26 / 34
予想通りの人物
しおりを挟む
目が覚めると辺りは暗かった。しばらくすると目が慣れてきて、少しずつ見えるようになってきた。あれからどこかの屋敷に運ばれ、ベッドに寝かされていたようだ。ドアを確認すると鍵がかかっており、窓は開くが鉄格子が嵌っている。ここは半地下になっていて、閉じ込める為だけの部屋に見えた。
ふとベッドサイドを見ると、香炉が置いてあった。ものすごく嫌な予感がした。外を見ると草が生い茂っていたので、香炉を鉄格子の隙間から投げ捨ててやった。草がクッションとなり、伸びた雑草がうまく隠してくれたようだ。あまり手入れがされていない庭だったのが幸いした。
他に何かできることはないかと物色していると、鍵が開く音がしたので慌ててソファーに座った。
「やあ。目が覚めていたのか。ようこそ私の天使」
「ごきげんよう、モーヴァ様。わたくしに何か御用でして?」
「つれないなアメリア。フランツと呼んでくれてもいいのだよ」
主犯は思った通りフランツ・モーヴァ。想像通り過ぎて涙が出るわ。そして相変わらず気持ちが悪い。
「親しくもない方を、名前でお呼びするわけにはいきませんわ。お断り申し上げます」
その前に、私の名前も呼ばないで欲しいけどね。
「私の天使。照れているんだね。私たちは生まれる前から結ばれることが決まっていたんだ。待たせてしまったのは悪かったが、素直になっていいんだよ。全部分かっているから」
全く話が通じない。同じ人間なの?同じ言葉を話しているの?ストレートに言わないと分からないの?
「ありえません。わたくしが愛しているのはこの世でただひとり。ルイス・リックメラー様ですわ!」
フランツはやれやれ仕方がないなというような態度で、諭すように話しかけてきた。
「いけない子だな。洗脳がかなり酷いようだ。でも大丈夫。直ぐに解けるからね」
と言いながら香炉があったところに目をむけた。その瞬間顔が険しいものに変わり「チッ。用意しておけと言ったのに役立たずめ」と吐き出すように毒づいた。捨てておいて良かった。
「この屋敷は街からかなり離れた場所にある。人も滅多に通らないから叫んでも無駄だよ。ただ、私も無理強いはしたくないから、気持ちよくなってから治療をしようね」
そして私の手を取ろうとしたが当然拒否。
「早くどうにかしなければ、私がおかしくなりそうだな」
もうおかしいです。
「夕食を用意させるから、待っていてくれ。私も同席したいのだが用事ができてね」
香炉の件かしら?何でもいいから早く出て行って欲しい。
「それじゃあまた明日。私の天使」
そう言いながらウインクをして、満足したのかやっと部屋を出て行った。
しばらくしてメイドらしき女性が夕食を持ってきた。パンにシチュー、サラダと普通のメニューだった。甘い匂いはしなかったが、何が入っているか分からないので手をつけなかった。
女性は、私と口をきくなと前もって言われているのか、目も合わせてもらえなかった。
今夜も月が出ている。ルイス様は今どうしているかしら。
ルイス様に会いたい──。
ふとベッドサイドを見ると、香炉が置いてあった。ものすごく嫌な予感がした。外を見ると草が生い茂っていたので、香炉を鉄格子の隙間から投げ捨ててやった。草がクッションとなり、伸びた雑草がうまく隠してくれたようだ。あまり手入れがされていない庭だったのが幸いした。
他に何かできることはないかと物色していると、鍵が開く音がしたので慌ててソファーに座った。
「やあ。目が覚めていたのか。ようこそ私の天使」
「ごきげんよう、モーヴァ様。わたくしに何か御用でして?」
「つれないなアメリア。フランツと呼んでくれてもいいのだよ」
主犯は思った通りフランツ・モーヴァ。想像通り過ぎて涙が出るわ。そして相変わらず気持ちが悪い。
「親しくもない方を、名前でお呼びするわけにはいきませんわ。お断り申し上げます」
その前に、私の名前も呼ばないで欲しいけどね。
「私の天使。照れているんだね。私たちは生まれる前から結ばれることが決まっていたんだ。待たせてしまったのは悪かったが、素直になっていいんだよ。全部分かっているから」
全く話が通じない。同じ人間なの?同じ言葉を話しているの?ストレートに言わないと分からないの?
「ありえません。わたくしが愛しているのはこの世でただひとり。ルイス・リックメラー様ですわ!」
フランツはやれやれ仕方がないなというような態度で、諭すように話しかけてきた。
「いけない子だな。洗脳がかなり酷いようだ。でも大丈夫。直ぐに解けるからね」
と言いながら香炉があったところに目をむけた。その瞬間顔が険しいものに変わり「チッ。用意しておけと言ったのに役立たずめ」と吐き出すように毒づいた。捨てておいて良かった。
「この屋敷は街からかなり離れた場所にある。人も滅多に通らないから叫んでも無駄だよ。ただ、私も無理強いはしたくないから、気持ちよくなってから治療をしようね」
そして私の手を取ろうとしたが当然拒否。
「早くどうにかしなければ、私がおかしくなりそうだな」
もうおかしいです。
「夕食を用意させるから、待っていてくれ。私も同席したいのだが用事ができてね」
香炉の件かしら?何でもいいから早く出て行って欲しい。
「それじゃあまた明日。私の天使」
そう言いながらウインクをして、満足したのかやっと部屋を出て行った。
しばらくしてメイドらしき女性が夕食を持ってきた。パンにシチュー、サラダと普通のメニューだった。甘い匂いはしなかったが、何が入っているか分からないので手をつけなかった。
女性は、私と口をきくなと前もって言われているのか、目も合わせてもらえなかった。
今夜も月が出ている。ルイス様は今どうしているかしら。
ルイス様に会いたい──。
0
お気に入りに追加
71
あなたにおすすめの小説
【完結】元お飾り聖女はなぜか腹黒宰相様に溺愛されています!?
雨宮羽那
恋愛
元社畜聖女×笑顔の腹黒宰相のラブストーリー。
◇◇◇◇
名も無きお飾り聖女だった私は、過労で倒れたその日、思い出した。
自分が前世、疲れきった新卒社会人・花菱桔梗(はなびし ききょう)という日本人女性だったことに。
運良く婚約者の王子から婚約破棄を告げられたので、前世の教訓を活かし私は逃げることに決めました!
なのに、宰相閣下から求婚されて!? 何故か甘やかされているんですけど、何か裏があったりしますか!?
◇◇◇◇
お気に入り登録、エールありがとうございます♡
※ざまぁはゆっくりじわじわと進行します。
※「小説家になろう」「エブリスタ」様にも掲載しております(アルファポリス先行)。
※この作品はフィクションです。特定の政治思想を肯定または否定するものではありません(_ _*))
疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!
ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。
退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた!
私を陥れようとする兄から逃れ、
不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。
逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋?
異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。
この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?
【完結済】私、地味モブなので。~転生したらなぜか最推し攻略対象の婚約者になってしまいました~
降魔 鬼灯
恋愛
マーガレット・モルガンは、ただの地味なモブだ。前世の最推しであるシルビア様の婚約者を選ぶパーティーに参加してシルビア様に会った事で前世の記憶を思い出す。 前世、人生の全てを捧げた最推し様は尊いけれど、現実に存在する最推しは…。 ヒロインちゃん登場まで三年。早く私を救ってください。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
乙女ゲームの悪役令嬢は断罪回避したらイケメン半魔騎士に執着されました
白猫ケイ
恋愛
【本編完結】魔法学園を舞台に異世界から召喚された聖女がヒロイン王太子含む7人のイケメンルートを選べる人気のゲーム、ドキ☆ストの悪役令嬢の幼少期に転生したルイーズは、断罪回避のため5歳にして名前を変え家を出る決意をする。小さな孤児院で平和に暮らすある日、行き倒れの子供を拾い懐かれるが、断罪回避のためメインストーリー終了まで他国逃亡を決意。
「会いたかったーー……!」
一瞬何が起きたか理解が遅れる。新聞に載るような噂の騎士に抱きすくめられる様をみた、周囲の人がざわめく。
【イラストは自分で描いたイメージです。サクッと読める短めのお話です!ページ下部のいいね等お気軽にお願いします!執筆の励みになります!】
【完結】冷酷眼鏡とウワサされる副騎士団長様が、一直線に溺愛してきますっ!
楠結衣
恋愛
触ると人の心の声が聞こえてしまう聖女リリアンは、冷酷と噂の副騎士団長のアルバート様に触ってしまう。
(リリアン嬢、かわいい……。耳も小さくて、かわいい。リリアン嬢の耳、舐めたら甘そうだな……いや寧ろ齧りたい……)
遠くで見かけるだけだったアルバート様の思わぬ声にリリアンは激しく動揺してしまう。きっと聞き間違えだったと結論付けた筈が、聖女の試験で必須な魔物についてアルバート様から勉強を教わることに──!
(かわいい、好きです、愛してます)
(誰にも見せたくない。執務室から出さなくてもいいですよね?)
二人きりの勉強会。アルバート様に触らないように気をつけているのに、リリアンのうっかりで毎回触れられてしまう。甘すぎる声にリリアンのドキドキが止まらない!
ところが、ある日、リリアンはアルバート様の声にうっかり反応してしまう。
(まさか。もしかして、心の声が聞こえている?)
リリアンの秘密を知ったアルバート様はどうなる?
二人の恋の結末はどうなっちゃうの?!
心の声が聞こえる聖女リリアンと変態あまあまな声がダダ漏れなアルバート様の、甘すぎるハッピーエンドラブストーリー。
✳︎表紙イラストは、さらさらしるな。様の作品です。
✳︎小説家になろうにも投稿しています♪
求職令嬢は恋愛禁止な竜騎士団に、子竜守メイドとして採用されました。
待鳥園子
恋愛
グレンジャー伯爵令嬢ウェンディは父が友人に裏切られ、社交界デビューを目前にして無一文になってしまった。
父は異国へと一人出稼ぎに行ってしまい、行く宛てのない姉を心配する弟を安心させるために、以前邸で働いていた竜騎士を頼ることに。
彼が働くアレイスター竜騎士団は『恋愛禁止』という厳格な規則があり、そのため若い女性は働いていない。しかし、ウェンディは竜力を持つ貴族の血を引く女性にしかなれないという『子竜守』として特別に採用されることになり……。
子竜守として働くことになった没落貴族令嬢が、不器用だけどとても優しい団長と恋愛禁止な竜騎士団で働くために秘密の契約結婚をすることなってしまう、ほのぼの子竜育てありな可愛い恋物語。
神様の手違いで、おまけの転生?!お詫びにチートと無口な騎士団長もらっちゃいました?!
カヨワイさつき
恋愛
最初は、日本人で受験の日に何かにぶつかり死亡。次は、何かの討伐中に、死亡。次に目覚めたら、見知らぬ聖女のそばに、ポツンとおまけの召喚?あまりにも、不細工な為にその場から追い出されてしまった。
前世の記憶はあるものの、どれをとっても短命、不幸な出来事ばかりだった。
全てはドジで少し変なナルシストの神様の手違いだっ。おまけの転生?お詫びにチートと無口で不器用な騎士団長もらっちゃいました。今度こそ、幸せになるかもしれません?!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる