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【番外編】29.僕の夢

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「あ~、彼の製作意欲に先駆けて、応援支援等は動画の投げ銭でお願いします!」
「えっ!? あ、あの?」
 創作意欲?
「あ、勿論強制ではありません、これはお気持ちですからね。彼のその"いつか"の夢の為に、俺も応援したいと思ってます」
「レン様・・・」
 レン様は満面の笑みだ。
「俺がね、数あるゲーム実況動画でね、黒ずきん氏のものを選んだのはね、本当にゲームを愛して止まないんだなって、そう思ったんだ。編集で誰もが見ても分かる動画づくり、彼なりの考察、雑学、違った視点から見たらどうなるのかの感想。それこそ本でも書けそうな流暢な言葉の文章能力。ゲームに対する知識が凄くって、全く興味のない俺が引きこまれたんだ、彼のバーチャルライバーとしての生き様をもっと見たい、知りたいと思って、今回、コラボを申し込みました」
 レレレレレレン様っ!?
「皆、最初、絶対に何で黒ずきん氏? と思った人が多かったと思いますけど、俺のこの、楽し気なゲーム実況を見て、聞いてくれて、分かってくれたと思います」
 しまった。
 涙が、う、嬉しくて、出て来てしまった。
「彼は本当はきっと、自分の頭に思い描いてるであろう自分のゲームを創りたいんじゃないかなって、彼の動画を見て来てそう思いました。このコラボしてる間にね、色々彼の人となりを拝見しました。え~、実に好青年です。えー、先日、コラボ中に、元王レディアンが現れたと思いますがなんと、その元王が、黒ずきん氏にゾッコン中です」
「っ!?」
 コメントがエーッ! と暴走中。
「そう、それも、黒ずきん氏がここに来てくれなかったら、レディアンとの縁が生まれなかったわけで。そこは、俺のおかげです、はい」
 思わず笑った。
「えー、出会いは突然あります。そして、出会いから思いがけない縁が、生まれます。その出会いとは、自分が行動するか否かで変わります。もしも、もしも黒ずきん氏がバーチャルライバーとして、世に動画を出していなければ、俺はゲームの楽しみを知らずに終わっていたかもしれない。もしも、黒ずきん氏がよくある平凡なゲーム動画だけアップしていたら、俺は彼に興味を持たなかったかもしれない。もしも」
 レン様が僕を見つめる。
「黒ずきん氏が、別の人生の道を歩いていたら、俺は一生、君とは会えなかった」
「・・・・・・」
 胸が熱くなった。涙が止まらない。
「これは、俺も含め、誰もがこれから、生きているうちは一生、起こり得ることです。たった些細なものでも、行動一つで運命は変わると思います。行動には、勇気が伴いますが、もしも、誰にも言えない夢があるのなら、こっそりでもいいので、まずは行動すべきだと思います。後悔も、喜びも、自分が行動しないと経験できない貴重なものです。そりゃぁ後悔はしたくはない。でも後悔こそが、自分の成長の糧だと思います。行動してからの後悔と、行動しない後悔。後者の方が大半が重く、苦しくなるでしょう。それは、年齢を重ねる度に重くなります。だって、時間は有限です。どうしても肉体には限界がありますから。昨今は、職業に色んな職種が増えたと思います。俺のエトも、いずれ王位を継ぐことになりますが、父親のように、好きなことをして貰いたいと思ってます。俺も毎日好きなようにやらさせてもらってね、今はエトをメイドさんに預けてゲームしてるしね?」
 そういうと、レン様は画面にエト様の写真を載せた。
「可愛いでしょう? 俺もまさか、王妃になるとは、こんな可愛い国宝級の子を産めるとは思ってなくてね」
 凄い、ちゃっかしエト様自慢。
「ねぇ、黒ずき・・・」
 レン様が僕を見て苦笑を浮かべた。
「やっだぁ、もぅ、可愛すぎ。皆、あぁ、見えないよねぇ? 黒ずきん氏、ただいま絶賛号泣中です」
「ごっ、号泣は、して、ません!」
「目、真っ赤だよ」
「っ!」
「でもね、この主人公の言う通り、世の中お金なんだよ。お金がないと好きなことができない。だから、皆、頑張って、働いて稼ぐんだ」
 ええええ・・・!?
「・・・レン様ぁ、そんな終わり方、ないっすよぉ」
「ぅええ? 何が?」
「折角レン様のいい語りだったのに、最後にお金なんてぇ・・・」
「何でっ!? このゲームの終わり方と上手くマッチしていいと思ったのに!」
「ミスマッチですぅ~」
「だって! 折角動画のオチを作ったのに!?」
 コメント欄が草で溢れている。
「うぅ、レン様、まだまだ勉強、しましょうね?」
「ふぐぐ」
 レン様に、勇気を貰った、気がする。
「っはぁ~、ちょっとお待ちを」
「ただいま、黒ずきん氏、嬉しい勘当の涙を拭いて、ティッシュで鼻を噛んでます」
「その実況はいりませんから!」
 ブビーッと鼻を噛む。
「えっと、あはは、まさかレン様に、僕の心の奥にあった野望を見透かされてしまうなんて、本当に思ってもみなかったです」
「ほらぁ~!」
「僕自身の動画でも話したことないのに」
「分かるよ」
「・・・っ」
「このままだと、ゲームと結婚しそうなので、俺としては、早く、レディアンと、生きてる人との結婚をして頂きたい、そう思っておりますえぇはい」
「ブッ!」
「だってそうでしょう? ねぇ? 皆もそう思わない? 仕事と結婚するのはいいけど、ゲームと結婚はちょっと、ねぇ?」
「聞き捨てなりません! 何で仕事はよくてゲームはダメなんですか?」
 ジト目で、レン様に凝視された。
「仕事って、まぁ、やるなら一つや二つぐらいじゃん?」
「? は、はぁまぁ・・・」
「でも、ゲームって、いっぱい、あるじゃん?」
「ま、まぁ、そうですね」
「それって、多数の子に手ぇ出してることじゃん? ハレムじゃん?」
「!!!」
「だから、うちのレディアンのハレムの子達の関係のこと、許してあげてね?」
 そういう考え方からのそういう謝罪っ!?
 コメント欄が、? で溢れている。
「だから、ゲームとの結婚は、黒ずきん氏にはできないわけ」
「・・・な、なるほど。そう、来ましたか」
「あ、ゲームが仕事ですからって屁理屈、通用しないからね? それじゃ最初のゲームと仕事の比較の話が本末転倒だから」
「ふぐ、ぬぬぬ・・・」
 やりおる。さすがはレン様、やりおる。
「と、いうわけで、近々俺の動画で、この黒ずきん氏の、レディアンとの交際動画をね、撮影しようかと思ってます!」
「ナァッ!? 聞いてませんそんなこと聞いてませんんん!」
「え? レディアンは是非にってさ」
 僕にメールを見せる。
「今さっきのメールぅ!?」
「そう、レディアンからのメール、読むね。俺と黒ずきん氏のリスナーの皆に。メッセージを、預かっておりますので読みます。ごほん」
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