【完結】○の奇妙なショートストーリーズ

MIA

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私が中学生にもなると、ネコはもうすっかり大人になっていた。

中学時代は辛い事もあった。思春期特有の傷もしっかり付いていたあの頃。
擦り減った心に寄り添うように隣にいてくれたネコ。

あの頃の私は、動物は人間よりも寿命が短い。という事実に苦しんでいた。
ネコは私よりも早く死んでしまうの?
そんなの耐えられない。
押し寄せる不安に眠れない毎日。
私は毎晩のようにネコに語りかける。

「お嫁さんに行くときは一緒に。子どもが産まれたら面倒見てね。」

本当は私よりも長く生きて欲しい。本気でそう願っていた。
でもそれは、きっと難しいのかもしれない。でも、でも…。
私はずっと一緒にいたいんだ。

ネコはいつだって喉をゴロゴロと鳴らすだけ。
それでも、願わずにいられない。私の精一杯の心の声。

私はネコの姿が見えないと途端に不安になった。
寝る時には一緒にいないと全く眠ることができなくなっていた。
きっと、その頃の自分は正常とは言い難い。私はネコへの依存からどんどん執着していった。

そんな歪んだ愛着も、思春期を通り過ぎ、高校。大学と成長するにつれ鳴りを潜めるようになる。

友達といるのが楽しい。
彼氏と過ごす時間がもっと欲しい。
そんな青春ありきたりな理由でネコとの時間は減っていく。

ある日の事。我が家に新しい猫がやってきた。2匹はとても仲が悪かった。
偏りだす家族の愛情。私と妹は変わらずネコへの愛があったけれど、きっとネコにとっては足りなかったのだろう。
何せ私はほとんど家にいなかった。

その頃のネコが何を思い、何を感じ、どんな気持ちでいたか。私には正直わからない。
ネコはいつだって私の帰りを待っていた。

苦しい時に側にいて寄り添ってくれたネコ。
そんなネコに、あの時の私は一体何をしていたのだろう。

命が短い。
あんなにも怯えていたのに…。
なぜそれを忘れてしまったの?
ネコは、きっと。寂しかった。
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