【休止】天の声、実況、す。

佐橋 竜字

文字の大きさ
上 下
4 / 34

【#03】ダンデライオン

しおりを挟む
「よくあるモブがぁ~、イキってんじゃないよ?」
「ぐへっ!」
 再びDDにGがかかる。
「竜ならもっとかっこよくなって来いよ? なんだそのひ弱な外見は? トカゲか? えぇ? 『ご主人様』?」
 おや? おやおや。由利亜嬢の様子が一変。
 安心して下さい。こちら、実は彼女の処世術の一つであります。
「さっきから、何由利亜のパンツ、見ようとしてんの?」
「みみみみみ見てねえし!」
「ふぅん? 由利亜の胸は見てんのに?」
「そんなまっ平! 嫌でも見ぶべぅ!」
 由利亜嬢! それはやり過ぎなのでは!
 DDの頭部をパンプスでグリグリと押さえつけている。ある意味、ご褒美だが!
「ききき、ささまぁぁぁぁっ!」
 お、DDが本気を出・・・。
 由利亜嬢の速攻。
 シャープペンをDDの体のあちこちに突き刺しフィニッシュ!
「あ・・・が・・・?」
 また倒れ伏すDD。無理もない。彼女はドラゴ族の体の構造を理解し、効果のある『ツボ』を押したのだ。
「なぁんでぇなぁんでぇ!」
 ついに泣き出すDD。
「ただ、メイドさんに会ってご奉仕してもらいたかっただけなのにぃ!」
「その為に来たの?」
「当たり前だ! メイドこそ全て!」
「・・・・・・」
 由利亜嬢はDDを侮蔑の眼で見下ろす。
「・・・じゃぁ、メイドに会ったら、地球の味方になってくれるの?」
「っ!?」
 DDの目の色が変わる。あ、これは文字通りで、赤い目だったのが金色に輝いたんだ。
「なる! メイドの母星は必ず護って見せる! いや護りたい!」
 由利亜嬢は不遜の笑みを浮かべる。
「言質は取った」
 由利亜嬢が指をパチンと鳴らすと、スーツを着たムッキムキの叔父様お兄様達が現れ始めた。そして由利亜嬢は踵を返すと、そのムキムキーズの中に、彼らを壁として消える。
「???」
 Gが無くなったのか、DDは徐に起き上がる。
 そして、ムキムキーズの壁が無くなると。
「っ!」
 驚愕の顔を浮かべるDD氏。
「はぁ~い、メイドの、由利亜だよ~?」
 黒髪ツインテールに、メイドコスプレ、綺麗なおみ足にはフリルニーソの絶対領域が。
「っ! っ! っ!」
 あまりの『生メイド』に興奮し歓喜し、声にならない声を上げるDD氏。自らひれ伏し、拝んでいる。
「萌え萌えキューン」
「ンガハァッ!」
 DD氏は鼻血と得体の知れない汁を噴射した。ピクピクと仰け反り、白目を向いた。
 よほどの地球のメイド属性を愛していることがこれでお分かり頂けただろうか。
「もしもぉ~し、トカゲさぁ~ん?」
 また、見えるか見えないかのパ・・・でしゃがみ込む由利亜嬢。
 ガバッとDD氏は覚醒。
「モブでもいいから、うちの組に入部体験しない?」
「・・・? く、くみ?」
「あぁ、組織ってこと」
「組織?」
「そう。うちの、高野組はぁ、歩合制で、働いた分だけ報酬を与えるの。あ~、勿論、入部体験中でも払うよ? つまり、バイトってこと」
「バイト・・・」
「そう。知ってる? 地球保護法の一つで、宇宙人さんの惑星の硬貨を、地球円にするには限度があるの。わぁるいことしないように制限してるの」
「な、なるほど」
「だから、旅行滞在も皆二泊三日でしょう? それで、うちでバイトをすれば、バイト代が出るし、滞在延期の料金も払えるし、トカゲさんの好きな、本当のメイドに会えるメイド喫茶に通えるよ~?」
「!!! ななななななっ!?」
 さぁ。もう一押しです由利亜嬢。
「どうする~?」
「バイトとは何をすれば?」
「悪い宇宙人を取り締まるんだよ」
「? 地球警察がいるのでは?」
「ノンノン、それだけじゃあダメ。あっちは表向き。うちのは裏向きなの」
「! そ、そのような組織が・・・」
 由利亜嬢はにこっと満面の笑みを浮かべ、ゆっくり立ち上がる。
「ねぇトカゲさん? どう? 悪くないお話、でしょう?」
「・・・・・・」
「あ、いいのよ。強制じゃなくてこれは勧誘だから」
「・・・何故、『私』を?」
 由利亜はDD氏を凝視する。
「・・・・・・直感、かなぁ?」
「・・・・・・」
 DDは立ち上がり、由利亜嬢を見やる。
「・・・体験、してみよう」
「そう! ありがとう『ご主人様』!」
 由利亜嬢はパスポートにハンコを押すと、DD氏に手渡す。
「由利亜の悪口言ったこと、後悔させてあげるね?」
「えっ?」
 由利亜嬢がまた指をパチンと鳴らすと、ムキムキーズが出動。
「え? あ、あわ、どわーっ!」
 DD氏が彼らに胴上げされて立ち去った。
「よし」
 ツインテールのリボンを解くと、また可憐な受付嬢の姿に戻る。
 由利亜嬢は席に戻ると、モニターに向かう。
 そして、キーボードに、こう入力した。

