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嬉し恥ずかし両想い

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 今夜はルイス様とお話をするので少し緊張している。あの後邸に戻ってきてからマリーはぷりぷりと怒っていた。ルイス様をヘタレ呼ばわりし、それをヘレナに告げ口していた。

 夕食が終わり、部屋で休んでいると玄関から執事の声がしたので、私もお出迎えに出た。小雨が降っていたらしく髪が少し濡れていて、布で水分を取っていた。水もしたたるいい男だわ。

「お帰りなさいませ。旦那様」
「あ、ああ。湯を浴びてからそちらに行くから待っていてくれ」
「はい。お待ちしておりますね」

 落ち着かず、部屋の中でウロウロしていたら控えめなノックと共にルイス様が入ってきた。急いで座ったので見られていないはず。ルイス様は私の隣に座り、話を切り出した。

「昼間はすまない。ブライアンが失礼なことを言った」
「旦那様もわたくしを悪女だと思っておられるのですか?」
「そんなことはない!」

 いきなり大きな声を出されて肩が揺れてしまった。

「ああすまない。ブライアンにそう思わせてしまったのは、私の態度が原因かもしれない」
「態度ですか?」
「情けないことにアメリアが倒れてから仕事に身が入らなくてね。見兼ねたブライアンが纏まった休みをくれたのだが、目覚めた時に傍にいることができなかった。それに私はアメリアに嫌われているとおも……」
「それはありえませんわ!」

 これは声を大にして言いたい。嫌ってはいなかったし、そもそもはそんないじらしいところも好きだし。だから嘘じゃない。これからルイス様に伝えるのは、本当と嘘を織り交ぜた話。

「わたくしはお会いした時から憎からず思っておりますわ。ただ自分の心の内をさらけ出すのはとても勇気がいりますの。けれど今回の件がありまして、人生と気が付きました。旦那様、お慕いしておりますわ」

 ルイス様は一度天を仰いでから、真剣な目で丁寧に答えを返してくれた。

「アメリアに全部言わせてしまってすまない。私もアメリアを愛している」

 そして私を大きな体で抱きしめてくれた。すっぽりとルイス様の中に納まると安心した。息遣いが感じられる距離にいるとドキドキしてしまう。ルイス様ご自身の匂いと、石鹸の香りが混ざってうっとりとしてしまった。

「旦那様、嬉しいです」
「あんなことを言われて傷ついただろう。本当にすまなかった」
「先ほどから謝ってばかりですわ。旦那様と思いが通じ合ったので、もうそれはよいのです」
「君は……。ありがとう」

 それから改まって姿勢を正し、嬉しいことをお願いされた。

「私のことはルイスと呼んで欲しい」
「──はい。ルイス様」

 そしてお互いの顔が近づいていき、唇が重なり合った。
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