32 / 34
全容
しおりを挟む
その後、フランツの聴取は順調に進み、全容が明らかになってきた。
戦争が頻発していた時代は武器が売れ、潤っていた民族があった。近年は争いも無くなり、武器防具の使用も激減して生活も苦しくなっていた。
そんな頃、偶然発見した薬草に幻覚作用や中毒性があった。また、継続的に使用すると依存症に陥ってしまう恐ろしいものだった。
これを我が国と隣国に売り、お互いから持ち込まれたと思わせるように細工した。戦争が起これば武器は売れる。依存する人間が多くなれば薬草の相場も上がる。一石二鳥である。これらの思惑と双方の国にいた王制反対派の残党も利害が一致。薬草の持ち込みに一役買ったらしい。
フランツは叔父から誘拐の顛末を聞き、アメリアに懸想していたこともあり実行に移した。
王制反対派の父がいた平民の男と親しかったらしく、これを利用したのだ。ちなみに母方の祖父も監禁癖があり、表には出ていなかったが祖母を監禁し、最終的には妻にしたそうだ。祖母の親は醜聞を恐れ、そのまま嫁に出したという。はっきり言うと、三代揃ってクソである。
フランツの父親は真面目な人間だが、息子のしでかしたことは相当なものである。
モーヴァ家は子爵へと降爵されたが、爵位の返上を申し入れたらしい。しかし陛下が認めなかった。
フランツは主犯である為、実刑は免れないだろう。廃嫡も当然である。しかし長男ではあったが、父親は思う所があったのか後継者の指名をしていなかった。次男が優秀だと聞いているので、子爵家をいい方向に導いていくだろう。
「あの民族は隣国の管轄だよな」
「ああ。しかしあそこは独立区でもあるから、完全な責任問題にするのは難しいだろう。できるのは、それとなく嫌味を言うくらいかな」
武器や防具をを作る技術があるのに、何故それを違う方向に生かそうと思わなかったのか。
続けて「納得いかないけどね」とブライアンが愚痴をこぼす。こちらにも加担した人物がいるので、強くは言えないのもある。
フランツが雇った実行犯の盗賊も、北の領地で取り押さえた。何人かは逃れたらしいが、捕まるのは時間の問題だろう。
「そう言えば夫人の様子はどうなんだ?」
「ああ、何ともない。元気だ」
この間、アメリアに関しても意外な事実が分かった。一回目の誘拐事件の後、母親は傷ついた娘を手元に置いておきたいと願った。しかし父親は、次になにかあった時、子爵家ではアメリアを守りきれないと思った。そこで爵位も高く、物理的にも強い私に託したそうだ。
それで今私は幸せなのだから、子爵にはお礼を言わなくてはいけないのかもしれない。
アメリアが今回の件でまた傷つくのではないか、妙な噂が広がるのではないか。無かったことにして、裏で制裁を加えることはできると伝えたが、
「わたくしは平気ですわ。それに社会的にも抹殺した方が、世のためです」
と、私の目をまっすぐ見て言った。
「強いなアメリアは」
「そんなことありませんわ。ルイス様がいなければ生きていけませんもの。それに、何かあった時は守ってくださるのでしょう?」
「もちろんだ」
私はアメリアを強く抱きしめた。
戦争が頻発していた時代は武器が売れ、潤っていた民族があった。近年は争いも無くなり、武器防具の使用も激減して生活も苦しくなっていた。
そんな頃、偶然発見した薬草に幻覚作用や中毒性があった。また、継続的に使用すると依存症に陥ってしまう恐ろしいものだった。
これを我が国と隣国に売り、お互いから持ち込まれたと思わせるように細工した。戦争が起これば武器は売れる。依存する人間が多くなれば薬草の相場も上がる。一石二鳥である。これらの思惑と双方の国にいた王制反対派の残党も利害が一致。薬草の持ち込みに一役買ったらしい。
フランツは叔父から誘拐の顛末を聞き、アメリアに懸想していたこともあり実行に移した。
王制反対派の父がいた平民の男と親しかったらしく、これを利用したのだ。ちなみに母方の祖父も監禁癖があり、表には出ていなかったが祖母を監禁し、最終的には妻にしたそうだ。祖母の親は醜聞を恐れ、そのまま嫁に出したという。はっきり言うと、三代揃ってクソである。
フランツの父親は真面目な人間だが、息子のしでかしたことは相当なものである。
モーヴァ家は子爵へと降爵されたが、爵位の返上を申し入れたらしい。しかし陛下が認めなかった。
フランツは主犯である為、実刑は免れないだろう。廃嫡も当然である。しかし長男ではあったが、父親は思う所があったのか後継者の指名をしていなかった。次男が優秀だと聞いているので、子爵家をいい方向に導いていくだろう。
「あの民族は隣国の管轄だよな」
