上 下
11 / 38

【番外編】3.ホラーゲームに目覚めるレン氏

しおりを挟む
 ミルフィオリ~幽霊領域~
 千花学園と呼ばれた貴族の学園が舞台。
 三年前、沢山の生徒達の遺体が発見された。
 どれも奇妙なものばかりだった。
 皆、個々に頭に一本の花を咲かせて亡くなっていた。百合、薔薇、向日葵、パンジー、数多の種類の花を一つ、無残に脳から咲かせていたのだ。
 そして、この不可思議な事件に興味を持った者達がこの学園を訪れるが、誰一人、帰っては来ることは無かったそうだ。
 まるで、事件の解明を闇に消そうとしているかのように、今も尚その学園を覆い隠すがごとく草花が増殖し続けているそうだ。
 また数年の月日が経ち、その事件に立ち向かう、一人の霊媒師がいた。
 ついに、学園の秘密が明かされるのか!?


「やってるよ、絶対これ儀式的なものやってるよ?」
 レン様空気読んで下さい。
「レン様ぁ~!? まずはやってからそういう感想をですね」
 早速レン様がコントローラーを動かす。
「左スティックで移動、右スティック視点移動は定石ね。三人称視点、いいね。FPS苦手だからさぁ。あっ、懐中電灯はもうマストアイテムでしょうよ」
 前回もそうだが、レン様は怖いながらもドンドン進んでくれるタイプだ。しかもよく喋ってくれるので配信者向きである。
 というか、結構詳しいのでは?
「んもぅ~何ぃ? うわ、草ボーボーじゃん。いっつも思うんだけどさ、ホラーゲームってさ、何で日没行動なの? 明朝! 太陽がいる時にこういうとこ来なさいよ? 朝からごくろう様です~って、なんでこんな夜に来るの? 仕事終えてくるわけ? そんな疲れてんのに除霊パワー残ってるわけ?」
 レン様、よく喋る喋る。あぁ、コメント欄に草がいっぱい生えている。
 ふとカラスが飛び立った。
「きえっ!? なっ、カ~ラ~ス~! 空気読むなよほんとっ!? 視界悪くて急に出て来てもよく見えないから困るんだけど!」
 でもサクサク進むレン様。
「懐中電灯これ電池減るシステム? あぁ電池マーク減っとるやん! 除霊しなきゃいけないのに電池の残量も気にしないといけないとか! 先が思いやられるんだけど」
 突然のムービー。
「ぅわっ!? コントローラーブルブルしてんだけど。な、何急にムービータイムとか」
 そして、ムービー中に敵である幽霊が一体出現した。足が無いのに足音から始める謎の登場シーン。
「あっ、あぁ~結構はっきり幽霊って見えるんだ? この人・・・あ、清掃業者さんっぽい。巻き込まれて可哀想に・・・」
「レン様! 始まりますよ!」
 ヴィンヴインヴイィン!
 幽霊がチェーンソーを構え向かって来た。
「なぁんで幽霊はそんな凶器持ってんの!? 俺は!? 武器武器!」
 そして、主人公の除霊システムのチュートリアルが始まる。
「え? △で幽霊召喚?」
 レン様が△ボタンを押すと、主人公が右手を前にした。すると、ぶわっと一体の美女幽霊が召喚される。そして視点がその女幽霊視点に切り替わる。
「おおおおおたくだれ? この美女幽霊誰よ? 待って! シャベル持ってるんだけど! 先が尖ったシャベルの方が個人的に好きなんだけど、あ、〇で攻撃・・・ああっ! 殴ってる! こ、こんなか弱そうな女性幽霊があぁ! チェーンソーに勝てるんだシャベル!? 頭部殴って頭にある花を潰せばいいのか、コンボ!? 〇△△!」
 レン様が幽霊をシャベルで殴りコンボを決めていく。 
「ねぇ待って! こんなに幽霊頑張ってるのに主人公は高みの見物? 俺の後ろで何してんの? 何その『召喚!』ポーズでかっこよく時間を止めてんの? あんたも戦いなさいよ!?」
 主人公が攻撃を喰らうと攻撃できなくなりますというアラームが鳴り響く。
「うっそ! 主人公庇いながら? 電池の残量気にしながら?」
 シャベルが壊れた。
「木のシャベルが壊れた? 待って、嘘。シャベルの耐久値も気にしなきゃいけないの!? どうせ鉄、鋼、銀、金、最後はクリスタルのシャベルか!?」
「確かミスリル鉱石のものかと」
「んんん~っ! どんだけシャベルだよ!」
「あ、ダウンロードコンテンツを買っておきましたんで、シャベル以外でも殴れますよ」
「えっ!? エクスカリ」
「ありません」
「フライパ」
「ありません」
「如意ぼ」
「ありません」
「んんじゃぁ何っ!?」
「炎の魔法が付与された扇子、ロケットランジャー弾数制限付き、じょうろ・・・、あ、レベルが高いほど素手で殴って花を引きちぎれますよ。敏捷性のパラメーターが上がれば先制攻撃でカットインが入ります」
「パ、パパパパパラメーター? うっわ、敏捷性? 攻撃力、防御力とか! へ? 仲間が増えてパーティー組めるの? いやこんな危険な場所で生き残ってる人はあれだよ! 最後幽霊でしたーってオチだよ! ハッ、幽霊じゃなっ」
「レン様ぁーっ! やってみないと! ねぇっ!? コメントもネタバレ禁止でお願いしますね!」
 釘を刺しておかないとコメントでネタバレする人が出て来るので要注意だ。
「分かった、もうその時に考える。そう、ゲームは操作を体で覚えさせるんだ、考えるのはその後!」
「はい! 頑張ってレン様!」
 チュートリアルを終え、いざ本編へ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

