【完結】○の奇妙なショートストーリーズ

MIA

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ホラー

ストーカー

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○月○日
今日はママもパパも家にいなかった。一人でお留守番。そんな日はたまにあるけれど、何だか今日に限って嫌な予感がしていた。
その予感は大当たり。
あたしは知らない男に誘拐された。

○月○日
部屋に連れて来られて翌日。
昨日はあまりの恐怖で眠れなかった。何をされるのか。でも男はなぜか優しかった。
この家には一匹の痩せこけた黒い猫がいたが、男は猫の存在を無視している。
今日は寝れるかな…。

○月○日
猫はあたしには小さな救いだ。
触れているだけで安心するし、側にいてくれると眠ることができる。
真っ黒なその毛並みはとても美しい。
でも。男を見る時だけ猫の目は鋭く光るので、それだけは無性に怖かった。

○月○日
お家に帰りたい。ママもパパもきっと心配している。この男は優しいが時々物凄く怖い。猫を蹴り飛ばしたりする。何もしていなくても、突然。そしてあたしには、そんな時ほど機嫌でも取るかのように優しくしてくる。可哀想な猫。助けてあげられないかな。

○月○日
もう限界。帰りたいと言ったら初めて叩かれた。
怖い。怖い。ママ、パパ、助けて。

○月○日
男はまた優しくなった。あたしが泣かなければ、余計な事を言わなければ暴力はふるわない様だ。
男は猫をいたぶる。それを見るのは辛かった。猫を助けてあげられない。怖いのだ。
あたしは弱い。

○月○日
男がココにあたしを連れてきた理由を話し出した。
ずっと、あたしを知っていたらしい。でも、あたしは知らない。会ったこともない。
一目見た時からずっと好きだったと言う。それから何度も何度も家の前に来て、あたしを見ていたと。どうしても諦めきれなくて忘れられなくて…。だから誘拐?気持ち悪い。吐き気がする。

○月○日
ママ、パパ。何をしてるの?早くあたしを見つけ出して。

○月○日
今日の男は特に酷かった。猫の首輪を持って引きずり回すなんて…。どれだけの力だったのか、千切れた首輪が転がっている。この男がつけたであろう首輪。ボロボロになったそれを見つめる時の猫の目は、ちょっとだけ。なぜだか寂しそうだった。

○月○日
ココに来て何日たったのだろう。首輪がなくなった猫の首はすっかりはげていた。どのくらいココにいるのだろうか。毛のないその部分が、何となく時間の長さを物語って見えた。

○月○日
また男を怒らせてしまった。
猫を庇ったのが原因だ。男は何度も何度もあたしを叩いた。凄く痛かった。怖い。怖い。
もう痛いのは嫌。お願い。叩かないで。

○月○日
男は猫にご飯をあげなくなった。当て付けのように、あたしのご飯が豪華になった。
あたしは男の目が離れた時だけ、こっそりとご飯をあげる。バレるとどんな目に合うかわからない。だから、本当に少し。時々しかあげられない。ごめんね。

○月○日
猫がグッタリしている。なんで?ご飯が少なかったから?
嫌だよ。元気になって。ご飯、もっとあげられるように頑張るから。どうか元気になって。あたしの側にいて。

○月○日
鳴かなくなって、グッタリと動かなくなった猫。この弱り切った姿を見て、男は何を思うのか。
何も言わない。何もしない。
あたしは逃げずにココにいるから、お願い。猫を病院に連れて行ってあげて。助けて。
あなたの猫でしょう?

○月○日
猫が苦しんでいる。あたしはどうして良いのかわからず泣いていた。
男は猫を見ている。時々首を傾げながら、ただ眺めているだけ。その目には光がなく、まるで猫の毛のように真っ黒な目だった。そこに感情なんて無かった。

猫とお別れしたくない。独りにしないで。
次第に呼吸が弱まっていく猫。
虚ろな目で私の姿を捉えると口を開く。


「次はあんたの番だよ」


猫は死んだ。
男はどこかに行って、すぐに戻ってくる。
手に何かを持っている。
あれは…。

真新しい首輪。
黒猫がしていた首輪とお揃い。違うのは色だけ。

「真っ白な君にはピンクがお似合いだ。初めてのプレゼントだよ。喜んでくれるかな?」

もう逃げられない。
ママとパパには二度と会えない。

「やっとふたりきりになれたね」

次は…あたしだ。

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