな新感覚のバランスボールを体験した事など無かった。
それがなぜか。フリマでたったの千円。
とんでもない幸運だった。
このバランスボールこそ、力也の閃きのきっかけとなっていた。
ただし、それは名案であるとはとても言えたものではないのだが…。
力也はその方法にかけるしかないと思っている。
どっちみち避けられないのだ。
ならば、自分なりのやれる事をやる。
それしかない。
力也の考えは至って単純だった。
きっと専門家達が聞けば全員が鼻で笑うだろう。
そんな稚拙な夢物語。
自分でもわかっているほどに。
それでも。
誰かが起こした些細な行動が、大きな何かをを動かすかもしれない。
隕石の落下地点は不幸中の幸いなのか、自宅の近くだった。
一瞬で消滅できるほどの距離。
(父ちゃんと母ちゃんには悪いけど。俺はヒーローになりたいんだ。)
テレビを見るとカウントダウンの表示が秒刻みで動く。中継で繋げているのであろう。隕石が落ちると予測されている場所。
きっと世界中にこの場所が映し出されているだろう。
これを撮影している人。これをテレビで流している人。最後まで報道しようとする気持ち。
それは、その人達にしか出来ない。彼らのやるべきことなんだ。
力也は先程までのマイナス思考を振り払う。
(良く知ってる場所だ。父ちゃんとキャッチボールした河川敷。ここで映画の感想をアイス食いながら話したんだ。俺のヒーローになりたいって話。父ちゃんだけが笑わずに聞いてくれてた)
だから、やるんだ。
ただの自己満足かもしれない。それでも。
力也は決意を改めると、シミュレーションを再確認する。
まず、今回の隕石の特徴。最大の問題点は、含まれている成分。
これは専門家達が成分分析をするのに時間が足りないところから、細かい危険因子までが解明されていない。つまりは未知数。
現在わかっているのは、高濃度の放射線の数値のみ。
サイズこそ大きくはないが、この高エネルギー物体がとんでもないミサイル弾となって宇宙から降ってくるのだ。それはそれは物凄いスピードをつけて…。
そして疑問となるのが、何かに触れた途端に爆発するという情報。その定義はどこまでのものなのか。例えば水に落ちた場合なら?
更にもしも、凄まじいスピードを殺すことができたなら?
スピードが生きた状態で水に落ちれば、爆発は免れたとしても津波は免れないだろう。
そして水底の何かに触れれば、やはり爆発も避けられない。
そもそも落下地点は水面の予想ではないのだが。
要するに、この二つの課題を見事クリアできることが必須の上での話。
だからこそ、のバカげた方法。
このバランスボールを使って、隕石の軌道を地面から水面へと変える。
あわよくば、スピードを殺す事も目的としている。
問題は、このバランスボールも『物質』であるということ。
隕石が触れた瞬間に爆発する可能性があるのだ。
というより、その可能性しか現状では考えられない。
そうなれば結局はそこで終わりだ。
自分の考えている方法は、あくまで賭けでしかない。そして、自分が出来る最大限の案。
ただ、もしも。
このバランスボールが隕石のスピードを吸収してくれたら?
軌道を変え、落下地点を変える事が出来たら?
状況は何かしら変わる。
何と浅はかで幼い。
だが、必ず実現させる。それだけを考えた。
(ダメ元、上等だ。)
力也はテレビの中継先を見据える。
その視線にもう迷いはない。
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