▶報告

▶高野由利亜から本部へ

▽パスワードを入力

▶※※※※※※

▽本部ネットワークコネクト、許可

▶ドラゴニア星ドラゴ族、偽名ドリビア・ドルトル。真名 ローランド・ドラン。皇族ドラン一族第三王子、捕獲。対象は高野組が保管。

▽待機せよ、至急特別処理班急行す

▶了解

▶コネクト解除

「ふぅ。よし」

 高野由利亜。
 地球ニホン出身。
 ジャパニーズ【ヤクザ】。
 ニホン東部支部を取り締まる高野組、現組頭高野一二三の長女である。
『人間には興味がない』
 その彼女の言葉から、宇宙人への興味が現れる。
 家家業のその人脈と人望、そして肉体、精神的強さタフさが、研修時より地球保護局に高く評価される。
 今は対宇宙人窓口コロニーオムニバスでの受付業務だが、同時に極秘に『宇宙のお尋ね者』を取り締まる機関にも所属している。
 

 由利亜『嬢』と呼ぶ理由が、これで分かって頂けただろうか。

 由利亜嬢は次のゲート開錠ボタンを押す。

 そして満面の笑みで。

「ようこそ、地球へ」


 今後も、彼女の活躍を期待する。


【Profile.No.000239.高野由利亜 称号:蒲公英ダンデライオン
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

呪いの三輪車――え、これホラー? いや、色々な意味で。

されど電波おやぢは妄想を騙る
キャラ文芸
 表題通り、大枠で合ってます。  ――何処が⁉︎(笑)  ある意味と言うか、色々違う意味でホラー。  作風に抑圧された筆者が、ギャグニウム補填と言う崇高な目的の為に晒している、筆者による筆者の為の筆者的気分転換な内容がないよう〜な怪文書、みたいな?  ふう。  そこ、笑ちゃうトコね。(-.-;)y-~~~  そして原則、全編ギャグです。  そして原則、全編ギャグなんです!  大事なことなので、二度記しておきます。  ま、サラっと読み捨てて下さい。(笑)  ふう。ここも、笑うトコね。(-.-;)y-~~~

真夜中の仕出し屋さん~料理上手な狛犬様と暮らすことになりました~

椿蛍
キャラ文芸
「結婚するか、化け物屋敷を管理するか」 仕事を辞めた私に、父は二つの選択肢を迫った。 料亭『吉浪』に働いて六年。 挫折し、料理を作れなくなってしまった―― 結婚を断り、私が選んだのは、化け物屋敷と父が呼ぶ、亡くなった祖父の家へ行くことだった。 祖父が亡くなって、店は閉まっているはずだったけれど、なぜか店は開いていて―― 初出:2024.5.10~ ※他サイト様に投稿したものを大幅改稿しております。

おにぎり屋さんの裏稼業 〜お祓い請け賜わります〜

瀬崎由美
キャラ文芸
高校2年生の八神美琴は、幼い頃に両親を亡くしてからは祖母の真知子と、親戚のツバキと一緒に暮らしている。 大学通りにある屋敷の片隅で営んでいるオニギリ屋さん『おにひめ』は、気まぐれの営業ながらも学生達に人気のお店だ。でも、真知子の本業は人ならざるものを対処するお祓い屋。霊やあやかしにまつわる相談に訪れて来る人が後を絶たない。 そんなある日、祓いの仕事から戻って来た真知子が家の中で倒れてしまう。加齢による力の限界を感じた祖母から、美琴は祓いの力の継承を受ける。と、美琴はこれまで視えなかったモノが視えるようになり……。 第8回キャラ文芸大賞にて奨励賞をいただきました。

狼神様と生贄の唄巫女 虐げられた盲目の少女は、獣の神に愛される

茶柱まちこ
キャラ文芸
 雪深い農村で育った少女・すずは、赤子のころにかけられた呪いによって盲目となり、姉や村人たちに虐いたげられる日々を送っていた。  ある日、すずは村人たちに騙されて生贄にされ、雪山の神社に閉じ込められてしまう。失意の中、絶命寸前の彼女を救ったのは、狼と人間を掛け合わせたような姿の男──村人たちが崇める守護神・大神だった。  呪いを解く代わりに大神のもとで働くことになったすずは、大神やあやかしたちの優しさに触れ、幸せを知っていく──。  神様と盲目少女が紡ぐ、和風恋愛幻想譚。 (旧題:『大神様のお気に入り』)

おっ☆パラ

うらたきよひこ
キャラ文芸
こんなハーレム展開あり? これがおっさんパラダイスか!? 新米サラリーマンの佐藤一真がなぜかおじさんたちにモテまくる。大学教授やガテン系現場監督、エリートコンサル、老舗料理長、はたまた流浪のバーテンダーまで、個性派ぞろい。どこがそんなに“おじさん心”をくすぐるのか? その天賦の“モテ力”をご覧あれ!

あやかし雑草カフェ社員寮 ~社長、離婚してくださいっ!~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 令和のはじめ。  めでたいはずの10連休を目前に仕事をクビになった、のどか。  同期と呑んだくれていたのだが、目を覚ますと、そこは見知らぬ会社のロビーで。  酔った弾みで、イケメンだが、ちょっと苦手な取引先の社長、成瀬貴弘とうっかり婚姻届を出してしまっていた。  休み明けまでは正式に受理されないと聞いたのどかは、10連休中になんとか婚姻届を撤回してもらおうと頑張る。  職だけでなく、住む場所も失っていたのどかに、貴弘は住まいを提供してくれるが、そこは草ぼうぼうの庭がある一軒家で。  おまけにイケメンのあやかしまで住んでいた。  庭にあふれる雑草を使い、雑草カフェをやろうと思うのどかだったが――。

処理中です...