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【番外編】11.お風呂事件
しおりを挟む♨カッポ~ン♨
幸せだ。
お風呂は好きだ。しかも足を伸ばして入れるお風呂に入ったことが無い。湯船に体を自由に浮かせて入れるなんて。
「ふぃ~・・・」
ガラッ!
「!?」
突然扉が開かれた。
「やはりな。湯船に入ったら教えろと言ったではないか」
ちぇっ。
もう少し独りで満喫したかったのに。
「顔に出ているぞ顔に」
「そ、そんなことないでしよ」
あ、噛んだ。
ふぃ~っと泳ぐ。
レディアンは適当に体を洗ってすぐにお風呂に入って来た。
「ちょっ、しっかり洗ってから入って来てくださいよ!?」
「いつもはしている。だが、今回は君がすぐに逃げてしまうからな」
ギクリ。
もう逃げる準備をしている。
が、じりじりとレディアンが距離を縮めても来る。
「逃げるから捕まえたくなるだろう」
「何でっ!?」
しまった。角に追い詰められた。
にやりと不遜の笑みが向けられる。
「な、何で? 何で僕なんですかっ!?」
「何でって? 股間のモノが反応したのだから、そういうことだろうよ」
「知らないよっ!?」
すぐ近くまでレディアンが・・・。
「!」
ポンッと頭に手が乗せられた。
「いきなり襲ったりしないよ」
「いきなり、じゃないなら襲うんですね」
「・・・・・・否定はしない」
「なっ!」
「でも、無理強いはしたくないから」
「当然です」
へにょりとまあるいお耳が下がる。
「・・・レンの鉄拳が怖い・・・」
「そっち!? そっちの理由っ!?」
一体何なんだっ!?
「レン様がお知り合いじゃ無かったら、僕は無理強いされてたってことですかっ!?」
「・・・・・・」
「そこは肯定してよ! 元王様でしょ!?」
「ぅ、うう~ん? だって、王様だったし、誘ったら皆喜んで脱いでくれたし」
このっ!? この熊人は!?
「うぅ~ん、君は一筋縄ではいかないなぁ」
あかん。ダメだこりゃ。
湯船から立つ。
「はぁ~・・・どうしたらいいのかなぁ?」
それを僕に聞くのかこの熊人は!
「エッチしただけならすぐ脱いでくれる方としてください!」
「あ、アーニャ」
「先に寝ます! おやすみなさい!」
「あ・・・」
超満面の笑みを向けてもう一度、言った。
「お、や、す、み、な、さ、い。レディアン」
真正面からじっくりと対峙した。
「ぅ、ぐ・・・」
のに、関わらず僕の目を見ないで何を見ているんだ?
「?」
何か、レディアンの様子がおかしい。
ゴクリと喉を鳴らすレディアン。
その視線は僕の・・・胸?
「・・・乳首ピンクグハッ!」
「っ!?」
膨大な鼻血が放出されるのを見た。
「なななななななななっ!?」
白目に、ぷかりと湯船に浮く元王。
じわりとお湯が真っ赤に染まる。
「嘘でしょ嘘でしょバートさぁぁぁんっ!」
早急に助けを呼んだ。
一体僕は、いや彼は何をしてるのだろう。
「いやぁこんなことは前代未聞で・・・」
さすがのバートさんも苦笑を浮かべている。
レディアンはバートさんに担がれ、自身のベットで寝ている。勿論、鼻にはティッシュを詰め込まれて。
呼吸・・・できてるのか? 口呼吸?
「僕も、鼻血が垂れるのは見ますけど、噴射するのは初めてみました」
こんなことって、ある? 鼻血の噴水だよ噴水。
「あの、バートさん」
「はい」
「失礼を承知でお伺いしたいのですが」
「はい、何でしょう」
「・・・・・・熊人は普段から発情しているのですか?」
こんなに獣人と接点を持ったことが無いから。レン様は熊人を性欲の塊だとかおっしゃてた。
「あぁいやお恥ずかしい。正確には、自分の気に入った雌を前にしていると、ですね。ポーラー種、しろくまに比べたら性欲は抑えられている方だと存じます」
「・・・そ、そですか・・・」
「・・・この家に」
「はい」
「誰かを連れて来られるのは初めてです」
「・・・・・・え?」
「熊人は、自分の住処に他者を入れるのは嫌いなのです。故に、この家にはわたくし以外の入室はありませんでした」
いやいやいやいや!
「そんなまさか、レン様に、ディラン王だって・・・」
バートさん否定の意、”頭を左右に振る”。
「同じ熊人なので暗黙の了解なのです。そしてレン様も、ディラン王に言われているのでしょう」
「ぇ、でもハレムさん達は・・・」
「ハレム様達は、別の土地のお屋敷にいらっしゃいます。一度もわたくしは彼彼女様達にお会いしたことがございません故」
「そ・・・そんな・・・」
すやすや眠る元王。
それってつまり、そういうことじゃん。
ほ、本気、ってこと?
「・・・何で僕? なんですか」
「さぁ、それはレディアン様だけが知り、感じ、思われたことですので」
「ごめんなさい、そうですよね」
にっこりとバートさんが微笑む。
「さ、もう夜も遅いですから。本日はゆっくりお休みください」
「・・・はい」
「おやすみなさい、アーニャ様」
「はい。おやすみなさい」
レディアンの部屋を後にして、用意してくれた客間へ向かった。
僕には広過ぎる豪華な部屋。
「天蓋付きベッドなんて初めてだ」
思い切りふかふかのベッドにダイブする。
「・・・・・・」
今日は色々あり過ぎて疲れた。
布団に入ると、すぐに睡魔に襲われた。
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