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第六章
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【六】
チリリリリリリ。
いつもの時計のベルが鳴り響き、鬼神巫女様に使える俺達、鬼巫子は早速起きて、布団を片づける。
「今日は十年に一度のあちらの領土との宴、皆、忙しくなるよ~!」
「はーいっ!」
俺が鬼巫子になった理由、それはいい功績を認められると二十歳になったら、獣人領土とヒト族の領土に一週間の旅ができる権利を与えられるからだ。
「リョウ」
「はい先生」
「鬼神巫子様より、作った料理を宴に持って行く係の任命が下ったよ」
「えっ!? いいんですかっ!?」
料理班はただ作るだけなのに、宴に足を踏み入れることが許されるなんて、何と言う奇跡だ。
「あぁ、きちんと清めて、相手がどんな存在か、見て会話して学んで行きなさい」
「ははははははいっ! ありがとうございます先生!」
浮足立ってしまう。
相手側がもし自分に興味を持って頂ければ、話しかけられた際、お話が許される。
「きちんとあちらの言葉をマスターしているおまえが適任だったというだけだ」
頑張ったかいがあった。
「はーい皆、しっかり鬼神巫子様の恵み、桃を食べなさーい」
「はーい」
なんでもこの桃は健康な体作りをしてくれる言わばお薬みたいなものらしい。
しっかり一日一個を食べる。
加え、繁殖能力を高くさせる効果のあるこの桃は、いざつがって子供を身籠る時にも効果がいいらしい。
「よし」
あちらの領土の人達は野菜が好きと言うので、俺の畑の自家製の野菜をふんだんに取り入れよう。上級料理士まで昇りつめると、宴の対一人用の料理が全て任される。
「おかわり用も作っておこう」
それから数刻して、周囲が賑やかになった。
「うっわぁ」
「もふもふしてるね」
「ヒト族は僕達と変わらないね」
「わっ! 見て! 凄いしろいもふもふ!」
俺は胸を打たれた。
しろきもふもふがぽてぽてと歩いているではないか。
碧い瞳に黄金の腰布。
何故だか目が離せなかった。
ハッ!
慌てて料理を増やした。
領土王ともう一人いる。本来なら領土王だけだけど、もう一人参加することがあるなんて。
俺の料理をあの方、しろきもふもふ様に食べて頂きたい。
客人が着席し、会食の柏手が鳴った。
「っ!」
自分でも驚くくらいの速さでお盆を運んだ。
まずはしろくまの熊人領土王様からだ。
「し、失礼致します」
凄く緊張する。
くっふぅ! 間近で見ると艶々してもっふもふの毛並みだ。肉球もぷるんとしてそう!
「あぁ、すまないね。その、飛び入りで息子が来たんだが・・・」
俺は王とそのご子息に会釈し微笑んだ。
「はい、殿下様の分も準備しております、少しお待ちください」
「あぁ、良かった。なぁディラン」
「あぁ、無理を言ってすまない」
可愛いいいいいいいいいいいいいい!
俺より大きいけど、顔がまだ陛下に比べて幼いのが分かるーっ!
二人分の料理をお出しして、献立の説明をした。
「こちら右手から、小鉢にございますのはぬか漬というお漬物です。三か月ぬかに入れた自家製のきゅうりと大根と人参ですよ」
「・・・ほぅ~、ってこらディラ!」
ご子息が既に食べていた。
「! 美味しい! な、何だこれは!」
「ふふ、有難き幸せです・・・じゅる」
んなぁぁぁぁぁ君が美味しいそうだよ! やっば、涎をしまわないと。
「あの、この瓶はなんだい?」
「はい、こちらは瓶サラダ、そのままですが。瓶の底に本日はゴマドレシングと味噌を混ぜたものがありまして、食べる時に瓶を逆さにして振っ・・・」
殿下がもうブンブンと振っておられた。可愛いいいいいいいいいいっ!!
「これをこの空き皿にぶちまけていい?」
「はい殿下。青キャベツと秋蜜柑と紫リンゴのカットしたものなど、今日は野菜と果物を織り交ぜてみました」
殿下がシャリシャリと、しろいお口をドレッシングで汚されているのが可愛すぎるあぁ俺も汚され・・・えふんっ。
「・・・うぅむ、これも美味い、美味だ。こんなものがこの島にあるとは」
「こちらが海老豆腐、十三種類の雑穀米釜飯、こちらは特製の合わせ味噌汁に、野菜の天ぷらにございます、おかわりございま」
「おかわりだ! これとこれとこれ」
「はい殿下。すぐにお持ちします」
「悪いね、頼むよ」
「はい」
はぁ、王の写真、隠れて撮っちゃダメかななぁ。殿下もすこぶるカッコい可愛くてらっしゃる。
会食も無事に終わり、食器を下げていると、ぽむっと俺の肩に感じたことない、硬いようででも柔らかい何かが乗った。
はわわわこっここここれはははははは肉球ぅぅぅぅ!
「殿下!」
「貴殿の料理、本当に美味なものだった、礼を言おう」
「ぃいいいえそんな! 喜んで頂けて」
何だろう。凄く胸がドキドキする。
「・・・顔が赤いぞ、熱でもあるのか?」
「だっ、大丈夫です殿下! すいません殿下に見惚れてしまっただけですからあはは!」
ってぇ何を言ってる俺!
「・・・夕刻、おれの部屋に来い」
「え?」
「美味しいデザートを持って来て欲しい」
「! 畏まりました。殿下は何の果物がお好きですか?」
殿下は口をもごもごとさせる。
はぁはぁはぁ! あむあむされたい。耳がピルピルしてるーっ! いやあむむしたいぃ!
「・・・蜂蜜が好き」
「はい、では蜂蜜のデザートをお持ちしますね」
「ん、待ってる」
あぁ、ぽてぽてのお尻にそのちいさま真ん丸な尻尾は何ですかぁ!? 食べていいんですかっ!?