「ああ。しかしあそこは独立区でもあるから、完全な責任問題にするのは難しいだろう。できるのは、それとなく嫌味を言うくらいかな」
武器や防具をを作る技術があるのに、何故それを違う方向に生かそうと思わなかったのか。
続けて「納得いかないけどね」とブライアンが愚痴をこぼす。こちらにも加担した人物がいるので、強くは言えないのもある。
フランツが雇った実行犯の盗賊も、北の領地で取り押さえた。何人かは逃れたらしいが、捕まるのは時間の問題だろう。
「そう言えば夫人の様子はどうなんだ?」
「ああ、何ともない。元気だ」
この間、アメリアに関しても意外な事実が分かった。一回目の誘拐事件の後、母親は傷ついた娘を手元に置いておきたいと願った。しかし父親は、次になにかあった時、子爵家ではアメリアを守りきれないと思った。そこで爵位も高く、物理的にも強い私に託したそうだ。
それで今私は幸せなのだから、子爵にはお礼を言わなくてはいけないのかもしれない。
アメリアが今回の件でまた傷つくのではないか、妙な噂が広がるのではないか。無かったことにして、裏で制裁を加えることはできると伝えたが、
「わたくしは平気ですわ。それに社会的にも抹殺した方が、世のためです」
と、私の目をまっすぐ見て言った。
「強いなアメリアは」
「そんなことありませんわ。ルイス様がいなければ生きていけませんもの。それに、何かあった時は守ってくださるのでしょう?」
「もちろんだ」
私はアメリアを強く抱きしめた。
0
お気に入りに追加
71
あなたにおすすめの小説
【完結】元お飾り聖女はなぜか腹黒宰相様に溺愛されています!?
雨宮羽那
恋愛
元社畜聖女×笑顔の腹黒宰相のラブストーリー。
◇◇◇◇
名も無きお飾り聖女だった私は、過労で倒れたその日、思い出した。
自分が前世、疲れきった新卒社会人・花菱桔梗(はなびし ききょう)という日本人女性だったことに。
運良く婚約者の王子から婚約破棄を告げられたので、前世の教訓を活かし私は逃げることに決めました!
なのに、宰相閣下から求婚されて!? 何故か甘やかされているんですけど、何か裏があったりしますか!?
◇◇◇◇
お気に入り登録、エールありがとうございます♡
※ざまぁはゆっくりじわじわと進行します。
※「小説家になろう」「エブリスタ」様にも掲載しております(アルファポリス先行)。
※この作品はフィクションです。特定の政治思想を肯定または否定するものではありません(_ _*))
美しい公爵様の、凄まじい独占欲と溺れるほどの愛
らがまふぃん
恋愛
こちらは以前投稿いたしました、 美しく残酷な公爵令息様の、一途で不器用な愛 の続編となっております。前作よりマイルドな作品に仕上がっておりますが、内面のダークさが前作よりはあるのではなかろうかと。こちらのみでも楽しめるとは思いますが、わかりづらいかもしれません。よろしかったら前作をお読みいただいた方が、より楽しんでいただけるかと思いますので、お時間の都合のつく方は、是非。時々予告なく残酷な表現が入りますので、苦手な方はお控えください。 *早速のお気に入り登録、しおり、エールをありがとうございます。とても励みになります。前作もお読みくださっている方々にも、多大なる感謝を! ※R5.7/23本編完結いたしました。たくさんの方々に支えられ、ここまで続けることが出来ました。本当にありがとうございます。ばんがいへんを数話投稿いたしますので、引き続きお付き合いくださるとありがたいです。この作品の前作が、お気に入り登録をしてくださった方が、ありがたいことに200を超えておりました。感謝を込めて、前作の方に一話、近日中にお届けいたします。よろしかったらお付き合いください。 ※R5.8/6ばんがいへん終了いたしました。長い間お付き合いくださり、また、たくさんのお気に入り登録、しおり、エールを、本当にありがとうございました。 ※R5.9/3お気に入り登録200になっていました。本当にありがとうございます(泣)。嬉しかったので、一話書いてみました。 ※R5.10/30らがまふぃん活動一周年記念として、一話お届けいたします。 ※R6.1/27美しく残酷な公爵令息様の、一途で不器用な愛(前作) と、こちらの作品の間のお話し 美しく冷酷な公爵令息様の、狂おしい熱情に彩られた愛 始めました。お時間の都合のつく方は、是非ご一読くださると嬉しいです。
*らがまふぃん活動二周年記念として、R6.11/4に一話お届けいたします。少しでも楽しんでいただけますように。
疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!
ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。
退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた!
私を陥れようとする兄から逃れ、
不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。
逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋?
異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。
この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?
【完結済】私、地味モブなので。~転生したらなぜか最推し攻略対象の婚約者になってしまいました~
降魔 鬼灯
恋愛
マーガレット・モルガンは、ただの地味なモブだ。前世の最推しであるシルビア様の婚約者を選ぶパーティーに参加してシルビア様に会った事で前世の記憶を思い出す。 前世、人生の全てを捧げた最推し様は尊いけれど、現実に存在する最推しは…。 ヒロインちゃん登場まで三年。早く私を救ってください。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
乙女ゲームの悪役令嬢は断罪回避したらイケメン半魔騎士に執着されました
白猫ケイ
恋愛
【本編完結】魔法学園を舞台に異世界から召喚された聖女がヒロイン王太子含む7人のイケメンルートを選べる人気のゲーム、ドキ☆ストの悪役令嬢の幼少期に転生したルイーズは、断罪回避のため5歳にして名前を変え家を出る決意をする。小さな孤児院で平和に暮らすある日、行き倒れの子供を拾い懐かれるが、断罪回避のためメインストーリー終了まで他国逃亡を決意。
「会いたかったーー……!」
一瞬何が起きたか理解が遅れる。新聞に載るような噂の騎士に抱きすくめられる様をみた、周囲の人がざわめく。
【イラストは自分で描いたイメージです。サクッと読める短めのお話です!ページ下部のいいね等お気軽にお願いします!執筆の励みになります!】
【完結】冷酷眼鏡とウワサされる副騎士団長様が、一直線に溺愛してきますっ!
楠結衣
恋愛
触ると人の心の声が聞こえてしまう聖女リリアンは、冷酷と噂の副騎士団長のアルバート様に触ってしまう。
(リリアン嬢、かわいい……。耳も小さくて、かわいい。リリアン嬢の耳、舐めたら甘そうだな……いや寧ろ齧りたい……)
遠くで見かけるだけだったアルバート様の思わぬ声にリリアンは激しく動揺してしまう。きっと聞き間違えだったと結論付けた筈が、聖女の試験で必須な魔物についてアルバート様から勉強を教わることに──!
(かわいい、好きです、愛してます)
(誰にも見せたくない。執務室から出さなくてもいいですよね?)
二人きりの勉強会。アルバート様に触らないように気をつけているのに、リリアンのうっかりで毎回触れられてしまう。甘すぎる声にリリアンのドキドキが止まらない!
ところが、ある日、リリアンはアルバート様の声にうっかり反応してしまう。
(まさか。もしかして、心の声が聞こえている?)
リリアンの秘密を知ったアルバート様はどうなる?
二人の恋の結末はどうなっちゃうの?!
心の声が聞こえる聖女リリアンと変態あまあまな声がダダ漏れなアルバート様の、甘すぎるハッピーエンドラブストーリー。
✳︎表紙イラストは、さらさらしるな。様の作品です。
✳︎小説家になろうにも投稿しています♪
求職令嬢は恋愛禁止な竜騎士団に、子竜守メイドとして採用されました。
待鳥園子
恋愛
グレンジャー伯爵令嬢ウェンディは父が友人に裏切られ、社交界デビューを目前にして無一文になってしまった。
父は異国へと一人出稼ぎに行ってしまい、行く宛てのない姉を心配する弟を安心させるために、以前邸で働いていた竜騎士を頼ることに。
彼が働くアレイスター竜騎士団は『恋愛禁止』という厳格な規則があり、そのため若い女性は働いていない。しかし、ウェンディは竜力を持つ貴族の血を引く女性にしかなれないという『子竜守』として特別に採用されることになり……。
子竜守として働くことになった没落貴族令嬢が、不器用だけどとても優しい団長と恋愛禁止な竜騎士団で働くために秘密の契約結婚をすることなってしまう、ほのぼの子竜育てありな可愛い恋物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる