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【番外編】6.可愛いは鼻血
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段々と、物語が見えてきた。
大まかな内容は、この学園の理事長であるサリーが、亡くなった自分の娘を蘇らせようと禁断の儀式を行った。
その儀式はまだ終わってはいない。
その儀式の完成には千の命(花)が必要だった。
全校生徒の命では足りず、興味を持ってこの学園に侵入した者を贄とした。
それは今も続き、もうすぐでその儀式が完了を迎えるという。
あと一つの命で。
「俺(主人公)は死なないから!」
仲間が増えたけれど、どれも亡くなった生徒の”霊”で、仲間が増える度にその仲間が死んでしまうまでのエピソードを見なくてはならなくて、僕は感情移入して胸が傷んだ。
「こいつは回復要員、こいつは肉壁、こいつは遠距離、こいつは我が即戦力!」
しかし、そんな僕の心情の最中、レン様は着々とレベル上げをし、自分が戦いやすいパーティーをお組みになられていた。
実はもう配信時間も既に3時間と長引いている。
「レン様」
「ん?」
小声で配信時間について呟いた。
「そっかぁ、もうこんな時間か。ごめん皆、キリがいいから一度ここで終わって、いい判断ができるかもしれません」
「いい事言う~」
ちなみにあれからディラン王とエト王子が家の外で待ってらっしゃるのだ。もうエト王子のママ不足が限界に来ていると。無理もない。
「あぁ~楽しかった。皆見てくれてありがとう。待ったねぇ~」
「今日もありがとうございました。また次の配信、楽しみにしてくださいね。それでは」
「「ばいばい~い」」
二人で声を揃えて終わる。
ゲームを保存し、モニターを切った。
そして慌てて家を出た。
「すいません! 無事終わりましたので!」
だって! 待たせているのはあのしろくまのディラン王とその王子だぞ! 平謝りだ!
「本当にこんな時間まですいません! つい楽しくて、自分が時間配分をしなくてはいけないのに」
ふっとディラン王は優しい笑みを向けてくれた。
「君は真面目だなぁ。レンが楽しそうで、それが俺と、エトも嬉しいんだ。レンを誘ってくれてありがとう」
「いいいいえそんんんなあああありがたきここここ言葉でででです」
エト王子が僕をまじまじと見ている。
「申し訳ありません殿下。お母様をお返し致しますね」
「ぁぅ? きゃぁい!」
意味が通じているか分からないけれど、手足を広げて可愛くじたばったしている。はぁ~・・・その桃色の肉球に叩かれたい。
「黒ずき・・・じゃなかった、アーニャ」
レン様からお声がかかる。
「! はいっ」
「もうすぐ夕食の時間だし、うちで食べていかない?」
「えっ!? いやでも」
「ぁう、ぁーう」
「お? エトがアーニャさんの元に行きたいようだ」
ディラン王にぃ! 名前を呼ばれてしましましましまったぁ!
「ああああああ、あの陛下! どうぞわたくしなんぞ呼び捨てで構いませんので!」
「分かったよアーニャ。ほら」
「ぅえ、あ」
エト王子が僕の腕の中にいらっしゃる。まぁるい、潤んだ大きなお目目が僕を映す。
「エト、この子はアーニャって言うんだよ」
しろくま王様に名前も覚えられた上に呼び捨てにされるとか。ここは天国か。
「・・・あ、あ、にゃ?」
「はぅっ!」
心の声が口から零れてしまった。
「あっにゃ! あにゃー!」
ヤバい。この破壊力はヤバい。
「うんうん、そうだよエト・・・って、どしたのアーニャ」
「レン様、鼻血が出そうでふ」
「でしょー? 可愛すぎでしょー? どーお? アーニャもしろくま君、ツガイにどう? 紹介するよ~? ねぇディラン?」
「あぁそうだな・・・だが・・・」
歯切れが悪いように、ディラン王はちらりと後方に視線を向ける。
「「あ」」
レン様と声が重なった。
木の幹に隠れ切れていない、レディアンさんの姿があった。
大まかな内容は、この学園の理事長であるサリーが、亡くなった自分の娘を蘇らせようと禁断の儀式を行った。
その儀式はまだ終わってはいない。
その儀式の完成には千の命(花)が必要だった。
全校生徒の命では足りず、興味を持ってこの学園に侵入した者を贄とした。
それは今も続き、もうすぐでその儀式が完了を迎えるという。
あと一つの命で。
「俺(主人公)は死なないから!」
仲間が増えたけれど、どれも亡くなった生徒の”霊”で、仲間が増える度にその仲間が死んでしまうまでのエピソードを見なくてはならなくて、僕は感情移入して胸が傷んだ。
「こいつは回復要員、こいつは肉壁、こいつは遠距離、こいつは我が即戦力!」
しかし、そんな僕の心情の最中、レン様は着々とレベル上げをし、自分が戦いやすいパーティーをお組みになられていた。
実はもう配信時間も既に3時間と長引いている。
「レン様」
「ん?」
小声で配信時間について呟いた。
「そっかぁ、もうこんな時間か。ごめん皆、キリがいいから一度ここで終わって、いい判断ができるかもしれません」
「いい事言う~」
ちなみにあれからディラン王とエト王子が家の外で待ってらっしゃるのだ。もうエト王子のママ不足が限界に来ていると。無理もない。
「あぁ~楽しかった。皆見てくれてありがとう。待ったねぇ~」
「今日もありがとうございました。また次の配信、楽しみにしてくださいね。それでは」
「「ばいばい~い」」
二人で声を揃えて終わる。
ゲームを保存し、モニターを切った。
そして慌てて家を出た。
「すいません! 無事終わりましたので!」
だって! 待たせているのはあのしろくまのディラン王とその王子だぞ! 平謝りだ!
「本当にこんな時間まですいません! つい楽しくて、自分が時間配分をしなくてはいけないのに」
ふっとディラン王は優しい笑みを向けてくれた。
「君は真面目だなぁ。レンが楽しそうで、それが俺と、エトも嬉しいんだ。レンを誘ってくれてありがとう」
「いいいいえそんんんなあああありがたきここここ言葉でででです」
エト王子が僕をまじまじと見ている。
「申し訳ありません殿下。お母様をお返し致しますね」
「ぁぅ? きゃぁい!」
意味が通じているか分からないけれど、手足を広げて可愛くじたばったしている。はぁ~・・・その桃色の肉球に叩かれたい。
「黒ずき・・・じゃなかった、アーニャ」
レン様からお声がかかる。
「! はいっ」
「もうすぐ夕食の時間だし、うちで食べていかない?」
「えっ!? いやでも」
「ぁう、ぁーう」
「お? エトがアーニャさんの元に行きたいようだ」
ディラン王にぃ! 名前を呼ばれてしましましましまったぁ!
「ああああああ、あの陛下! どうぞわたくしなんぞ呼び捨てで構いませんので!」
「分かったよアーニャ。ほら」
「ぅえ、あ」
エト王子が僕の腕の中にいらっしゃる。まぁるい、潤んだ大きなお目目が僕を映す。
「エト、この子はアーニャって言うんだよ」
しろくま王様に名前も覚えられた上に呼び捨てにされるとか。ここは天国か。
「・・・あ、あ、にゃ?」
「はぅっ!」
心の声が口から零れてしまった。
「あっにゃ! あにゃー!」
ヤバい。この破壊力はヤバい。
「うんうん、そうだよエト・・・って、どしたのアーニャ」
「レン様、鼻血が出そうでふ」
「でしょー? 可愛すぎでしょー? どーお? アーニャもしろくま君、ツガイにどう? 紹介するよ~? ねぇディラン?」
「あぁそうだな・・・だが・・・」
歯切れが悪いように、ディラン王はちらりと後方に視線を向ける。
「「あ」」
レン様と声が重なった。
木の幹に隠れ切れていない、レディアンさんの姿があった。
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