ふとドンッと背中に誰かがぶつかってきた。
「いっ、ノイカ!?」
「ふふふ~聞いちゃった。夜伽に呼ばれたんだぁおめでとう~」
「よと・・・」
ボッと顔が熱くなった。
「いーじゃん、処女を貰って貰えて。獣人と交尾したって子供はできないし、お互い気持ち良くなるためのセックスだし」
「言い方っ! 言い方な!? べべべ別にデザートお持ちするだけで夜伽は・・・ごにょごにょ」
嘘。俺に興味を持ってくれたのかな、だったら嬉しい。
「鬼と獣人の管理神が違うから、本当は交わりは許されないはずだけど。鬼神巫子様もよく許したよねぇ」
鬼神巫子様はお酒の瓶をブンブン振り回している。
「・・・ただ、お酒を好きな者同士で飲みたいだけなんじゃないかな・・・」
「そうだわ」
俺達は頷いた。
直に夕刻になり、蜂蜜たっぷりの熱々パンケーキアイスクリーム添えを持って行った。
殿下の部屋をノックする。
「殿下、デザートをお持ちしました」
ガチャっと開いて、殿下直々に俺を迎え入れてくれさった。
「入れ」
「失礼します」
テーブルにデザートを置いた。
「殿下、熱々のうつにお召し上がりくださいね。パンケーキと、オレンジジュースです」
「・・・うん」
あれ? 何だろ。なんかソワソワしてる気がする。
殿下は相変わらずはふはふと美味しそうに食べてくれた。こうやって美味しそうに食べて貰えるのが凄く嬉しい。
「・・・そんなに見ないで貰えるか」
「! す、すいません可愛くて、はっ、いえその嬉しくて」
カチャリと、食べ終わったホォークとナイフの音がした。
「・・・あの、さ」
「あ、片づけますね」
ふと、殿下が俺の手を取った。
「誘い方が、分からないんだけど」
「?」
誘い方?
殿下が俯いてもじもじと、可愛らしくされる。
「・・・デザート、よ、夜のデザート、君が、いいなぁって、その・・・」
雷が落ちた。
よ、と、ぎーっ!
「で、殿下、あの、俺、処女、ですので、そ、それでも、よろしければその・・・」
「しょっ!」
まさか、本当に夜伽をして貰えるとは思ってなかった。でも念の為、セクシーな衣装と下着を着て来て良かったぁ。
「・・・ベッド、行こうか」
「・・・はい」
ベッドに座ると早々に殿下が謝罪して来た。
「ごめん、俺達しろくま、ポーラー種は下賎な話、勃起した相手としか交尾しないんだ」
「ぼっ」
そのお口からそんなお言葉が!
「ポーラーは、気にいった相手に中々出会えなくて、よく不能だとか、獣人界隈では人気が無いんだ」
「ふのっ」
淡泊なのか!?
「でも、ほら」
「っ!」
ひぃっ!
殿下が重そうな金属の腰布を取ると、ブルンッとそびえ立つ凶器が顔を出した。
「だけどほら、相手を見つけるとずっと発情してしまうから、この腰布で勃起を抑えてるんだ」
「・・・零か百か、みたいですね」
俺はまじまじと凶器を見つめた。
「その、初めて、なので、手解き、お願いしてもいいですか?」
「え、してくれるの?」
「よろしくお願いします」
俺は言われた通りに、舌を殿下の愛しい凶器に這わせて、亀頭を口に含み、舐めとった。
大きくて、口に入れ切ることはできない、だけど一生懸命舐めた。
「んんっ!? んあぁ、で、んか?」
「軟膏だよ、君のここ、傷つけたくないからね」
俺のお尻に一瞬冷たさを感じたが、ぬくぬくと動かさるうちに、次第に殿下の指を感じ取ることができた。
「あぅ!? あ? や、そこ」
殿下が俺のある一点を付いた。
「ここ?」
「あっ、あ、あ、あ、あ、だめ、あっ!」
殿下より先に達してしまった。
「ふぁ、あ、ごめ、な、さい・・・んっ」
「気持ちいいなら良かった。ほぐれたかな」
「あ・・・」
仰向けにされ、両脚を左右に大きく開かされた。俺のペニスに、殿下の滾る凶器が擦り合わされる。
「これ、入れて、いいよね」
殿下の目が、ギラギラと、獲物を前にしてるように。
「いれて、くだ、さ、あぁぁぁっ!」
蕾が押し広げられた。圧迫感に犯される。
「キツ・・・、アァ・・・ウゥ・・・」
「あ、あぁぁぁぁ、あぅ・・・ひぁぁぁ」
どんどん中に押し込まれていく。お腹が熱い、中で、熱いものが突き刺さっている。
「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ・・・」
「あんっ、あっ、あ、あ、ぃあっ、あんっ」
肉棒が、俺の中を行き来してる。膣が、殿下の肉棒を締め付けて逃さないよう必死だ。
「でん、かぁ・・・あむっ、んんっ」
深く口づけをしてくれた。長い厚い舌が俺の口腔を弄る。
汗ばむもふもふに抱きついた。密着すると、よりお腹にあるものの凶悪さを実感する。
「あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、あぁぁ」
「フッ、く、フッフッフッフッ」
重く圧し掛かる殿下の息が荒くなってきた。俺の中を、奥をズンズンと突いてくる。
「あ、あ、あ、あ、あ、ああああああ」
来る。気持ちいいのが来る。
中で殿下の凶器が膨張し、本気で腰を振り打ち付けて来た。
「だすだすだすグァァァァァァァッ!」
「ふぁぁぁぁぁぁぁぁああああああ」
激しい律動に叫ぶことしか出来なかった。
「グウッ!」
「んあっ!」
最高の快感絶頂に、腰が跳ねた。
「あぅ」
ドシュッ。中で激しい濁流が注がれた。
「あんあんあんあんあぁぁぁぁ」
痙攣する俺の体に容赦なく圧し掛かり、殿下は射精しながら腰を打ち付けた。
「アァ~・・・止まらねぇ」
「しゅ、ご、ぃ・・・あぁ・・・」
断続的に繰り返される射精。ブシャブシャと熱い粘着物を何度も注がれているのが分かる。
これが、セックス。
俺の中で、何かが切れた。
「・・・殿下・・・」
「・・・もっとだ・・・」
「・・・・はい」
俺は殿下に跨り、上で大きく腰を振った。
「んあぁ、あぁ、あぁ、あ、あ、あ、あ」
殿下も俺も腰を掴んで離さず、俺の李同に合わせて腰を浮かせ、凶器を突き上げてくれる。
「でんか、でんか、すき、すっき、あぁ」
「あぁ、おれ、もだ、はらめ、はらめ」
「んくあぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
ゴンゴンと激しく揺さぶられた。
孕みたい、孕みたい・・・。
「っあっ・・・ぁ・・・」
俺の中で熱い子種が注がれる。甘い快感が体中、脳内まで巡り回る。
「ふぁ、あぅ、ひぁ、あ、あ、あ、あ」
もうおかしくなる。
まだ射精が終わらない止まらない、穿ちが止まない。気持ちいしか来ない。
「はらめはらめはらめはらめ・・・」
呪文のように耳を打つ。
もう一つに溶けてしまえばいい。
「・・・・・・」
この気持ちは、何?
こんなの、俺、じゃない。
「・・・ぅ・・・っく」
怖い。
自分じゃない何かが俺を勝手に動かす。
能動的に。
衝動的に。
「・・・ぃ、こ、わ、ぃ、たす、けて」
急に、部屋が静になった、気がした。
「・・・すまない」
ぼやける視界に、うるうると心配そうに見つめてくれる小さな碧い瞳があった。俺は泣きじゃくっていたようだ。瞬くとぼろぼろと涙が溢れ零れた。
「・・・ごめんな」
殿下は俺の涙を掬うと、深呼吸した。
「・・・一旦、落ち着こうか」
「ぁ、んっ」
殿下は俺の中から抜けると、よいしょ、ともふもふの膝枕をしてくれた。
「っはぁ~、理性が飛ぶとこうなるんだって、初めて思い知らされた、こんなことは初めてだ」
「・・・夜伽って、こういうものじゃないんですか?」
「いや、もっと、楽観的に、ただ快楽を楽しむだけだよ。・・・今の、おれ達の、こ、れは本気の交尾に近いんじゃないかな? 多分、おれも、こんな誰かを孕ませたい一心で衝動的になったのは初めてだから」
殿下も、訳が分からずなっていたってことだろうか。
殿下の優しいむぬむにの手が、俺の頬を撫でる。
「怖がらせてごめん。初めてがいきなり獣人のものは、トラウマ級だろう、本当にすまない。痛かったろう?」
「・・・軟膏でそこまで痛いというよりかは異物感が・・・。あっ、でも、最初大きい方が、次ヒトのものなら怖くなくなりますから・・・」
殿下は眉根を寄せた。
「う、うぅ~ん、それはそれで雄側が悲しいような・・・」
「・・・? そうなんですか?」
沈黙が流れた。心地よい風が窓から送られた。
「ふーっ。あ、話をしよう。って自己紹介もまだだったね。おれはディラン・ボワーズ。熊人族のしろくま種だよ。仲間が少ないから、親父は優秀な母体を探してる。ここへはわざと連れて来られたんだ」
「・・・母体?」
「そう、強いしろくまの子を何人も産んでくれる雌だよ。しろくま種は絶滅危惧種になったからさ。ヒト族の母さんが死んで、親父は種の存続の全ておれに乗せて来てるんだよ。はぁ、正直かったるい。どんなにいい雌でも、愛がなきゃ、すっごく好きじゃなきゃ子種も出ないってのに」
ふふ、思わず笑ってしまった。
「・・・殿下は大変ですね」
「・・・殿下は嫌だ。ディラ、そう呼んで欲しいな。君の名前は?」
「俺はリョウ・リンドウです。鬼神巫子様の直系の鬼子で、巫子様曰く、希少な先祖返りだそうです」
「・・・へぇ、先祖返り・・・」
「・・・だから、おれも鬼人族の子を産まないといけないんです。本当は、島の外に出て自由になりたいんですけど・・・ふふ、殿下、じゃなかった、ディラと境遇が似てますね」
「・・・そうかぁ~、お互い苦労するなぁ」
「うん、本当に、ふふ」
沈黙が続く。けれど、心地が良かった。
「・・・似た者同士、くっついちゃおっか」
「え?」
「少なくとも、おれはもっと君を知りたいし、外の世界に連れて行ってあげたい。あっちじゃマルチクリエイターやってて、君を見てると、今でも色んなアイデアが浮かんでる」
まるちなんちゃらは分からないけど、ディラは零から何かを生み出す仕事をしているらしい。見てみたい。
「・・・でも、知ってますよね? 俺達は作った神が違うから、交わっても子を成すことはできないって。俺はできるならしろくまを沢山産む自信はあります、産みたい。でも・・・」
お腹に触れた。ここにある子宮は獣人には効果がないのだ。
「そんなの探求してみないと分からないだろ? 最初から諦めてたらダメだ。おれは今からでも調べたい」
「前向き、ですね」
もんずとお尻を掴まれた。
「ん~、だけど、まずは君を食べたいなぁ、なぁんて。ペニスがはち切れそうなんだ」
「ふふ、エッチなくまさんだなぁ」
「しろくまは普段性欲皆無なんだよ? だけどこう気に入った子がいるとその反動、性欲の振れ幅がビンビンに」
俺はまたディラに跨った。
「ん、ぁ・・・っしょ・・・んっ」
凶器を俺の中に誘って食べた。
「・・・君は、興奮すると、そうやって角が出て、髪色が桃色になるのか・・・」
「・・・えっ?」
本当だ。角が出ちゃってる、髪が、いつもの栗色じゃななくなってる!?
でも、先ほどの不安が、怖いのは無くなった。腰が勝手に揺れて、ディラを包み込む。
「ふぁ、あ、きも、ちぃ。ディラ、は?」
「・・・あぁ、最高だよ。君は? もう、怖くない? 大丈夫?」
優しい。優しくて可愛いしろくまさん。
「うん、このまま、俺を食べて? しろくまさん」
凄く、そこからのエッチは気持ち良くて、ずっとディラにくっついていた。何度も絶頂に気を失い、目が覚めてはまた快楽に溺れて・・・。
心地よい風が、懐かしい風の香りが鼻をかすめた。
「・・・・・・」
重い瞼を開けた。
あぁ、見慣れた天井だ。ここで、鬼子として料理の修業を積んだんだ。いつか外の世界に出る為に。
手がぬくい。そして、温かい寝息が聞こえる。
「・・・!」
ディラがいた。俺の手を握り、ずっと側に居てくれたのか。
「・・・ディラ」
すぐにディラのまぁるいお耳がヒクっと動いた。碧い瞳が俺を映す。
「! リョウ!」
「ぐぇ」
思い切り抱きつかれた。
「ディラ、苦しいよ」
「! ・・・その呼び方・・・」
俺は微笑んだ。
「・・・思い出したんだ。俺が鬼子で初めてディラに出会ったことも」
「・・・そうか、そうか!」
昔も今も、あの気持ちは変わらない。
「ディラ」
「あぁ」
ディラの碧い瞳を真っ直ぐ見つめた。
「俺、昔も今も、ディラと家族になりたい」
「!」
あの宴で、兎人、獅子人族、猫人族、虎人族、狼人族や人魚族、蝙蝠族・・・。沢山の種族がいた中で、俺はディラしか見えてなかった。
「初めて宴に参加して、俺、あの獣人族の中で、もふもふのしろくまさんにしか目がいかなかったんだ。ディラを見た時、ディラの世界に引き込まれたみたいに、俺の世界がディラ一色になったんだ」
この気持ちを伝える言葉は。
「一目惚れしたんだ。一人の存在として。鬼子じゃない、俺という存在がディラを欲したんだ。だから、俺も諦め・・・たくない」
感極まって、涙が出てきた。
「・・・あの時は本能、衝動的にディラを求めたけど、今は、ちゃんとディラが好きで求めてるよ? だから、だからディラと、一緒に・・・」
「リョウっ!」
「!」
ぼふんっと、温かいふわふわのしろいもふもふに包まれた。
「あぁ、こんなに幸せなことはない。君を愛してる、あの時からずっと。記憶が無くても君はおれを好きだと言ってくれた」
「・・・うぅ、それはディラが俺を見つてくれたから・・・」
「ありがとう」
中からも外からも温かいものが込み上げてくる。これは、これは何?
「ありがとうリョウ。諦めないでくれて」
「・・・っ、ふっ、・・・ぅ」
折角のもふもふを俺の涙で濡らしてしまう。
「・・・うぅ、ずっとこうしていたい。もふもふに包まれて眠りたい」
ディラの笑い声が凄く穏やかだ。
「はは、じゃぁ家に帰ったらこれから子作り、頑張って貰わないと。覚えてるかな、しろくまの射精は長いからね」
顔が熱い。そうだった。でもあのしろくまの姿でして貰えるなら。
「頑張るのが、嫁の勤めだろ」
ぱぁっと顔を喜ばせると、最高潮にまぁるいお耳がピルピルマックス。振動で伝わるけど、多分、お尻の尻尾もピルってる。
「ふふ、可愛い旦那様だよほんと」
「おれを可愛いというのは君だけだよ」
「・・・俺、記憶が無くても、料理、覚えたんだな」
「ぬか漬けに瓶サラダ。今でも覚えてる。いやぁ胃袋を掴まれたね。娼館で食べたぬか漬けの味で、君が俺の探すリョウだと確信した。随分大人びて十分エチエチだったな」
「失礼な、ディラに教わるまで、エチエチなこと・・・言葉は飛び交ってたから知ってたけど、場数と実績は皆無だよ!?」
「む、皆無じゃなきゃ困る。君を汚していいのはおれだけだ」
「・・・何ソレ助平」
「君専用だよ」
この後、医者に見て貰い、異常なしということでディランが安心していた。ディラン曰く、あの扇子から出る光線を見るのは二度目で、その全部を俺が受けているものだから心配で仕方がないらしい。
「あれは鬼人様の一種の”術”になるもので、呪いやまじないと言った”呪”ではないので大丈夫、影響や後遺症はありません」
「・・・むむ、そう言い聞かせようとしてないか」
美人医師の言葉。いつもならすぐに信じるのに。ディランは眉根を寄せて、俺を片腕に抱き留めている。
「ふふ、ちなみに私は外から来たヒト族ですから。何も鬼神様に忠誠を誓っているわけではありませんよ」
「!? 何!?」
白衣に、綺麗なすらっとした網タイツのおみ足を組み直し、黒髪で翡翠色の変わった色をした瞳をお持ちの美人女医さんは微笑んだ。
「私はヒト族のキョウコ・イツキ、と申します。鬼人に興味がありまして、その研究をヒト・獣医学から見て行っているのです。この瞳の色は、樹の女神の子孫の証なのですよ。これなら、納得して頂けますか?」
「・・・え?」
そっか。俺が鬼神巫子の子孫なら、そりゃぁ樹の女神の子孫もいるのか、なるほど。
「何だとっ!?」
びっくりした。隣でディランが吠えた。
「ならば、貴方なら、鬼人と獣人が子を成せる方法を知ってるのか!?」
「・・・既に研究は進めています。それで悩んでいる獣人王は貴方だけではないということですね」
「! その種族は!?」
「・・・獅子人族王、ガジュラ・ウォン。確か、御親友、でしたか?」