初体験

nano ひにゃ
BL
23才性体験ゼロの好一朗が、友人のすすめで年上で優しい男と付き合い始める。

sugar sugar honey! 甘くとろける恋をしよう

乃木のき
BL
母親の再婚によってあまーい名前になってしまった「佐藤蜜」は入学式の日、担任に「おいしそうだね」と言われてしまった。 周防獅子という負けず劣らずの名前を持つ担任は、ガタイに似合わず甘党でおっとりしていて、そばにいると心地がいい。 初恋もまだな蜜だけど周防と初めての経験を通して恋を知っていく。 (これが恋っていうものなのか?) 人を好きになる苦しさを知った時、蜜は大人の階段を上り始める。 ピュアな男子高生と先生の甘々ラブストーリー。 ※エブリスタにて『sugar sugar honey』のタイトルで掲載されていた作品です。

騎士団長の秘密

さねうずる
BL
「俺は、ポラール殿を好いている」 「「「 なんて!?!?!?」」 無口無表情の騎士団長が好きなのは別騎士団のシロクマ獣人副団長 チャラシロクマ×イケメン騎士団長

同僚に密室に連れ込まれてイケナイ状況です

暗黒神ゼブラ
BL
今日僕は同僚にごはんに誘われました

獣人の里の仕置き小屋

真木
恋愛
ある狼獣人の里には、仕置き小屋というところがある。 獣人は愛情深く、その執着ゆえに伴侶が逃げ出すとき、獣人の夫が伴侶に仕置きをするところだ。 今夜もまた一人、里から出ようとして仕置き小屋に連れられてきた少女がいた。 仕置き小屋にあるものを見て、彼女は……。

Please me

金木犀
BL
男女の性別の他に、第二次性として認知されるようになったDomとSub 世界的に認知されるようになってから時間が経過しているにも関わらず、Subの蔑視が蔓延している社会で、例に違わずSubの山本彰人も強いトラウマを抱えて過ごしていた。 大学入学を機にトラウマ克服のために入会したサークルで出会ったDomの須田駿介に優しくされることで少しずつ心を開いていく。 トラウマを抱えて傷ついたSubとそんなSubを愛したいDomの、不器用で怖がりながらも少しずつ前を向いて過ごしていく物語。 *初投稿のため少しずつ更新していきます。 *お名前と登場キャラクターの設定を某知識集団の方達を参考にさせて頂いておりますが、内容には一切の関係ございません。 不快に思われた方がいらっしゃれば公開を改めさせていただきます。

次男は愛される

那野ユーリ
BL
ゴージャス美形の長男×自称平凡な次男 佐奈が小学三年の時に父親の再婚で出来た二人の兄弟。美しすぎる兄弟に挟まれながらも、佐奈は家族に愛され育つ。そんな佐奈が禁断の恋に悩む。 素敵すぎる表紙は〝fum☆様〟から頂きました♡ 無断転載は厳禁です。 【タイトル横の※印は性描写が入ります。18歳未満の方の閲覧はご遠慮下さい。】

ハイスペックストーカーに追われています

たかつきよしき
BL
祐樹は美少女顔負けの美貌で、朝の通勤ラッシュアワーを、女性専用車両に乗ることで回避していた。しかし、そんなことをしたバチなのか、ハイスペック男子の昌磨に一目惚れされて求愛をうける。男に告白されるなんて、冗談じゃねぇ!!と思ったが、この昌磨という男なかなかのハイスペック。利用できる!と、判断して、近づいたのが失敗の始まり。とある切っ掛けで、男だとバラしても昌磨の愛は諦めることを知らず、ハイスペックぶりをフルに活用して迫ってくる!! と言うタイトル通りの内容。前半は笑ってもらえたらなぁと言う気持ちで、後半はシリアスにBLらしく萌えると感じて頂けるように書きました。 完結しました。

処理中です...