「!? そんな、いや、あいつはだって、テニィと・・・。え? つまり、テニィは・・・」
え、まさか。
キョウコさんが頷く。
「えぇ、テニィさんも鬼人族です。まぁ、彼は・・・ガジュラ王に気に入られて誘拐されたんですけど。その、まぁ鬼神様の怒りを抑える為にこの鬼宮島に恵をもたらすことを条件に、上手く収まりましたけれども」
誘拐。やりおるな獅子人王は。
「・・・誘拐か、その手があったか・・・」
「お馬鹿。穏便に行こうよそういうのは」
「今現在お教えできることは、鬼人の子宮は異種族の精子を受け入れないということです。それでも受け入れて貰う為に交尾は進めますが、恐らくヒト族側の受胎の実を改良すれば受精できる、というのが現状の推測です」
受胎の実。あれは神社で手に入ると言われているけれど、実際どういうものか分からないほどの情報が少ない。
「最近非正規ではない受胎の実なるものが出回っているようですがね」
「偽の受胎の実・・・か」
「なんでも、どんな種族でも交尾をすれば孕ませてしまうという噂があります」
ディランはガッツポーズをした。
「よし、買おう」
「おっばか! それはそれで怖いだろ、副作用なりなんなりあるかもよ!」
「・・・なんだガジュラのやつ、一言相談してくれればいいのに」
「いや俺がまさか鬼人だとは思ってないんじゃない? テニィさんにも何も言われなかったし・・・。俺、記憶が無かったとはいえど、鬼味が足りなかったんだな・・・」
「おにみってなんだよそれ」
ふとキョウコさんが何かを差し出す。
「・・・? これは?」
ディランが受け取ったのは、翡翠色の勾玉だった。
「私との通信手段です。念じて頂ければ繋がります。あとはここへの島入りを許された証でもあります。・・・これは、鬼神巫子様より貴方にと、代わりに承りました」
「・・・そうか」
「・・・鬼神巫子も、ただ純粋に、可愛い子達が外の世界に行ってしまうのが悲しいのです。テニィに続き、先祖返りのリョウ様まで・・・」
「・・・あぁ、悪いと思ってるから、リョウの記憶を消したのも・・・ゆる、した」
唇を物凄い噛みしめるディラン。
「神じゃなかったら殺してたな・・・」
「物騒だろディラン!?」
ふとキョウコさんが俺の手を取った。
「存外、子供ができないっていう先入観、思い込みの力って大きんですよ?」
「・・・は、はい」
「生物は本来皆、強い血を残そうとします。中でも鬼は自分達が一番強いという認識があります。何故だか分かりますか?」
「・・・張り合う種族がいなかったから?」
「そう。女神同士の約束ごとで、あまり他種族に干渉しないようにの取り決めもあって、鬼族はずっと孤独の種族だった。鬼神巫子の要望でこの島で行われるようになった定例種族会議も、鬼族という存在がこの土地にいるんだ、古参だぞという牽制、アピールのようなものでした」
「・・・それが、いい意味で裏目に出たな」
「はい。そこで、鬼人である自分達より、より強い”雄”を見つけてしまった。鬼も強い者に魅かれ、子を残そうとする。自分と違う種族に猶更魅かれ、本能が強くなる」
そう、なのか。俺がディランに魅かれたのは、一目惚れしたのは、あの衝動は。
「フッ。悪いな、リョウを魅了しちまっげふっ」
「・・・・・・」
どすっとわき腹を肘内してやった。
「非正規の受胎の実が何故人気なのか」
え。そんな人気なの?
「正規の受胎の実の情報の開示が全く無い。それは何故か。そもそも妊娠できるという暗示任せの、ただの実、だからです。そんなことがバレてしまえば女神や神社への信仰な無くなり、世界が滅んでしまう」
「そ、そうなの!? ってか俺にそんなこと話して良かったんですか!?」
「問題ない。おれはとうの昔に知っている」
「いや教えてよ!? え、だから神社にさっさと行かなかったんだ!?」
「そういうことだ。暗示任せなどそんな運に頼ることなどしたくはない。百発百中確実に孕ませるものの方が効率がいい」
このしろくまは。
「ですが、先ほど申しましたように、暗示、思い込みの力で現に実を食べて妊娠している事実がありますからね。では、非正規の受胎の実は、ほぼ確実に妊娠できる。それは何故か」
もしも、もしも、鬼が関係しているのだとしたら・・・。
「・・・桃、ですか。俺達鬼人がよく食べてるあの桃」
「そうです。何故鬼神巫子が堂々と鬼族の存在を公表しないのか」
「! なるほど、桃か! 噂には聞いてたがそりゃぁ桃が狙われるわな。殺し合いもあり得る、鬼族滅亡の危機だ。だから隠密に、信用できる種族としか交流させなかった。そして、非正規の受胎の実は、一部の者には実は正規になった・・・か」
「!? それって裏取引じゃん!」
「ま、早い話、鬼神巫子に聞けばいいな。だが、今は・・・無理そうだな。まぁ正規じゃないなら、彼女が許すわけがない、そうだろ先生」
「あら、私の意図が通じて良かったわ」
「そんな!? 鬼神巫子様が容疑者逮捕じゃーってこと!?」
「ふは、女神を裁判に掛けられるわけないだろう? まぁ、少しやり過ぎて悪く表沙汰になっちまったということだ。ま、それを収めようとあいつが動いてるようだ」
「? あいつ?」
「ボス」
「ヒッ!?」
エリックがまた現れた。ほんとになんなん!? 毎度毎度驚かされる身にもなって欲しいわ!
「彼が動きました」
「え・・・?」
ディラがよいしょと重い腰をあげる。
「そうか」
「え? え? 何何?」
ディラが不遜の笑みを浮かべる。
「さ、ご本人様と話といこうか」
「は、はぁ~?」
チリリリリリリ。
いつもの時計のベルが鳴り響き、鬼神巫女様に使える俺達、鬼巫子は早速起きて、布団を片づける。
「今日は十年に一度のあちらの領土との宴、皆、忙しくなるよ~!」
「はーいっ!」
俺が鬼巫子になった理由、それはいい功績を認められると二十歳になったら、獣人領土とヒト族の領土に一週間の旅ができる権利を与えられるからだ。
「リョウ」
「はい先生」
「鬼神巫子様より、作った料理を宴に持って行く係の任命が下ったよ」
「えっ!? いいんですかっ!?」
料理班はただ作るだけなのに、宴に足を踏み入れることが許されるなんて、何と言う奇跡だ。
「あぁ、きちんと清めて、相手がどんな存在か、見て会話して学んで行きなさい」
「ははははははいっ! ありがとうございます先生!」
浮足立ってしまう。
相手側がもし自分に興味を持って頂ければ、話しかけられた際、お話が許される。
「きちんとあちらの言葉をマスターしているおまえが適任だったというだけだ」
頑張ったかいがあった。
「はーい皆、しっかり鬼神巫子様の恵み、桃を食べなさーい」
「はーい」
なんでもこの桃は健康な体作りをしてくれる言わばお薬みたいなものらしい。
しっかり一日一個を食べる。
加え、繁殖能力を高くさせる効果のあるこの桃は、いざつがって子供を身籠る時にも効果がいいらしい。
「よし」
あちらの領土の人達は野菜が好きと言うので、俺の畑の自家製の野菜をふんだんに取り入れよう。上級料理士まで昇りつめると、宴の対一人用の料理が全て任される。
「おかわり用も作っておこう」
それから数刻して、周囲が賑やかになった。
「うっわぁ」
「もふもふしてるね」
「ヒト族は僕達と変わらないね」
「わっ! 見て! 凄いしろいもふもふ!」
俺は胸を打たれた。
しろきもふもふがぽてぽてと歩いているではないか。
碧い瞳に黄金の腰布。
何故だか目が離せなかった。
ハッ!
慌てて料理を増やした。
領土王ともう一人いる。本来なら領土王だけだけど、もう一人参加することがあるなんて。
俺の料理をあの方、しろきもふもふ様に食べて頂きたい。
客人が着席し、会食の柏手が鳴った。
「っ!」
自分でも驚くくらいの速さでお盆を運んだ。
まずはしろくまの熊人領土王様からだ。
「し、失礼致します」
凄く緊張する。
くっふぅ! 間近で見ると艶々してもっふもふの毛並みだ。肉球もぷるんとしてそう!
「あぁ、すまないね。その、飛び入りで息子が来たんだが・・・」
俺は王とそのご子息に会釈し微笑んだ。
「はい、殿下様の分も準備しております、少しお待ちください」
「あぁ、良かった。なぁディラン」
「あぁ、無理を言ってすまない」
可愛いいいいいいいいいいいいいい!
俺より大きいけど、顔がまだ陛下に比べて幼いのが分かるーっ!
二人分の料理をお出しして、献立の説明をした。
「こちら右手から、小鉢にございますのはぬか漬というお漬物です。三か月ぬかに入れた自家製のきゅうりと大根と人参ですよ」
「・・・ほぅ~、ってこらディラ!」
ご子息が既に食べていた。
「! 美味しい! な、何だこれは!」
「ふふ、有難き幸せです・・・じゅる」
んなぁぁぁぁぁ君が美味しいそうだよ! やっば、涎をしまわないと。
「あの、この瓶はなんだい?」
「はい、こちらは瓶サラダ、そのままですが。瓶の底に本日はゴマドレシングと味噌を混ぜたものがありまして、食べる時に瓶を逆さにして振っ・・・」
殿下がもうブンブンと振っておられた。可愛いいいいいいいいいいっ!!
「これをこの空き皿にぶちまけていい?」
「はい殿下。青キャベツと秋蜜柑と紫リンゴのカットしたものなど、今日は野菜と果物を織り交ぜてみました」
殿下がシャリシャリと、しろいお口をドレッシングで汚されているのが可愛すぎるあぁ俺も汚され・・・えふんっ。
「・・・うぅむ、これも美味い、美味だ。こんなものがこの島にあるとは」
「こちらが海老豆腐、十三種類の雑穀米釜飯、こちらは特製の合わせ味噌汁に、野菜の天ぷらにございます、おかわりございま」
「おかわりだ! これとこれとこれ」
「はい殿下。すぐにお持ちします」
「悪いね、頼むよ」
「はい」
はぁ、王の写真、隠れて撮っちゃダメかななぁ。殿下もすこぶるカッコい可愛くてらっしゃる。
会食も無事に終わり、食器を下げていると、ぽむっと俺の肩に感じたことない、硬いようででも柔らかい何かが乗った。
はわわわこっここここれはははははは肉球ぅぅぅぅ!
「殿下!」
「貴殿の料理、本当に美味なものだった、礼を言おう」
「ぃいいいえそんな! 喜んで頂けて」
何だろう。凄く胸がドキドキする。
「・・・顔が赤いぞ、熱でもあるのか?」
「だっ、大丈夫です殿下! すいません殿下に見惚れてしまっただけですからあはは!」
ってぇ何を言ってる俺!
「・・・夕刻、おれの部屋に来い」
「え?」
「美味しいデザートを持って来て欲しい」
「! 畏まりました。殿下は何の果物がお好きですか?」
殿下は口をもごもごとさせる。
はぁはぁはぁ! あむあむされたい。耳がピルピルしてるーっ! いやあむむしたいぃ!
「・・・蜂蜜が好き」
「はい、では蜂蜜のデザートをお持ちしますね」
「ん、待ってる」
あぁ、ぽてぽてのお尻にそのちいさま真ん丸な尻尾は何ですかぁ!? 食べていいんですかっ!?
ふとドンッと背中に誰かがぶつかってきた。
「いっ、ノイカ!?」
「ふふふ~聞いちゃった。夜伽に呼ばれたんだぁおめでとう~」
「よと・・・」
ボッと顔が熱くなった。
「いーじゃん、処女を貰って貰えて。獣人と交尾したって子供はできないし、お互い気持ち良くなるためのセックスだし」
「言い方っ! 言い方な!? べべべ別にデザートお持ちするだけで夜伽は・・・ごにょごにょ」
嘘。俺に興味を持ってくれたのかな、だったら嬉しい。
「鬼と獣人の管理神が違うから、本当は交わりは許されないはずだけど。鬼神巫子様もよく許したよねぇ」
鬼神巫子様はお酒の瓶をブンブン振り回している。
「・・・ただ、お酒を好きな者同士で飲みたいだけなんじゃないかな・・・」
「そうだわ」
俺達は頷いた。
直に夕刻になり、蜂蜜たっぷりの熱々パンケーキアイスクリーム添えを持って行った。
殿下の部屋をノックする。
「殿下、デザートをお持ちしました」
ガチャっと開いて、殿下直々に俺を迎え入れてくれさった。
「入れ」
「失礼します」
テーブルにデザートを置いた。
「殿下、熱々のうつにお召し上がりくださいね。パンケーキと、オレンジジュースです」
「・・・うん」
あれ? 何だろ。なんかソワソワしてる気がする。
殿下は相変わらずはふはふと美味しそうに食べてくれた。こうやって美味しそうに食べて貰えるのが凄く嬉しい。
「・・・そんなに見ないで貰えるか」
「! す、すいません可愛くて、はっ、いえその嬉しくて」
カチャリと、食べ終わったホォークとナイフの音がした。
「・・・あの、さ」
「あ、片づけますね」
ふと、殿下が俺の手を取った。
「誘い方が、分からないんだけど」
「?」
誘い方?
殿下が俯いてもじもじと、可愛らしくされる。
「・・・デザート、よ、夜のデザート、君が、いいなぁって、その・・・」
雷が落ちた。
よ、と、ぎーっ!
「で、殿下、あの、俺、処女、ですので、そ、それでも、よろしければその・・・」
「しょっ!」
まさか、本当に夜伽をして貰えるとは思ってなかった。でも念の為、セクシーな衣装と下着を着て来て良かったぁ。
「・・・ベッド、行こうか」
「・・・はい」
ベッドに座ると早々に殿下が謝罪して来た。
「ごめん、俺達しろくま、ポーラー種は下賎な話、勃起した相手としか交尾しないんだ」
「ぼっ」
そのお口からそんなお言葉が!
「ポーラーは、気にいった相手に中々出会えなくて、よく不能だとか、獣人界隈では人気が無いんだ」
「ふのっ」
淡泊なのか!?
「でも、ほら」
「っ!」
ひぃっ!
殿下が重そうな金属の腰布を取ると、ブルンッとそびえ立つ凶器が顔を出した。
「だけどほら、相手を見つけるとずっと発情してしまうから、この腰布で勃起を抑えてるんだ」
「・・・零か百か、みたいですね」
俺はまじまじと凶器を見つめた。
「その、初めて、なので、手解き、お願いしてもいいですか?」
「え、してくれるの?」
「よろしくお願いします」
俺は言われた通りに、舌を殿下の愛しい凶器に這わせて、亀頭を口に含み、舐めとった。
大きくて、口に入れ切ることはできない、だけど一生懸命舐めた。
「んんっ!? んあぁ、で、んか?」
「軟膏だよ、君のここ、傷つけたくないからね」
俺のお尻に一瞬冷たさを感じたが、ぬくぬくと動かさるうちに、次第に殿下の指を感じ取ることができた。
「あぅ!? あ? や、そこ」
殿下が俺のある一点を付いた。
「ここ?」
「あっ、あ、あ、あ、あ、だめ、あっ!」
殿下より先に達してしまった。
「ふぁ、あ、ごめ、な、さい・・・んっ」
「気持ちいいなら良かった。ほぐれたかな」
「あ・・・」
仰向けにされ、両脚を左右に大きく開かされた。俺のペニスに、殿下の滾る凶器が擦り合わされる。
「これ、入れて、いいよね」
殿下の目が、ギラギラと、獲物を前にしてるように。
「いれて、くだ、さ、あぁぁぁっ!」
蕾が押し広げられた。圧迫感に犯される。
「キツ・・・、アァ・・・ウゥ・・・」
「あ、あぁぁぁぁ、あぅ・・・ひぁぁぁ」
どんどん中に押し込まれていく。お腹が熱い、中で、熱いものが突き刺さっている。
「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ・・・」
「あんっ、あっ、あ、あ、ぃあっ、あんっ」
肉棒が、俺の中を行き来してる。膣が、殿下の肉棒を締め付けて逃さないよう必死だ。
「でん、かぁ・・・あむっ、んんっ」
深く口づけをしてくれた。長い厚い舌が俺の口腔を弄る。
汗ばむもふもふに抱きついた。密着すると、よりお腹にあるものの凶悪さを実感する。
「あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、あぁぁ」
「フッ、く、フッフッフッフッ」
重く圧し掛かる殿下の息が荒くなってきた。俺の中を、奥をズンズンと突いてくる。
「あ、あ、あ、あ、あ、ああああああ」
来る。気持ちいいのが来る。
中で殿下の凶器が膨張し、本気で腰を振り打ち付けて来た。
「だすだすだすグァァァァァァァッ!」
「ふぁぁぁぁぁぁぁぁああああああ」
激しい律動に叫ぶことしか出来なかった。
「グウッ!」
「んあっ!」
最高の快感絶頂に、腰が跳ねた。
「あぅ」
ドシュッ。中で激しい濁流が注がれた。
「あんあんあんあんあぁぁぁぁ」
痙攣する俺の体に容赦なく圧し掛かり、殿下は射精しながら腰を打ち付けた。
「アァ~・・・止まらねぇ」
「しゅ、ご、ぃ・・・あぁ・・・」
断続的に繰り返される射精。ブシャブシャと熱い粘着物を何度も注がれているのが分かる。
これが、セックス。
俺の中で、何かが切れた。
「・・・殿下・・・」
「・・・もっとだ・・・」
「・・・・はい」
俺は殿下に跨り、上で大きく腰を振った。
「んあぁ、あぁ、あぁ、あ、あ、あ、あ」
殿下も俺も腰を掴んで離さず、俺の李同に合わせて腰を浮かせ、凶器を突き上げてくれる。
「でんか、でんか、すき、すっき、あぁ」
「あぁ、おれ、もだ、はらめ、はらめ」
「んくあぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
ゴンゴンと激しく揺さぶられた。
孕みたい、孕みたい・・・。
「っあっ・・・ぁ・・・」
俺の中で熱い子種が注がれる。甘い快感が体中、脳内まで巡り回る。
「ふぁ、あぅ、ひぁ、あ、あ、あ、あ」
もうおかしくなる。
まだ射精が終わらない止まらない、穿ちが止まない。気持ちいしか来ない。
「はらめはらめはらめはらめ・・・」
呪文のように耳を打つ。
もう一つに溶けてしまえばいい。
「・・・・・・」
この気持ちは、何?
こんなの、俺、じゃない。
「・・・ぅ・・・っく」
怖い。
自分じゃない何かが俺を勝手に動かす。
能動的に。
衝動的に。
「・・・ぃ、こ、わ、ぃ、たす、けて」
急に、部屋が静になった、気がした。
「・・・すまない」
ぼやける視界に、うるうると心配そうに見つめてくれる小さな碧い瞳があった。俺は泣きじゃくっていたようだ。瞬くとぼろぼろと涙が溢れ零れた。
「・・・ごめんな」
殿下は俺の涙を掬うと、深呼吸した。
「・・・一旦、落ち着こうか」
「ぁ、んっ」
殿下は俺の中から抜けると、よいしょ、ともふもふの膝枕をしてくれた。
「っはぁ~、理性が飛ぶとこうなるんだって、初めて思い知らされた、こんなことは初めてだ」
「・・・夜伽って、こういうものじゃないんですか?」
「いや、もっと、楽観的に、ただ快楽を楽しむだけだよ。・・・今の、おれ達の、こ、れは本気の交尾に近いんじゃないかな? 多分、おれも、こんな誰かを孕ませたい一心で衝動的になったのは初めてだから」
殿下も、訳が分からずなっていたってことだろうか。
殿下の優しいむぬむにの手が、俺の頬を撫でる。
「怖がらせてごめん。初めてがいきなり獣人のものは、トラウマ級だろう、本当にすまない。痛かったろう?」
「・・・軟膏でそこまで痛いというよりかは異物感が・・・。あっ、でも、最初大きい方が、次ヒトのものなら怖くなくなりますから・・・」
殿下は眉根を寄せた。
「う、うぅ~ん、それはそれで雄側が悲しいような・・・」
「・・・? そうなんですか?」
沈黙が流れた。心地よい風が窓から送られた。
「ふーっ。あ、話をしよう。って自己紹介もまだだったね。おれはディラン・ボワーズ。熊人族のしろくま種だよ。仲間が少ないから、親父は優秀な母体を探してる。ここへはわざと連れて来られたんだ」
「・・・母体?」
「そう、強いしろくまの子を何人も産んでくれる雌だよ。しろくま種は絶滅危惧種になったからさ。ヒト族の母さんが死んで、親父は種の存続の全ておれに乗せて来てるんだよ。はぁ、正直かったるい。どんなにいい雌でも、愛がなきゃ、すっごく好きじゃなきゃ子種も出ないってのに」
ふふ、思わず笑ってしまった。
「・・・殿下は大変ですね」
「・・・殿下は嫌だ。ディラ、そう呼んで欲しいな。君の名前は?」
「俺はリョウ・リンドウです。鬼神巫子様の直系の鬼子で、巫子様曰く、希少な先祖返りだそうです」
「・・・へぇ、先祖返り・・・」
「・・・だから、おれも鬼人族の子を産まないといけないんです。本当は、島の外に出て自由になりたいんですけど・・・ふふ、殿下、じゃなかった、ディラと境遇が似てますね」
「・・・そうかぁ~、お互い苦労するなぁ」
「うん、本当に、ふふ」
沈黙が続く。けれど、心地が良かった。
「・・・似た者同士、くっついちゃおっか」
「え?」
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お腹に触れた。ここにある子宮は獣人には効果がないのだ。
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「しろくまは普段性欲皆無なんだよ? だけどこう気に入った子がいるとその反動、性欲の振れ幅がビンビンに」
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「・・・!」
ディラがいた。俺の手を握り、ずっと側に居てくれたのか。
「・・・ディラ」
すぐにディラのまぁるいお耳がヒクっと動いた。碧い瞳が俺を映す。
「! リョウ!」
「ぐぇ」
思い切り抱きつかれた。
「ディラ、苦しいよ」
「! ・・・その呼び方・・・」
俺は微笑んだ。
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「ディラ」
「あぁ」
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「!」
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そっか。俺が鬼神巫子の子孫なら、そりゃぁ樹の女神の子孫もいるのか、なるほど。
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「おっばか! それはそれで怖いだろ、副作用なりなんなりあるかもよ!」
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「いや俺がまさか鬼人だとは思ってないんじゃない? テニィさんにも何も言われなかったし・・・。俺、記憶が無かったとはいえど、鬼味が足りなかったんだな・・・」
「おにみってなんだよそれ」
ふとキョウコさんが何かを差し出す。
「・・・? これは?」
ディランが受け取ったのは、翡翠色の勾玉だった。
「私との通信手段です。念じて頂ければ繋がります。あとはここへの島入りを許された証でもあります。・・・これは、鬼神巫子様より貴方にと、代わりに承りました」
「・・・そうか」
「・・・鬼神巫子も、ただ純粋に、可愛い子達が外の世界に行ってしまうのが悲しいのです。テニィに続き、先祖返りのリョウ様まで・・・」
「・・・あぁ、悪いと思ってるから、リョウの記憶を消したのも・・・ゆる、した」
唇を物凄い噛みしめるディラン。
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ふとキョウコさんが俺の手を取った。
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そう、なのか。俺がディランに魅かれたのは、一目惚れしたのは、あの衝動は。
「フッ。悪いな、リョウを魅了しちまっげふっ」
「・・・・・・」
どすっとわき腹を肘内してやった。
「非正規の受胎の実が何故人気なのか」
え。そんな人気なの?
「正規の受胎の実の情報の開示が全く無い。それは何故か。そもそも妊娠できるという暗示任せの、ただの実、だからです。そんなことがバレてしまえば女神や神社への信仰な無くなり、世界が滅んでしまう」
「そ、そうなの!? ってか俺にそんなこと話して良かったんですか!?」
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「え・・・?」
ディラがよいしょと重い腰をあげる。
「そうか」
「え? え? 何何?」
ディラが不遜の笑みを浮かべる。
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初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。
甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。
第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。
※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり)
※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り
初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
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